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第1章
第28話 変わった不死者
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支部長への報告も済ませて、後は調査結果を待つのみとなった。あれから特にこれと言っておかしな事件も無く平和な日々が続いていた。
しかしそれは、嵐の前の静けさと言うもの。確実に裏では何かが進行している。なるべく早く証拠を抑えて、解決させてしまいたい所だ。
ただの迂闊なチンピラ程度なら、さっさと現場に突入してしまえば終了する。しかし今回の様に、入念に計画を練るタイプは慎重にならざるを得ない。
焦って下手に刺激するのも危険であり、証拠の隠滅に回られるリスクもある。今は大人しく待つ他ないだろう。
「清志、今日はどうするの?」
「どうするかなぁ。やる事が無いんだよな」
「じゃあトレーニングでもする?」
「それも悪くはないんだけど……」
どうにもここ最近の静けさが気になっていた。何も起きなさ過ぎると言うべきか。本来ならもう少し、事件なり起きている。
それが不気味なぐらい何も無いのだ。せいぜいちょっとした喧嘩ぐらいで、殺人事件すらまともに起きていない。
平和で結構と言えたら良いのだけど、ここまで何もないのは明らかに変だ。まるで巨大な化け物が闊歩しているせいで、野生動物が隠れてしまったかの様な状況だ。
悲しい事に何かしら事件が起きるのが日常で、静かな方が異常だと言うのが現状だ。平和な世の中とは、まだまだ遠い位置にあると言う他ない。
「ん? 何だ魔導協会から連絡?」
「私もだ。何だろう?」
魔導協会京都支部からの連絡が俺とアイナの下に届いた。何かしらあったのだろうが、緊急コールでは無いと言う事は何らかの業務連絡か。
調査結果の報告にしては早すぎる気がするし、そちらの可能性は低い。何より進展したのであれば、支部長から直接連絡が来る筈だ。この番号は普段通りの連絡先だから相手は安達さんだ。何の用だろうか。
「安達さん? 何かあった?」
『何かって言うか、ちょっと変な状況で』
「どう言う事なの?」
『それがね、浄化出来ない不死者が出現してね』
安達さんの説明によると、山の方にある霊園にて不思議な不死者が現れたと言う事。所謂ゾンビやグールと呼ばれる存在で、低級の相手であればCランクの魔術師でも簡単に処理出来る。
聖水や清めの塩など、神聖な力を持つ物品があればそれで浄化するだけだ。振り掛けるだけで済むので、問題になる事なんて滅多にない。
それに日本は土葬ではなく火葬が基本だ。出現するなら悪霊や怨霊の類が大半である。それ故に不死者が出るのも少々不思議だ。
該当する霊園も火葬のみの筈だ。ゾンビは先ず有り得ないから、下級の吸血鬼に襲われたグール辺りか。
「グール、にしては変だな? まだ陽が出てる」
「そうよね? ねぇ奈緒子さん、それゾンビなの?」
『それがね、そこもハッキリしなくて。不死者っぽい何かと言うか』
「なんだそれ?」
不死者と言えば基本的にはゾンビかグールだ。怨霊が乗り移った死体の場合もあるが、それならそれで判断は出来る筈。
魔導協会が判断に困る様な何かと言うのは随分と珍しい。それ故に俺達に連絡が来たと言う事だろう。死神の神子である俺と、軍に居た経験のあるアイナ。相談する相手としては丁度良かったと言う訳だ。
「データはありますか?」
『ちょっと待ってて、すぐ送るから』
「……何これ? 清志分かる?」
送られて来たデータを見る限り、不死者らしき何かと判断されたのも納得だ。見た目は綺麗で腐敗しておらずゾンビではない。
まともに意識は無い様で、ただ徘徊しているだけ。グールの様に生物の血を求めるでもなく、しかし近付く者へは襲い掛かる。
死体なのは明らかで、生体反応は非常に微弱。聖水等の効果は全く受け付けず、読経の類もまた効果は無し。
ゾンビでもグールでも霊的な存在でも無い。確かに謎の不死者としか言えない。初めてみるパターンだ。
「人形師が死体を使っている、とか?」
『それも違うみたい。そう言った魔術の反応は出ていないわ』
「ネクロマンシー、なら聖水が効くものねぇ」
「呪符が無いからキョンシーでも無いな」
動きは緩慢で脅威度は低い、しかし処理方法が分からないと。現状は現場を封鎖する事で特別被害は出て居ないが、このままと言う理由にも行かないか。
戦闘能力がかなり低いのは映像で分かったけれど、処理方法が不明では担当の魔術師も困るだろう。どうせ今はやる事がない、ここは加勢にでも行くとしよう。
「なあ、アイナ」
「分かってる、行くんでしょ?」
『二人共ありがとう~助かるわ』
「安達さん、車を回して貰えますか?」
アイナと2人で校門前で待つ事15分ほど、魔導協会が所有する黒のワゴン車が到着した。何度も会った事のあるBランク魔術師が運転席に座っていた。
成田さんと言う若い大人の女性だ。彼女は物質強化や付与魔術を得意とする付与系統の魔術師だ。
成田さんが運転する車はトラックに追突されても無傷だし、噂では戦車の砲撃にも耐える強度を車両に与えられるらしい。
ある意味では、要人とも言えるアイナを迎えに来る人選として納得のチョイスだった。
「今日も宜しくお願いします」
「ええ、宜しく」
あまり口数は多くないけど、仕事はきっちり真面目にこなす成田さんの運転で俺達は現場へと向かった。
しかしそれは、嵐の前の静けさと言うもの。確実に裏では何かが進行している。なるべく早く証拠を抑えて、解決させてしまいたい所だ。
ただの迂闊なチンピラ程度なら、さっさと現場に突入してしまえば終了する。しかし今回の様に、入念に計画を練るタイプは慎重にならざるを得ない。
焦って下手に刺激するのも危険であり、証拠の隠滅に回られるリスクもある。今は大人しく待つ他ないだろう。
「清志、今日はどうするの?」
「どうするかなぁ。やる事が無いんだよな」
「じゃあトレーニングでもする?」
「それも悪くはないんだけど……」
どうにもここ最近の静けさが気になっていた。何も起きなさ過ぎると言うべきか。本来ならもう少し、事件なり起きている。
それが不気味なぐらい何も無いのだ。せいぜいちょっとした喧嘩ぐらいで、殺人事件すらまともに起きていない。
平和で結構と言えたら良いのだけど、ここまで何もないのは明らかに変だ。まるで巨大な化け物が闊歩しているせいで、野生動物が隠れてしまったかの様な状況だ。
悲しい事に何かしら事件が起きるのが日常で、静かな方が異常だと言うのが現状だ。平和な世の中とは、まだまだ遠い位置にあると言う他ない。
「ん? 何だ魔導協会から連絡?」
「私もだ。何だろう?」
魔導協会京都支部からの連絡が俺とアイナの下に届いた。何かしらあったのだろうが、緊急コールでは無いと言う事は何らかの業務連絡か。
調査結果の報告にしては早すぎる気がするし、そちらの可能性は低い。何より進展したのであれば、支部長から直接連絡が来る筈だ。この番号は普段通りの連絡先だから相手は安達さんだ。何の用だろうか。
「安達さん? 何かあった?」
『何かって言うか、ちょっと変な状況で』
「どう言う事なの?」
『それがね、浄化出来ない不死者が出現してね』
安達さんの説明によると、山の方にある霊園にて不思議な不死者が現れたと言う事。所謂ゾンビやグールと呼ばれる存在で、低級の相手であればCランクの魔術師でも簡単に処理出来る。
聖水や清めの塩など、神聖な力を持つ物品があればそれで浄化するだけだ。振り掛けるだけで済むので、問題になる事なんて滅多にない。
それに日本は土葬ではなく火葬が基本だ。出現するなら悪霊や怨霊の類が大半である。それ故に不死者が出るのも少々不思議だ。
該当する霊園も火葬のみの筈だ。ゾンビは先ず有り得ないから、下級の吸血鬼に襲われたグール辺りか。
「グール、にしては変だな? まだ陽が出てる」
「そうよね? ねぇ奈緒子さん、それゾンビなの?」
『それがね、そこもハッキリしなくて。不死者っぽい何かと言うか』
「なんだそれ?」
不死者と言えば基本的にはゾンビかグールだ。怨霊が乗り移った死体の場合もあるが、それならそれで判断は出来る筈。
魔導協会が判断に困る様な何かと言うのは随分と珍しい。それ故に俺達に連絡が来たと言う事だろう。死神の神子である俺と、軍に居た経験のあるアイナ。相談する相手としては丁度良かったと言う訳だ。
「データはありますか?」
『ちょっと待ってて、すぐ送るから』
「……何これ? 清志分かる?」
送られて来たデータを見る限り、不死者らしき何かと判断されたのも納得だ。見た目は綺麗で腐敗しておらずゾンビではない。
まともに意識は無い様で、ただ徘徊しているだけ。グールの様に生物の血を求めるでもなく、しかし近付く者へは襲い掛かる。
死体なのは明らかで、生体反応は非常に微弱。聖水等の効果は全く受け付けず、読経の類もまた効果は無し。
ゾンビでもグールでも霊的な存在でも無い。確かに謎の不死者としか言えない。初めてみるパターンだ。
「人形師が死体を使っている、とか?」
『それも違うみたい。そう言った魔術の反応は出ていないわ』
「ネクロマンシー、なら聖水が効くものねぇ」
「呪符が無いからキョンシーでも無いな」
動きは緩慢で脅威度は低い、しかし処理方法が分からないと。現状は現場を封鎖する事で特別被害は出て居ないが、このままと言う理由にも行かないか。
戦闘能力がかなり低いのは映像で分かったけれど、処理方法が不明では担当の魔術師も困るだろう。どうせ今はやる事がない、ここは加勢にでも行くとしよう。
「なあ、アイナ」
「分かってる、行くんでしょ?」
『二人共ありがとう~助かるわ』
「安達さん、車を回して貰えますか?」
アイナと2人で校門前で待つ事15分ほど、魔導協会が所有する黒のワゴン車が到着した。何度も会った事のあるBランク魔術師が運転席に座っていた。
成田さんと言う若い大人の女性だ。彼女は物質強化や付与魔術を得意とする付与系統の魔術師だ。
成田さんが運転する車はトラックに追突されても無傷だし、噂では戦車の砲撃にも耐える強度を車両に与えられるらしい。
ある意味では、要人とも言えるアイナを迎えに来る人選として納得のチョイスだった。
「今日も宜しくお願いします」
「ええ、宜しく」
あまり口数は多くないけど、仕事はきっちり真面目にこなす成田さんの運転で俺達は現場へと向かった。
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