【完結】あの日、君の本音に気付けなくて

ナカジマ

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第1章

第24話 楽しい日々と満たされない心

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 動き出したら早いもので、あっという間にブレイクダンスを教えて貰う日が来た。講師をしてくれるのは信也しんやの兄貴の友人だ。
 澤田さわださんと言う方で、如何にもダンサーな風貌だった。厳つい見た目にダボッとした上下の服。ストリートで踊って居ますと言わんばかりの見た目だった。

「宜しくお願いします!」

「「「お願いします!」」」

「おう、宜しく。早速だけど、練習の内容を説明するな」

 先ず、初心者向けのテクニックのみを教えると言う事。初心者向けの動画で紹介されている様なものでも、怪我をする危険性が高いモノは教えない。
 そう言った基礎中の基礎だけでも、ちゃんと格好良く見える様な振り付けを考えたから問題無いと言う事。
 それから、使用する曲は既に信也から預かっているので選曲は必要無いとも説明された。想像よりもかなり、しっかりした企画になった様だ。

「先ずは踊って見せるから、ちょっと見ててくれ」

 Bluetoothスピーカーを設置した澤田さんが、スマホを弄って曲の再生を始める。俺も良く知る洋楽だった。メタルバンドとラッパーがコラボレーションして出来た楽曲だ。
 曲のリズムに合わせて、澤田さんが踊り始める。立った状態でリズムを取ったり、足下のステップを強調した動きを見せたり。
 かと思えば急に腰を落として、華麗な足捌きを見せる。何をやっているのか全然分からないが、とりあえず見た目がカッコイイのだけは間違いない。間違いないんだが、これ俺達に出来るのか?

「とまあ、こんな感じだよ」

「「「おぉー!!」」」

 うん、分かるよその気持ち。確かにカッコよかったし、こんな風に踊れたらと思う気持ちはある。しかし、複雑過ぎて何をやっているのか分からないと言うのが懸念点だ。
 見て理解出来た人間が、この中にどれだけ居ただろう。理解出来たなら、ソイツは今すぐダンス部に行け。絶対に向いているし、センスもあるぞ。

「ま、最初は基礎から固めて行こう。少しずつ覚えて慣れて行こう」

 そうして俺達の練習の日々は始まった。最初はステップの踏み方一つ知らない俺達だから、酔っ払いと区別が付かないレベルのダメダメ具合だった。
 初心者にしては踊れているそうだが、やっているこっちは本当にこれで良いのか不安だった。

 ブレイクダンスは立って踊るだけではない。床に手をついて、足捌きで魅せるテクニックが複数存在していた。
 足の動かし方や手の動かし方。力を入れるポイントであったり、足の伸ばし方や戻し方。それぞれに注意点やコツがあって中々苦戦させられた。

「やほー! 藤木君、早いね」

「そっちこそ、まだ10分前だぞ?」

「ちょっと自主練したくて」

「なるほどね」

 こうやって、毎日夜に集まって何かをするのは思った以上に楽しかった。色んな部活の人間が集まって、やった事もないブレイクダンスに挑戦する。
 すぐに上達する奴も居れば、中々苦戦する奴も居て。幸いにも、俺は向いている方だったらしく、何とか着いていけている。
 自分で言うのもなんだけど、凄く青春だなと思った。部活とはまた違う楽しさで、同好会でもしているみたいだ。

 最初は出来なかった事が、出来る様になると皆で喜んだ。一番上達が遅かった奴が、皆に追い付いた時は全員で褒め合ったりした。
 大会に出ようと言う訳じゃないから、本当に初歩的な触りだけのダンスだ。それでも、俺達には十分楽しいと思えた。


「藤木君、ダンスやるんだって?」

「そうだよ」

 ある日、学校で西田にしださんにそう問いかけられた。隠す様な話でもないので、素直にそう答えた。
 未だに彼女とどんな距離感で居たら良いのか分からないけど、友達として好きである事には変わり無い。

「凄いね、何でも出来るんだ」

「いや、何でもは無理だ。テニスとか苦手だしな」

「そうなんだ?」

 つい苦笑してしまった。本音としてはスポーツ万能を名乗りたい所だが、どうにもラケットを扱うスポーツは苦手だった。
 野球をやっていたせいか、ついホームランしてしまう。コート内に綺麗に鋭く打ち込むのが苦手だ。
 ちょっと違うけど、多分ラクロスも無理そうだ。あんな感じの器具がダメなんだろうな。そして当然、卓球も苦手だ。

「ま、バスケが一番だよやっぱり」

「でもダンス、良い感じだって聞いたよ?」

「あんまり期待しないで? 所詮初心者だしさ」

 誰に聞いたのかは、まあ想像がつく。信也だろうな間違いなく。どうせ見られたら分かるんだから、隠す必要もないんだけども。
 一応、今回集まったメンバーの中では、上位5人の中に入っている。そして、そのメンバーだけ少しだけランクが上の振り付けを教えて貰った。シフトと言う、しゃがんだ状態から足を真っ直ぐ振り上げるダンステクニックだ。
 シフトを教わった5人だけ、アピールパートと言うか、少しだけ目立つポジションになった。最近は、そのパートも含めて良い感じに完成して来た。

「当日、観に行くからね」

「ホントに期待しないでよ?」

 ブレイクダンスとは言っても、本当に初歩的なダンスしか教わっていない。過度な期待はされても困る。
 それでも、そんな日々が楽しいのも事実だ。りんちゃんと上手く行って居ない日々のモヤモヤを、ある程度は誤魔化せる程度に楽しい。
 だけど、幾ら上手くなろうとも本当に観て欲しい人は、きっと観に来てくれないんだろう。
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