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第2章
第84話 B級サメ映画
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サメとワニの合成体が群れとなって清志達に襲い掛かる。イソギンチャクが頭になっただけのSG03とは比較にならない質量を誇るだけに、合成体の戦闘力は中々の脅威である。
幾らSランクといえども清志とアイナは人間である。4メートルを超える巨体にぶつかられたら、負傷するのは確実である。
特に内臓にダメージを受けるのは不味い。魔術で治療出来ないアイナの負傷は、異界に閉じ込められたこの状況では絶対に避けねばならない。
「コイツら見た目の割に素早いな!?」
「そもそも大き過ぎるのよっ!」
相手が巨体である以上は、大振りな刃を持つ清志の大鎌でも数匹纏めて斬るのは難しい。そして相手が大きくワニの肉体を持つ為、アイナが普段使う9ミリ弾では効果が薄い。
だからと言って砲弾でも打ち出そうものなら、船体に大きなダメージが入ってしまい兼ねない。どうにも厄介な状況である。
ただこう言った人外との戦闘も当然対策はしてある。アイナは巨体を持つ相手と戦う場合を想定して様々な兵器を作成している。
今回は弾が刺さった相手に高圧電流を流す武器を使用している。原理としてはテーザーガンと変わらないが、大きさが段違いである。
グレネードランチャーの銃身を、巨大なテーザーガンに作り替えた様な形状をしている。
敢えて命名するならテーザーランチャーか。相手が水棲生物の合成体である為、電流による攻撃は結構な効力を発揮していた。
「よし、今よ清志!」
「任せろ!」
「ふぅん、これも興味深いわね」
アイナがスタンさせて清志が斬るというコンビネーションで、テンポよく合成体を処理していく。
そんな2人を放置して、黄泉津大神は斬られた合成体の死体を調べていた。どうにも彼女には、この手の実験動物に興味があるらしい。
死したこの魂達を黄泉の国で飼うつもりなのかは不明だが、戦闘はそっちのけで観察を続けている。
清志とアイナは彼女を最初から戦力と換算していないので、自由な彼女を無視して戦闘を続けていく。
半分ほど処理は出来たが、室内に対して敵の密度が高く死体が非常に邪魔である。突進を防ぐ盾にもなるが、同時に広く使える場所も減る。
「清志! これ端に吹き飛ばせない?」
「ちょっと待ってろ!」
邪魔になった死体を清志が風の魔法で部屋の隅に吹き飛ばす。それぞれが1トン近い体重を誇る為、壁に激突した衝撃で船体が少し揺れた。
一旦はスペースが出来たが、残った合成体がこれ幸いと殺到する。突進や噛み付き、長い尾による攻撃等を2人は軽快に回避しつつ戦闘を続ける。
清志も強力な魔術を扱えるが、アイナと同じ理由で使う場面は限られる。強大な力はどこであろうと振るえるものではない。
むしろ強いからこそ厳しい制約を受ける。船内に居る友人達を巻き込み兼ねない攻撃はここではご法度だ。
「今回は面倒な敵が多いなっと!」
「良くもまあこんな物まで作るわね」
「その熱量だけは認めるよ」
普通の神経をしていれば、こんな狂気じみた実験は続けられない。人間には良心や常識があり、著しく損なわれると躊躇うものだ。
だがこの研究に関わった者達は、こんな頭のネジが何本か外れた様な生物を大量に作りだしている。
何が彼らをそこまで邁進させたのかは清志達にも分からないが、ここまで振り切ったその熱意だけは相当なものがあった。
それが研究者だと言われればそうかも知れないが、少なくともこの研究と一緒にされたい学者はそう多くはないだろう。ここまでの狂気は早々持ち合わせていられるものでは無い。
「もうちょっとね」
「随分と面倒な事をしてくれたもんだ!」
「全くよ。夏の海が台無しじゃないの」
単なる海洋研究に来ただけの筈が、こんな映画でしか見ない様な化け物と戦っている。
B級サメ映画も夏に相応しいと言えば確かにそうかも知れないが、一般的な女性が思い浮かべる夏の海とは大きな乖離があった。
そもそも夏の海に求めているのはサメではない。友人達との楽しい時間であり、同時にせっかく出来たパートナーとの親睦を深める機会でもあった。
それがすっかり台無しになってしまい、アイナとしては不満も言いたくはなる。執行者なんてやってはいても、彼女とて10代の乙女である。女の子としての楽しみぐらいは感じたいのだ。
「さっさと終わらせて戻らないとね」
「おらぁ! うっし、あと3体だ」
「次は右側のから行くわ」
20体ほど居た合成体は今や残り3匹となった。Sランクの2人であっても、体長4メートルもある1トン級の相手は手を焼く。
船内という制約がなく、それこそ砂漠のど真ん中であれば瞬殺が可能だ。しかしそんなもしもの話に意味はない。
Sランク執行者という職に就いている限り、この様なシチュエーションからは逃れられない。
違法な研究に手を染める者達と対峙する以上は、こうして周囲に気を使わねばならない事件は多い。
破壊したら大変な事になってしまう様な爆発物などが無いだけ幾らかマシである。
「しゃあ、ラスト!」
「外さないわよ!」
「任せた!」
最後の1匹にアイナが放った電極状の弾が突き刺さる。その瞬間青白い光が輝き合成体を感電させる。全身が痺れて倒れ込んだ所に清志が突進して首を斬り落とす。
厄介な相手との戦闘を終えた清志達の周りには、巨大な肉塊が大量に転がっていた。
幾らSランクといえども清志とアイナは人間である。4メートルを超える巨体にぶつかられたら、負傷するのは確実である。
特に内臓にダメージを受けるのは不味い。魔術で治療出来ないアイナの負傷は、異界に閉じ込められたこの状況では絶対に避けねばならない。
「コイツら見た目の割に素早いな!?」
「そもそも大き過ぎるのよっ!」
相手が巨体である以上は、大振りな刃を持つ清志の大鎌でも数匹纏めて斬るのは難しい。そして相手が大きくワニの肉体を持つ為、アイナが普段使う9ミリ弾では効果が薄い。
だからと言って砲弾でも打ち出そうものなら、船体に大きなダメージが入ってしまい兼ねない。どうにも厄介な状況である。
ただこう言った人外との戦闘も当然対策はしてある。アイナは巨体を持つ相手と戦う場合を想定して様々な兵器を作成している。
今回は弾が刺さった相手に高圧電流を流す武器を使用している。原理としてはテーザーガンと変わらないが、大きさが段違いである。
グレネードランチャーの銃身を、巨大なテーザーガンに作り替えた様な形状をしている。
敢えて命名するならテーザーランチャーか。相手が水棲生物の合成体である為、電流による攻撃は結構な効力を発揮していた。
「よし、今よ清志!」
「任せろ!」
「ふぅん、これも興味深いわね」
アイナがスタンさせて清志が斬るというコンビネーションで、テンポよく合成体を処理していく。
そんな2人を放置して、黄泉津大神は斬られた合成体の死体を調べていた。どうにも彼女には、この手の実験動物に興味があるらしい。
死したこの魂達を黄泉の国で飼うつもりなのかは不明だが、戦闘はそっちのけで観察を続けている。
清志とアイナは彼女を最初から戦力と換算していないので、自由な彼女を無視して戦闘を続けていく。
半分ほど処理は出来たが、室内に対して敵の密度が高く死体が非常に邪魔である。突進を防ぐ盾にもなるが、同時に広く使える場所も減る。
「清志! これ端に吹き飛ばせない?」
「ちょっと待ってろ!」
邪魔になった死体を清志が風の魔法で部屋の隅に吹き飛ばす。それぞれが1トン近い体重を誇る為、壁に激突した衝撃で船体が少し揺れた。
一旦はスペースが出来たが、残った合成体がこれ幸いと殺到する。突進や噛み付き、長い尾による攻撃等を2人は軽快に回避しつつ戦闘を続ける。
清志も強力な魔術を扱えるが、アイナと同じ理由で使う場面は限られる。強大な力はどこであろうと振るえるものではない。
むしろ強いからこそ厳しい制約を受ける。船内に居る友人達を巻き込み兼ねない攻撃はここではご法度だ。
「今回は面倒な敵が多いなっと!」
「良くもまあこんな物まで作るわね」
「その熱量だけは認めるよ」
普通の神経をしていれば、こんな狂気じみた実験は続けられない。人間には良心や常識があり、著しく損なわれると躊躇うものだ。
だがこの研究に関わった者達は、こんな頭のネジが何本か外れた様な生物を大量に作りだしている。
何が彼らをそこまで邁進させたのかは清志達にも分からないが、ここまで振り切ったその熱意だけは相当なものがあった。
それが研究者だと言われればそうかも知れないが、少なくともこの研究と一緒にされたい学者はそう多くはないだろう。ここまでの狂気は早々持ち合わせていられるものでは無い。
「もうちょっとね」
「随分と面倒な事をしてくれたもんだ!」
「全くよ。夏の海が台無しじゃないの」
単なる海洋研究に来ただけの筈が、こんな映画でしか見ない様な化け物と戦っている。
B級サメ映画も夏に相応しいと言えば確かにそうかも知れないが、一般的な女性が思い浮かべる夏の海とは大きな乖離があった。
そもそも夏の海に求めているのはサメではない。友人達との楽しい時間であり、同時にせっかく出来たパートナーとの親睦を深める機会でもあった。
それがすっかり台無しになってしまい、アイナとしては不満も言いたくはなる。執行者なんてやってはいても、彼女とて10代の乙女である。女の子としての楽しみぐらいは感じたいのだ。
「さっさと終わらせて戻らないとね」
「おらぁ! うっし、あと3体だ」
「次は右側のから行くわ」
20体ほど居た合成体は今や残り3匹となった。Sランクの2人であっても、体長4メートルもある1トン級の相手は手を焼く。
船内という制約がなく、それこそ砂漠のど真ん中であれば瞬殺が可能だ。しかしそんなもしもの話に意味はない。
Sランク執行者という職に就いている限り、この様なシチュエーションからは逃れられない。
違法な研究に手を染める者達と対峙する以上は、こうして周囲に気を使わねばならない事件は多い。
破壊したら大変な事になってしまう様な爆発物などが無いだけ幾らかマシである。
「しゃあ、ラスト!」
「外さないわよ!」
「任せた!」
最後の1匹にアイナが放った電極状の弾が突き刺さる。その瞬間青白い光が輝き合成体を感電させる。全身が痺れて倒れ込んだ所に清志が突進して首を斬り落とす。
厄介な相手との戦闘を終えた清志達の周りには、巨大な肉塊が大量に転がっていた。
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