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第1章
第13話 パートナーが居ると言う事
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「や! 待ってたよ清志」
「えっと、何で?」
翌朝学校へ向かおうと玄関を出てみれば、何故か留学生が待っていた。何故に待っていたのだろうか。
とりあえずの情報交換はしたし、学校に行けば会えるのだからここで待つ必要などない。クラスは同じだし、所属も同じ魔法戦技科だ。
何なら同じ執行者同士、魔導協会京都支部でも顔を合わせる事になる。意味が分からない。
「一緒に登校しようよ」
「…………え?」
「え、嫌なの?」
「いやいや、違うよ! そんな事はない」
まさかそんな理由で、わざわざ朝から待っていたのか? 確かにパートナーとしては、良い相手かも知れないとは思った。
しかし翌朝から一緒に登校とは。その行動力には驚かされるよ。実際、こんなものなのか? パートナーを持つのは初めてだからイマイチ分からない。
「あ~その、君はどうして」
「ストップ! 名前で読んでよ」
「え、ああ。……クラークさん?」
「アイナで良いから」
昨日初めて会った女子を、いきなり名前呼びにしろと来ましたか。それ、俺としては中々ハードルが高いんだけどね。そんなホイホイ女子を名前で呼んで周る様な男に見えるのだろうか。
「どうしても?」
「そりゃそうよ。パートナーなんだから」
「あ~その。あ、アイナ」
「うんうん! で、何を聞きたいの?」
やっぱアメリカ人って、凄く明るいわ。これで良いのか、男女の距離感。こんな簡単に詰めて来るのかよ。恐ろしい社会だな、超絶陽キャ社会。俺には無理そうだ、アメリカで暮らすのは。
「どうしてそんなに積極的なんだ?」
「パートナーが欲しかったから。貴方は違うの?」
そう、だよな。俺と同じ境遇だったのなら、考える事も似ている筈だ。出来る限り魔導犯罪を減らしたいし、被害者が出る前に阻止したい。
しかし、単独で出来る事には限界がある。かと言って、戦力的に着いて来られない魔術師を選ぶのは不味い。
シャーロット達とチームを一時的に組む事はあっても、少数精鋭で行きたい時は困る。安心して背中を任せられる魔術師でないと、パートナーとしては厳しい。
「……俺もそうだよ。本当は欲しかった」
「やっぱり。なら、分かるでしょ」
「そう、だな。悪い、変な事聞いたな」
女子は気を遣うとか、出来たら同性が良いとか。本当はそんな事、どうでも良い事なんだ。俺と同じだけ、熱意を持って活動してくれる人物。
その上で実力にも申し分がない人物。そんな人物が、都合よく簡単に見付かる筈がないと言う諦観。
何せSランクは本来、神の神子にしかなれない。おまけに神様にも格はある訳で、ウチの神様に匹敵するレベルともなれば大体既にパートナーが居る。
最年少で神の神子になった弊害だった。同い年で単独のSランク魔術師がどこにも居なかったのだ。
世代交代が早すぎた為、他の神子達とズレてしまった。それが今、幸運にも成り立つかも知れない相手が現れたんだ。
「ま、これから仲良くして行きましょう」
「そうだな。すまない、最初からそれで良かったんだな」
「宜しくね、清志」
「ああ、宜しくな。アイナ」
アレコレ余計な事は考えず、最初からこうして握手をするだけで良かった。どこか世の中に対する、やんわりとした諦めの心があった。
だから最初から信用しようとしていなかった。心の底から渇望しておきながら、どうせ居る訳がないと切り捨てていた。
一度ぐらい、信用してみても良いんじゃないだろうか。この子、悪い奴では無さそうだしな。
さて、正式にパートナーを迎え入れて最初の魔法戦技の授業だ。俺が全力を出しても、着いて来られるかも知れない魔術師と初めて一緒に受けている。
これまでは、ある程度相手に合わせる必要があった。しかし、今日は手を抜く必要はないだろう。あれだけ戦える魔術師が、パートナーなのだから。
「Sランクコンビは先生も初めてね……壊さないでね?」
「分かっていますよ」
「そーそー。大丈夫ですって」
対魔術師戦闘用のシミュレーター。それが闘技場の設備として用意されている。魔術により色々なシチュエーションを作り出す事が出来る。
倉庫の中や砂漠、飛行機の中やショッピングモールの中など様々な環境を構築出来る。テロリストの模擬人形や妖怪、悪魔など敵役の出現も自由自在だ。
通常の授業では、コイツを利用した戦闘訓練が主な内容だ。昨日の模擬戦の様な事をやる時もあるが、そんなに高い頻度ではやらない。
そんな事をしなくても、この機能だけでも十分な経験を得られる。シミュレーターとは言っても、過去に実際にいた犯罪者や悪魔達の行動をそのままトレースしている。
さらに優秀なAIがそれをサポートするので、ほぼ実戦に近い戦闘が出来る様になっている。魔導協会でも正式に採用されているものなので、プロが使うものと大差はない。
魔導協会ですら危険視する様な、非常に危険な相手が登録されていない事以外に、プロ用との違いは殆ど無い。
「手加減しないけど、良いよな?」
「もちろん! そんなの不要よ」
「よし、やるか!」
目の前に浮かんでいた、シミュレーターの開始パネルをタッチした。闘技場の内部構造が変化を始める。
完全ランダム設定にしてあるので、どんなシチュエーションで始まるかは不明だ。さあ、始めようか。パートナーとしての最初の戦闘を。
「えっと、何で?」
翌朝学校へ向かおうと玄関を出てみれば、何故か留学生が待っていた。何故に待っていたのだろうか。
とりあえずの情報交換はしたし、学校に行けば会えるのだからここで待つ必要などない。クラスは同じだし、所属も同じ魔法戦技科だ。
何なら同じ執行者同士、魔導協会京都支部でも顔を合わせる事になる。意味が分からない。
「一緒に登校しようよ」
「…………え?」
「え、嫌なの?」
「いやいや、違うよ! そんな事はない」
まさかそんな理由で、わざわざ朝から待っていたのか? 確かにパートナーとしては、良い相手かも知れないとは思った。
しかし翌朝から一緒に登校とは。その行動力には驚かされるよ。実際、こんなものなのか? パートナーを持つのは初めてだからイマイチ分からない。
「あ~その、君はどうして」
「ストップ! 名前で読んでよ」
「え、ああ。……クラークさん?」
「アイナで良いから」
昨日初めて会った女子を、いきなり名前呼びにしろと来ましたか。それ、俺としては中々ハードルが高いんだけどね。そんなホイホイ女子を名前で呼んで周る様な男に見えるのだろうか。
「どうしても?」
「そりゃそうよ。パートナーなんだから」
「あ~その。あ、アイナ」
「うんうん! で、何を聞きたいの?」
やっぱアメリカ人って、凄く明るいわ。これで良いのか、男女の距離感。こんな簡単に詰めて来るのかよ。恐ろしい社会だな、超絶陽キャ社会。俺には無理そうだ、アメリカで暮らすのは。
「どうしてそんなに積極的なんだ?」
「パートナーが欲しかったから。貴方は違うの?」
そう、だよな。俺と同じ境遇だったのなら、考える事も似ている筈だ。出来る限り魔導犯罪を減らしたいし、被害者が出る前に阻止したい。
しかし、単独で出来る事には限界がある。かと言って、戦力的に着いて来られない魔術師を選ぶのは不味い。
シャーロット達とチームを一時的に組む事はあっても、少数精鋭で行きたい時は困る。安心して背中を任せられる魔術師でないと、パートナーとしては厳しい。
「……俺もそうだよ。本当は欲しかった」
「やっぱり。なら、分かるでしょ」
「そう、だな。悪い、変な事聞いたな」
女子は気を遣うとか、出来たら同性が良いとか。本当はそんな事、どうでも良い事なんだ。俺と同じだけ、熱意を持って活動してくれる人物。
その上で実力にも申し分がない人物。そんな人物が、都合よく簡単に見付かる筈がないと言う諦観。
何せSランクは本来、神の神子にしかなれない。おまけに神様にも格はある訳で、ウチの神様に匹敵するレベルともなれば大体既にパートナーが居る。
最年少で神の神子になった弊害だった。同い年で単独のSランク魔術師がどこにも居なかったのだ。
世代交代が早すぎた為、他の神子達とズレてしまった。それが今、幸運にも成り立つかも知れない相手が現れたんだ。
「ま、これから仲良くして行きましょう」
「そうだな。すまない、最初からそれで良かったんだな」
「宜しくね、清志」
「ああ、宜しくな。アイナ」
アレコレ余計な事は考えず、最初からこうして握手をするだけで良かった。どこか世の中に対する、やんわりとした諦めの心があった。
だから最初から信用しようとしていなかった。心の底から渇望しておきながら、どうせ居る訳がないと切り捨てていた。
一度ぐらい、信用してみても良いんじゃないだろうか。この子、悪い奴では無さそうだしな。
さて、正式にパートナーを迎え入れて最初の魔法戦技の授業だ。俺が全力を出しても、着いて来られるかも知れない魔術師と初めて一緒に受けている。
これまでは、ある程度相手に合わせる必要があった。しかし、今日は手を抜く必要はないだろう。あれだけ戦える魔術師が、パートナーなのだから。
「Sランクコンビは先生も初めてね……壊さないでね?」
「分かっていますよ」
「そーそー。大丈夫ですって」
対魔術師戦闘用のシミュレーター。それが闘技場の設備として用意されている。魔術により色々なシチュエーションを作り出す事が出来る。
倉庫の中や砂漠、飛行機の中やショッピングモールの中など様々な環境を構築出来る。テロリストの模擬人形や妖怪、悪魔など敵役の出現も自由自在だ。
通常の授業では、コイツを利用した戦闘訓練が主な内容だ。昨日の模擬戦の様な事をやる時もあるが、そんなに高い頻度ではやらない。
そんな事をしなくても、この機能だけでも十分な経験を得られる。シミュレーターとは言っても、過去に実際にいた犯罪者や悪魔達の行動をそのままトレースしている。
さらに優秀なAIがそれをサポートするので、ほぼ実戦に近い戦闘が出来る様になっている。魔導協会でも正式に採用されているものなので、プロが使うものと大差はない。
魔導協会ですら危険視する様な、非常に危険な相手が登録されていない事以外に、プロ用との違いは殆ど無い。
「手加減しないけど、良いよな?」
「もちろん! そんなの不要よ」
「よし、やるか!」
目の前に浮かんでいた、シミュレーターの開始パネルをタッチした。闘技場の内部構造が変化を始める。
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