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第1章
第19話 後悔先に立たず
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「はぁ……やっちまった」
昨日ついカッとなって、アイナに詰め寄ってしまった。理由をまともに聞こうとせずに。随分とまあ情けない真似をしたものだ。
昔と何も変わっていないじゃないか。結局は、俺がガキのままだって事か。勝手に自分と全く同じなんだと決め付けて、勝手に期待してやり方が違うからとキレる。
とんでもないわがまま坊主だ。もう高校生だぞ? 小学生かよ馬鹿みたいに勝手に怒って。
「学校でどんな顔すれば良いんだ」
かつて無い程の大失態だ。これまでもそれなりの失敗は重ねて来たが、ここまで幼稚な失敗は中々ない。
ある意味では冷め切っていた、小学生の頃の方が幾らか大人だったかも知れない。今の方が退化しているじゃないか。
特大の黒歴史のお陰で、朝から憂鬱だった。重い腰を上げて、義姉さんの分も含めて朝の用意を始める。朝6時、まだ早い時間から活動を始めるのが日課だ。
家事スキルが終了している義姉はまだ寝ている。どうせ居ても役に立たないし、遅くまで働いているのを知っている。だからこの状況に文句はない。
住まわせて貰っている恩もある。理不尽だったり連絡が適当だったりする点以外には、何ら不満の無い義姉だ。
いや、家でだらし無いのも嫌だな。そこまで考えて思い出す先日の義姉の言葉。
『同じ傷を持ち、魔導犯罪を許さない者同士であると言う事を忘れるな』
「はぁ……ダッサ」
クソ格好悪いなコレ、情けないSランクとして後世に悪名を残すレベルでダサい。最悪だよ、女の子相手にあんなにムキになってさ。
付き合いの長い茉莉相手でも、あんなに怒った事は無い。新しいおもちゃを買って貰った子供かよ。
勝手にはしゃいで勝手に怒って。それなりに大人になれたつもりだったけど、まだまだ全然未熟だったと言う事か。
「珍しく自省?」
「煩いな! あと勝手に出て来るな」
「あの娘はやめろと言ったわよね?」
「はぁ? 何でその話になる?」
フライパンで目玉焼きを焼いていたら、突然ウチの女神様がやって来た。また勝手に人の魔力を使いやがって。もし万が一って時に足りなくなったらどうするんだよ。
「忠告、忘れないでね」
「だから何だ? てか食べないの?」
「置いといて」
この家には説明不足と理不尽が備わった女性しか居ないのか。何で俺の周りはこんな大人ばかりなのか。
そう思いつつも、悲しかな俺の腕は3個目の目玉焼きを作り始める。飼い慣らされている。傍若無人学園長に、自由人女神の2人に根っ子から調教されている。
決してノーと言えず、文句を言いながらもやってしまう。情けない、今日に関しては二重の意味で情けない。
ごめん父さん母さん、俺はもう誰かの尻に敷かれる未来しかないみたいだ。息子がこの有り様で、本当に申し訳ない。
「おはよう清志、もう出来ているのか?」
「そこにあるよ、好きに持って行って」
「昨日の件で聞きたい事がある。昼休みに学園長室に来てくれ」
「ぇ゙っ……」
ま、まさか国際問題的なアレ? 米海軍所属兼米国魔導協会の秘蔵っ子に不快感を与えた的な? その場合はもう全力で頭を下げる以外に道は無いんだが。
賠償金とか、お詫びの品的な何かが必要なやつか? 国家レベルとなると流石に俺の稼ぎでもかなり厳しい事になると思うんだけど。
「どうした?」
「いや、えっと、昨日の事、って何かな?」
「テロリストの事だ。寝ぼけているのか?」
「あ、あーそれね。了解了解」
国際問題、回避! …………いや待てよ、本当に大丈夫なのか? シャーロットなんかは昔、『国際問題ですわよ!』とか良く言っていたよな。
最近は言わなくなったけど。つまりまだ、完全回避とは言えないのでは? そんな考えが浮かんでは消え、キリキリと痛む胃痛に苛まれながら朝食を食べた。味は全然分からなかった。
「じゃあ行ってくるぞ」
「ええ、行ってらっしゃい」
テレビを観ながら食パンを食べる、黄泉の国の最高責任者。あまりにもシュールだ。お前本当にそれで良いのかよ。
それっぽいのは見た目だけで、やっている事はただの人間じゃないか。何かどんどんと俗っぽくなって行くな。
昔は結構ちゃんとしていた様な……いや、そんなに変わらないか。制服に着替え終えて通学鞄を持つ、通学用の靴に履き替え玄関を出る。
「おはよう清志」
「はぁっ!? いや、え? なんで?」
「何でって、一緒に行くでしょ?」
「いや、だって、昨日の……」
あれだけ失礼な態度を取ったのに、これまでと何も変わらない対応だった。意味が分からない。普通は怒るんじゃないのか?
あんな風に一方的にキレられて。どう考えても俺が悪いし、アイナに落ち度は何も無い。まだ謝っても居ないのに、何で当たり前の様に待って居てくれたんだ。と言うかそもそも問題はそこじゃなくて。
「ごめん! 昨日は、つい熱くなって」
「えっ!? 何で謝るの?」
「は? いやだって、どう考えても俺が悪いだろ」
「昨日も言ったでしょ? 私も昔はそうだったって」
そう言えば確かに、そんな事を言っていた様な。いやだとしても、だからってそんなにあっさり許す様な事なのか? まあまあな勢いで詰め寄ったと言うのに。
「だけど、それでは」
「今日の放課後、一緒に魔導協会に行かない?」
「え? ああ、別に良いけど」
「じゃ、行きましょ」
何だか良く分からないが、アイナとしてはこれで良いらしい。分からん、シャーロットなら3日は無視されるぐらい怒るのに。やっぱり、国による文化の違いか?
昨日ついカッとなって、アイナに詰め寄ってしまった。理由をまともに聞こうとせずに。随分とまあ情けない真似をしたものだ。
昔と何も変わっていないじゃないか。結局は、俺がガキのままだって事か。勝手に自分と全く同じなんだと決め付けて、勝手に期待してやり方が違うからとキレる。
とんでもないわがまま坊主だ。もう高校生だぞ? 小学生かよ馬鹿みたいに勝手に怒って。
「学校でどんな顔すれば良いんだ」
かつて無い程の大失態だ。これまでもそれなりの失敗は重ねて来たが、ここまで幼稚な失敗は中々ない。
ある意味では冷め切っていた、小学生の頃の方が幾らか大人だったかも知れない。今の方が退化しているじゃないか。
特大の黒歴史のお陰で、朝から憂鬱だった。重い腰を上げて、義姉さんの分も含めて朝の用意を始める。朝6時、まだ早い時間から活動を始めるのが日課だ。
家事スキルが終了している義姉はまだ寝ている。どうせ居ても役に立たないし、遅くまで働いているのを知っている。だからこの状況に文句はない。
住まわせて貰っている恩もある。理不尽だったり連絡が適当だったりする点以外には、何ら不満の無い義姉だ。
いや、家でだらし無いのも嫌だな。そこまで考えて思い出す先日の義姉の言葉。
『同じ傷を持ち、魔導犯罪を許さない者同士であると言う事を忘れるな』
「はぁ……ダッサ」
クソ格好悪いなコレ、情けないSランクとして後世に悪名を残すレベルでダサい。最悪だよ、女の子相手にあんなにムキになってさ。
付き合いの長い茉莉相手でも、あんなに怒った事は無い。新しいおもちゃを買って貰った子供かよ。
勝手にはしゃいで勝手に怒って。それなりに大人になれたつもりだったけど、まだまだ全然未熟だったと言う事か。
「珍しく自省?」
「煩いな! あと勝手に出て来るな」
「あの娘はやめろと言ったわよね?」
「はぁ? 何でその話になる?」
フライパンで目玉焼きを焼いていたら、突然ウチの女神様がやって来た。また勝手に人の魔力を使いやがって。もし万が一って時に足りなくなったらどうするんだよ。
「忠告、忘れないでね」
「だから何だ? てか食べないの?」
「置いといて」
この家には説明不足と理不尽が備わった女性しか居ないのか。何で俺の周りはこんな大人ばかりなのか。
そう思いつつも、悲しかな俺の腕は3個目の目玉焼きを作り始める。飼い慣らされている。傍若無人学園長に、自由人女神の2人に根っ子から調教されている。
決してノーと言えず、文句を言いながらもやってしまう。情けない、今日に関しては二重の意味で情けない。
ごめん父さん母さん、俺はもう誰かの尻に敷かれる未来しかないみたいだ。息子がこの有り様で、本当に申し訳ない。
「おはよう清志、もう出来ているのか?」
「そこにあるよ、好きに持って行って」
「昨日の件で聞きたい事がある。昼休みに学園長室に来てくれ」
「ぇ゙っ……」
ま、まさか国際問題的なアレ? 米海軍所属兼米国魔導協会の秘蔵っ子に不快感を与えた的な? その場合はもう全力で頭を下げる以外に道は無いんだが。
賠償金とか、お詫びの品的な何かが必要なやつか? 国家レベルとなると流石に俺の稼ぎでもかなり厳しい事になると思うんだけど。
「どうした?」
「いや、えっと、昨日の事、って何かな?」
「テロリストの事だ。寝ぼけているのか?」
「あ、あーそれね。了解了解」
国際問題、回避! …………いや待てよ、本当に大丈夫なのか? シャーロットなんかは昔、『国際問題ですわよ!』とか良く言っていたよな。
最近は言わなくなったけど。つまりまだ、完全回避とは言えないのでは? そんな考えが浮かんでは消え、キリキリと痛む胃痛に苛まれながら朝食を食べた。味は全然分からなかった。
「じゃあ行ってくるぞ」
「ええ、行ってらっしゃい」
テレビを観ながら食パンを食べる、黄泉の国の最高責任者。あまりにもシュールだ。お前本当にそれで良いのかよ。
それっぽいのは見た目だけで、やっている事はただの人間じゃないか。何かどんどんと俗っぽくなって行くな。
昔は結構ちゃんとしていた様な……いや、そんなに変わらないか。制服に着替え終えて通学鞄を持つ、通学用の靴に履き替え玄関を出る。
「おはよう清志」
「はぁっ!? いや、え? なんで?」
「何でって、一緒に行くでしょ?」
「いや、だって、昨日の……」
あれだけ失礼な態度を取ったのに、これまでと何も変わらない対応だった。意味が分からない。普通は怒るんじゃないのか?
あんな風に一方的にキレられて。どう考えても俺が悪いし、アイナに落ち度は何も無い。まだ謝っても居ないのに、何で当たり前の様に待って居てくれたんだ。と言うかそもそも問題はそこじゃなくて。
「ごめん! 昨日は、つい熱くなって」
「えっ!? 何で謝るの?」
「は? いやだって、どう考えても俺が悪いだろ」
「昨日も言ったでしょ? 私も昔はそうだったって」
そう言えば確かに、そんな事を言っていた様な。いやだとしても、だからってそんなにあっさり許す様な事なのか? まあまあな勢いで詰め寄ったと言うのに。
「だけど、それでは」
「今日の放課後、一緒に魔導協会に行かない?」
「え? ああ、別に良いけど」
「じゃ、行きましょ」
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