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第2章
第71話 船内の調査④
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清志達が客室を調査していた頃と同時刻、アイナとシャーロットは娯楽エリアを調査していた。富裕層向けに作られているらしい船である為に、娯楽エリアにあるのは主にカジノだ。
ブラックジャックやポーカーに使うテーブルに、スロットマシンやルーレットの台など。本来なら華やかな筈の娯楽エリアは、やはり誰もおらず閑散としていた。
電気は通っているらしく、人の居ない遊戯室が煌びやかな照明に照らされていた。
「特におかしな物はないわねぇ」
「ふ、ふん! 結局何もないではありませんか!」
「そんな事を言っている人ほど背後からガブリと」
「だから止めてくださる!? 余計な一言を加えるのは!?」
そんな抗議を入れながらも、シャーロットは速攻で背後を確認した。もちろん異変もなければ異形の怪物も居ない。
ただ人の居ない遊戯室が広がっているだけ。娯楽エリアには他にもスパやシアタールームなどがある。そちらは既に確認済みで、やはり人は何処にも居なかった。
どうせ人など居ないと判断しているアイナはサクサクと調査を進めるが、相変わらずシャーロットはいちいち怖がっていた。当初の決意など、とっくに萎れてしまっていた。
「変ねぇ、ここの現金まで手つかずなんて」
「ゆ、幽霊はお金なんて必要ないでしょう!」
「ああ、はいはい」
最初から海賊の可能性を考えていたアイナは、お金になりそうな物が盗まれているか確認して来た。しかしどこを見ても、換金が出来そうな物品が残されている。
もしかしたら、そう言った類の物ではなく、他に何か価値がある物を盗んだのかとアイナは考えを変える。何らかのデジタルデータや、特殊な魔道具などの可能性を考慮に入れる。
有り得ない話ではない、産業スパイの様に最初から獲物を決めている場合もある。それならば余計な物品に手をつけていない事にも一応の説明がつく。
「ひっ!?」
「何よ? どうかした?」
「い、今そこに真っ白な何かが!」
シャーロットの指さす先では、白い布の端らしき物体が柱の角を曲がって行った。霊的な何かと言うよりは、人間が身に着ける衣類のようにアイナには感じられた。
コートや白衣などの裾ではないのかと。しかしこれだけ探し回ったのに、誰にも遭遇して来なかったのだ。にも関わらず今更感じた人の気配に、2人は警戒感を強める。
シャーロットは霊的な物を恐れて、アイナはまだ海賊達が残っている可能性を考えて。頭の中身は全く別々ではあったが、2人は白い布が消えた柱の角へと向かう。
アイナが手で合図をし、両側から柱を挟み込む様にして前へ出る。
「動かないで! って、ありゃ?」
「や、やっぱり幽霊ですわ!?」
「……ちょっと待って」
アイナは柱に違和感を覚えた。薄っすらとだが、柱の真ん中に継ぎ目の様なものがある事に気付いた。
見つけた継ぎ目の周りを適当に弄ると、一部がスライドして小さな入力端末が現れる。どこからどう見ても、何らかのロックを解除する為の物だ。
霊的な要因ではなく、明らかに科学が絡みそうな物体の登場でシャーロットも落ち着きを取り戻す。
人が幽霊の様に消えたのではなく、隠し通路の様な物に入った可能性が高い。2人はそれらしいものが無いか周辺の壁を調べる。
「こっちは無さそうよ!」
「こちらは……お待ちになって、ここですわ!」
「なるほど、冷気を使ったのね」
2人とも戦闘力は高い代わりに、探索系の魔術はあまり得意ではない。だが今回に関してはシャーロットのアイデア勝ちだ。
周囲に少しずつ冷気を流して、僅かな隙間から壁の向こうまで流れる位置を特定した。一見何の変哲もない壁であるが、この向こう側に何らかの空間があるのは間違いない。
それが分かったのは良いとしても、パスワードの類はまだ何も分かっていない。恐らくは柱の端末に特定のコードを入力すれば開くとは思われるが。
「どうしますの?」
「こう言う時こそ錬金術よね」
「何をするつもりです?」
「まあ見ててよ」
アイナが隠し扉と思わしき位置に掌を当てる。すると壁の金属部分が収縮して小さくなって行く。最終的には少し大きめのナイフがアイナの手に握られていた。
残った壁紙や木材などの部分は、アイナの足技で粉砕されて隠し通路の中にバラバラと飛び散った。アイナの前では純粋な金属製の扉など何の障害にもならない。
それこそ最新鋭空母の装甲板すら穴を簡単に開けられてしまうのだ。ただの豪華客船の壁など一瞬で片がつく。
「……貴女、強引にも程がありませんか?」
「そう? 実にスマートだと思うけど」
「はぁ、もう何でも構いませんわ」
謎解き要素のあるサバイバルホラーならば、実に興醒めな方法で仕掛けを突破したアイナとシャーロット。2人は警戒しながら隠された通路を進んで行く。
恐らく先程2人が見掛けた人影らしき存在は、この通路の先にいると思われる。扉を突破するついでに作成したサバイバルナイフを手に、アイナが先頭に立って前進していく。
その先に待つものが、一体何なのかは未だに不明なままだ。
ブラックジャックやポーカーに使うテーブルに、スロットマシンやルーレットの台など。本来なら華やかな筈の娯楽エリアは、やはり誰もおらず閑散としていた。
電気は通っているらしく、人の居ない遊戯室が煌びやかな照明に照らされていた。
「特におかしな物はないわねぇ」
「ふ、ふん! 結局何もないではありませんか!」
「そんな事を言っている人ほど背後からガブリと」
「だから止めてくださる!? 余計な一言を加えるのは!?」
そんな抗議を入れながらも、シャーロットは速攻で背後を確認した。もちろん異変もなければ異形の怪物も居ない。
ただ人の居ない遊戯室が広がっているだけ。娯楽エリアには他にもスパやシアタールームなどがある。そちらは既に確認済みで、やはり人は何処にも居なかった。
どうせ人など居ないと判断しているアイナはサクサクと調査を進めるが、相変わらずシャーロットはいちいち怖がっていた。当初の決意など、とっくに萎れてしまっていた。
「変ねぇ、ここの現金まで手つかずなんて」
「ゆ、幽霊はお金なんて必要ないでしょう!」
「ああ、はいはい」
最初から海賊の可能性を考えていたアイナは、お金になりそうな物が盗まれているか確認して来た。しかしどこを見ても、換金が出来そうな物品が残されている。
もしかしたら、そう言った類の物ではなく、他に何か価値がある物を盗んだのかとアイナは考えを変える。何らかのデジタルデータや、特殊な魔道具などの可能性を考慮に入れる。
有り得ない話ではない、産業スパイの様に最初から獲物を決めている場合もある。それならば余計な物品に手をつけていない事にも一応の説明がつく。
「ひっ!?」
「何よ? どうかした?」
「い、今そこに真っ白な何かが!」
シャーロットの指さす先では、白い布の端らしき物体が柱の角を曲がって行った。霊的な何かと言うよりは、人間が身に着ける衣類のようにアイナには感じられた。
コートや白衣などの裾ではないのかと。しかしこれだけ探し回ったのに、誰にも遭遇して来なかったのだ。にも関わらず今更感じた人の気配に、2人は警戒感を強める。
シャーロットは霊的な物を恐れて、アイナはまだ海賊達が残っている可能性を考えて。頭の中身は全く別々ではあったが、2人は白い布が消えた柱の角へと向かう。
アイナが手で合図をし、両側から柱を挟み込む様にして前へ出る。
「動かないで! って、ありゃ?」
「や、やっぱり幽霊ですわ!?」
「……ちょっと待って」
アイナは柱に違和感を覚えた。薄っすらとだが、柱の真ん中に継ぎ目の様なものがある事に気付いた。
見つけた継ぎ目の周りを適当に弄ると、一部がスライドして小さな入力端末が現れる。どこからどう見ても、何らかのロックを解除する為の物だ。
霊的な要因ではなく、明らかに科学が絡みそうな物体の登場でシャーロットも落ち着きを取り戻す。
人が幽霊の様に消えたのではなく、隠し通路の様な物に入った可能性が高い。2人はそれらしいものが無いか周辺の壁を調べる。
「こっちは無さそうよ!」
「こちらは……お待ちになって、ここですわ!」
「なるほど、冷気を使ったのね」
2人とも戦闘力は高い代わりに、探索系の魔術はあまり得意ではない。だが今回に関してはシャーロットのアイデア勝ちだ。
周囲に少しずつ冷気を流して、僅かな隙間から壁の向こうまで流れる位置を特定した。一見何の変哲もない壁であるが、この向こう側に何らかの空間があるのは間違いない。
それが分かったのは良いとしても、パスワードの類はまだ何も分かっていない。恐らくは柱の端末に特定のコードを入力すれば開くとは思われるが。
「どうしますの?」
「こう言う時こそ錬金術よね」
「何をするつもりです?」
「まあ見ててよ」
アイナが隠し扉と思わしき位置に掌を当てる。すると壁の金属部分が収縮して小さくなって行く。最終的には少し大きめのナイフがアイナの手に握られていた。
残った壁紙や木材などの部分は、アイナの足技で粉砕されて隠し通路の中にバラバラと飛び散った。アイナの前では純粋な金属製の扉など何の障害にもならない。
それこそ最新鋭空母の装甲板すら穴を簡単に開けられてしまうのだ。ただの豪華客船の壁など一瞬で片がつく。
「……貴女、強引にも程がありませんか?」
「そう? 実にスマートだと思うけど」
「はぁ、もう何でも構いませんわ」
謎解き要素のあるサバイバルホラーならば、実に興醒めな方法で仕掛けを突破したアイナとシャーロット。2人は警戒しながら隠された通路を進んで行く。
恐らく先程2人が見掛けた人影らしき存在は、この通路の先にいると思われる。扉を突破するついでに作成したサバイバルナイフを手に、アイナが先頭に立って前進していく。
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