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第1章
第47話 激闘の後で
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黄泉津大神とアイナの激闘があってから数時間後。何も知らない清志は、いつもの様に目を覚ました。
また黄泉津大神が何処かに行っているのは把握していたけれど、そんなのは日常茶飯事なのでいちいち行き先で何をしているかまでは尋ねない。
契約する神々や精霊などによっては、見ている光景を共有出来たりする場合がある。だが清志と黄泉津大神にはその能力は無かった。
つまり結構な大事になっている事もまだ知らない。いつも通りに、朝食を準備しようとリビングへ向かう。すると何故か誰かが会話する声と、微妙に焦げ臭い匂いを感じた。
「なんだ? 誰か居るのか?」
従姉である玲央奈でも先に起きていたのかと、呑気に考えていた清志の目に飛び込んで来たのは予想外の光景だった。
何故か制服の上からエプロンを着けたアイナと、いつも通り和服姿の黄泉津大神がキッチンで何やらバタバタとしている。
清志からすれば全く理解出来ない光景に、思わず足を止めてしまう。人間は想定外の事態に遭遇すると、衝撃で思考が停止してしまう場合がある。今回の清志は正にそんな状態だった。
「貴女、卵焼きもまともに作れないの?」
「仕方ないでしょ! 料理なんてまともにした事ないんだから!」
「そんな調子では先が思いやられるわ」
どうやら卵焼きを作ろうとしたアイナが、上手く出来ずに失敗したらしい。焦げた匂いの正体は、その卵焼きらしき物体が原因らしい。
ギャグ漫画の様に真っ黒ではないが、少々焼きすぎている。しかし黄泉津大神も大して料理が出来たりはしないので、アイナを責められる程の資格はない。
それらしい文句を付けてはいるものの、アイナとは五十歩百歩でしかない。そんな醜い争いに、漸く事態を把握出来た清志が参戦する。
「2人とも何やってんの?」
「「聞いて清志こいつが!」」
「…………何か仲良くなってない?」
今までそんな素振りは無かったのに、突然2人で行動する様になった。清志から見ればそうとしか思えなかった。
実際にこの関係性になったのは、僅か数時間前なので知らないのは当然だ。激闘の末に出来上がった、アイナと黄泉津大神の距離感。
より遠慮のなくなった黄泉津大神と、もうこれ敬う必要は無いのでは? と言う回答に至ったアイナ。
案外相性は良かったと言うべきなのか否か、微妙なラインではあるが互いの事をそれなりに理解したらしい。ある意味では打ち解けたと言って良いのかも知れない。
「えっと、とりあえず俺がやるから」
「ゔっ……ごめんね」
「ふん、情けない小娘ね」
「いやお前も作れないだろ卵焼き」
家事担当である清志がアイナと交代し、朝食の準備が再開される。卵焼きモドキは焦げた部分だけを処分し、味を調えられスクランブルエッグに変わった。
アイナの努力は、全てが無駄にはならずに済んだ。正確に言えば先ず味付けがされていなかったので、大惨事にならなかったと言うべきではあるが。
アイナは幼い頃に両親を亡くし、以降は戦いの日々だったので料理の経験がない。携帯食料の食べ方なら知っているが、卵焼きの作り方なんてまともに知らない。それが逆に素人の滅茶苦茶な味付けを生まずに済んだ。
「待ってるの暇だろ? テレビでも観ててよ」
「う、うん。何かごめん」
「良いって。いつも作っているからさ」
実際アイナに出来る事は殆どない。お皿を並べるとかその程度だが、食器棚の中身を理解していないのでそれも出来ない。
結局は手持ち無沙汰になってしまっていた。そして黄泉津大神は最初から手伝う気はない。我関せずとシレッと食卓に座って寛いでいた。
清志が朝食を作り続ける中で、アイナが電源を入れたテレビから朝の情報番組が流れ始めた。
続々と朝のニュースが読み上げられて行く。その中で、とあるニュースが清志の意識を引き寄せる。
「なぁ、この事件現場わりと近くない?」
「き、気の所為じゃない?」
「……凄く見覚えがある斬り傷なんだけど?」
「気の所為よ」
そのニュースは、昨夜未明に起きたとある騒音事件の現場だった。複数の銃撃の跡に、斬り裂かれたアスファルトの傷。
清志達が住むマンションから、徒歩で行けなくもない距離にある潰れたパチンコ屋の跡地。そこで真夜中に銃声を聴いたと言う周辺住民のインタビュー映像が流れている。
その事件は正に、数時間前にアイナと黄泉津大神が戦った現場であった。当たり前ではあるが、太古の死神とSランク魔術師が戦闘などすれば当然大事になる。
幸いただの跡地であった為に、地面がボロボロになっただけではあるが。しかし事前に魔導協会に何の連絡もなく、勝手に行われた激戦の跡が残されていればこうなるのは当然だった。
「…………話を聞こうか」
「「あれはソイツが!」」
「はぁ、勘弁してくれよ……」
朝から頭を抱えたくなる大問題に、清志は崩れ落ちた。こんなニュースになってしまえば、知らぬ存ぜぬは通じない。
使われた魔力の持ち主を探す魔術や魔導具だってあるからだ。魔導協会になんて言い訳をするか、そんな事をぼんやりと考えながら清志は天井を見上げるのだった。
また黄泉津大神が何処かに行っているのは把握していたけれど、そんなのは日常茶飯事なのでいちいち行き先で何をしているかまでは尋ねない。
契約する神々や精霊などによっては、見ている光景を共有出来たりする場合がある。だが清志と黄泉津大神にはその能力は無かった。
つまり結構な大事になっている事もまだ知らない。いつも通りに、朝食を準備しようとリビングへ向かう。すると何故か誰かが会話する声と、微妙に焦げ臭い匂いを感じた。
「なんだ? 誰か居るのか?」
従姉である玲央奈でも先に起きていたのかと、呑気に考えていた清志の目に飛び込んで来たのは予想外の光景だった。
何故か制服の上からエプロンを着けたアイナと、いつも通り和服姿の黄泉津大神がキッチンで何やらバタバタとしている。
清志からすれば全く理解出来ない光景に、思わず足を止めてしまう。人間は想定外の事態に遭遇すると、衝撃で思考が停止してしまう場合がある。今回の清志は正にそんな状態だった。
「貴女、卵焼きもまともに作れないの?」
「仕方ないでしょ! 料理なんてまともにした事ないんだから!」
「そんな調子では先が思いやられるわ」
どうやら卵焼きを作ろうとしたアイナが、上手く出来ずに失敗したらしい。焦げた匂いの正体は、その卵焼きらしき物体が原因らしい。
ギャグ漫画の様に真っ黒ではないが、少々焼きすぎている。しかし黄泉津大神も大して料理が出来たりはしないので、アイナを責められる程の資格はない。
それらしい文句を付けてはいるものの、アイナとは五十歩百歩でしかない。そんな醜い争いに、漸く事態を把握出来た清志が参戦する。
「2人とも何やってんの?」
「「聞いて清志こいつが!」」
「…………何か仲良くなってない?」
今までそんな素振りは無かったのに、突然2人で行動する様になった。清志から見ればそうとしか思えなかった。
実際にこの関係性になったのは、僅か数時間前なので知らないのは当然だ。激闘の末に出来上がった、アイナと黄泉津大神の距離感。
より遠慮のなくなった黄泉津大神と、もうこれ敬う必要は無いのでは? と言う回答に至ったアイナ。
案外相性は良かったと言うべきなのか否か、微妙なラインではあるが互いの事をそれなりに理解したらしい。ある意味では打ち解けたと言って良いのかも知れない。
「えっと、とりあえず俺がやるから」
「ゔっ……ごめんね」
「ふん、情けない小娘ね」
「いやお前も作れないだろ卵焼き」
家事担当である清志がアイナと交代し、朝食の準備が再開される。卵焼きモドキは焦げた部分だけを処分し、味を調えられスクランブルエッグに変わった。
アイナの努力は、全てが無駄にはならずに済んだ。正確に言えば先ず味付けがされていなかったので、大惨事にならなかったと言うべきではあるが。
アイナは幼い頃に両親を亡くし、以降は戦いの日々だったので料理の経験がない。携帯食料の食べ方なら知っているが、卵焼きの作り方なんてまともに知らない。それが逆に素人の滅茶苦茶な味付けを生まずに済んだ。
「待ってるの暇だろ? テレビでも観ててよ」
「う、うん。何かごめん」
「良いって。いつも作っているからさ」
実際アイナに出来る事は殆どない。お皿を並べるとかその程度だが、食器棚の中身を理解していないのでそれも出来ない。
結局は手持ち無沙汰になってしまっていた。そして黄泉津大神は最初から手伝う気はない。我関せずとシレッと食卓に座って寛いでいた。
清志が朝食を作り続ける中で、アイナが電源を入れたテレビから朝の情報番組が流れ始めた。
続々と朝のニュースが読み上げられて行く。その中で、とあるニュースが清志の意識を引き寄せる。
「なぁ、この事件現場わりと近くない?」
「き、気の所為じゃない?」
「……凄く見覚えがある斬り傷なんだけど?」
「気の所為よ」
そのニュースは、昨夜未明に起きたとある騒音事件の現場だった。複数の銃撃の跡に、斬り裂かれたアスファルトの傷。
清志達が住むマンションから、徒歩で行けなくもない距離にある潰れたパチンコ屋の跡地。そこで真夜中に銃声を聴いたと言う周辺住民のインタビュー映像が流れている。
その事件は正に、数時間前にアイナと黄泉津大神が戦った現場であった。当たり前ではあるが、太古の死神とSランク魔術師が戦闘などすれば当然大事になる。
幸いただの跡地であった為に、地面がボロボロになっただけではあるが。しかし事前に魔導協会に何の連絡もなく、勝手に行われた激戦の跡が残されていればこうなるのは当然だった。
「…………話を聞こうか」
「「あれはソイツが!」」
「はぁ、勘弁してくれよ……」
朝から頭を抱えたくなる大問題に、清志は崩れ落ちた。こんなニュースになってしまえば、知らぬ存ぜぬは通じない。
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