61 / 75
55話 歓迎されてない?先遣隊
しおりを挟む
休憩を挟みつつレグオン帝国の上空を突っ切ってハマヌムへと向かう。
完璧に領空侵犯だけど今は緊急事態だ。後で帝国には事後報告ではあるが仕方がない。
途中いくつかの町や村の上空を飛んだから、すぐに帝都に情報は行くだろう。
ケンジさんと出会うかもと思って帝国の領空を飛んだが、そううまくは行かず、出会うことなく帝国の領空を抜けた。
そのままハヌマ王国の領空へと入る。とはいえ、大体の方角は分かるがハマヌムの具体的な場所は分からない。なにせこのあたりの地図が無いからね。この世界も、戦国時代よろしく地図は重要な軍事機密となっているので正確な地図があるのはその国の警備厳重な城の中だ。当然外国の人間が見ることもましては所有する事は出来ない。
まぁ海まで出て、海岸線に沿って東か西に進めばいずれハマヌムが見つかるだろう。僕は二択を良くはずすから、海に出たら東西どっちに行くかは他の人に選んでもらおう。
そう思っていたけど、それは心配は杞憂に終わった。
ハヌマ王国の領空へと入ってしばらく南に向かって飛んでいると、先行して飛んでいる第二ロッテのザムイーワックのレーダーが高速でこちらに近づいてくる機影を捉えた。
『正体不明機の接近を確認!速い!』
「全機警戒態勢!」
第二ロッテの報告を聞くと、僕らは即座に警戒態勢に入る。全機のザムがマシンガンを不明機が向かってくる方向へと向け、僕の直掩に付いていたグローリーガード編隊の二機が、壁になるように僕の編隊の前に出る。
『不明機さらに加速!?嘘だろ!』
きらりと青い光が見えたと思うと、それは一瞬にして僕らの編隊の横を通り過ぎていった。
僕らの編隊を遅れてきた暴風が襲う。コクピットが上下左右に揺られ、ガタガタと音が鳴る。
「うわぁ!」
『うぉ!』
この時は僕が、トブタイをコントロールしていたので必死になって体勢を立て直す。
僕らが体勢を立て直した時、遠くへ飛び去ったはずの青い光…アクアヴィーネが僕らの編隊の横を悠々と飛んでいた。
僕が気付くのと同時に、通信要請が入った。
「危ないじゃないですか!水上先輩!トブタイが落ちたら如何するんですかっ!」
すぐに繋いで文句を言う。
アクアヴィーネのコクピットにはカメラが付いてないのでサウンドオンリーと表示されたウィンドウがヘッドセットに表示された。
『ごめんなさいっ!驚かせてしまって。あなた達が来たのに気付いたら、うれしくて飛んできてしまいました』
僕らが来たのに気付いた?ザムイーワックのレーダー範囲外から?僕らの接近に気付いて飛んできた?マジかよ!
「勘弁してくださいよ。こっちの機体は先輩達の神霊機と比べたら弱いんですから…」
『本当にごめんなさい。ってアマタ君も来たの!?』
水上先輩は、驚いた様子で言った。僕が来るのは予想外だった様だ。
「ええ、今回の救援活動で有用そうな機体があるんですが、それを使うには僕自身がここに来る必要があったんで」
『そうなの…。態々ありがとう。ここからは私が案内するわ。付いてきて』
そういうと、アクアヴィーネが先頭を飛んでいる第二ロッテの前を飛行する。
「分かりました。各機アクアヴィーネに続け!」
『『『了解!』』』
ついて行くと、山の向うにハマヌムにある城の屋根がちらりと見えた。
すでに日が落ちてきているので、白い屋根は赤く染まっていた。
早朝に出発したからスベン公国から、ここまで来るのにだいたい12時間位だな。それをアクアヴィーネはたった約6時間で来た。とんでもないスピードだな。しかもこれでもまだ成長途中という。
城の屋根がザムの望遠機能最大でかろうじて見える位置だから、後もうちょっとで到着だなと思っていると、アクアヴィーネがそのかなり手前にある広場を指差した。
大きな道に接してるから、かつての人類同盟が作った場所っぽいな。
『あそこが皆さんの宿営地となります』
えっ?ちょっと現場から遠すぎない?とりあえず指示に従うか…。
「分かりました。全機着陸態勢に入れ」
疑問に思うが、とりあえず従う。
『では、グローリー編隊から着陸をお願いします』
アランさんが指示を出し、各編隊が、上空を旋回して周囲警戒をする中、指示された広場へと着陸する。
着陸すると僕は、トブタイからザムを下ろしてハマヌムの方向を見る。
うわ。ぜんぜんハマヌムが見えない。
そこはただでさえ遠いのにさらに山にさえぎられて、ハマヌムの様子が全く見えない。安全な場所っちゃあ安全なんだろうけど、僕らをハマヌムに近づけたくないハヌマ王国の意思を感じる。
全機が広場に着陸すると、各トブタイから兵士達が降りてくる。
僕もザムから降りようとコクピットの扉を開く。
気圧差によって扉の隙間から外気が一気に吹き込む。
「うあっ。暑っ!」
コクピット内は、クーラーによって自動的に快適な温度にされていたので、いきなりの熱風に驚いた。
スベン公国では、すごしやすい温度だったけど、南下したお陰で気候ががらっと替わってしまったようだ。思えば遠くまで来たものだっっていう事かな。
コックピットハッチから垂れ下がるワイヤーに掴まり地上へと降りた。
ふと見上げるとアクアヴィーネが敷地内の開いたスペースにゆっくりとのが着陸するのが見えた。僕は、地上へとたどり着くとそちらへと走った。
僕は、それを真正面から見上げた。
アクアヴィーネがスベン公国に来た時は、夜だったが今なら良く見える
夕日に照らされたアクアヴィーネは、青い装甲を夕日に赤く染めつつ輝いていた。
昨日見た時は、夜だったので、細部は分からなかったが、今なら良く見える。
シンプルな見た目だったドレスのような装甲が大きくなり、各所に金のエングレーブが施されている。そして羽衣の一部が布のように下半身を覆いスカートを形作っている。
武器である三叉の槍も装飾が豪華になり、迫力が増している。
これが、神霊機の成長した姿…。かっこいいな。
僕は量産型戦闘ロボットが好きだが、スーパーロボットが嫌いなわけじゃない。これはこれで良い物だ。
見上げていると、いつの間にか背後にメリナさんとアランさんが居た。
アランさんはアクアヴィーネに背を向けると良く通る声で先遣隊員達に命令した。
「警備担当以外は、全員集合!整列せよ!」
トブタイから出てきた部隊員達が、駆け足でアランさんの前に集まり整列する。
アクアヴィーネの胸部にある宝玉が光り、その中から水上先輩から現れた。そして宝玉から発せられた光の柱を通ってゆっくりと地面へと降りてくる。
水上先輩は慣れた様子でふわりと地面へと着地し、僕らの前に降り立つ。
「我等スベン公国救援先遣隊。水の勇者殿の要請に従い参上いたしましたっ!」
ザッ!
水上先輩が僕らの前に来ると、僕は声を張り上げてスベン公国軍式の敬礼する。軍人は僕と同じ敬礼を、文官は、胸に手を当て頭を下げる。
「ふふっ。改めまして、スベン公国の皆様。要請に応えていただいて本当にありがとうございます」
彼女は、微笑み深々と頭を下げた。
その姿を見た恐縮したアランさん達があわてて言った。
「頭を御上げください!我々スベン公国に水の勇者様をお助けする栄誉を頂き、感謝しております!我々の全力を持って協力させていただきます!」
「そう言っていただけると助かります。改めて、良く来てくれました。もう夜になります。今日はしっかり休んで、明日からお願いします」
頭を上げると水上先輩は疲れた顔で微笑んだ。
きっと、昨日からほとんど寝ずにがんばっていたのかもしれない。
「いえ、大丈夫です。交代のパイロットが居ますので、今からでも捜索に出られます。さすがに救助は出来なさそうですが、遭難者を先に見つけておけば、明日の救助活動も楽になります」
「でしたらお願いします。ですがけして無理はなさらないようにお願いします」
そこへ、警備のついでに、周囲の確認をしていた兵士が、一人駆けてきた。
「水の勇者様失礼します。アマタ様。周囲を確認したところ危険はありませんでした。しかし、この広場の大きさですと、我々だけなら問題ありませんが、後続の部隊が来るには狭すぎます」
「すいません。せっかく来て頂いたのに、このような場所で…。ですが、この広場を広げる許可は貰ってます。自由に使ってかまいません。ですが、その労力をこちらから出す事は…」
水上先輩は申し訳なさそうに言った。
「許可さえあれば、それはこちらで何とか出来ます」
こちらには僕が居る。僕が居ればザムタンクを召還することが出来る。ザムタンクさえあれば木の伐採や整地なんて簡単だ。水上先輩が引くレベルで開拓しよう。
「後ほど、迎えの馬車来るので、代表の人は、それに乗ってください。王城にて具体的な。アマタ君も来るでしょ」
「そ…」
「それは、護衛のザムと兵士を同行させてもよろしいのでしょうか?」
アランさんが僕が聞く前に聞いた。
「…兵士はともかくザムは、断られると思います」
気まずそうに水上先輩は言った。
「でしたら、陛下の命により、アマタ様を王城へと行かせることは出来ません。副官である私と文官団のみ登城させていただきます」
きっぱりとアランさんは言い切った。
「分かりました。私は先に帰ってその事を伝えてきます」
しょうがないですねと水上先輩は踵を返すと再びアクアヴィーネに乗り込むと空へと舞い上がった。
「水の勇者様は、見た目に反して恐ろしい方でしたね」
飛んでいったのを見送るとアランさんがポツリと言った。
「あ~そうだよね。上空でわざとニアミスして、僕達に警告してきたもんね」
「はい」
上空で僕らがアクアヴィーネと遭遇した時、こちらがアクアヴィーネの接近に気付いて警戒態勢に入ったというのに、あっと言う間に間合いをつめられ、そのまま飛び去り、こちらがアクアヴィーネよって引き起こされた乱気流で崩された体勢を整える間に接近する。水上先輩がこちらを害する気だったら、一体何度死んでいることか。
これは、ザムではアクアヴィーネに敵わないと示すことで、スベン公国に対してハマヌムで悪さをしないようにというメッセージだ。
その時、街道のほうからガシャガシャとフォルスの歩く音と、ガラガラという竜車の走る音が聞こえてきた。
お迎えが来たな。さて、ハヌマ王国側は、一体何を言ってくるのか行ってからのお楽しみってヤツかな。
完璧に領空侵犯だけど今は緊急事態だ。後で帝国には事後報告ではあるが仕方がない。
途中いくつかの町や村の上空を飛んだから、すぐに帝都に情報は行くだろう。
ケンジさんと出会うかもと思って帝国の領空を飛んだが、そううまくは行かず、出会うことなく帝国の領空を抜けた。
そのままハヌマ王国の領空へと入る。とはいえ、大体の方角は分かるがハマヌムの具体的な場所は分からない。なにせこのあたりの地図が無いからね。この世界も、戦国時代よろしく地図は重要な軍事機密となっているので正確な地図があるのはその国の警備厳重な城の中だ。当然外国の人間が見ることもましては所有する事は出来ない。
まぁ海まで出て、海岸線に沿って東か西に進めばいずれハマヌムが見つかるだろう。僕は二択を良くはずすから、海に出たら東西どっちに行くかは他の人に選んでもらおう。
そう思っていたけど、それは心配は杞憂に終わった。
ハヌマ王国の領空へと入ってしばらく南に向かって飛んでいると、先行して飛んでいる第二ロッテのザムイーワックのレーダーが高速でこちらに近づいてくる機影を捉えた。
『正体不明機の接近を確認!速い!』
「全機警戒態勢!」
第二ロッテの報告を聞くと、僕らは即座に警戒態勢に入る。全機のザムがマシンガンを不明機が向かってくる方向へと向け、僕の直掩に付いていたグローリーガード編隊の二機が、壁になるように僕の編隊の前に出る。
『不明機さらに加速!?嘘だろ!』
きらりと青い光が見えたと思うと、それは一瞬にして僕らの編隊の横を通り過ぎていった。
僕らの編隊を遅れてきた暴風が襲う。コクピットが上下左右に揺られ、ガタガタと音が鳴る。
「うわぁ!」
『うぉ!』
この時は僕が、トブタイをコントロールしていたので必死になって体勢を立て直す。
僕らが体勢を立て直した時、遠くへ飛び去ったはずの青い光…アクアヴィーネが僕らの編隊の横を悠々と飛んでいた。
僕が気付くのと同時に、通信要請が入った。
「危ないじゃないですか!水上先輩!トブタイが落ちたら如何するんですかっ!」
すぐに繋いで文句を言う。
アクアヴィーネのコクピットにはカメラが付いてないのでサウンドオンリーと表示されたウィンドウがヘッドセットに表示された。
『ごめんなさいっ!驚かせてしまって。あなた達が来たのに気付いたら、うれしくて飛んできてしまいました』
僕らが来たのに気付いた?ザムイーワックのレーダー範囲外から?僕らの接近に気付いて飛んできた?マジかよ!
「勘弁してくださいよ。こっちの機体は先輩達の神霊機と比べたら弱いんですから…」
『本当にごめんなさい。ってアマタ君も来たの!?』
水上先輩は、驚いた様子で言った。僕が来るのは予想外だった様だ。
「ええ、今回の救援活動で有用そうな機体があるんですが、それを使うには僕自身がここに来る必要があったんで」
『そうなの…。態々ありがとう。ここからは私が案内するわ。付いてきて』
そういうと、アクアヴィーネが先頭を飛んでいる第二ロッテの前を飛行する。
「分かりました。各機アクアヴィーネに続け!」
『『『了解!』』』
ついて行くと、山の向うにハマヌムにある城の屋根がちらりと見えた。
すでに日が落ちてきているので、白い屋根は赤く染まっていた。
早朝に出発したからスベン公国から、ここまで来るのにだいたい12時間位だな。それをアクアヴィーネはたった約6時間で来た。とんでもないスピードだな。しかもこれでもまだ成長途中という。
城の屋根がザムの望遠機能最大でかろうじて見える位置だから、後もうちょっとで到着だなと思っていると、アクアヴィーネがそのかなり手前にある広場を指差した。
大きな道に接してるから、かつての人類同盟が作った場所っぽいな。
『あそこが皆さんの宿営地となります』
えっ?ちょっと現場から遠すぎない?とりあえず指示に従うか…。
「分かりました。全機着陸態勢に入れ」
疑問に思うが、とりあえず従う。
『では、グローリー編隊から着陸をお願いします』
アランさんが指示を出し、各編隊が、上空を旋回して周囲警戒をする中、指示された広場へと着陸する。
着陸すると僕は、トブタイからザムを下ろしてハマヌムの方向を見る。
うわ。ぜんぜんハマヌムが見えない。
そこはただでさえ遠いのにさらに山にさえぎられて、ハマヌムの様子が全く見えない。安全な場所っちゃあ安全なんだろうけど、僕らをハマヌムに近づけたくないハヌマ王国の意思を感じる。
全機が広場に着陸すると、各トブタイから兵士達が降りてくる。
僕もザムから降りようとコクピットの扉を開く。
気圧差によって扉の隙間から外気が一気に吹き込む。
「うあっ。暑っ!」
コクピット内は、クーラーによって自動的に快適な温度にされていたので、いきなりの熱風に驚いた。
スベン公国では、すごしやすい温度だったけど、南下したお陰で気候ががらっと替わってしまったようだ。思えば遠くまで来たものだっっていう事かな。
コックピットハッチから垂れ下がるワイヤーに掴まり地上へと降りた。
ふと見上げるとアクアヴィーネが敷地内の開いたスペースにゆっくりとのが着陸するのが見えた。僕は、地上へとたどり着くとそちらへと走った。
僕は、それを真正面から見上げた。
アクアヴィーネがスベン公国に来た時は、夜だったが今なら良く見える
夕日に照らされたアクアヴィーネは、青い装甲を夕日に赤く染めつつ輝いていた。
昨日見た時は、夜だったので、細部は分からなかったが、今なら良く見える。
シンプルな見た目だったドレスのような装甲が大きくなり、各所に金のエングレーブが施されている。そして羽衣の一部が布のように下半身を覆いスカートを形作っている。
武器である三叉の槍も装飾が豪華になり、迫力が増している。
これが、神霊機の成長した姿…。かっこいいな。
僕は量産型戦闘ロボットが好きだが、スーパーロボットが嫌いなわけじゃない。これはこれで良い物だ。
見上げていると、いつの間にか背後にメリナさんとアランさんが居た。
アランさんはアクアヴィーネに背を向けると良く通る声で先遣隊員達に命令した。
「警備担当以外は、全員集合!整列せよ!」
トブタイから出てきた部隊員達が、駆け足でアランさんの前に集まり整列する。
アクアヴィーネの胸部にある宝玉が光り、その中から水上先輩から現れた。そして宝玉から発せられた光の柱を通ってゆっくりと地面へと降りてくる。
水上先輩は慣れた様子でふわりと地面へと着地し、僕らの前に降り立つ。
「我等スベン公国救援先遣隊。水の勇者殿の要請に従い参上いたしましたっ!」
ザッ!
水上先輩が僕らの前に来ると、僕は声を張り上げてスベン公国軍式の敬礼する。軍人は僕と同じ敬礼を、文官は、胸に手を当て頭を下げる。
「ふふっ。改めまして、スベン公国の皆様。要請に応えていただいて本当にありがとうございます」
彼女は、微笑み深々と頭を下げた。
その姿を見た恐縮したアランさん達があわてて言った。
「頭を御上げください!我々スベン公国に水の勇者様をお助けする栄誉を頂き、感謝しております!我々の全力を持って協力させていただきます!」
「そう言っていただけると助かります。改めて、良く来てくれました。もう夜になります。今日はしっかり休んで、明日からお願いします」
頭を上げると水上先輩は疲れた顔で微笑んだ。
きっと、昨日からほとんど寝ずにがんばっていたのかもしれない。
「いえ、大丈夫です。交代のパイロットが居ますので、今からでも捜索に出られます。さすがに救助は出来なさそうですが、遭難者を先に見つけておけば、明日の救助活動も楽になります」
「でしたらお願いします。ですがけして無理はなさらないようにお願いします」
そこへ、警備のついでに、周囲の確認をしていた兵士が、一人駆けてきた。
「水の勇者様失礼します。アマタ様。周囲を確認したところ危険はありませんでした。しかし、この広場の大きさですと、我々だけなら問題ありませんが、後続の部隊が来るには狭すぎます」
「すいません。せっかく来て頂いたのに、このような場所で…。ですが、この広場を広げる許可は貰ってます。自由に使ってかまいません。ですが、その労力をこちらから出す事は…」
水上先輩は申し訳なさそうに言った。
「許可さえあれば、それはこちらで何とか出来ます」
こちらには僕が居る。僕が居ればザムタンクを召還することが出来る。ザムタンクさえあれば木の伐採や整地なんて簡単だ。水上先輩が引くレベルで開拓しよう。
「後ほど、迎えの馬車来るので、代表の人は、それに乗ってください。王城にて具体的な。アマタ君も来るでしょ」
「そ…」
「それは、護衛のザムと兵士を同行させてもよろしいのでしょうか?」
アランさんが僕が聞く前に聞いた。
「…兵士はともかくザムは、断られると思います」
気まずそうに水上先輩は言った。
「でしたら、陛下の命により、アマタ様を王城へと行かせることは出来ません。副官である私と文官団のみ登城させていただきます」
きっぱりとアランさんは言い切った。
「分かりました。私は先に帰ってその事を伝えてきます」
しょうがないですねと水上先輩は踵を返すと再びアクアヴィーネに乗り込むと空へと舞い上がった。
「水の勇者様は、見た目に反して恐ろしい方でしたね」
飛んでいったのを見送るとアランさんがポツリと言った。
「あ~そうだよね。上空でわざとニアミスして、僕達に警告してきたもんね」
「はい」
上空で僕らがアクアヴィーネと遭遇した時、こちらがアクアヴィーネの接近に気付いて警戒態勢に入ったというのに、あっと言う間に間合いをつめられ、そのまま飛び去り、こちらがアクアヴィーネよって引き起こされた乱気流で崩された体勢を整える間に接近する。水上先輩がこちらを害する気だったら、一体何度死んでいることか。
これは、ザムではアクアヴィーネに敵わないと示すことで、スベン公国に対してハマヌムで悪さをしないようにというメッセージだ。
その時、街道のほうからガシャガシャとフォルスの歩く音と、ガラガラという竜車の走る音が聞こえてきた。
お迎えが来たな。さて、ハヌマ王国側は、一体何を言ってくるのか行ってからのお楽しみってヤツかな。
1
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
死んでないのに異世界に転生させられた
三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。
なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない)
*冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。
*カクヨム、アルファポリスでも投降しております
幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ
黒陽 光
SF
その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。
現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。
そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。
――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。
表紙は頂き物です、ありがとうございます。
※カクヨムさんでも重複掲載始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる