愛おしいと思うこと

成層圏 土竜

文字の大きさ
上 下
3 / 9

ユミ

しおりを挟む
 5時を知らせる町内会のサイレンがなる頃、ユミは夕食の準備をしていた。ひき肉をこねながらハンバーグを作る気ではいつつも、どこかまだピーマンの肉詰めにするかを迷っていた。
 スマホがぽんっと短く鳴り、画面に新着メッセージを知らせる。
「あーもうなんで!」
挽肉のこびり付いた手袋を外そうと思ったが、キッチンに置かれたスマホをひじで器用にタップしアプリを開く。
「ごめん急に客と呑みだわ遅くなるごめん…」
旦那からだった。
それをみた瞬間ユミは手袋を乱雑に外し、シンクにポイと投げ入れた。いくらか挽肉が床に落ちたが気にせずスマホを手に取る。
「なんでいつも急なのもうご飯つくってるけど」
ぽんっ
「ごめん」
ぽんっ
「ほんとごめん仕方ないからさ」
ここでユミはあえて少し待ってから、
「いいよ呑み過ぎないで」
と送った。
ぽんっ
「ごめんありがとう」
それに返信はせず、スマホを置いて床に落ちた挽肉を片付け、使い捨てのビニール手袋を軽く洗いゴミ箱へ、中途半端にこねられたハンバーグ(もしくはピーマンの肉詰め)が入ったボウルにラップをし、冷蔵庫に入れた。それと交換に缶チューハイを取り出してバンと扉を閉めた。自分で思っていたよりも大きな音がしたのを反省しながらも、気持ちがたかぶっていたから仕方ない。旦那がこの連絡をよこす時は本当に帰りが遅い。新婚の頃は健気に帰りを待つ事もあったが、朝になる事も少なくなかった。
 プシュッと缶を開けた。胸あたりまであるセミロングの髪を掻き上げながらリビングのソファに向かい、立ったままごくんごくんと喉を鳴らして3口ほど飲んだ。
「くいぃ~…!」
普段は進んで口にしない炭酸で涙目になりながら、モデルのようにメリハリがある身体、くびれのおかげでさらに強調された丸い大きな尻をバフっとソファに沈めた。勢いでいくらかチューハイがこぼれた。
「…やった!」
ユミにとって最高のタイミングだった。夕食も作りかけだし、来月から始めるパートの件で相談したい事もあった。もっといえば仕事と言いながら夜の店に行っていることも気が付いてるし、女性の同僚とホテルに泊まった内容のメールを見てしまったなんて事まである。しかしユミはそれに対して言い詰めようとか、ましてや腹いせに自分も他の男と…などという考えはない。そういう事とは関係のない、ユミ個人の楽しみにとって最高のタイミングだったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...