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第1章
第33話 潜入捜査 後編
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どこからこれだけ集めたのか、大量にストックされていた死体が不死者となって倉庫内を埋め尽くしていく。
世界中で1日に約15万人が死亡すると言われているのを思えば、数百単位の死体など大した数ではない。あくまで数字上だけなら。
戦闘能力を持たない一般人を守りながら、倉庫内と言う閉所で戦うとなれば数百単位でも十分な脅威だ。
しかも敷地内に他の生存者が居る点を考慮すると、防衛側の難易度は跳ね上がる。それだけでなく、事件の黒幕に繋がる様な物証の保全まで必要となっている。
幾ら清志とアイナが優秀なSランク魔術師とは言っても、そこまで何でも出来る訳ではない。
「あーもう! 厄介なんだから!」
「後ろから2体来ているぞ!」
「分かってるわ!」
最初に確保した重要参考人と言う名のお荷物を抱えながら、清志とアイナの2人は戦闘を続ける。他の生存者も拾い上げながら、戦い易い場所に移動する必要があった。
敵である不死者達を倒すのは2人にとっては簡単だ。しかし敷地内に溢れかえった不死者は大量に居る。
B級パニックホラーの様な有様に成り果てた、冷凍倉庫内を進むのは簡単では無かった。あちこちから湧き出た不死者が、移動する4人に襲い掛かる。
「クソッ! こっちに来るんじゃねぇ! バケモノが!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ちょっと! あんまり勝手に動かないで! 死にたいの!?」
「アイナ、こっちだ!」
不死者の群れを駆け抜け、隙間を縫うように移動していく。保護対象を一箇所に纏めるまでは派手な戦闘をする事が出来ない。
清志が先頭を走り、道を切り開く。その後を追う一般人2人と、殿を務めるアイナが戦場を駆け抜ける。
アイナが放つ魔力弾が煌めく度に、不死者がただの死体に戻って行く。しかし如何せん数が多く、遮蔽物もあちこちに存在している。
纏めて一気に処理が出来ず、雑魚に手間取るストレスが2人を襲う。纏めて薙ぎ払えばそれで終了だが、重要参考人と証拠がおじゃんになってしまう。
もどかしい思いを抱えながらも、2人の最上位魔術師は戦いを続ける。
「ここには後何人居るの!?」
「た、助けてくれ!」
「助けてやるから! 何人居るのか教えろって!」
「じゅ、10人だ! 今日は他に10人出勤している!」
怯える管理者の男から情報を引き出した2人は、更に歩みを進めて行く。このまま狭い通路に居続けるのは危険だ。
倒れた死体があちこちに転がり、移動の邪魔になっている。清志とアイナの2人には何の障害にはならないが、一般人の2人はそうも行かない。
このまま移動のペースが落ちると、周囲を囲まれてしまい兼ねない。Sランクが2人も居ながら、重要参考人を殺してしまったとなれば笑い話では済まない。あと10人の重要参考人を早急に救出せねばならない。
「アイナ! 模擬戦で使っていたあの小部屋みたいなの、出せないか!?」
「この狭さじゃ厳しいわ!」
「なら駐車場に行こう! 小部屋に生存者をぶち込むぞ!」
アイナがシャーロットとの模擬戦で使用した、装甲板で形成した小部屋の様な箱。あれならば不死者達の戦闘力では突破出来ない。
そう考えた清志の作戦を実行に移す。通路の壁を清志の大鎌が破壊し、強引に外に出る。敷地内の地図を完璧に覚えていた清志が先行して駐車場へと向かう。
既に室内から外に溢れ出た不死者達が、あちこちを彷徨いていた。敷地外に出てしまうまで、そう長くは掛からないだろう。
この数の不死者が住宅地に向かえば大惨事になる。早期解決の必要性は更に上がっていた。
「ここなら出せるわ! 2人とも、そこを動かないでね!」
「お、おう。分かったぜ」
「4番解放!」
アイナが2人に向けて手を翳したその瞬間、漆黒の装甲板によって形成された箱が出現した。巨大な氷塊の落下でもビクともしなかった、堅牢な小部屋が一般人を守る盾となる。
これで足手まといを抱えて戦う必要性が無くなった。とは言えまだ救出の対象は10人も居る。あまりゆっくりしては居られない。あとは時間との勝負が待っている。
「手分けしよう、その方が早い」
「オッケー、じゃあまた後で!」
「気を付けろよ!」
そこからは実にスムーズに事が進んだ。不死者が集まって居る所に行けば、大体は生存者がそこに居るからだ。
2人は敷地内を駆け回り救助対象を確保して行く。守りに入る必要性が無くなったので、サクサクと不死者を処理しながら救出して行く。
一気に処理する速度が上がり、不死者の数もどんどん減って行く。最後の1人を清志が救出し、駐車場に戻る。
アイナお手製の装甲部屋に最後の生存者を放り込めば、敷地内に残るのは不死者のみ。
「さあて、纏めて処理するわよ!」
「なあ、それ実弾じゃないよな?」
「大丈夫よ、魔力弾しか使わないわ」
散々手を焼かされたストレスから、アイナが取り出したのはガトリング砲。見た目だけなら完全に実弾仕様にしか見えないが、弾帯はただの飾りである。
それを知らない清志が、思わず物証の破損を恐れて声を掛けるが問題はない。モーターの駆動音に遅れて、大量の魔力弾が前方に吐き出された。
ただ清志達を追って来ていた不死者達が、次々と被弾して死体に戻って行く。撃っているのが魔力弾でも、空薬莢は排出されて行く。
そんな機能は一切必要無いのだが、その方がカッコいいからと言う理由でアイナが付与した無駄な演出である。豊富な魔力量を持つアイナだからこそ可能な、無駄な拘りであった。
「そろそろ良いんじゃない?」
「どうやら、そうみたいだな」
「それじゃ、今度こそ捜査開始ね」
不死者が大体片付いたのを確認して、2人は倉庫内へと戻って行く。確保された重要参考人達は、アイナが魔術を解かない限り外には出られない。
証拠を漁り放題となった2人は、順調に捜査を進めて行く。そして辿り着く、謎の不死者事件の真相に。
「ここで繋がるか、西山製薬」
「へぇ、取引相手だったのね」
一つの事件の解決と、新たな展開。ここで繋がった関係性は、一体何を意味するのか。
世界中で1日に約15万人が死亡すると言われているのを思えば、数百単位の死体など大した数ではない。あくまで数字上だけなら。
戦闘能力を持たない一般人を守りながら、倉庫内と言う閉所で戦うとなれば数百単位でも十分な脅威だ。
しかも敷地内に他の生存者が居る点を考慮すると、防衛側の難易度は跳ね上がる。それだけでなく、事件の黒幕に繋がる様な物証の保全まで必要となっている。
幾ら清志とアイナが優秀なSランク魔術師とは言っても、そこまで何でも出来る訳ではない。
「あーもう! 厄介なんだから!」
「後ろから2体来ているぞ!」
「分かってるわ!」
最初に確保した重要参考人と言う名のお荷物を抱えながら、清志とアイナの2人は戦闘を続ける。他の生存者も拾い上げながら、戦い易い場所に移動する必要があった。
敵である不死者達を倒すのは2人にとっては簡単だ。しかし敷地内に溢れかえった不死者は大量に居る。
B級パニックホラーの様な有様に成り果てた、冷凍倉庫内を進むのは簡単では無かった。あちこちから湧き出た不死者が、移動する4人に襲い掛かる。
「クソッ! こっちに来るんじゃねぇ! バケモノが!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ちょっと! あんまり勝手に動かないで! 死にたいの!?」
「アイナ、こっちだ!」
不死者の群れを駆け抜け、隙間を縫うように移動していく。保護対象を一箇所に纏めるまでは派手な戦闘をする事が出来ない。
清志が先頭を走り、道を切り開く。その後を追う一般人2人と、殿を務めるアイナが戦場を駆け抜ける。
アイナが放つ魔力弾が煌めく度に、不死者がただの死体に戻って行く。しかし如何せん数が多く、遮蔽物もあちこちに存在している。
纏めて一気に処理が出来ず、雑魚に手間取るストレスが2人を襲う。纏めて薙ぎ払えばそれで終了だが、重要参考人と証拠がおじゃんになってしまう。
もどかしい思いを抱えながらも、2人の最上位魔術師は戦いを続ける。
「ここには後何人居るの!?」
「た、助けてくれ!」
「助けてやるから! 何人居るのか教えろって!」
「じゅ、10人だ! 今日は他に10人出勤している!」
怯える管理者の男から情報を引き出した2人は、更に歩みを進めて行く。このまま狭い通路に居続けるのは危険だ。
倒れた死体があちこちに転がり、移動の邪魔になっている。清志とアイナの2人には何の障害にはならないが、一般人の2人はそうも行かない。
このまま移動のペースが落ちると、周囲を囲まれてしまい兼ねない。Sランクが2人も居ながら、重要参考人を殺してしまったとなれば笑い話では済まない。あと10人の重要参考人を早急に救出せねばならない。
「アイナ! 模擬戦で使っていたあの小部屋みたいなの、出せないか!?」
「この狭さじゃ厳しいわ!」
「なら駐車場に行こう! 小部屋に生存者をぶち込むぞ!」
アイナがシャーロットとの模擬戦で使用した、装甲板で形成した小部屋の様な箱。あれならば不死者達の戦闘力では突破出来ない。
そう考えた清志の作戦を実行に移す。通路の壁を清志の大鎌が破壊し、強引に外に出る。敷地内の地図を完璧に覚えていた清志が先行して駐車場へと向かう。
既に室内から外に溢れ出た不死者達が、あちこちを彷徨いていた。敷地外に出てしまうまで、そう長くは掛からないだろう。
この数の不死者が住宅地に向かえば大惨事になる。早期解決の必要性は更に上がっていた。
「ここなら出せるわ! 2人とも、そこを動かないでね!」
「お、おう。分かったぜ」
「4番解放!」
アイナが2人に向けて手を翳したその瞬間、漆黒の装甲板によって形成された箱が出現した。巨大な氷塊の落下でもビクともしなかった、堅牢な小部屋が一般人を守る盾となる。
これで足手まといを抱えて戦う必要性が無くなった。とは言えまだ救出の対象は10人も居る。あまりゆっくりしては居られない。あとは時間との勝負が待っている。
「手分けしよう、その方が早い」
「オッケー、じゃあまた後で!」
「気を付けろよ!」
そこからは実にスムーズに事が進んだ。不死者が集まって居る所に行けば、大体は生存者がそこに居るからだ。
2人は敷地内を駆け回り救助対象を確保して行く。守りに入る必要性が無くなったので、サクサクと不死者を処理しながら救出して行く。
一気に処理する速度が上がり、不死者の数もどんどん減って行く。最後の1人を清志が救出し、駐車場に戻る。
アイナお手製の装甲部屋に最後の生存者を放り込めば、敷地内に残るのは不死者のみ。
「さあて、纏めて処理するわよ!」
「なあ、それ実弾じゃないよな?」
「大丈夫よ、魔力弾しか使わないわ」
散々手を焼かされたストレスから、アイナが取り出したのはガトリング砲。見た目だけなら完全に実弾仕様にしか見えないが、弾帯はただの飾りである。
それを知らない清志が、思わず物証の破損を恐れて声を掛けるが問題はない。モーターの駆動音に遅れて、大量の魔力弾が前方に吐き出された。
ただ清志達を追って来ていた不死者達が、次々と被弾して死体に戻って行く。撃っているのが魔力弾でも、空薬莢は排出されて行く。
そんな機能は一切必要無いのだが、その方がカッコいいからと言う理由でアイナが付与した無駄な演出である。豊富な魔力量を持つアイナだからこそ可能な、無駄な拘りであった。
「そろそろ良いんじゃない?」
「どうやら、そうみたいだな」
「それじゃ、今度こそ捜査開始ね」
不死者が大体片付いたのを確認して、2人は倉庫内へと戻って行く。確保された重要参考人達は、アイナが魔術を解かない限り外には出られない。
証拠を漁り放題となった2人は、順調に捜査を進めて行く。そして辿り着く、謎の不死者事件の真相に。
「ここで繋がるか、西山製薬」
「へぇ、取引相手だったのね」
一つの事件の解決と、新たな展開。ここで繋がった関係性は、一体何を意味するのか。
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