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第1章
第53話 対峙
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全滅したテロリスト達の死体があちこちに転がる研究室で、清志とアイナが斉藤和真と対峙する。
2人にはハッキリと見えていた和真の魔力量が明らかにSランクに匹敵する量である事に。つまりそれは、目の前の男が神子になったかアイナの様に禁を犯した結果と言う事。
そして先日から疑われていたのは人造の神に関する研究だ。そこから考えれば、造ったと考えるのが妥当。2人の見解はそれで一致している。
「お前、造ったな?」
「ええ。これで私も貴方と同じですよ」
「清志と比べたらだいぶ経験不足みたいだけど?」
「それは仕方ありません。これからに期待して下さい」
先程ラシードの命を奪った魔術の正体が不明な状況で、下手に動くのは危険と判断した2人は警戒したまま会話を続ける。
何かしらのヒントか、もしくは魔術の正体を知る為に。2人は知っている、このタイプの男は自慢気に詳細を語りたがると。
自分の成果を知らしめ、自らの優秀さについてペラペラと喋る事を。目的を達成し、望む力を手に入れた時が一番のチャンスであると。
そして同時に、生存者を救助する為の時間稼ぎも兼ねていた。先程の力がどこまで届くか、最大範囲が分からない以上は気持ち良く語らせておく方が良いと言う判断だ。
「それにしても、随分とあっさり裏切ったわね?」
「テロリストを排除した、と言う成果が残るでしょう?」
「そんな茶番が今更通ると思うのか?」
「真実とは、お金と根回しとコネがあれば作れるんですよ?」
中東で最大級の勢力を持つテロリストを壊滅させた。その事実は確かにある。しかしそれは違法な方法で得た成果だ。本来ならば、そんな主張は通らない。
しかし今の和真の口振りでは、それを覆す用意があると言う事だ。和真の研究に関係する人間の中に、どこかの権力者が居るのかも知れない。
政治家や資本家、警察に魔導協会関係者。どこまでの範囲に手を伸ばしたのかは不明だが、この状況を覆せるだけの地位に居る人間が絡んでいるのだろう。
「私が生み出した神は、命を奪うだけでなく与える事も出来るのです」
「あの変な不死者や死なない奴らはそれ絡みか」
「あの加護はそこから来ていたのね」
「永遠の命、欲しがる人って多いんですよ?」
和真の売りはそこらしい。確かに色んな勢力から支持を得られそうな対価だった。欲深い者達ならば、喜んで支援するだろう。
そして集まる権力と資金は、とても無視は出来ない規模になっていると思われる。上手くやったと言うべきか、汚い手段と罵るべきか。
実際にそう言った類の汚職事件は少なくない。事実の隠蔽などこの世の中では腐る程行われている。
その中の1つに自分もなろうと言うのが和真の魂胆だ。つまり今ここで決着をつけなければ、煙に巻かれてしまうと言う事だ。
「なら、ここで止めるしかないわね?」
「無駄だと思いますよ? 効果はご存知でしょう?」
「お前だって気絶させてしまえば」
「ああ、それは無駄ですよ。神子にその欠点はありませんので」
死なない兵士の弱点は既に対策済みだったらしい。あの2人への襲撃はテストだったと言う事だろう。
神子が持つ能力、加護の最上位である神の恩寵は、与える神自身が内容を変えられる。あの戦闘結果をどこかで見ていて、それを反映した結果だと思われる。
苦しい状況ながらも、中々に上手く立ち回っている。確かに斉藤和真は戦闘経験が薄い。しかし死なないのであれば、確保するのも難しい。
全力で逃げられたら、最悪取り逃がす可能性がある。それに先程和真が言っていた、命を奪う能力も厄介だ。これだけの犠牲者を出した魔術は、その能力が基点となっているらしい。
「清志、神本体を任せて良い?」
「ああ。けどアイナは?」
「私はコイツを抑えておくわ」
「相談は終わりましたか?」
小声で方針を決めた2人は一気に行動を開始する。清志は全力で駆け抜け、何処かに居ると思われる神本体の捜索に向かう。
残るアイナはこの場から和真を逃さない様に、そしてこの場に釘付けにする為に戦闘を開始する。強力な妨害魔術のあるアイナならば、先程の魔術にも対抗出来る可能性が高い。
そして清志には黄泉津大神が着いている。どこかに居ると思われる人造神を探すなら、彼女の協力を得た方が早いだろう。
まだコンビを組んで短い2人だが、お互いの得手不得手を良く理解し合っていた。自分が何をすれば一番効率が良いのか即座に決める事が出来る。
「死なないって分かっているなら、実弾で良いわよね?」
「中々物騒な事を言う方でっ」
「頭を撃ち抜かれたら痛いのかしらね?」
「可愛い顔をして酷い事をしますね?」
一切の情け容赦なく真っ先に頭を撃ち抜くアイナと、すぐ回復する和真。まるでホラー映画の様な光景だが、アイナは全く動じていない。
立て続けに急所を的確に撃ち抜いて行く。和真の言う通り、激痛で意識を失うと言った変化は一切見られない。
一方で和真も反撃を行うが、アイナの魔力弾に即死の閃光は打ち消される。互いに決定打がない銃撃戦が始まった。
この男を捕まえるには、人造神を倒す以外に道はないだろう。まだまだアイナには余裕があるが、長引けは長引くだけ逃走の危険が増える。人造神の元へ向かった清志に全てが託された。
2人にはハッキリと見えていた和真の魔力量が明らかにSランクに匹敵する量である事に。つまりそれは、目の前の男が神子になったかアイナの様に禁を犯した結果と言う事。
そして先日から疑われていたのは人造の神に関する研究だ。そこから考えれば、造ったと考えるのが妥当。2人の見解はそれで一致している。
「お前、造ったな?」
「ええ。これで私も貴方と同じですよ」
「清志と比べたらだいぶ経験不足みたいだけど?」
「それは仕方ありません。これからに期待して下さい」
先程ラシードの命を奪った魔術の正体が不明な状況で、下手に動くのは危険と判断した2人は警戒したまま会話を続ける。
何かしらのヒントか、もしくは魔術の正体を知る為に。2人は知っている、このタイプの男は自慢気に詳細を語りたがると。
自分の成果を知らしめ、自らの優秀さについてペラペラと喋る事を。目的を達成し、望む力を手に入れた時が一番のチャンスであると。
そして同時に、生存者を救助する為の時間稼ぎも兼ねていた。先程の力がどこまで届くか、最大範囲が分からない以上は気持ち良く語らせておく方が良いと言う判断だ。
「それにしても、随分とあっさり裏切ったわね?」
「テロリストを排除した、と言う成果が残るでしょう?」
「そんな茶番が今更通ると思うのか?」
「真実とは、お金と根回しとコネがあれば作れるんですよ?」
中東で最大級の勢力を持つテロリストを壊滅させた。その事実は確かにある。しかしそれは違法な方法で得た成果だ。本来ならば、そんな主張は通らない。
しかし今の和真の口振りでは、それを覆す用意があると言う事だ。和真の研究に関係する人間の中に、どこかの権力者が居るのかも知れない。
政治家や資本家、警察に魔導協会関係者。どこまでの範囲に手を伸ばしたのかは不明だが、この状況を覆せるだけの地位に居る人間が絡んでいるのだろう。
「私が生み出した神は、命を奪うだけでなく与える事も出来るのです」
「あの変な不死者や死なない奴らはそれ絡みか」
「あの加護はそこから来ていたのね」
「永遠の命、欲しがる人って多いんですよ?」
和真の売りはそこらしい。確かに色んな勢力から支持を得られそうな対価だった。欲深い者達ならば、喜んで支援するだろう。
そして集まる権力と資金は、とても無視は出来ない規模になっていると思われる。上手くやったと言うべきか、汚い手段と罵るべきか。
実際にそう言った類の汚職事件は少なくない。事実の隠蔽などこの世の中では腐る程行われている。
その中の1つに自分もなろうと言うのが和真の魂胆だ。つまり今ここで決着をつけなければ、煙に巻かれてしまうと言う事だ。
「なら、ここで止めるしかないわね?」
「無駄だと思いますよ? 効果はご存知でしょう?」
「お前だって気絶させてしまえば」
「ああ、それは無駄ですよ。神子にその欠点はありませんので」
死なない兵士の弱点は既に対策済みだったらしい。あの2人への襲撃はテストだったと言う事だろう。
神子が持つ能力、加護の最上位である神の恩寵は、与える神自身が内容を変えられる。あの戦闘結果をどこかで見ていて、それを反映した結果だと思われる。
苦しい状況ながらも、中々に上手く立ち回っている。確かに斉藤和真は戦闘経験が薄い。しかし死なないのであれば、確保するのも難しい。
全力で逃げられたら、最悪取り逃がす可能性がある。それに先程和真が言っていた、命を奪う能力も厄介だ。これだけの犠牲者を出した魔術は、その能力が基点となっているらしい。
「清志、神本体を任せて良い?」
「ああ。けどアイナは?」
「私はコイツを抑えておくわ」
「相談は終わりましたか?」
小声で方針を決めた2人は一気に行動を開始する。清志は全力で駆け抜け、何処かに居ると思われる神本体の捜索に向かう。
残るアイナはこの場から和真を逃さない様に、そしてこの場に釘付けにする為に戦闘を開始する。強力な妨害魔術のあるアイナならば、先程の魔術にも対抗出来る可能性が高い。
そして清志には黄泉津大神が着いている。どこかに居ると思われる人造神を探すなら、彼女の協力を得た方が早いだろう。
まだコンビを組んで短い2人だが、お互いの得手不得手を良く理解し合っていた。自分が何をすれば一番効率が良いのか即座に決める事が出来る。
「死なないって分かっているなら、実弾で良いわよね?」
「中々物騒な事を言う方でっ」
「頭を撃ち抜かれたら痛いのかしらね?」
「可愛い顔をして酷い事をしますね?」
一切の情け容赦なく真っ先に頭を撃ち抜くアイナと、すぐ回復する和真。まるでホラー映画の様な光景だが、アイナは全く動じていない。
立て続けに急所を的確に撃ち抜いて行く。和真の言う通り、激痛で意識を失うと言った変化は一切見られない。
一方で和真も反撃を行うが、アイナの魔力弾に即死の閃光は打ち消される。互いに決定打がない銃撃戦が始まった。
この男を捕まえるには、人造神を倒す以外に道はないだろう。まだまだアイナには余裕があるが、長引けは長引くだけ逃走の危険が増える。人造神の元へ向かった清志に全てが託された。
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