死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第2章

第66話 救難信号と難破船

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 臨海学校では得意分野によってグループ分けが行われる。クラス毎ではなく、学年全体でグループ分けが決まる。
 グループによって行動内容が分かれており、体験する学習は多岐に渡る。人工島ワタツミに残って分析をするグループもあれば、船で海に出るグループもある。
 清志せいじとアイナは後者になる。主に実技が得意な生徒達が集まるグループに配属され、海に潜って様々な調査を行う予定となっている。

 このグループには総勢20名以上の生徒達が振り分けられており、清志と顔馴染みのAクラス所属の生徒達が何人か居た。
 諜報活動を得意とする陰陽師の一族である安倍亮二あべりょうじと、忍びの末裔である真田茉莉さなだまりの幼馴染コンビ。
 イギリスの名門に生まれた氷の魔女、シャーロット・ウィルソン。そして一時的にシャーロットとコンビを組んでいる水系統魔術を得意とする姫島愛花ひめじまあいかだ。

「亮二達が一緒で良かったよ」

「シャーロット達もよろしくね」

「今回こそは負けませんわよ!」

 いつも通りの組み合わせになった事を亮二と茉莉は特に気に留めていない。しかしシャーロットの方は、やはり模擬戦以降アイナに対するライバル視が強く対決の姿勢だ。
 そんな彼女を見て、相棒である愛花は苦笑いを浮かべている。姫島愛花は分かり易い体育会系女子と言った風貌の少女だ。
 ショートカットに整った顔立ちで、元気溌剌と言った雰囲気を纏っている。実際水泳部に所属しているスイマーでもある。
 持ち前のスタイルの良さもあり、男子からの人気も高い。シャーロットと同じく清志のパートナーを狙っていた生徒の1人だが、シャーロットほどアイナをライバル視はしていない。
 わりとあっさり清志のパートナーとして認めた側の女子生徒だ。それもありアイナとの関係は良好だったりする。

「ごめんねアイナ、シャーロットがこの調子で」

「良いのよ愛花、私は気にしていないから」

「そもそもどうやって勝負する気なんだアイツは」

 呆れる清志はチラリとシャーロットを伺う。自信満々に甲板の上で水着姿を晒している彼女は、雪をイメージさせる様な真っ白なビキニを来ていた。
 氷の魔女に相応しいチョイスだ。他人に見られても気にしないと言う、自信家の彼女らしさが全面に出ている。
 そう言う意味ではアイナも同様らしい。花柄の真っ赤なビキニだが、下がタイトなハーフパンツになっている。
 動きやすさと可愛さを併せ持つアイナらしい選択だった。逆に茉莉と愛花は大きめのパーカーを着ているので、水着の形状は不明だ。
 愛花だけは水色をしたパレオの布地が下から見えているのである程度想像は可能だが。

「いやー2人ともスタイル良いねぇ」

「バカ亮二! ジロジロ見るんじゃないの!」

「ジロジロは見てねぇだろ! 失礼な!」

 セクハラオヤジの様な発言をした亮二に茉莉の叱責が入る。確かにやや不躾な発言ではあったが、アイナとシャーロットが美しいのは事実である。
 他にも水着姿の女子生徒は複数人居るが、その中でも2人は飛び抜けてスタイルが良い。2人とも女性にしては身長が高いので、それ故に尚更綺麗に見えている。
 清志は敢えて何も言ってはいないが、正直目の遣り場には困っていた。そんな清志もパーカーにハーフパンツの水着を着ていた。
 男子生徒は大体がこのスタイルである。中にはTシャツを着ている者も男女共に居るが少数派だった。

「アイナ、温度は大丈夫か?」

「うん大丈夫! 何かごめんねずっと続けてくれて」

「これぐらい大した事ないよ」

 制服姿の時より薄着な為、漂わせる冷気を調整せねばならない。涼しいと感じるか寒いと感じるかは人それぞれなので加減が難しい。
 もう少し技術が発展すれば、空調系の魔導具でも解決出来る日は来るのだろう。しかし今はまだ携帯出来るサイズの室外用の空調は無い。
 魔術による発展が大きな影響を与えた現代であっても、課題はまだまだ沢山あった。例えば今清志達が乗船している調査船は、複数の魔導具を搭載している。
 その分必要な魔力も多く、こうして魔力を多く持つ魔術師が大勢必要になるのだ。船に搭載出来る魔力タンクには限界があり、そう言った方面の発展が急がれていた。

「しっかし、この船幾らするんだ?」

「なんだ、亮二でも知らないのか」

「非公開の技術も使われているからな。正確には分からねぇ」

 人工島ワタツミには、数十兆円が使われていると言われている。一説では桁が足りないとの噂も一部では囁かれている。
 国が主導した計画ではあるが、所有する船などにはスポンサーや投資家からの出資も多額に注ぎ込まれている。
 正確な金額を知るのはごく一部の人間のみ。特に海洋調査に直結する機器の類は、世界初となる技術なども大量に使用されている。
 非公開の技術など数えたらきりが無い程に。それ故に高性能であり、全てにおいて通常の物を上回っている。だからこそ、小さな信号なども逃す事はない。

『救難信号を受信した為、予定を変更して現地に向かいます』

「救難信号だって?」

「海に出ていればたまにあるわよ」

 突然のアナウンスに驚く清志達だったが、何度も経験しているアイナは慣れたもの。本来向かう筈だった航路から外れ、清志達を乗せた調査船は救難信号が発信された海域へと向かった。
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