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第1章
第56話 Sランクコンビ、動く
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清志は翔子を止める為に、必死の抵抗を続けていた。彼女が騙されているのは明白で、利用された結果だ。ここで簡単に斬り捨てて良い相手ではない。
確かに魔導犯罪に加担してしまったが、同時に被害者でもあるのだから。まだ未成年である以上は、情状酌量の余地はある。
そんな同級生を救う為に、清志は翔子の攻撃を弾き続けていた。和真と同じく生命に作用するらしい光線を放つ翔子は、戦闘経験が少ないので戦闘力は低い。
ただその力は危険極まりなく、素人故の動きが却って清志を困らせていた。ビギナーズラックで深刻なダメージを負っては堪らない。
「やめろ! これ以上罪を重ねるな!」
「どこが罪だと言うの? 世界を良くする為の力なんだから!」
「勝手に神を造ってはいけないんだ! 授業で習っただろう!」
「そんなの、新しい神を造る天才を疎んでいるだけでしょう!」
すっかり和真の思想に染まりきった翔子は、清志の説得に耳を貸さない。自分が今どれだけ危険な事をしているのかも、全く自覚していない。
もしここが学園内であったなら、Bランク以下の魔術師が犠牲になっていただろう。無自覚に神の力を乱暴に振り回す翔子は、拳銃をおもちゃにする子供の様なものだった。
他に誰も居ない場所でなければ、大変な事になっていたのは間違いない。その事に冷や汗を流しながら清志は説得を続ける。
「じゃあ何で正式な手順を踏まない! 悪い事じゃないなら何故コソコソする!」
「こうやって邪魔しに来るからでしょ!」
「法に背いて無ければ俺達は動かない! 危険だから止めに来たんだ!」
清志は飛んで来る光線を大鎌で弾きながら会話を続ける。全力を出せば強引に止められるが、それは生存者の救助が終わってからでないと危険だ。
黄泉の国の住人達は、生者を恨み憎んでいる者が多い。下手に解き放つと何かがあった時に甚大な被害が出てしまう。
アイナぐらいの強者ならば問題なくとも、同行中の魔術師達や一般人達にとってはあまりにも危険過ぎる。
清志の全力戦闘には、黄泉の国の戦力が含まれる。亡者達の軍勢を召喚するので、コントロールの邪魔になる存在が近くに居ては困るのだ。
「最初から恵まれている人達には、私達の気持ちなんて分からないわ!」
「だから力を得たら好きにするって言うのか?」
「それぐらいの自由は認められて良いでしょう!?」
結局の所は、劣等感が翔子の根幹にはあった。特別な人間では無いと思い知らされた事。その事実に苛まれた日々。
そんな鬱屈とした日常から開放され、力を得た事で暴走している。もう何が正しいのか正しくないのかは関係ないのだ。
自分達の好きにしたい、特別な存在になりたい。正しいのは自分達の方で、間違っているのは世間の方だ。
そんな風に思考が固まってしまい、省みると言う事が出来なくなっている。そんな所へ更に悪い報告がアイナから届く。
『聞いて清志、人造神の事が分かったわ』
「ホントか!? どんな神なんだ?」
『それが、私達が思っていたより悪い状況よ』
アイナから齎された情報により、このままではどうにも出来ない事が分かった。清志とアイナにとってはかなり相性が悪い相手だ。
電子戦なんて2人共出来ないので、近くにある端末からサーバーにハッキングを仕掛けたりは出来ない。
その手の魔術師は今回同行していないので、誰かに頼むのも難しい。そもそも神となった電子データなど、誰も相手にした事がない。
仮に魔導協会に応援を頼んだとて、死なない能力を持つ電子データをどうしろと言うのか。状況はかなり良くない方向へと向かっている。
「そんなのどうすれば良い?」
『少しだけ時間をくれない? あと、この敷地の詳細データってあったわよね?』
「先日貰ったデータに入ってたよ。で、俺はどうしたら良いんだ?」
『出来るだけ消耗させて欲しいわ』
ワイヤレスイヤホンを通してアイナと会話をしながら、清志は翔子の飛ばす死の光線に対処し続ける。
どうやらアイナには何かしらの策があるらしく、時間稼ぎと翔子の消耗を要求して来た。清志からすれば、時間稼ぎは可能だ。
しかしこの状況で消耗させるとなれば、本格的に攻撃をする必要がある。同級生の女子を相手に、本気で攻撃すると言うのは清志にとって中々に心苦しいものがある。しかしそうしなければ、解決する事は出来ない。
「なあ森下さん。諦めて降伏する気は無いか?」
「どうせ私を殺せないわ! 降伏なんてする必要がない!」
「…………なら、仕方ない」
防御一辺倒だった清志が、本格的に戦闘に入る。結局戦闘となれば、プロと素人と言う明確な差が清志と翔子の間にはある。
あっという間に翔子は複数回の斬撃をその身に受けた。戦闘経験が違い過ぎて、その殆どに反応すら出来ていない。だが翔子が言う様に、やはり死なない体をしており一瞬で回復する。
「ほ、ほら! やっぱり無駄じゃない!」
「この程度では消耗しない、か」
まだ全力ではない清志の攻撃では、大した消耗は見られない。産まれたばかりであっても神は神。アイナの要求をクリアするにはまだまだ遠く及ばない。
さてどうしたものかと思案している清志の元に救助完了の連絡が入る。これ幸いと救助に回ったメンバーに退避を指示する。
これで清志が全力を出せる環境が整った。ここは地下深くで周りに民間人は居ない。アイナの居る場所とは距離がある。2人しか居ないこの環境なら、全力を出す事をもう躊躇う必要はない。
「やるぞ、黄泉津大神」
「ええ、本物の神を見せてあげましょう」
確かに魔導犯罪に加担してしまったが、同時に被害者でもあるのだから。まだ未成年である以上は、情状酌量の余地はある。
そんな同級生を救う為に、清志は翔子の攻撃を弾き続けていた。和真と同じく生命に作用するらしい光線を放つ翔子は、戦闘経験が少ないので戦闘力は低い。
ただその力は危険極まりなく、素人故の動きが却って清志を困らせていた。ビギナーズラックで深刻なダメージを負っては堪らない。
「やめろ! これ以上罪を重ねるな!」
「どこが罪だと言うの? 世界を良くする為の力なんだから!」
「勝手に神を造ってはいけないんだ! 授業で習っただろう!」
「そんなの、新しい神を造る天才を疎んでいるだけでしょう!」
すっかり和真の思想に染まりきった翔子は、清志の説得に耳を貸さない。自分が今どれだけ危険な事をしているのかも、全く自覚していない。
もしここが学園内であったなら、Bランク以下の魔術師が犠牲になっていただろう。無自覚に神の力を乱暴に振り回す翔子は、拳銃をおもちゃにする子供の様なものだった。
他に誰も居ない場所でなければ、大変な事になっていたのは間違いない。その事に冷や汗を流しながら清志は説得を続ける。
「じゃあ何で正式な手順を踏まない! 悪い事じゃないなら何故コソコソする!」
「こうやって邪魔しに来るからでしょ!」
「法に背いて無ければ俺達は動かない! 危険だから止めに来たんだ!」
清志は飛んで来る光線を大鎌で弾きながら会話を続ける。全力を出せば強引に止められるが、それは生存者の救助が終わってからでないと危険だ。
黄泉の国の住人達は、生者を恨み憎んでいる者が多い。下手に解き放つと何かがあった時に甚大な被害が出てしまう。
アイナぐらいの強者ならば問題なくとも、同行中の魔術師達や一般人達にとってはあまりにも危険過ぎる。
清志の全力戦闘には、黄泉の国の戦力が含まれる。亡者達の軍勢を召喚するので、コントロールの邪魔になる存在が近くに居ては困るのだ。
「最初から恵まれている人達には、私達の気持ちなんて分からないわ!」
「だから力を得たら好きにするって言うのか?」
「それぐらいの自由は認められて良いでしょう!?」
結局の所は、劣等感が翔子の根幹にはあった。特別な人間では無いと思い知らされた事。その事実に苛まれた日々。
そんな鬱屈とした日常から開放され、力を得た事で暴走している。もう何が正しいのか正しくないのかは関係ないのだ。
自分達の好きにしたい、特別な存在になりたい。正しいのは自分達の方で、間違っているのは世間の方だ。
そんな風に思考が固まってしまい、省みると言う事が出来なくなっている。そんな所へ更に悪い報告がアイナから届く。
『聞いて清志、人造神の事が分かったわ』
「ホントか!? どんな神なんだ?」
『それが、私達が思っていたより悪い状況よ』
アイナから齎された情報により、このままではどうにも出来ない事が分かった。清志とアイナにとってはかなり相性が悪い相手だ。
電子戦なんて2人共出来ないので、近くにある端末からサーバーにハッキングを仕掛けたりは出来ない。
その手の魔術師は今回同行していないので、誰かに頼むのも難しい。そもそも神となった電子データなど、誰も相手にした事がない。
仮に魔導協会に応援を頼んだとて、死なない能力を持つ電子データをどうしろと言うのか。状況はかなり良くない方向へと向かっている。
「そんなのどうすれば良い?」
『少しだけ時間をくれない? あと、この敷地の詳細データってあったわよね?』
「先日貰ったデータに入ってたよ。で、俺はどうしたら良いんだ?」
『出来るだけ消耗させて欲しいわ』
ワイヤレスイヤホンを通してアイナと会話をしながら、清志は翔子の飛ばす死の光線に対処し続ける。
どうやらアイナには何かしらの策があるらしく、時間稼ぎと翔子の消耗を要求して来た。清志からすれば、時間稼ぎは可能だ。
しかしこの状況で消耗させるとなれば、本格的に攻撃をする必要がある。同級生の女子を相手に、本気で攻撃すると言うのは清志にとって中々に心苦しいものがある。しかしそうしなければ、解決する事は出来ない。
「なあ森下さん。諦めて降伏する気は無いか?」
「どうせ私を殺せないわ! 降伏なんてする必要がない!」
「…………なら、仕方ない」
防御一辺倒だった清志が、本格的に戦闘に入る。結局戦闘となれば、プロと素人と言う明確な差が清志と翔子の間にはある。
あっという間に翔子は複数回の斬撃をその身に受けた。戦闘経験が違い過ぎて、その殆どに反応すら出来ていない。だが翔子が言う様に、やはり死なない体をしており一瞬で回復する。
「ほ、ほら! やっぱり無駄じゃない!」
「この程度では消耗しない、か」
まだ全力ではない清志の攻撃では、大した消耗は見られない。産まれたばかりであっても神は神。アイナの要求をクリアするにはまだまだ遠く及ばない。
さてどうしたものかと思案している清志の元に救助完了の連絡が入る。これ幸いと救助に回ったメンバーに退避を指示する。
これで清志が全力を出せる環境が整った。ここは地下深くで周りに民間人は居ない。アイナの居る場所とは距離がある。2人しか居ないこの環境なら、全力を出す事をもう躊躇う必要はない。
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