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第1章
第60話 決着の時
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アイナの生み出した全高15mほどもある巨大なロボットが、暴走した祟り神モドキの方を向く。
今必要なのは、どうにかして和真へ攻撃を届かせる事。相手が巨大化したのだから、こちらも巨大兵器と言うのは定番と言えば定番の対抗策だ。
「それで、どうするつもりなんだ?」
『今から全力で魔力を照射して周りの塊を剥がすわ!』
「その隙を狙えって事だな?」
『ええ、その通りよ』
祟り神モドキの持つ超回復能力によって、清志と黄泉津大神の攻撃はすぐに回復されてしまう。
しかしアイナの呪われた魔力なら、一時的に神気と怨霊達の塊を剥がす事が出来ていた。その事を鑑みれば、アイナがチャンスを作り清志がトドメを刺すのは理に適っていた。
ただ問題が一つあるとすれば、アイナの魔力弾をもってしても数秒しか効果が無い点だ。チャンスはその一瞬しかない。
いくら清志とて、アイナの魔力を受ければ魔術を正常に行使出来なくなる。魔力砲撃に便乗する事は出来ない。
攻撃が終わったその一瞬に、決着を着けなければならない。その責任は重大だった。黄泉津大神も居るとは言え、失敗すればアイナは魔力切れで戦闘不能。もう一度同じ手を使う事は出来ない。
「失敗は出来ないな」
『信じているからね!』
「ああ!」
アイナが作り出したロボットの胸部装甲が開く。そこから次々装甲が変形し、巨大な砲身が展開されて行く。
僅か数秒の間に、直径が4メートルはありそうなガッシリとした砲身が完成していた。流石にこの攻撃範囲ならば、和真の周囲を吹き飛ばすぐらいは出来るだろう。
それを確信させる程に、破壊の意思を感じる兵装だった。もしこれが実弾であれば、巨大なクレーターを作れそうだ。
巨大な怪獣とでも戦う気かと問いたくなる様な兵器だが、実際にこんな巨大な祟り神モドキが居るのだから仕方ない。
ただこんな物が現れる前から、こんな兵器を用意していたアイナは何と戦うつもりだったのか。そんな思考が一瞬清志の脳裏を掠めたが、今考える事ではない。
『良い? 行くわよ!』
「やってくれ!」
『いけぇーーー!!』
巨大ロボットから、アイナの持つ紫色の魔力光が迸る。4メートルと言う太さの魔力がビームの様に照射されていく。
アイナの魔力に付随する強力な阻害効果によって、剥がされた塊達がボトボトと地面に落ちて行く。
アイナが所有する全ての魔力を吐き出さんとする砲撃により、祟り神モドキは明らかに弱体化していた。
暴走した神気にすら影響を及ぼす、アイナの呪いはそれだけ強力だと言う事だ。全力でその呪いを浴びせかけられた部分からは、ごっそり神気と霊の塊が剥がされていた。
『行って!』
「ああ!」
「邪魔はさせないわ」
すぐに和真の元へと戻ろうとする、塊の山を黄泉津大神が妨害する。身体強化魔術を用いて、10メートル近く跳び上がった清志が死神の大鎌を振るう。
振り抜いた刃は、確実に和真の体を切り裂いた。その瞬間に暴走していた神気は拠り所を失い霧散していく。
後に残されたのは、吸収されていた大量の怨霊や悪霊、地縛霊達。これまで無理矢理塊となっていた為に、霊達の目的や感情が混ざり合い混乱していた。
自分の恨みなのか、他人の怒りなのか。それが分からずただその場を浮遊するのみ。
「亡者達の魂よ、あるべき所へ還りなさい」
黄泉津大神がその手を打ち鳴らすと、周囲に居た大量の霊達が消えて行く。悪事を働いた者の魂は地獄へ、穢なき魂は天国へ。
黄泉の国にて判別され、後に振り分けられるだろう。今回は大量のテロリストの魂が含まれているので、暫く地獄は忙しい事になる。
関与がハッキリとして居なかった事件についても、追々答えが出て来るだろう。
「これで、終わったのよね」
「ああ、そうだな」
「そいつ、殺さなかったのね」
今回清志は、和真を殺さない道を選んだ。魔術回路を切り裂いただけに留めている。死神の鎌は何も肉体を切り裂くだけの鉄の刃ではない。
魂だけを斬ったり、魔力の塊だけを斬ったりも出来る。その能力を使って、和真の体内にある魔術回路を完全に断ち切っていた。
これで和真は二度と魔術を使う事が出来なくなるが、その程度で済まされたのだから随分と優しい措置だ。
「アイナが言っただろ? 区切り、つけさせてあげたいって」
「清志……」
「俺もさ、今回は思う所があったからな」
清志は翔子を寝かせてある方向を見つめる。良いように利用されてしまった同級生。そんな彼女は、自分がなんの為に必要とされたのか。
何を知らされ何を知らされ無かったのか。それを知らないまま、共犯者としてただ裁かれるのが清志には不憫に思えた。
ここで和真を殺してしまえば、翔子は二度とその理由を知る事が出来ない。そうなった時に彼女は、再び歩き出せるのだろうか。
そんな思いが、清志に殺さないと言う道を選ばせた。アイナと言うパートナーが出来た事で、清志の中に生まれた明確な変化の現れだった。
「……文句、言わないんだな」
「あの不愉快な男を殺さなかった事? もちろん不満よ」
「じゃあなんで」
「貴方は私の神子よ。神子が決めた事なら仕方ないわ」
沈み始めた太陽の光を浴びながら、苦笑を浮かべる黄泉津大神。その表情には呆れと共に優しさも含まれていた。息子の成長を見守る、1人の母親の様な優しさが。
今必要なのは、どうにかして和真へ攻撃を届かせる事。相手が巨大化したのだから、こちらも巨大兵器と言うのは定番と言えば定番の対抗策だ。
「それで、どうするつもりなんだ?」
『今から全力で魔力を照射して周りの塊を剥がすわ!』
「その隙を狙えって事だな?」
『ええ、その通りよ』
祟り神モドキの持つ超回復能力によって、清志と黄泉津大神の攻撃はすぐに回復されてしまう。
しかしアイナの呪われた魔力なら、一時的に神気と怨霊達の塊を剥がす事が出来ていた。その事を鑑みれば、アイナがチャンスを作り清志がトドメを刺すのは理に適っていた。
ただ問題が一つあるとすれば、アイナの魔力弾をもってしても数秒しか効果が無い点だ。チャンスはその一瞬しかない。
いくら清志とて、アイナの魔力を受ければ魔術を正常に行使出来なくなる。魔力砲撃に便乗する事は出来ない。
攻撃が終わったその一瞬に、決着を着けなければならない。その責任は重大だった。黄泉津大神も居るとは言え、失敗すればアイナは魔力切れで戦闘不能。もう一度同じ手を使う事は出来ない。
「失敗は出来ないな」
『信じているからね!』
「ああ!」
アイナが作り出したロボットの胸部装甲が開く。そこから次々装甲が変形し、巨大な砲身が展開されて行く。
僅か数秒の間に、直径が4メートルはありそうなガッシリとした砲身が完成していた。流石にこの攻撃範囲ならば、和真の周囲を吹き飛ばすぐらいは出来るだろう。
それを確信させる程に、破壊の意思を感じる兵装だった。もしこれが実弾であれば、巨大なクレーターを作れそうだ。
巨大な怪獣とでも戦う気かと問いたくなる様な兵器だが、実際にこんな巨大な祟り神モドキが居るのだから仕方ない。
ただこんな物が現れる前から、こんな兵器を用意していたアイナは何と戦うつもりだったのか。そんな思考が一瞬清志の脳裏を掠めたが、今考える事ではない。
『良い? 行くわよ!』
「やってくれ!」
『いけぇーーー!!』
巨大ロボットから、アイナの持つ紫色の魔力光が迸る。4メートルと言う太さの魔力がビームの様に照射されていく。
アイナの魔力に付随する強力な阻害効果によって、剥がされた塊達がボトボトと地面に落ちて行く。
アイナが所有する全ての魔力を吐き出さんとする砲撃により、祟り神モドキは明らかに弱体化していた。
暴走した神気にすら影響を及ぼす、アイナの呪いはそれだけ強力だと言う事だ。全力でその呪いを浴びせかけられた部分からは、ごっそり神気と霊の塊が剥がされていた。
『行って!』
「ああ!」
「邪魔はさせないわ」
すぐに和真の元へと戻ろうとする、塊の山を黄泉津大神が妨害する。身体強化魔術を用いて、10メートル近く跳び上がった清志が死神の大鎌を振るう。
振り抜いた刃は、確実に和真の体を切り裂いた。その瞬間に暴走していた神気は拠り所を失い霧散していく。
後に残されたのは、吸収されていた大量の怨霊や悪霊、地縛霊達。これまで無理矢理塊となっていた為に、霊達の目的や感情が混ざり合い混乱していた。
自分の恨みなのか、他人の怒りなのか。それが分からずただその場を浮遊するのみ。
「亡者達の魂よ、あるべき所へ還りなさい」
黄泉津大神がその手を打ち鳴らすと、周囲に居た大量の霊達が消えて行く。悪事を働いた者の魂は地獄へ、穢なき魂は天国へ。
黄泉の国にて判別され、後に振り分けられるだろう。今回は大量のテロリストの魂が含まれているので、暫く地獄は忙しい事になる。
関与がハッキリとして居なかった事件についても、追々答えが出て来るだろう。
「これで、終わったのよね」
「ああ、そうだな」
「そいつ、殺さなかったのね」
今回清志は、和真を殺さない道を選んだ。魔術回路を切り裂いただけに留めている。死神の鎌は何も肉体を切り裂くだけの鉄の刃ではない。
魂だけを斬ったり、魔力の塊だけを斬ったりも出来る。その能力を使って、和真の体内にある魔術回路を完全に断ち切っていた。
これで和真は二度と魔術を使う事が出来なくなるが、その程度で済まされたのだから随分と優しい措置だ。
「アイナが言っただろ? 区切り、つけさせてあげたいって」
「清志……」
「俺もさ、今回は思う所があったからな」
清志は翔子を寝かせてある方向を見つめる。良いように利用されてしまった同級生。そんな彼女は、自分がなんの為に必要とされたのか。
何を知らされ何を知らされ無かったのか。それを知らないまま、共犯者としてただ裁かれるのが清志には不憫に思えた。
ここで和真を殺してしまえば、翔子は二度とその理由を知る事が出来ない。そうなった時に彼女は、再び歩き出せるのだろうか。
そんな思いが、清志に殺さないと言う道を選ばせた。アイナと言うパートナーが出来た事で、清志の中に生まれた明確な変化の現れだった。
「……文句、言わないんだな」
「あの不愉快な男を殺さなかった事? もちろん不満よ」
「じゃあなんで」
「貴方は私の神子よ。神子が決めた事なら仕方ないわ」
沈み始めた太陽の光を浴びながら、苦笑を浮かべる黄泉津大神。その表情には呆れと共に優しさも含まれていた。息子の成長を見守る、1人の母親の様な優しさが。
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