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第6話 集落殲滅戦

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 7日目。
 俺は捕獲した中で生き残っている黒エルフを”尋問”し、奴らの言語をある程度把握した(もっとも、習得できたのは殆ど口汚なく罵る言葉や世の中を呪うもの、また痛みを示すものであったが)

 さらには奴らの巣の場所も、おおまかではあるが判明した。どうやら、焼き討ちにあった集落から数時間の場所にあるようだ。
 俺は早速液体状の異世界ホスゲンを土器に充填、木と蔦でつくった背負子に水などの生活物資をエルフ達から鹵獲した道具ともに載せた後、エルフの本拠地へ向かった。

 故エルフ達の言う通り、数時間もすると周囲を森に囲まれた盆地のような場所にたどり着いた。通路のようなものが放射線状に伸び、大小50ほどの住居が、ひときわ大きなものを中心として円状に点在している。
 村を少人数で外敵から防御できるようにこのような配置なのか?
 そもそもこんな狭い土地、しかも周囲を高い森に囲まれている時点で防御に不向きな気がするが…。

 この村に対する俺の疑問は尽きない…。
 目をこらして見てみると、中心の建造物は高床式になっており、それを支える柱の下では狩りの練習だろうか、黒エルフの幼体どもがヒトの胴体と思しきものを的にして矢を射ていた。
 その横では顔を皺くちゃにした老エルフがヒトの指を炭焼きにしたものを薬草とともに自身の唾液を加えながら、乳鉢と乳棒を使いながら混ぜあわせていた。薬の具合を確認するためか、何度か途中で乳棒の先に付いたものを舐めとっては意味深に頷いたりしていた。

 奴らにとっては普段の営みかもしれないが、俺にとっては異常そのものであった。
 人狩りどもは、いますぐにでも滅ぼしておかねば…。
 自身の安全を確保するには”ヤられる前にヤる”しかないのである。
 そうした


 俺はいくらか思案しながら集落外縁から100メートルくらいのところから、異世界ホスゲンで満杯の土器を傾ける。液体が斜面を下り、やがて日光により揮発し拡散していく。異世界ホスゲンは気体になっても空気より重いため、ここのような低地への使用には”うってつけ”なのだ。
 無色透明な気体は目視では確認出来ないが、瞬く間に黒エルフ達を襲った。

 見たところ、外壁は日干し煉瓦、屋根は藁葺きのようだ。どの家も陽射しと風が入るよう、二か所の穴窓が空いている。
 幸い、気密性はあまりなさそうだ。効果はバツグン。次々と集落中から悲鳴と嗚咽、苦しみのたうち回る音が聞こえてくる(実際には100メートルは離れているから、そんな気がするだけなのだが)

「勝った!」
 俺は確信して、拳を握った。
 その時―。

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォぉォォォォォォォォッ!」
 中央の建物から2メートルは超えようという体躯の持ち主が現れた。口元には碗のような土器をあてがっているようだ。
 同じように、奥からぞろぞろと黒エルフの戦士らしいモノたちが外に出てくる。

「マジかよ…」
 俺は思わず声を漏らす。
 仮にエルフが襲撃に気付いても、それがガスによるものだとは分からないものだと高を括っていた…。
 己の不覚を恥じる。と共にコレを防いだ知性と、屈強な肉体の持ち主にどう対抗するかという点について俺の脳はフル回転で思考を働かせる。

 背高エルフ…鈴木の好きな異世界モノではハイエルフ?というのだったか、首魁のハイエルフは首にはネックレスと足の甲に剣状の棘のついた装具を身に着けている。

 拳には手甲、膝からくるぶしまで手首から肘までの部位も鉄甲でスッポリと覆われていた。両手には鍔のついた剣を握っている。加えて胸部と腹部はこれでもかというほど隆起しており、その部分が硬化しているのか何も身に着けておらず、他のエルフが胴に甲冑を付ける中、肉の鎧を身に着けているかのように腰布のみを巻いている。

 ネックレスは改めてみるとエルフの耳を切り取ったモノとヒスイのような翠色の石を交互に通したものであるらしかった。(こんな時に故郷のネギマを思い出したのは内緒)

 目の前のコイツの装備、完全なる近接格闘型である。かなり不味い。他のエルフたちについても剣や弓矢で武装しており、今の俺が持つ装備である槍や剣だけでは手ごわい相手だろう。

 だがやるしかない…。
 そう俺は腹を括った。









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