死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第1章

第6話 Sideシャーロット

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 私、シャーロット・ウィルソンは英国の名門貴族に生まれました。大昔から代々魔女をやっていた伝統ある魔術師の家系。
 お母様もお祖母様も皆が魔術師。女性が必ず魔術師になり、男性は皆歴史ある騎士の家系から選ばれて来ました。
 現在では標準となった、二人一組の前身とも言うべきスタイルだったと言う訳ですわね。流石ウィルソン家、先見の明があったと言う他ありません。
 しかし幾ら名門でも、限界があります。最近では魔術師同士で結婚するのが主流。大昔と違って今は様々な魔術を総合的に使用する時代。
 魔女の魔法に頼り切りではやって行けません。そこに早くから目を付けていたお祖母様の代から、色々と変化が生まれました。

 女性も剣術を学び、いざという時は自分で自分を守る戦法に変わりました。お母様も私も、細剣の扱いを学んでおります。
 杖にも変化が起きました。お祖母様の代までは、大きな樫の杖に魔法触媒を付ける形でした。
 しかしお母様の代からは、杖の代わりに魔術で加工した特殊な金属の細剣を持つ様になりました。
 その柄に魔法触媒を付け、杖としての機能も持たせた新しい在り方。私は新たなウィルソン家の、新しいスタイルを継いだ2代目とも言えます。
 ですから私は、自分に相応しい男性を見付けて、次の世代に繋がないといけません。

 その為、お祖母様がお付き合いのあったこの嵯峨学園に初等部の頃から通い始めましたが、今の所一番の旦那様候補は、神坂清志こうさかせいじさんでしょう。
 彼なら血筋も実力も、人間性にも問題はないでしょう。むしろ、現状では私が追い掛ける立場。
 同年代のAランク魔術師ではトップと言える領域まで来た私こそが、彼に最も相応しい存在だと思っておりました。今日この時までは。

「全く、なんですのあの方! 突然現れたかと思えば神坂さんのパートナーですって?」

 模擬戦用に用意された闘技場の控室で、少々はしたないですが愚痴を溢させて頂きました。流石にあれは酷いのではなくて?
 どう見てもBランクにしか見えませんでしたわ。戦闘は出来る様に見えましたが、魔力量を隠蔽している様には見えませんでした。
 魔力量を補って余りある戦闘力があると言う事かしら? 確かに体を鍛えては居る様でしたが。
 もしSランクと言うなら、神子の証を見せれば良いだけ。なのに、それはせずに模擬戦。これは恐らく、何かありますわね?

「良いでしょう。留学生の化けの皮、剥がしてさしあげてよ!」

 入場用のゲートから闘技場に入ると、やけに見学者が多い事に気付きました。別のクラスの生徒達がチラホラと。
 アレは3年生ですわね? 情報の早い事で。情報科の生徒達が陰で動いていたのでしょう。
 あの方達、味方の時は助かりますけどこう言うのは困りますわ。野次馬はご勘弁願いたいです。

「おい、あれか?」

「へ~結構可愛いじゃん」

 全く、どこを見て居ますのよ。これだから不躾な殿方は困りますわ。その様な視線をレディに向けるものではありません。

「ぐおぉぉぉ目が!? 目が!?」

「いてぇ!? 何か飛んで来たぞ!?」

 さて、躾のなっていない殿方は放っておいて。本来の目的を果たしましょう。さあ、貴方の実力を見せて頂きますわよ。

「まさか素手でやるおつもり?」

「まさか、貴女相手にそんな真似はしないよ」

「……へぇ、錬金術師ですか」

 いつの間にか、彼女の両手に1丁ずつ拳銃が握られていた。金属を自在に操る錬金術。0からあらゆる金属製品を作り出す魔術。
 しかし、錬金術師は普通近接戦を選ぶ。何故なら、銃火器は弾の消費が激しい。余程の作り置きでも無い限りは、1日の魔力回復量を超えてしまう。
 そうなれば魔力切れで終了。だから通常、錬金術師は剣や槍等を使用する。破損してもすぐ修復出来るのが強みだから。

 にも関わらず、敢えて銃火器を選びますか。彼女の魔力が尽き果てるのが先か、私の魔力が尽きるのが先か。
 そんなの考えるまでもありません。Aランクの私と、見る限りBランクの彼女では魔力量が1ランク分違う。
 つまり、この撃ち合いで私が負ける要素がゼロ。さて、貴女はどんな事をしてくれるのかしら?

「両者、準備は良いかな?」

「ええ、構いません」

「こちらも」

「始め!」

 さあて、それではウィルソン家が誇る氷の魔女の力を見せて差し上げ……彼女はどこに!?

「っ!? ちょ、貴方! 足グセが悪いのではなくて!?」

「そう? ごめんね足長くて」

「減らず口を!!」

 何ですのこの方!? 銃を手にしておいて、最初の一撃が蹴りっておかしいでしょうが!? じゃあ何の為に持ちましたの? 初手格闘戦って、素手と変わらないじゃありませんの!?
 全く、初撃を防げなかったら危なかったですわね。と言うか、その細い足でどんな威力してますのよ?
 まだ手が震えていますわよ。ゴリラなんですの貴女? 乙女にあるまじき粗暴な戦闘を平気でするなんて。

「それ!」

「レディがそんなに高く足を上げて! はしたないくてよ!」

「いや~育ち悪いからさ」

 ああ言えばこう言う! 全く、これだからアメリカ人は優雅さが足りないのですわ! 紅茶には大量に砂糖を入れますし。大雑把過ぎますわよ、もっと華麗に振る舞えませんの?

「バーン! ってね」

「その程度、余裕で弾けましてよ」

 どうやら魔導銃の様ですわね。なるほど、実弾を撃つより魔力弾を撃つ道を選んだのですね。ですがそんなモノ、私の細剣でなら簡単に弾いて逸らせますわ。この程度の弾速なら、そう思った時でした。

「触ったねぇ、私の魔力に」

 いけ好かないアメリカ人が、ニヤリと嗤ったのが見えました。 
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