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第1章
第18話 夏休みと言えばプールだよね
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新人戦は結局、3回戦で敗退した。まあ仕方ないよな、特別バスケが強い学校でもないし。バスケを教えられる顧問も居ないんだ。
1年目は、精々こんな所だろう。むしろ強豪校を相手に、健闘したと言って良い。そう悪くない経験を詰めたし、10cm以上の身長差がある連中からもぎ取ったリバウンドは最高の気分だった。
「10分休憩だ! 時間までには戻れよ!」
「はぁ、あっちぃな涼介」
「あぁ、流石に室内でこれは無い」
時の流れは早いもので、もう夏休みに突入していた。頻繁にフルコートの部活が出来るのは嬉しいけど、暑さが半端じゃない。
スポットクーラーを2台設置してはいるけど、焼け石に水だ。屋根の下でやっていても、湿気まではどうにもならない。むわっとした熱気が、体育館の中に漂っている。
いい加減クーラーを付けてくれないかな。そのうち誰か熱中症になるぞ。夏の全校集会とか、ガチでただの嫌がらせでしかない。
勘弁して欲しいよ。都会の学校なら、体育館は冷暖房完備なのかな。大体、教師だって暑いだろうに。何でそこ頑張るんだよ。頑張る所がおかしいだろ。
「ジュース買いに行かね?」
「ああ、良いぞ。俺も喉乾いたし」
「じゃ行こうぜ」
信也と2人、体育館から校舎に向かう渡り廊下を歩く。教室内の部活は良いよな、クーラー付いてるもんな。
美術室の前を通りながら、そんな事を思う。たまたまこっちを見ていた、西田さんと目があった。目が合った以上は、リアクションをしないのも変な話だ。
適当にヒラヒラと手を振っておく。向こうも振り返してくれたので、この一瞬の邂逅はこれにて終了だ。
「なあ、やっぱお前西田と」
「ないないない、ガチで無いから」
「いやー今のでそれは無いだろ」
「なら突然ドアを開けてお疲れ! って叫んだ方が良かったか?」
無難な対応をしただけで、変な勘繰りをされては困る。西田さんとは、本当に何もない。友達とは思っていても、恋愛対象としては見ていない。
それも散々説明しただろうに。何でいちいち西田さんとくっつけようとするんだよ。向こうに迷惑だろうが。
「何でそんなに、くっつけようとする?」
「面白そうだから!」
「勘弁してくれよ」
そんな理由で、西田さんに迷惑を掛けようとするな。嘘告白とか罰ゲーム告白とかやらせて来たら、その時はキレるぞ流石に俺とて。
ああ言うのは本当に良くない。目茶苦茶残酷だと思うし、俺は絶対にやらない。それに、俺みたいな男なんかより、もっと良い男を選べるだろう西田さんなら。
素晴らしい夢もあって、絵が上手で。俺みたいなバスケぐらいしか特技の無い男を、わざわざ選ぶ理由がないだろう。まあ、だから俺は上手く行かないんだろうけどな。
「それはそれとして、今度プール行かないか?」
「は? 何だ急に。プール?」
「なんと、松永シーランドのチケットが当たりました~」
「は? マジで?」
松永シーランド、それは最近出来た娯楽施設だ。地方都市にしては中々の規模の、最新娯楽施設だ。水族館とプールが一緒になっていて、下が水族館で上がプールになって居る。
その為、一部のプールでは、底を見ると魚達が見える様に作られている。流れるプールで、魚と一緒に泳ぐ様な疑似体験が出来るらしい。
出来てまだ間もないが、既にかなりの人気があるらしい。そのチケットが当たったとなれば、かなり熱い。
ちょっと興味あったんだよな、魚と泳げる流れるプール。1回ぐらいは経験したいと思っていた。
「マジでーす」
「すげぇじゃん。どこで当てた?」
「兄貴がネットで偶然な。泳げないから要らないってよ」
「ああ、そうだったなお前の兄貴」
世の中には泳げない人が意外と多い。そんな馬鹿なと、水泳をやっていた俺は思うけれど。泳ぐって結構簡単だから、逆に泳げないが分からない。
そうは言っても実際に居るのは事実である。船乗るのとか、怖くないのかな? 水難事故とかに遭えば、詰みだと思うんだけどな。最近じゃ大雨からの洪水とかも珍しくないし。
「で、メンツは?」
「チケット4枚しかないんだよなぁ」
「うわ~マジかよ」
それは残念過ぎる。4枚では、バスケ部全員では行けない。どう足掻いても、必ず3人炙れてしまう。
また麻雀勝負で決めるか? いや、駄目だルール知らない奴が居たな。ジャンケンもなぁ、どうなんだろうなぁ。
「人選は任せて貰って良いか?」
「そりゃお前のチケットなんだ。好きに決めろよ」
俺にはどうこう言う資格なんてない。信也が兄貴に貰った物なんだから、好きにしてくれたら良い。
無難な選択としては、同じ中学出身の颯太と健介か? もしくは、信也の彼女と誰かか。
その辺りが妥当だろうから、俺としては問題ない。信也が目茶苦茶な人選をするとは思えないので、任せてしまって良いだろう。
「じゃあ、俺がメンツ決めるな」
「頼んだ。じゃあ、買うもの買ったし戻ろうぜ」
信也と2人、ジュースを買って体育館に戻った。俺はこの時、裏で何が起きていたのか知らなかった。
ここで人選を任せた事を、後で後悔する事になるとは思わなかった。
1年目は、精々こんな所だろう。むしろ強豪校を相手に、健闘したと言って良い。そう悪くない経験を詰めたし、10cm以上の身長差がある連中からもぎ取ったリバウンドは最高の気分だった。
「10分休憩だ! 時間までには戻れよ!」
「はぁ、あっちぃな涼介」
「あぁ、流石に室内でこれは無い」
時の流れは早いもので、もう夏休みに突入していた。頻繁にフルコートの部活が出来るのは嬉しいけど、暑さが半端じゃない。
スポットクーラーを2台設置してはいるけど、焼け石に水だ。屋根の下でやっていても、湿気まではどうにもならない。むわっとした熱気が、体育館の中に漂っている。
いい加減クーラーを付けてくれないかな。そのうち誰か熱中症になるぞ。夏の全校集会とか、ガチでただの嫌がらせでしかない。
勘弁して欲しいよ。都会の学校なら、体育館は冷暖房完備なのかな。大体、教師だって暑いだろうに。何でそこ頑張るんだよ。頑張る所がおかしいだろ。
「ジュース買いに行かね?」
「ああ、良いぞ。俺も喉乾いたし」
「じゃ行こうぜ」
信也と2人、体育館から校舎に向かう渡り廊下を歩く。教室内の部活は良いよな、クーラー付いてるもんな。
美術室の前を通りながら、そんな事を思う。たまたまこっちを見ていた、西田さんと目があった。目が合った以上は、リアクションをしないのも変な話だ。
適当にヒラヒラと手を振っておく。向こうも振り返してくれたので、この一瞬の邂逅はこれにて終了だ。
「なあ、やっぱお前西田と」
「ないないない、ガチで無いから」
「いやー今のでそれは無いだろ」
「なら突然ドアを開けてお疲れ! って叫んだ方が良かったか?」
無難な対応をしただけで、変な勘繰りをされては困る。西田さんとは、本当に何もない。友達とは思っていても、恋愛対象としては見ていない。
それも散々説明しただろうに。何でいちいち西田さんとくっつけようとするんだよ。向こうに迷惑だろうが。
「何でそんなに、くっつけようとする?」
「面白そうだから!」
「勘弁してくれよ」
そんな理由で、西田さんに迷惑を掛けようとするな。嘘告白とか罰ゲーム告白とかやらせて来たら、その時はキレるぞ流石に俺とて。
ああ言うのは本当に良くない。目茶苦茶残酷だと思うし、俺は絶対にやらない。それに、俺みたいな男なんかより、もっと良い男を選べるだろう西田さんなら。
素晴らしい夢もあって、絵が上手で。俺みたいなバスケぐらいしか特技の無い男を、わざわざ選ぶ理由がないだろう。まあ、だから俺は上手く行かないんだろうけどな。
「それはそれとして、今度プール行かないか?」
「は? 何だ急に。プール?」
「なんと、松永シーランドのチケットが当たりました~」
「は? マジで?」
松永シーランド、それは最近出来た娯楽施設だ。地方都市にしては中々の規模の、最新娯楽施設だ。水族館とプールが一緒になっていて、下が水族館で上がプールになって居る。
その為、一部のプールでは、底を見ると魚達が見える様に作られている。流れるプールで、魚と一緒に泳ぐ様な疑似体験が出来るらしい。
出来てまだ間もないが、既にかなりの人気があるらしい。そのチケットが当たったとなれば、かなり熱い。
ちょっと興味あったんだよな、魚と泳げる流れるプール。1回ぐらいは経験したいと思っていた。
「マジでーす」
「すげぇじゃん。どこで当てた?」
「兄貴がネットで偶然な。泳げないから要らないってよ」
「ああ、そうだったなお前の兄貴」
世の中には泳げない人が意外と多い。そんな馬鹿なと、水泳をやっていた俺は思うけれど。泳ぐって結構簡単だから、逆に泳げないが分からない。
そうは言っても実際に居るのは事実である。船乗るのとか、怖くないのかな? 水難事故とかに遭えば、詰みだと思うんだけどな。最近じゃ大雨からの洪水とかも珍しくないし。
「で、メンツは?」
「チケット4枚しかないんだよなぁ」
「うわ~マジかよ」
それは残念過ぎる。4枚では、バスケ部全員では行けない。どう足掻いても、必ず3人炙れてしまう。
また麻雀勝負で決めるか? いや、駄目だルール知らない奴が居たな。ジャンケンもなぁ、どうなんだろうなぁ。
「人選は任せて貰って良いか?」
「そりゃお前のチケットなんだ。好きに決めろよ」
俺にはどうこう言う資格なんてない。信也が兄貴に貰った物なんだから、好きにしてくれたら良い。
無難な選択としては、同じ中学出身の颯太と健介か? もしくは、信也の彼女と誰かか。
その辺りが妥当だろうから、俺としては問題ない。信也が目茶苦茶な人選をするとは思えないので、任せてしまって良いだろう。
「じゃあ、俺がメンツ決めるな」
「頼んだ。じゃあ、買うもの買ったし戻ろうぜ」
信也と2人、ジュースを買って体育館に戻った。俺はこの時、裏で何が起きていたのか知らなかった。
ここで人選を任せた事を、後で後悔する事になるとは思わなかった。
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