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1つの出会いは突然に

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 それは突然の出来事だった。


 俺は7時頃に目を覚まして、朝ごはんを食べるために2階にある俺の部屋から1階のリビングへと向かう。

 そしたら忙しそうに出かける準備をする母さんを見かけた。


 「母さん、朝から忙しそうにしてるけどどこか行くの?」

 
 「あら、紫皇(しおう)起きたのね、母さんは今から出かけてくるわね、17時頃には必ず部屋にいなさいよ」


 「うん、わかった。でも17時ごろ? 何か届くの?」

 「別に何も届かないわよ」

 何も届かないのに、家にいなくちゃいけないの?
 
 てか、家じゃなくて俺の部屋?  

 「じゃーどうして俺の部屋にいないといけないんだよ?」

 
 「ふふふ、それは私が帰ってからのお楽しみよ」

 母さんはもったいぶって、上機嫌に出かけて行った。

 
 それなのにどうしてこんなことになったんだよ。まさかこのために朝早くから出かけていたとは・・・・・・




 ――夕方17時
 

 ガチャっ!

 玄関のドアが勢いよく開けられ、足跡が真っ直ぐ俺の部屋に近づいてくる。


 バーン!

 ドアが凹むんじゃないかと思うぐらい勢いよく俺の部屋のドアが開けられる。

 そして開口一番母さんは告げる。

 「いい? 今日からあんたは女子中学生と暮らすのよ?」


 「・・・・・・は?」

 
 「・・・・・・もう全くそんなにも口を開けちゃって情けないわね。あんたは今日からこの子と暮らすのよ」

 そう言って母さんの後ろに隠れていた女子中学生の頭をぽんぽんする。


 「・・・・・・は?」

 
 IQ世界1位であってもあまりに突然の出来事に思考がぶっ壊れる。


 (女子中学生? それってJKだっけ? あれ、JKってジョーカーのこと?)


 必要十分性がありゃしない。

 思考がイカれてやがる。

 俺がぶっ壊れていると女子中学生がいきなり俺の頭をチョップしてくる。

 「こんくらいも理解できないの? それでも本当にIQ世界1位なの?」

 「な、何だよいきなり・・・・・・」

 不意打ちにビックリして女子中学生を咄嗟に見ると

 綺麗な薄い紫色の髪を肩甲骨あたりまで伸ばし、幼さが残っているが、とても整っている顔・・・・・・おまけに制服姿というご褒美


 あまりの可愛さに舐めたことを言われたのも忘れて、ついジッと見つめてしまう。

 すると女子中学生の顔はみるみる赤くなってきて

 「そ、そんなにジッと見ないで変態! キ、キモイから!」

 
 (・・・・・・グハッ・・・・・・女の子のキモいは男子全員に対して効果抜群だぜ・・・・・・IQ世界1位をもってしてもダメージはデカイぞ)


 「わ、悪かったよ。確かに女性をジッと見つめるのは失礼だったな」


 「わ、わかったならいいよ、フンっ」

 そのまま女子中学生はそっぽを向く。


 するとなぜか母さんはニヤニヤしながら


 「あらあら二人とももう仲がよくなったのかしら」

 
 と言って女子中学生の方を見る。

 
 「べ、別に全然仲良くないし!」


 顔を真っ赤にして慌てて否定する。


 俺はこの瞬間悟った。


 (この子は絶対・・・・・・ツンデレだ!)


 「ねえねえ、君――」

 「キモイ」

 「すごく――」

 「キモイ」

 「かわいいね」

 「キモ――ふぇ? かかかかかわいい? それってわわわわ私に言ってるの?」

 「そうだよ、君は可愛いよ」


 すると顔をりんごのように真っ赤にしてもじもじしながら

 「あ、ありがとう・・・・・・ございます」

 
 今にも消えてしまいそうな声で言う。語尾を敬語にすることも忘れていない。完璧なデレだ!

 
 (ほら見ろツンデレじゃないか! ツーンデレ! ツーンデレ! ツーンデレ!)


 俺が調子乗ってツンデレコールを脳内で放送していると

 ――スンッ

 そう効果音が聞こえるんじゃないかと思うほどの速さで女子中学生は真顔になる。
 そしてそのままの顔で俺の方を向き

 「今、君なんて言ったの?」


 「ん? な、何にも言ってないけど?」

 俺はできるだけ落ち着いた声で答える。
 
 (うん、俺は誓って何も言っていない。脳内で何を思おうと言わなければセーフ)


 「君のその脳内でだよ!」

 
 「・・・・・・な、なに! ・・・・・・俺の脳内放送を聞き取っただと!」


 「・・・・・・」


 「どこで、思考を読まれたんだ? その前に俺が思ってたことは読み取られてなかったんだろ、一体原因は――」


 俺はポーカーフェイスをしながら脳内放送をしているつもりだったが


 「・・・・・・ちょっとあんた思いっきり喋ってるわよ? 脳内放送 (?)  ってやつを」


 母さんはしばらく俺と女子中学生の会話を傍観していたが、思わずツッコミを入れてくる。


 「え? はっ! いつのまに声を出してたんだ!」


 「・・・・・・全く、あんたって人はホント思考がわかりやすいんだから」


 「えっそうなの? わかりやすかった?」

 女子中学生の方を向くと

 (わ、私、しーらなーい)

 ツンデレと思われたことを根に持ってるのか、横を向き無視してくる。


 母さんはそんな二人の様子を穏やかな目で眺める。

 「それじゃ、行くわよ」

 「ん、どこに行くの?」

 「そんなの決まってるでしょ、に行くのよ」

 「・・・・・・は?」

 驚いたのは俺だけだった。

 なぜか女子中学生はをして母さんの後をついて行くのだった。


 
 
 


 
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