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【朝起きたら】人狼になったけど質問ある?生放送【イケメンに(ただし人外)】3
しおりを挟む「うぁああああああああ!」
「きゃーーーーーーーっ!」
同時に響く二つの悲鳴。
一つはモチロン人狼による恐怖の悲鳴。
もう一つは、侵入者による俗言う黄色い悲鳴だ。
人狼が上げた悲鳴は分かりやすい。侵入者の格好に恐怖したからだ。入ってきたのは人狼の家に回覧板を届けに来た少女だった。ただ、彼女は顔を隠すために頭に被り物をしていた。
被り物と言ってもたいしたものではない。ただの何の変哲も無い四角く茶色い紙袋を頭から被っているだけだ。目のある所には視界確保の為に丁寧に丸く穴があけられている。
その異様な光景は、人狼が恐怖するのに十分な物だった。
一方、侵入者の方は、目的のものが見つかり目を爛々と輝かせていた。
なぜなら彼女はケモナー。業深き者だったからだ。しかもその業は海よりも深かった。
次の瞬間、目にも留まらぬスピードで人狼に近づくと、思いっきり抱きついたのだ。
「ひっひぁあああああああああああああ!」
突然の事に混乱した人狼は情けない悲鳴を上げながら、椅子の上でばたばたと動かす今年が出来なかった。当然その程度ではケモナーを振りほどく事は出来なかった。
「きゃーー!いやああああああ!本物だぁーーーー!もふもふー!!ふぅううううううううううううう!!」
紙袋をかぶった女子高生…いや、ケモナーは、人狼に抱きついたからなのか更にテンションが上がり、人狼の頭部を中心に撫でくり回す。
──────────────────────
| うぉー!もふもふうらやましいぃいぃぃぃ! |
| 嫌そうじゃないだろ |
| これだからケモナーはwww |
| 紙袋かぶった女こえぇぇ! |
| これ普通に不法侵入じゃね?|
| 通報する? |
| 別にいいんじゃね|
| 俺も女の子に撫で繰り回されたい |
| ケモナーは裸猿の事は嫌いだろ|
──────────────────────
「ねね!見て見て!この子やっぱり本物だよ!もふもふだし!頭あったかいし!引っ張っても剥がれないし!もふもふだし!」
そして色々な場所(頭部中心)を引っ張ったり、口を無理やりあけさせて覗き込んだりしした。
人狼はケモナーに好き勝手に撫で回され、彼女居ない暦=年齢なシャイボーイは完全にどうすれば良いかわからず思考停止に陥ってしまった。
「決めた。この子私の物にするっ!」
思う存分撫で回し、耳の穴の中まで執拗に観察したあとケモナーはそう宣言した。
「は?」
そこで人狼はようやく我に返った。
「ちょちょちょ何言ってるのっ!私の物って一体何なんだよっ!それにどうやって俺の部屋に入ったんだ!?鍵はちゃんとかけたはずだ!」
あわててケモナーの肩に手をかけて引き剥がして反論する。
──────────────────────
| うわぁ俺も言われてみてぇ |
| 無理だろ |
| 無理だな |
| 諦めろ |
| 夢見てんじゃねぇ |
| はっ?馬鹿なの |
| 裸猿の分際で |
| みんなひでぇwww |
| orz |
──────────────────────
「ふふ、管理人さんに"引きこもりの先輩が心配だから様子を見に来たんですけど、インターホンを鳴らしても出てくれないんです。様子を見るだけなので予備の鍵を貸してくれませんか?"って言ったら簡単に貸してくれたわ」
「そんな簡単に!?」
驚愕の事実に人狼の顎が落ちる。そしてケモナーは続けて言った。
「逆に管理人さんが心配だから付いて来るって言うのを断るほうが大変だったわね。貴方に襲われたら大変だって」
「…」
人狼は自分の信用の無さを思い今度は天を仰いだ。まぁずっと引きこもりを続けてきた彼に信用が無いのも自業自得と言うものだが。
「まっ。私は外じゃ猫かぶってるからね。出てこない貴方とは信用の度合いが違うわ」
そう言うとケモナーは人狼の目を横から覗き込みながら袋の下で不敵に笑う。
「いやいやいや、俺人狼だよ?しかも元人間だよ?この人狼化が感染する病気だったら君も人狼になっちゃうかも知れないんだよ!!」
「問題ないわっ!むしろウェルカム!今の私も嫌いじゃないけど!もふもふになるんだったら後悔は無いわっ!」
言うと同時にその事を証明するように力いっぱい抱きつき、人狼の頭をもふもふしながら袋越しではあるが、首筋をクンカクンカと嗅ぐ。
「言い切ったよ……。この人」
人狼はもう諦めたのか、全身の力を抜いてだらりとした。
──────────────────────
| よく言った! |
| それでこそケモナー! |
| 私は撫でるだけで良い|
|人狼になれば俺も |
| 良し、じゃあまず俺に感染させてくれ|
| 覚悟完了しているな |
| |
| 良い覚悟だ |
| |
──────────────────────
その行動を了承と取ったケモナーは、ばっとケモナーから離れると、人狼の手を取って立たせる。
「じゃあ行きましょう!」
「え?」
──────────────────────
| え え? 早くね |
| ええええええええええ!|
|ええ? |
| へ? え? |
| 何だって? |
|え? |
| 行動力ありすぎワラタ |
| え? |
| 同棲かうらやましい |
──────────────────────
「えっ?じゃないわよ!これから貴方は私の家に来るの。私が毎日貴方の所に通うのもいいとは思うんだけど、それだと変な噂が立っちゃうからね。それじゃちょっと私、困るの!」
「なななら、毎日じゃなくても一週間に一回くらい。深夜とか来れば……」
"いいのでは?"と提案しようとしたが、それはケモナーの大声によって遮られた。
「ダメよっ!そしたら私が毎日貴方をもふもふ出来ないじゃない!だから、貴方は私の家に引っ越すの。それなら誰かに見られたとしても一度だけ。それに体型があれだけ変わってれば、貴方だって気づく人は居ないわ!」
「でも、親御さんがどういうか」
「問題ないわ。私一人暮らしだもの!」
「あとえっと、食費とか」
「それも問題ないわ!お小遣いとしてはちょっと多すぎるくらい毎月貰ってるから!」
そこでよい事思いついたと言う様に表情を変えた人狼は、なるべく怖い顔になるよう牙を剥き出しにしながら言った。
「俺男だし!狼男だし!襲われたら大変だし!」
「あら、いいわね!赤ちゃんは何人くらい欲しい?その子ももふもふちゃんだったら嬉しいわね!」
だが、ケモナーは一切動じなかった。逆にバッチコイ!さすがの人狼も頭を抱えた。
「思い立ったら吉日よ!さぁいくわよ!」
ケモナーはそう言うと、人狼を立たせてカメラの外へ…抱き枕カバーの暖簾の向こうへ腕を掴んで引っ張っていく。
「わっちょっと待ってよ!せめて、何か顔を隠すものを!あっこれっ!」
ケモナーはディスプレイの置かれた机の脇に手を伸ばし、机と壁の間に畳まれて差し込まれていた一枚の紙袋を取った。それは某ファーストフードチェーンでテイクアウトの商品を入れるための取っての付いた紙袋だ。
「あっこれだと前が見えない」
人狼はあわてて紙袋を脱ぐと被った時に目の位置になる部分に指を突き刺して穴を開ける。そして再び被った。
「よし。これで見える」
そしてふと、紙袋にあけた穴からまだ生放送が続いているディスプレイが目に入った。
──────────────────────
| へっ変態だー! |
|それは無いでしょ |
| 怪しすぎwww |
| 変態だ |
| 俺街で見たら絶対通報するわ |
| 変態すぎる。 |
| おまわりさんアイツです|
| |
| 満場一致で変態と認定 |
──────────────────────
そこには紙袋を被った人狼に対する評価が大量に流れていた。
「変態じゃないし人狼だし!」
思わず人狼は反論するが、上下赤ジャージに頭には穴の開いた紙袋。どう見ても変態にしか見えなかった。
「準備できたわね。じゃあ行くわよ」
だが、ケモナーはそんな事は一切気にする事無く、再び人狼を引っ張り始めた。
「ちょっちょっと待って、生放送の終了とパソコンの電源を落とさないと!」
「ダメ。そんなに待ってられないわ!私が後でやっおくから心配しないで!」
「ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
そしてとうとうそのままぐいぐいと人狼を引っ張って玄関の外へと引っ張っていってしまった。
響く玄関の扉が開閉される音。
取り残された視聴者達。
──────────────────────
|放送どうすんだよ… |
| ( ゚д゚)ポカーン |
| 通報したほうがいいのかな? |
| お幸せにでいいんじゃね?|
| 何マジになっちゃってんのwww |
| すぐ帰ってくるさ。 |
| ケモナー怖すぎwww |
| ネタバラシまだー? |
| これだけは言えるケモナー恐るべし!|
──────────────────────
視聴者達は、すぐ帰ってくるとかネタバラシはまだかと言い合っていたが、とうとう二人は帰ってくることは無く。そのまま放送終了した。
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