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第2章
第46話 猫カフェデート
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凛ちゃんは動物が好きだ。犬や猫はもちろんの事、ハムスターや文鳥なんかも飼いたいと思っている。
しかし、凛ちゃんの両親は残念ながらペットNGである。それ故に凛ちゃんは、ネコカフェやドッグカフェと言った店舗が大好きだ。
俺も動物は嫌いじゃないので、たまにデートを兼ねて一緒に行っている。動物園なんかもたまに行く。
「わぁ~可愛い!」
「子猫専門店なんてあるんだ」
「涼ちゃんほら! 早く!」
テンションの高い凛ちゃんに手を引かれながら、猫達の居る室内に入る。今回来た店舗は、フリータイム制がある店舗だった。
最初から最大料金を払えば、後は何時間でも滞在しても良いシステムになっている。ただし、猫にあげる食べ物類は別料金だ。
猫用のアイスなどを与えて、猫と触れ合いが出来る様になっている。猫と触れ合うも良し、ただ猫と居る空間に居座るだけも良し。
ここの店は本の持ち込みやタブレット、ノートPCを持ち込んでの作業も許されている。猫に癒されたい大人の女性達が、既に何人か店内に居た。
「涼ちゃん、サイベリアンだよ!」
「名前だけ知ってたけど、この猫がそうなんだ」
「可愛い~ほらおいで~」
犬と猫のどちら派かと言えば、犬寄りな俺は猫の種類にあまり詳しくない。かと言って犬に詳しいかと言えばそんな事はなく。
日本で有名な種類の一部しか知らない。なんとなくのイメージだけど、小動物には女性の方が詳しい印象がある。
性別で判断するのは良くないかも知れないけど、可愛いモノに詳しいのは女性が多いと思う。
カッコイイモノが好きな女性が居ても良いし、可愛いモノが好きな男性が居ても良い。だけど、全体的な割合で言えばやっぱり女性の方が可愛いモノに強い。
「アメショも可愛いな~よしよし」
「意外と人に寄って来るな」
「見て見て涼ちゃん、この子可愛いよ」
猫は気まぐれで、犬みたいに人間に興味を持たない。そんなイメージを持っていたけれど、案外そんな事は無いらしい。
凛ちゃんに撫でられている子猫は、満足そうにその場から動かない。黒と白、グレーの3色が鮮やかな小さな猫は気分良さそうに床に寝転んでいた。
こうして見ると、猫も悪くない。思っていた以上に、人間との触れ合いを猫も楽しむものらしい。
「せっかくだしアレやる?」
「アレ?」
「ほら、猫用のアイスあげるヤツ」
「あ、そうだね!」
良い感じに凛ちゃんに興味を持ったらしいアメリカンショートヘアの子猫を凛ちゃんに任せて、俺が店員さんの元へと向かう。
会計を済ませて猫用のアイスキャンディーを購入した。500円玉ぐらいの小さな大きさで、猫の頭を形取った可愛らしいアイスだった。
「はい、凛ちゃん」
「ありがとう!」
「おっ、反応した」
俺が手渡した物が何なのか把握しているのだろう。寝転んでいた子猫がスッと立ち上がった。凛ちゃんが差し出したアイスを、小さな舌で舐め始めた。
気付いたらしい別の猫までやって来て、2匹で小さなアイスを舐めている。その姿が気に入ったのか、凛ちゃんは写真をスマホで沢山撮っている。
確かにこれは写真に残す価値がある。非常に癒される光景がそこにはあった。
「涼ちゃんほら、可愛くない!?」
「良く撮れてるね」
「壁紙にしようかな~」
上機嫌な凛ちゃんを見ていると、こっちまで幸せな気分になれる。これが俺の望んだ状況だ。何気ない時間を、2人で過ごす日々。
俺が何も分かって居なかったから、失くしてしまった過去。だけど今はその経験があるからこそ、こんな普通の日々が大切だと分かる。
一番に考えないといけないのは、相手の幸せだと言う事。相手を先ず尊重しない事には、恋人と言う関係は成立しない。自分があの日、勝手に自己満足で終わった愚かさを理解したから今がある。
「どうかしたの?」
「いや、何でもないよ」
「そう?」
この女の子が、ずっと笑っていられる様にしたい。未だに女心と言うモノの全貌は見えないけれど、もう二度とあんな関係性になりたくはない。
せっかく好意を向けてくれたのに、何も分かっていなくて困らせて。疑われても仕方のない状況に追い込んだ。
これから先も、きっと同じ様な状況を生む機会はあるだろう。進学に就職、結婚はもちろん凛ちゃんが望むなら出産や子育てもある。
この先の未来で、いつどんな形で誤解を与えるか分からない。なんせ俺は、まだ漸く17年と言う節目を迎える若造でしかない。
分からない事だらけで、どこまでやれるのかも未知数だ。結局は凛ちゃんを失望させて終わるかも知れない。また無意味に傷つけてしまうかも知れない。
だけどせめて、向き合う事から目を逸らす事だけはしない様にしたい。自分がやってしまった、過去の失敗を自覚したからこそ。
「あ~無くなっちゃった」
「あげたくなったら、また買えば良いよ」
「そうだよね!」
そう、やり直せば良いんだ。いつかまた、失敗したとしても。自分が悪いなら謝れば良い。相手が失敗したなら、許せば良い。
そうやってお互いに、協力し合って行けばきっと関係は続いて行く筈だから。その先に、俺と凛ちゃんの未来が待っていると信じて。
しかし、凛ちゃんの両親は残念ながらペットNGである。それ故に凛ちゃんは、ネコカフェやドッグカフェと言った店舗が大好きだ。
俺も動物は嫌いじゃないので、たまにデートを兼ねて一緒に行っている。動物園なんかもたまに行く。
「わぁ~可愛い!」
「子猫専門店なんてあるんだ」
「涼ちゃんほら! 早く!」
テンションの高い凛ちゃんに手を引かれながら、猫達の居る室内に入る。今回来た店舗は、フリータイム制がある店舗だった。
最初から最大料金を払えば、後は何時間でも滞在しても良いシステムになっている。ただし、猫にあげる食べ物類は別料金だ。
猫用のアイスなどを与えて、猫と触れ合いが出来る様になっている。猫と触れ合うも良し、ただ猫と居る空間に居座るだけも良し。
ここの店は本の持ち込みやタブレット、ノートPCを持ち込んでの作業も許されている。猫に癒されたい大人の女性達が、既に何人か店内に居た。
「涼ちゃん、サイベリアンだよ!」
「名前だけ知ってたけど、この猫がそうなんだ」
「可愛い~ほらおいで~」
犬と猫のどちら派かと言えば、犬寄りな俺は猫の種類にあまり詳しくない。かと言って犬に詳しいかと言えばそんな事はなく。
日本で有名な種類の一部しか知らない。なんとなくのイメージだけど、小動物には女性の方が詳しい印象がある。
性別で判断するのは良くないかも知れないけど、可愛いモノに詳しいのは女性が多いと思う。
カッコイイモノが好きな女性が居ても良いし、可愛いモノが好きな男性が居ても良い。だけど、全体的な割合で言えばやっぱり女性の方が可愛いモノに強い。
「アメショも可愛いな~よしよし」
「意外と人に寄って来るな」
「見て見て涼ちゃん、この子可愛いよ」
猫は気まぐれで、犬みたいに人間に興味を持たない。そんなイメージを持っていたけれど、案外そんな事は無いらしい。
凛ちゃんに撫でられている子猫は、満足そうにその場から動かない。黒と白、グレーの3色が鮮やかな小さな猫は気分良さそうに床に寝転んでいた。
こうして見ると、猫も悪くない。思っていた以上に、人間との触れ合いを猫も楽しむものらしい。
「せっかくだしアレやる?」
「アレ?」
「ほら、猫用のアイスあげるヤツ」
「あ、そうだね!」
良い感じに凛ちゃんに興味を持ったらしいアメリカンショートヘアの子猫を凛ちゃんに任せて、俺が店員さんの元へと向かう。
会計を済ませて猫用のアイスキャンディーを購入した。500円玉ぐらいの小さな大きさで、猫の頭を形取った可愛らしいアイスだった。
「はい、凛ちゃん」
「ありがとう!」
「おっ、反応した」
俺が手渡した物が何なのか把握しているのだろう。寝転んでいた子猫がスッと立ち上がった。凛ちゃんが差し出したアイスを、小さな舌で舐め始めた。
気付いたらしい別の猫までやって来て、2匹で小さなアイスを舐めている。その姿が気に入ったのか、凛ちゃんは写真をスマホで沢山撮っている。
確かにこれは写真に残す価値がある。非常に癒される光景がそこにはあった。
「涼ちゃんほら、可愛くない!?」
「良く撮れてるね」
「壁紙にしようかな~」
上機嫌な凛ちゃんを見ていると、こっちまで幸せな気分になれる。これが俺の望んだ状況だ。何気ない時間を、2人で過ごす日々。
俺が何も分かって居なかったから、失くしてしまった過去。だけど今はその経験があるからこそ、こんな普通の日々が大切だと分かる。
一番に考えないといけないのは、相手の幸せだと言う事。相手を先ず尊重しない事には、恋人と言う関係は成立しない。自分があの日、勝手に自己満足で終わった愚かさを理解したから今がある。
「どうかしたの?」
「いや、何でもないよ」
「そう?」
この女の子が、ずっと笑っていられる様にしたい。未だに女心と言うモノの全貌は見えないけれど、もう二度とあんな関係性になりたくはない。
せっかく好意を向けてくれたのに、何も分かっていなくて困らせて。疑われても仕方のない状況に追い込んだ。
これから先も、きっと同じ様な状況を生む機会はあるだろう。進学に就職、結婚はもちろん凛ちゃんが望むなら出産や子育てもある。
この先の未来で、いつどんな形で誤解を与えるか分からない。なんせ俺は、まだ漸く17年と言う節目を迎える若造でしかない。
分からない事だらけで、どこまでやれるのかも未知数だ。結局は凛ちゃんを失望させて終わるかも知れない。また無意味に傷つけてしまうかも知れない。
だけどせめて、向き合う事から目を逸らす事だけはしない様にしたい。自分がやってしまった、過去の失敗を自覚したからこそ。
「あ~無くなっちゃった」
「あげたくなったら、また買えば良いよ」
「そうだよね!」
そう、やり直せば良いんだ。いつかまた、失敗したとしても。自分が悪いなら謝れば良い。相手が失敗したなら、許せば良い。
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