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第2章
第32話 涼介と凛の青春やり直し
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「よー王子様ー頑張れよー!」
「ヒーローはモテて良いっすなぁ!」
「うるせぇ! 早く行けお前ら!」
昨夜の一件から、体育会系の連中から冷やかされまくって居る。彼らなりの応援なのは理解しているが、非常に面倒臭い。
凛ちゃんの班の女子と、俺の班の連中が結託して俺達を2人にしてさっさと行ってしまった。ありがとうだけど、周りがうぜぇ!
とにかく冷やかしの量が半端じゃない。目立つ様な事をした俺が悪いんだけど、祝福半分冷やかし半分みたいな奴等が朝から後を絶たない。
何なら何度も弄りに来る奴も居る。主に武本とか武本とか。速攻で恩を仇で返しやがった。
「あ、あの。別に私は1人でも……」
「良いんだよ、男子のノリだから気にしないで」
「そ、そう?」
「俺が凛ちゃんと居たいんだ。だから構わないよ」
そう、俺がもっと早くこうして居れば良かっただけだ。そのせいで受ける冷やかしなんて、甘んじて受けるさ。武本以外の冷やかしは。アイツはホテル返ったらシバく。
それに、これまで一緒に過ごせなかった分を取り戻して行きたい。そう言う意味では、修学旅行で仲直り出来て良かった。
もしこれより後だったら、こうして2人でスキーなんて出来なかった。そう言う意味では、これで良かった。これよりも前だったら、クラスも班も違ったからこんな時間は無かった。本当に色々と運に恵まれた結果だ。
「さ、先ずはここまで滑って来て」
「やってみる」
「絶対受け止めるから、ビビらないで。怖がった方がスピード出るから」
スキーもスノボもそうだけど、腰が引けた方が逆に加速する。加速させたい場合に腰を斜面側に落とすんだけど、初心者ほどそれを理解出来ない。
知らないから、斜面に対して真っ直ぐ立つ事の方が怖いと考えてしまう。昨日の武本が良い例だろう。だから初心者には、先ず最初にそれを教えないと行けない。
「こ、こう、かな?」
「そうそう! そのまま!」
「あっ、あれ? 止まれないよ! きゃっ!?」
「絶対受け止めるって言ったろ? 焦らなくても良いから」
この程度の速度で、俺が揺らぐ事はない。凛ちゃんは結構細いから、多少速度が乗ったぐらいじゃ大した衝撃は来ない。受け止めるぐらい、何て事もない。
「あっ、ご、ごめんね?」
「大丈夫だよ、気にしないで」
ふむ、それにしても初日は何を教えてたんだ? スピード調節と止まり方なんて教えるのは簡単だろうに。
まあ良いか、俺が教えれば良い事だ。一旦スノボを外して、雪原に突き刺しておく。初心者コースの端の方だから、然程邪魔にもならないだろう。
「よし、凛ちゃん! またカニ歩きで上がろうか」
「わ、分かった」
俺は今、スノボ用のブーツしか履いていないので、普通に歩いて斜面を登る。凛ちゃんはスキーの基本、斜面に対して横を向いて登る基本動作、カニ歩きで斜面を登る。
熟練者なら逆八の字で登る事も出来るが、単なる初心者でしかない凛ちゃんには難しい。
「もうちょい上まで行こうか」
「が、頑張る」
「ゆっくりで良いから。急いだからって上手くはならない」
凛ちゃんのペースに合わせて斜面を登る。初心者コースの半分ぐらいまで来た所でストップする。スピード調節と止まり方なら、これぐらいの高さで十分か。
「それじゃあ、速度調節とブレーキを教えるね」
「お願いします」
「じゃ、ちょっと失礼して」
「えっ!? 涼ちゃん!?」
凛ちゃんの板に後ろから腰を抱く形で相乗りする。板のコントロールは、このやり方が一番教え易い。
足の動かし方、板の開き方を実際に体験させた方が早い。後ろからスキー板の操作を教わるのは昔経験したから、その大切さは良く知っている。
「さて、じゃあ行くよ」
「ちょっ!? 涼ちゃん!?」
「減速はこうして、八の字に開く」
凛ちゃんのスキー板を、大きく開く八の字にした事で速度が緩む。開いたり閉じたりして、速度の変化を体感させてみせる。
この体験は非常に大切で、萎縮して足を閉じたら加速する事を教えるのに丁度良い。そのまま止まる方法も教える。八の字の右足で止まるパターンと、左足で止まるパターンの両方を実際に体感して貰った。
「な? 簡単だろ?」
「…………距離近すぎ」
「えっと? 何の話を?」
そして気付く、余りにも不遠慮が過ぎる自分の対応に。さっきから、レクチャーに集中し過ぎて、セクハラ同然の行動をしていた。やってしまった、これは不快だろう。
「ごめん。気持ち悪いよね?」
「あ、じゃなくてね。近過ぎて困っただけ」
それは、どう言う意味なのだろうか。気持ち悪いじゃないのなら、どんな意味を持つのだろうか。何も考えずに、ただスキーのコツを教えたかっただけなんだけど。
それで怒られたのが距離感なら、悪いのは俺なんじゃないのか? 何がどうなんだろう?
「もう! 好きな人に密着されて涼ちゃんは何も感じないの!?」
「凛ちゃんにって事? そんなの冷静で居られる訳がない……あっ」
はい、またしてもやらかしてしまいました。教えるのに必死で、教わる側の事を何も考えておりませんでしたとも。
「ヒーローはモテて良いっすなぁ!」
「うるせぇ! 早く行けお前ら!」
昨夜の一件から、体育会系の連中から冷やかされまくって居る。彼らなりの応援なのは理解しているが、非常に面倒臭い。
凛ちゃんの班の女子と、俺の班の連中が結託して俺達を2人にしてさっさと行ってしまった。ありがとうだけど、周りがうぜぇ!
とにかく冷やかしの量が半端じゃない。目立つ様な事をした俺が悪いんだけど、祝福半分冷やかし半分みたいな奴等が朝から後を絶たない。
何なら何度も弄りに来る奴も居る。主に武本とか武本とか。速攻で恩を仇で返しやがった。
「あ、あの。別に私は1人でも……」
「良いんだよ、男子のノリだから気にしないで」
「そ、そう?」
「俺が凛ちゃんと居たいんだ。だから構わないよ」
そう、俺がもっと早くこうして居れば良かっただけだ。そのせいで受ける冷やかしなんて、甘んじて受けるさ。武本以外の冷やかしは。アイツはホテル返ったらシバく。
それに、これまで一緒に過ごせなかった分を取り戻して行きたい。そう言う意味では、修学旅行で仲直り出来て良かった。
もしこれより後だったら、こうして2人でスキーなんて出来なかった。そう言う意味では、これで良かった。これよりも前だったら、クラスも班も違ったからこんな時間は無かった。本当に色々と運に恵まれた結果だ。
「さ、先ずはここまで滑って来て」
「やってみる」
「絶対受け止めるから、ビビらないで。怖がった方がスピード出るから」
スキーもスノボもそうだけど、腰が引けた方が逆に加速する。加速させたい場合に腰を斜面側に落とすんだけど、初心者ほどそれを理解出来ない。
知らないから、斜面に対して真っ直ぐ立つ事の方が怖いと考えてしまう。昨日の武本が良い例だろう。だから初心者には、先ず最初にそれを教えないと行けない。
「こ、こう、かな?」
「そうそう! そのまま!」
「あっ、あれ? 止まれないよ! きゃっ!?」
「絶対受け止めるって言ったろ? 焦らなくても良いから」
この程度の速度で、俺が揺らぐ事はない。凛ちゃんは結構細いから、多少速度が乗ったぐらいじゃ大した衝撃は来ない。受け止めるぐらい、何て事もない。
「あっ、ご、ごめんね?」
「大丈夫だよ、気にしないで」
ふむ、それにしても初日は何を教えてたんだ? スピード調節と止まり方なんて教えるのは簡単だろうに。
まあ良いか、俺が教えれば良い事だ。一旦スノボを外して、雪原に突き刺しておく。初心者コースの端の方だから、然程邪魔にもならないだろう。
「よし、凛ちゃん! またカニ歩きで上がろうか」
「わ、分かった」
俺は今、スノボ用のブーツしか履いていないので、普通に歩いて斜面を登る。凛ちゃんはスキーの基本、斜面に対して横を向いて登る基本動作、カニ歩きで斜面を登る。
熟練者なら逆八の字で登る事も出来るが、単なる初心者でしかない凛ちゃんには難しい。
「もうちょい上まで行こうか」
「が、頑張る」
「ゆっくりで良いから。急いだからって上手くはならない」
凛ちゃんのペースに合わせて斜面を登る。初心者コースの半分ぐらいまで来た所でストップする。スピード調節と止まり方なら、これぐらいの高さで十分か。
「それじゃあ、速度調節とブレーキを教えるね」
「お願いします」
「じゃ、ちょっと失礼して」
「えっ!? 涼ちゃん!?」
凛ちゃんの板に後ろから腰を抱く形で相乗りする。板のコントロールは、このやり方が一番教え易い。
足の動かし方、板の開き方を実際に体験させた方が早い。後ろからスキー板の操作を教わるのは昔経験したから、その大切さは良く知っている。
「さて、じゃあ行くよ」
「ちょっ!? 涼ちゃん!?」
「減速はこうして、八の字に開く」
凛ちゃんのスキー板を、大きく開く八の字にした事で速度が緩む。開いたり閉じたりして、速度の変化を体感させてみせる。
この体験は非常に大切で、萎縮して足を閉じたら加速する事を教えるのに丁度良い。そのまま止まる方法も教える。八の字の右足で止まるパターンと、左足で止まるパターンの両方を実際に体感して貰った。
「な? 簡単だろ?」
「…………距離近すぎ」
「えっと? 何の話を?」
そして気付く、余りにも不遠慮が過ぎる自分の対応に。さっきから、レクチャーに集中し過ぎて、セクハラ同然の行動をしていた。やってしまった、これは不快だろう。
「ごめん。気持ち悪いよね?」
「あ、じゃなくてね。近過ぎて困っただけ」
それは、どう言う意味なのだろうか。気持ち悪いじゃないのなら、どんな意味を持つのだろうか。何も考えずに、ただスキーのコツを教えたかっただけなんだけど。
それで怒られたのが距離感なら、悪いのは俺なんじゃないのか? 何がどうなんだろう?
「もう! 好きな人に密着されて涼ちゃんは何も感じないの!?」
「凛ちゃんにって事? そんなの冷静で居られる訳がない……あっ」
はい、またしてもやらかしてしまいました。教えるのに必死で、教わる側の事を何も考えておりませんでしたとも。
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