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二章 王都編

お爺ちゃん賢者の初めての詠唱でした。

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  『天を治め血を紡ぐ大神の如く其の清らかな魂と与えられた強靭な肉体を使い生み出されたるが儘にその大いなる力と共に我に従うことを示せ』

 『【十字架の機動ムーブメント・ロザリオ】』



          ****



 何か儂の思ったのと違う。

 そう気づいたのは、機動武装の装着が完全に終わった後だった。

 最初は体にぴったりくっ付く宇宙服みたいなのを想像していたのだが、どうも違うようだ。

 各パーツが儂と30cmぐらいの距離ぐらいで離れて浮遊して取り囲んでいる。

 自分の姿を見ているとなかなか奇妙な気分になってくる。


 「確か機動武装には【鉄壁】を組み込んだよな?そこんところはどうなんだ?」


 儂は機動武装に問いかける。

 ノイズのかかった機械音が帰ってくるのかと思ったが、普通の中性的な人間の声だった。


 『ええ、chとして【鉄壁】の絶対防御の権能を継承しております。性能を確認しますか?』


 儂でもスキュラの全力攻撃を素で受けたら相当なダメージを負うからの。

 これで防御を完璧にしたいのじゃ。


 『それでは庭に出てください。それと、出来れば水か鏡を用意してください』

 「あー、庭に鏡あるんだけどそれで大丈夫かの?」

 『はい。大丈夫です』


 何のためにやるのかはよく分からないが、とりあえず庭に出てみよう。

 メイドさん達によって丁寧に手入れされた芝はとても歩き心地がいい。

 もとに住んでいた貴族の成金趣味はどうかと思うが、この庭の芝だけは評価してやろう。

 そんなことを考えながら歩いていると、庭の鏡の前までやって来た。


 「で、何をするんじゃ?」

 『こうします。【十字架の蛇蝎サーペント・ロザリオ】』


 機動武装ソルドアームの腕の部位が、一斉に儂の前へと集まり力を籠めるような形態をとる。

 その腕の中に段々と紅い光線が渦巻きながら溜まっていく。

 周囲から魔力というエネルギーを吸い出し、土星の様に綺麗な円環と球形を象る。

 周囲には、毎度おなじみ魔暴嵐テンペストが吹き荒れ始めた。


 「ってぇぇえ!家を壊す気かお前は?」


 これだけのエネルギーを叩きつければ家も蒸発だけでは収まるまい。

 場合によっては王宮すら蒸発するかも……?

 辞めさせるべく静止の言葉をかける。


 『心配には及びません。これは光の様に跳ね返るレーザー攻撃なのでご主人様に発射後はそのまま飛んできます』

 「もっと大変じゃないか……」


 距離があるならともかく、この至近距離じゃどうしても反応は遅れる……


 『大丈夫です。絶対防御がありますから』


 そういって機動武装はレーザー攻撃を放出した。




                ****





  放出したレーザーは真っすぐに鏡に向かい、全反射でそのまま跳ね返ってくる。


 「本当に大丈夫なんじゃろうな……」


 心配になりつつ、前を見据える。

 儂の思考速度は千倍にまで強制的に上げさせられている(機動武装のせい)

 レーザーが跳ね返って向かってくる様がよく見える。

 咄嗟に避けようとするが、体が動かない。

 自らの時間も緩慢化されている。


 『心配には及びません』


 その自信がまた不安なんだよなー、と思いつつ機動武装の促す動きに合わせる。


 『座標X12789、Y5062、Z0の害意物体を確認。X座標-0.5に発動します。』


 『【十字架の絶護ディフェンド・ロザリオ】』


 体から魔力が抜けていく。

 勝手に魔力が吸い取られるという新鮮な感覚とともに、砂の絶護が出現する。




           ****



 『だから大丈夫ですよって言ったのに』

 「だって怖いんじゃもん」


 ……少し驚いたのは隠しておこう。

 魔力が吸い取られる感覚が思考に達するとともに、周囲の大地から砂が抽出され砂の壁を生成した。

 それが三重にも重なり、レーザーを完全に受け止めたのだ。

 一つ目の砂の壁をレーザーは突き破ったが、二つ目が威力を吸収するように収縮しレーザーを受け止めた。

 砂の壁がそこまで強いものだと思わなかったため、思わず土龍碧を張ってしまったことは既にバレてしまった。


 「冗談は別にしても、この壁の性能は凄いな」


 あのレーザーを止めたとなれば、ほとんどの攻撃を三枚目で止められるだろう。


 『これは発動が自動ですが、この発動を遮るぐらいのスピードで動かれると対処が出来ません。そうなったらマスターのご自分の判断でお願いします』


 ……なるほど、そういう欠点もあるのか。

 発動の合間をかいくぐるぐらいのスピードは防げない、と。

 しかしあの展開スピードなら掻い潜ることができるものは殆どいないだろう。


 「なんにせよ、これで現時点での最終戦力が揃ったな」


 ギルドの依頼もそろそろ受けようかのう。

 そうクレイが決断したのは、ギルド初訪問から既に一週間がたったころだった。




            ****



 「そう、ですか……有難うございます」


 ギルドに行き、その報告をしたところ受付嬢が感極まったのか号泣しだした。

 これで大量殺戮が終わる、という安心感もあったのだろう。

 しかし、残念ながら確実な安全は保障できない。


 「あっ、すいません……ちょっと感動しちゃって……」

 「あー、別にいい」


 今更謝っても遅ーい!


 「えと、明日大規模な討伐作戦が開かれますのでそれに参加してもらってもよろしいですか?これが失敗したら……」

 「ギルドが潰れ多数の人が死ぬ、違いないな?」


 肯定を示すように、こくんと頷いて見せる。


 「分かった。それに参加する」


 彼女の笑顔の皺が、さらに酷くなった。 


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