死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第2章

第68話 船内の調査①

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 清志せいじ達学生メンバーを加えた調査が始まった。何が起きているのか不明な為、先ずはバラバラにならずに集団で行動を開始。
 ワタツミ所属の船員達に案内されながら、先ずは操舵室へと向かう。その道中ではやはり人の気配が一切無い。
 清志達の歩く足音だけが響いている。アイナの言う様に、本当にホラー映画のワンシーンを思わせる。

「一体何があったんだ?」

「私が最近観た映画だと、触手みたいなモンスターが原因だったわね」

「ひっ!? そんな話は止めて下さいな!」

 怖がるシャーロットの姿を楽しみながら、アイナが清志の問いに答える。海洋生物がテーマのホラー映画ならば、わりと定番のモンスターだ。
 何かの触手を思わせるモンスターに襲われた船が、孤立無援の状態になったりする。巨大なサメに次ぐ知名度を誇る内容だ。
 他にはダイレクトに幽霊船と言うパターンもある。それらのホラー映画と、船内の状況は確かに似ている。ただ大量の血痕がある訳でもないし、ホラー映画と言うにはやや無機質過ぎる。

「ここが操舵室だよ」

「ありがとうございます」

「本当に誰も居ないわね?」

 手分けして何らかの手掛かりを探すが、特にこれと言った発見はない。ただ無人なだけの空間が広がっている。
 亮二りょうじ茉莉まりの情報科組の調査でも、やはりこれと言った収穫はない。ここに人が居ないのであれば、どうやって救難信号を発信したのか。
 その疑問はやはり晴れないままだ。まさか本当に幽霊船だとでも言うのかと、調査に来たメンバーは頭を悩ませる。
 原因不明の事故事件が起きるドラゴントライアングルの、まさにその洗礼だと言うのだろうか。

「これじゃ埒が明かねぇな、分かれて探そうぜ」

「それもそうね。行くわよ亮二」

「じゃあ私達も行くわよシャーロット!」

わたくしは帰りたいんですけど!?」

 幼馴染で勝手知ったる者同士、亮二と茉莉のコンビ。アイナとシャーロットの留学生コンビが行ってしまった以上は、残るのは清志と愛花あいかである。
 仕方がないので船員達には機関室など、専門家でないと分からない重要区画の捜索を依頼して2人も行動を開始する。
 愛花も初等部からずっと嵯峨学園に通う生徒なので、清志も彼女を良く知っている。得意分野を把握し合っている為に、それほどやり難い組み合わせではない。
 元より愛花は、清志のパートナーを狙っていた側だ。これまでにも一緒に行動した経験は何度もあった。

「久し振りだよね、神坂こうさか君と2人で行動するの」

「確かにそうだ。中等部以来かな?」

「そうそう。あの時は山だったけど」

 愛花と清志がコンビとして行動したのは中等部時代が最後となる。夏の強化合宿で山中での訓練をした時だ。
 愛花の父親は警察官であり、母親が弁護士と言う家庭に生まれた。それもあって教育はかなり厳しかった。
 魔術師として分かり易い成功を修めるには、強いパートナーが必須となる。それ故に清志は第一候補だった。
 愛花は実利を求めていただけであり、異性として好いていた訳では無い。確かに好感度は高い方だが、それはあくまで友人としてのもの。それ以上の関係を求めるつもりは最初から無い。

「ね、やっぱりアイナと一緒だとやり易いの?」

「まあ……そうだな。加減しなくて良いからな」

「そっか~やっぱり相性の良いパートナーが良いよね」

姫島ひめじまだって、シャーロットが居るじゃないか」

 愛花としては、今のパートナーに不満は無い。ただ進む道が違うので、ずっと一緒にはコンビを組めないのだ。
 シャーロットはあくまでウィルソン家の次期当主として、花婿を探しているのだ。愛花では婿にはなれないし、そもそも日本で就職するつもりだ。
 イギリスに移り住むつもりもない。それ故に仮初のコンビでしかないのだ。お互いに本当のパートナーを見つけねばならない。
 魔術師としての相性は非常に良いのだが、それだけでは駄目なのがパートナー選びの難しい所だ。

「ほら、シャーロットは旦那探しをしてるじゃない?」

「結婚相手がパートナーじゃない人も居るだろ?」

「そうだけど、でもイギリスまでは行けないよ」

 こればかりは仕方のない事であり、どうにも出来ない方向性の違いだ。そうなると結局は、丁度良い相手を探すしかないと言う話に戻る。
 清志のパートナーを狙っていた者達は他にも居るので、その中から相性が良い相手を選ぶのか。それとも別の方法で見つけるのか。
 アイナの登場により、愛花の様な問題を抱える事になった者がそれなりに居るのだ。もちろん全員が清志のパートナーになれると本気で思っていたのでは無い。
 愛花の様に、あっさり受け入れた者だって少なくはない。逆に異性としてパートナーになりたかった生徒達は、非常に複雑な感情を抱えている。

「良いよねぇ、清志君はどうあっても引っ張りだこだし」

「そんな良いものでも無かったよ?」

「それ、学校で言ったら駄目だよ? 下手したら刺されるかも」

 Sランクであると言う以前に、男性として清志に魅力を感じていた者達は少なくないのだ。清志本人にはその自覚がないが、結構な人数の少女達が影で涙していた。
 流石に愛花もそこまで詳しく乙女の事情を話す訳にもいかず、清志は何故そんな話になったのか、まるで理解出来ないままだった。
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