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第1章
第59話 ロマンは大切に
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祟り神モドキと化した神気の塊は、地上に出ると変化を始めた。アメーバ状の軟体生物だった形状から、徐々に人型になりつつある。
祟り神モドキの持つドス黒い感情に反応したのか、地域一体を漂っていた微弱な地縛霊なども集まり始めた。
元が神気なだけに、存在としては微弱な悪霊や地縛霊は容赦なく吸収されていく。最初は5メートルほどだったアメーバが、今は15メートルほどの巨大な人型に変化していた。
当然その間も清志とアイナは攻撃を続けていたが、その成長を止めるまでには至っていない。
「どうなっているんだコイツは!?」
「一応魔力弾が効いているけど、これじゃキリが無いわよ」
「あの男を切り離す以外に方法は無いわ」
今回ばかりはSランクコンビとて苦戦を強いられていた。どれだけ攻撃しても瞬く間に回復してしまい、コアとも言うべき和真に攻撃が届かない。
元々持っていた超回復の能力が、暴走状態に入った事でとんでもなく厄介な存在と化していた。こうなる前であったなら、翔子をどうにかすれば済んだ。
しかし今は、超回復の効果を持った怨霊や悪霊が周囲を固めているので止められない。その上、いつ爆発するか分からない爆弾でもある。
何とか街中への侵攻は阻めているものの、このままではいずれ来る爆発の時を待つばかりだ。
「クソッ! どうすれば良いんだ!」
「アンタ神様なんでしょ! 何とかしなさいよ!」
「無茶言わないでくれる? あの塊を何とかしないと何も出来ないわ」
腐っても神の力、人造とは言え神が齎した超回復の力は死神であっても対処は難しい。せめて神気さえ消えてしまえば、後は彷徨える魂達を纏めてあの世へ送るだけ。
どうにかして集合体と和真を切り離す事さえ出来れば。結局はそこが一番のネックだった。事態が好転する事も無いまま、時間だけが過ぎて行く。
地上に上がりながら清志が魔導協会へ方向した為、周辺の避難誘導は始まっている。しかしその全てが終わるまでに、祟り神モドキが爆散しない保障はどこにも無かった。
「あの塊さえどうにかすれば良いのね!」
「何か策があるのか!?」
「……1回限りの博打で良ければね」
アイナの最終手段がまだ残されてはいた。非常にピーキーな性能をした彼女が、いざと言う時の為に考えた最終手段。
錬金術しか使えず、負傷がイコールピンチとなる彼女なりの答え。そのうちの1つならば、この状態をどうにか出来る可能性があった。
ただし問題は、一度限りの賭けである事。その方法で上手く行かなければ、万事休すと言うしかない。
「それをやれば、私は暫く魔力切れで戦えないわ」
「この状況で小娘の賭けに乗れと?」
「……いや、信じてみよう。どうせ他に策は無いんだ」
「じゃあ5分だけ時間を頂戴!」
アイナは祟り神モドキの足止め役を、清志と黄泉津大神に任せる。そして西山製薬の地下研究所に繋がる大穴へと向かう。
その大穴を通して、アイナは金属を集め始める。サーバールームの床に手を付き、意識を集中させる。
建物の建材に使われている金属達を、アイナの錬金術で操作する。その中でも、地下研究所は特に良い金属が使われている。
死神の鎌にこそ耐えられなくとも、アイナによって強化されれば性能は大きく変わる。そしてこれからやる事には、出来るだけ良質な金属が必要だった。
幸いにも西山製薬は設備をケチる様な真似をしておらず、必要な金属は十分な量を確保する事が出来た。
アイナの錬金術は、無から金属を生み出す場合と周辺の金属を利用する場合がある。後者の方が消費魔力は少ないので、今回の様に大量の魔力を使用する時はこの方法を用いる。
「兵器生成!」
集まった金属を利用してアイナは生成する。彼女の最終兵器、巨大人型ロボットを。足から順に上へと登る様に機体が生成されて行く。
流石に構造が複雑であるが故に、いつもの様に一瞬で完成はさせられない。予め作っておいて、転送する事も出来なくはない。
しかし工房内がかなり手狭になってしまい、却って手数が減る為に現地生成をアイナは選んだ。
まだパートナーが居なかった頃は、この隙が致命的だった。しかし今は違う、その背を安心して任せられる相棒が居る。
「くっ……流石に消費がキツイ」
「しょうがないのぉ。わしも手伝おう」
搭乗出来るタイプの、巨大な人型兵器。実戦で使えるレベルの完成度にするには、かなりの精度で生成する必要があった。
魔力の消費と時間が掛かる代わりに、その性能は申し分ない。何度も試作を繰り返して、やっと完成させたそのアイナの最終兵器。
自分の身を守りつつ、最大火力を発揮するアイナ自慢の一作。アイナにより強化された金属で作られたボディは非常に頑丈であり、関節部等のデリケートな部分も強固に出来ている。
アイナの魔力が通っているので、魔術に対する防御力も高い。そして何よりアイナはこれが気に入っている。この方がロマンがあるからだ。
「悪党が最後に巨大化したら、当然こっちも巨大ロボットよね!」
「アイナ!? 何だそれ!?」
「さあ、トドメを入れるわよ!」
アイナの最終兵器、白銀に輝く人型ロボットが行動を開始した。
祟り神モドキの持つドス黒い感情に反応したのか、地域一体を漂っていた微弱な地縛霊なども集まり始めた。
元が神気なだけに、存在としては微弱な悪霊や地縛霊は容赦なく吸収されていく。最初は5メートルほどだったアメーバが、今は15メートルほどの巨大な人型に変化していた。
当然その間も清志とアイナは攻撃を続けていたが、その成長を止めるまでには至っていない。
「どうなっているんだコイツは!?」
「一応魔力弾が効いているけど、これじゃキリが無いわよ」
「あの男を切り離す以外に方法は無いわ」
今回ばかりはSランクコンビとて苦戦を強いられていた。どれだけ攻撃しても瞬く間に回復してしまい、コアとも言うべき和真に攻撃が届かない。
元々持っていた超回復の能力が、暴走状態に入った事でとんでもなく厄介な存在と化していた。こうなる前であったなら、翔子をどうにかすれば済んだ。
しかし今は、超回復の効果を持った怨霊や悪霊が周囲を固めているので止められない。その上、いつ爆発するか分からない爆弾でもある。
何とか街中への侵攻は阻めているものの、このままではいずれ来る爆発の時を待つばかりだ。
「クソッ! どうすれば良いんだ!」
「アンタ神様なんでしょ! 何とかしなさいよ!」
「無茶言わないでくれる? あの塊を何とかしないと何も出来ないわ」
腐っても神の力、人造とは言え神が齎した超回復の力は死神であっても対処は難しい。せめて神気さえ消えてしまえば、後は彷徨える魂達を纏めてあの世へ送るだけ。
どうにかして集合体と和真を切り離す事さえ出来れば。結局はそこが一番のネックだった。事態が好転する事も無いまま、時間だけが過ぎて行く。
地上に上がりながら清志が魔導協会へ方向した為、周辺の避難誘導は始まっている。しかしその全てが終わるまでに、祟り神モドキが爆散しない保障はどこにも無かった。
「あの塊さえどうにかすれば良いのね!」
「何か策があるのか!?」
「……1回限りの博打で良ければね」
アイナの最終手段がまだ残されてはいた。非常にピーキーな性能をした彼女が、いざと言う時の為に考えた最終手段。
錬金術しか使えず、負傷がイコールピンチとなる彼女なりの答え。そのうちの1つならば、この状態をどうにか出来る可能性があった。
ただし問題は、一度限りの賭けである事。その方法で上手く行かなければ、万事休すと言うしかない。
「それをやれば、私は暫く魔力切れで戦えないわ」
「この状況で小娘の賭けに乗れと?」
「……いや、信じてみよう。どうせ他に策は無いんだ」
「じゃあ5分だけ時間を頂戴!」
アイナは祟り神モドキの足止め役を、清志と黄泉津大神に任せる。そして西山製薬の地下研究所に繋がる大穴へと向かう。
その大穴を通して、アイナは金属を集め始める。サーバールームの床に手を付き、意識を集中させる。
建物の建材に使われている金属達を、アイナの錬金術で操作する。その中でも、地下研究所は特に良い金属が使われている。
死神の鎌にこそ耐えられなくとも、アイナによって強化されれば性能は大きく変わる。そしてこれからやる事には、出来るだけ良質な金属が必要だった。
幸いにも西山製薬は設備をケチる様な真似をしておらず、必要な金属は十分な量を確保する事が出来た。
アイナの錬金術は、無から金属を生み出す場合と周辺の金属を利用する場合がある。後者の方が消費魔力は少ないので、今回の様に大量の魔力を使用する時はこの方法を用いる。
「兵器生成!」
集まった金属を利用してアイナは生成する。彼女の最終兵器、巨大人型ロボットを。足から順に上へと登る様に機体が生成されて行く。
流石に構造が複雑であるが故に、いつもの様に一瞬で完成はさせられない。予め作っておいて、転送する事も出来なくはない。
しかし工房内がかなり手狭になってしまい、却って手数が減る為に現地生成をアイナは選んだ。
まだパートナーが居なかった頃は、この隙が致命的だった。しかし今は違う、その背を安心して任せられる相棒が居る。
「くっ……流石に消費がキツイ」
「しょうがないのぉ。わしも手伝おう」
搭乗出来るタイプの、巨大な人型兵器。実戦で使えるレベルの完成度にするには、かなりの精度で生成する必要があった。
魔力の消費と時間が掛かる代わりに、その性能は申し分ない。何度も試作を繰り返して、やっと完成させたそのアイナの最終兵器。
自分の身を守りつつ、最大火力を発揮するアイナ自慢の一作。アイナにより強化された金属で作られたボディは非常に頑丈であり、関節部等のデリケートな部分も強固に出来ている。
アイナの魔力が通っているので、魔術に対する防御力も高い。そして何よりアイナはこれが気に入っている。この方がロマンがあるからだ。
「悪党が最後に巨大化したら、当然こっちも巨大ロボットよね!」
「アイナ!? 何だそれ!?」
「さあ、トドメを入れるわよ!」
アイナの最終兵器、白銀に輝く人型ロボットが行動を開始した。
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