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第1章
第48話 同級生の疑惑
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西山製薬への強制捜査が始まる前に、どうにかして例の彼女に事情を聞く必要がある。同じ嵯峨学園に通う1年生で、Cクラスに通う魔術師だ。
名前は森下翔子、俺達の様に昔からずっと学園に居たタイプでは無く転入組の生徒だ。森下さんやアイナの様に途中から入って来た生徒を転入組と呼ぶ。
それは排他的な意味での言葉ではなく、むしろ逆の意味合いが強い。嵯峨学園からのスカウトが来る様な生徒か、よほど優秀な成績を外部で示した人である証だ。
森下さんは前者で、アイナは後者になる。なのでそれなりに有名人の筈なのだが、意外と友人は少ない様で詳しい人となりがハッキリしない。
おまけに最近良く休んでいる様で、中々コンタクトが取れて居なかった。なるべく早くに済ませたかったのだが、予定よりもかなり遅れていた。
「流石に今日は居てくれよ」
「これで駄目なら先生に聞きましょうよ」
「あんまり勝手に、個人情報は聞きたくないんだけどな」
お昼休みに森下さんが所属している、Cクラスの教室に何度目か分からない訪問をする。最近やたらと俺とアイナが来るものだから、ちょっとした騒ぎになり掛けていた。
そりゃあ学園で唯一のSランクコンビなのだから、気になるのは分かるが大人しくしていて欲しい。森下さんに下手な迷惑を掛けたくはないし、余計な軋轢も生みたくはない。
ただちょっと、彼女に事情を聞きたいだけなのだから。西山製薬とは、どの程度の付き合いがあるのかとか。
同級生を疑う様で少々心苦しいけれど、確認だけはせねばならない。嵯峨学園に所属していながら、魔導犯罪に手を染めるとは思えないが、マインドコントロール等の可能性が捨て切れない以上は仕方がない。
「女子のプライベートだからな、頼むよアイナ」
「そんなに気にしなくても良いんじゃない?」
「念の為だよ、念の為」
下手に男の俺が森下さんのプライベートに踏み込むのは良くないだろう。内容次第ではアイナと二人きりで話して貰うつもりだ。
俺が居たら話辛い事もあるかも知れない。アイナは気にし過ぎだと言うが、俺は例え捜査の為でもプライバシーを守る主義だ。
余計な事で誰かを傷つけたくはないし、実際に捜査の内容が問題になる事もある。最近でも捜査の内容に一部不適切な方法があったとかで、各所で問題になった例がある。
命の危険がある様な緊急事態ならともかく、ただ事情を尋ねるだけで余計な問題は起こしたくはない。
「ごめん、今日森下さん来ている?」
「ああ神坂君、良かったね。今日は来ているよ、ほらあそこ」
「いつもありがとう、助かった!」
最近良く声を掛ける入口近くの男子生徒に、確認とお礼を述べて教室の中に入る。先日西山製薬で見掛けた通りの、平凡な女子生徒が自分の席に座って居た。
向こうも俺達に気付いたと言うか、教室に居た生徒達が一斉に俺達の方をを見たので気付いて当然か。
彼女と目が合った事で、俺達が何をしに来たのか察してくれたのだろう。片付け途中だったお弁当箱をそのままに、こちらに向かって歩いて来た。
流石に状況が状況だけに、何も知らないと言う事は無いだろう。すんなりと話が進めば良いのだが。
「私に話があるんでしょう?」
「ええ、そうよ」
「少しだけ良いかな?」
こんなに注目されている教室の中でする話でもない。3人で教室を出て中庭へと向かう。誰も使って居なかったベンチに座って貰い、事情聴取を開始する。
もちろん話の内容を他人に聞かれない様に、遮音の結界を使用した上で話を聞く。場合によっては俺も結界の外に出るつもりだ。
もちろん、あっさり終了する可能性だって十分にあるけれども。特に関係がないならそれまでの話だ、深く追求する必要はない。
「貴女はあそこで何をしているの?」
「新技術の開発を手伝っているわ」
「新技術? それはどんな技術なんだ?」
「流石に発表前に詳しくは言えないわ」
確かにそれはその通りだが、しかし何とも微妙なラインだ。このタイミングで新技術と言われるとかなり怪しいと思われる。
だがかと言って彼女からは、悪意らしき物を感じ取れない。こっそり探査魔術を使わせて貰ったが、洗脳の類はされていない様だ。
ならば今回の事件とは別の技術で、本当にただの開発協力なのだろうか。その場合は、彼女は無関係と言う事になる。念の為に、もう少しだけ踏み込んだ事を聞かせて貰おう。
「あの斉藤って人と関係が?」
「和真さんは凄い人なの! あの人のお陰で研究がどんどん進むのよ!」
「彼って、何か黒い噂とかないのかしら?」
「……和真さんを疑っているの? 悪い人じゃないわよ彼は」
微妙に引っ掛かる部分もあるが、本当にただ信じているらしいのは理解出来た。信用と言うよりも、心酔に近い物を感じるのがやや不安要素か。
魔術的な意味よりも、不純異性交遊とかそっち方面の。俺達はまだ16歳で、あの男はいい歳をした大人だ。
もし何かしらの関係があった場合、まあまあ宜しくはないのだが。しかし今聞いた内容だけで、学園に報告する事は出来ない。
ただ信じ切っているだけだったら、こちらが邪推をしただけになってしまう。今の所は白に近いグレーとするしか無いか。
「研究室で怪しい人を見たとかは無いかしら?」
「そんな人は見た事ないわよ。そもそも入れないでしょ怪しい人なんて」
「いやまあ、そうなんだけどさ」
「そろそろ良いかしら? 私達は何も悪い事なんてしていないわ」
嘘を言っている様には見えないし、もしあるとすれば彼女が騙されているパターンか。だがソレを証明する証拠は今の所見つかっていない。
ここではこれ以上聞けないだろう。とりあえずの収穫としては、少なくとも森下さんは悪事に加担しては居ないらしいと言う事だった。
名前は森下翔子、俺達の様に昔からずっと学園に居たタイプでは無く転入組の生徒だ。森下さんやアイナの様に途中から入って来た生徒を転入組と呼ぶ。
それは排他的な意味での言葉ではなく、むしろ逆の意味合いが強い。嵯峨学園からのスカウトが来る様な生徒か、よほど優秀な成績を外部で示した人である証だ。
森下さんは前者で、アイナは後者になる。なのでそれなりに有名人の筈なのだが、意外と友人は少ない様で詳しい人となりがハッキリしない。
おまけに最近良く休んでいる様で、中々コンタクトが取れて居なかった。なるべく早くに済ませたかったのだが、予定よりもかなり遅れていた。
「流石に今日は居てくれよ」
「これで駄目なら先生に聞きましょうよ」
「あんまり勝手に、個人情報は聞きたくないんだけどな」
お昼休みに森下さんが所属している、Cクラスの教室に何度目か分からない訪問をする。最近やたらと俺とアイナが来るものだから、ちょっとした騒ぎになり掛けていた。
そりゃあ学園で唯一のSランクコンビなのだから、気になるのは分かるが大人しくしていて欲しい。森下さんに下手な迷惑を掛けたくはないし、余計な軋轢も生みたくはない。
ただちょっと、彼女に事情を聞きたいだけなのだから。西山製薬とは、どの程度の付き合いがあるのかとか。
同級生を疑う様で少々心苦しいけれど、確認だけはせねばならない。嵯峨学園に所属していながら、魔導犯罪に手を染めるとは思えないが、マインドコントロール等の可能性が捨て切れない以上は仕方がない。
「女子のプライベートだからな、頼むよアイナ」
「そんなに気にしなくても良いんじゃない?」
「念の為だよ、念の為」
下手に男の俺が森下さんのプライベートに踏み込むのは良くないだろう。内容次第ではアイナと二人きりで話して貰うつもりだ。
俺が居たら話辛い事もあるかも知れない。アイナは気にし過ぎだと言うが、俺は例え捜査の為でもプライバシーを守る主義だ。
余計な事で誰かを傷つけたくはないし、実際に捜査の内容が問題になる事もある。最近でも捜査の内容に一部不適切な方法があったとかで、各所で問題になった例がある。
命の危険がある様な緊急事態ならともかく、ただ事情を尋ねるだけで余計な問題は起こしたくはない。
「ごめん、今日森下さん来ている?」
「ああ神坂君、良かったね。今日は来ているよ、ほらあそこ」
「いつもありがとう、助かった!」
最近良く声を掛ける入口近くの男子生徒に、確認とお礼を述べて教室の中に入る。先日西山製薬で見掛けた通りの、平凡な女子生徒が自分の席に座って居た。
向こうも俺達に気付いたと言うか、教室に居た生徒達が一斉に俺達の方をを見たので気付いて当然か。
彼女と目が合った事で、俺達が何をしに来たのか察してくれたのだろう。片付け途中だったお弁当箱をそのままに、こちらに向かって歩いて来た。
流石に状況が状況だけに、何も知らないと言う事は無いだろう。すんなりと話が進めば良いのだが。
「私に話があるんでしょう?」
「ええ、そうよ」
「少しだけ良いかな?」
こんなに注目されている教室の中でする話でもない。3人で教室を出て中庭へと向かう。誰も使って居なかったベンチに座って貰い、事情聴取を開始する。
もちろん話の内容を他人に聞かれない様に、遮音の結界を使用した上で話を聞く。場合によっては俺も結界の外に出るつもりだ。
もちろん、あっさり終了する可能性だって十分にあるけれども。特に関係がないならそれまでの話だ、深く追求する必要はない。
「貴女はあそこで何をしているの?」
「新技術の開発を手伝っているわ」
「新技術? それはどんな技術なんだ?」
「流石に発表前に詳しくは言えないわ」
確かにそれはその通りだが、しかし何とも微妙なラインだ。このタイミングで新技術と言われるとかなり怪しいと思われる。
だがかと言って彼女からは、悪意らしき物を感じ取れない。こっそり探査魔術を使わせて貰ったが、洗脳の類はされていない様だ。
ならば今回の事件とは別の技術で、本当にただの開発協力なのだろうか。その場合は、彼女は無関係と言う事になる。念の為に、もう少しだけ踏み込んだ事を聞かせて貰おう。
「あの斉藤って人と関係が?」
「和真さんは凄い人なの! あの人のお陰で研究がどんどん進むのよ!」
「彼って、何か黒い噂とかないのかしら?」
「……和真さんを疑っているの? 悪い人じゃないわよ彼は」
微妙に引っ掛かる部分もあるが、本当にただ信じているらしいのは理解出来た。信用と言うよりも、心酔に近い物を感じるのがやや不安要素か。
魔術的な意味よりも、不純異性交遊とかそっち方面の。俺達はまだ16歳で、あの男はいい歳をした大人だ。
もし何かしらの関係があった場合、まあまあ宜しくはないのだが。しかし今聞いた内容だけで、学園に報告する事は出来ない。
ただ信じ切っているだけだったら、こちらが邪推をしただけになってしまう。今の所は白に近いグレーとするしか無いか。
「研究室で怪しい人を見たとかは無いかしら?」
「そんな人は見た事ないわよ。そもそも入れないでしょ怪しい人なんて」
「いやまあ、そうなんだけどさ」
「そろそろ良いかしら? 私達は何も悪い事なんてしていないわ」
嘘を言っている様には見えないし、もしあるとすれば彼女が騙されているパターンか。だがソレを証明する証拠は今の所見つかっていない。
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