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元気になる占い
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「町で許可なく魔法を使うのダメなんだって、ママがいってたよ?」
「あ、あはは~。よく知っているねぇ、ボク。でもアタシは占い師で魔法使いじゃないんだよ~」
今は、ってだけだけど。ううう、展望広場で魔法を使っているの見られてたか……。でも子供だし丸め込めばいいよねっ!?
声をかけてくれた子供は男の子で、10才にも満たない子。そんな子が夜遅く出歩いているなんて……。孤児かな? いやそれにしては服装が綺麗。というか真っ白い入院服着てる。
大人! として、お家か病院に帰さなきゃ。
「それより、お家に帰ろう? きっと、ママとパパが心配しているよ?」
「えぇ~。もどってもママもパパもいないからヤダ。それよりもう一回虹を見せてよっ!」
「だからあれは自然発生じゃないって~」
男の子はアタシに駆け寄ってきて、服を掴んで駄々を捏ねてくる。ならず者同然の低ランク冒険者&商人が育ちの良さそうな子供を夜に連れているだなんて、町人に見られたらアタシが誘拐犯扱いされても文句を言えないよねぇ。
通報される前にお巡りさんの所まで連れて行かないと。
「ぼくはじめて魔法も虹も見たんだっ! もっと色んな魔法が見たいよ、お姉ちゃんっ!」
「だからあれは……。ええと、見せるとしても明日っ! 明日以降ならいいよっ! だから今日はお家に戻ろっかっ」
「ほんと? ほんとにほんと? 嘘ついちゃヤだよっ!」
「本当、本当。そうそう、ボク名前は?」
「『エドワーズ』!」
約束を交わした男の子、エドワーズは興奮気味で町の中を走って、今入院しているんだろう病院の方へ走っていった。
元気に見えるけど何で入院したいるのかな? もう直ぐ退院するけど、検査とかでまだ帰れないとかかな?
「おい、安請け合いしていたが大丈夫なのか? あとまた勝手に町中で魔法を使ったのか」
「た、大した魔法は使ってないもんっ! ちょっと、雨降らせただけで……っ。男の子、エドワーズくんも約束はしたけど合流場所や時間なんて決めてないし、広い《ボムフォード》でまた会うことないでしょ~」
鉢合わせする頃にはきっと約束なんて忘れて、また新しく興味を持った物が出来ているんだろうなぁ。子供は好奇心の塊だもの。
なんて呑気に構えて宿屋でぐっすり寝た翌朝。
「お姉ちゃんっ! 約束っ! 魔法見せてっ!!」
街角にあるアタシの占い屋に入院服のエドワーズが訪れていた。
えぇ~。どうやってアタシがいるところ見付けたの~? あとご両親や保護者は? 何で一人なの~っ!?
ちなみにカイルは今日も冒険者ギルドで依頼を受けて町を出ている。ううう、引き留めてこの子の相手を押し付ければよかった。
「エ、エドワーズくんいらっしゃい」
「お姉ちゃん魔法は~?」
「今はお仕事しているから、魔法は使えないよ。それに町の中で勝手に使うのはダメなことって、賢いエドワーズくんは言っていたよね?」
「ちぇ~っ。昨日は使ってたのに~」
エドワーズくんは口を尖らせて文句を言っている。元はといえばアタシが悪いんだけどね。ごめんね。
「占いならやってあげられるよ。なんと、子供は無料っ!」
「お姉ちゃん、ぼくをこどもあつかいしないでよっ!」
「そっか~。じゃあこれは要らないかな~。子供だもんね~」
アタシはポケットから包装紙に包まれた飴玉を取り出すと、エドワーズくんに見せびらかす。子供は甘い物が好きって相場の通り、エドワーズくんの視線は飴玉に釘付けになった。
ゆらゆら揺らすと顔も動いてわかりやすい。包装紙を広げて、アタシの口の中に放り込む仕草をした時、我慢できなくなったエドワーズくんは折れた。
「ちょ、ちょーだいっ!」
「素直でよろしい」
アタシはエドワーズくんの口に飴玉を放り込む。
孤児院で自分よりちっちゃい子の世話を焼いたりしていたから、扱いはある程度わかるんだよねぇ。
「それじゃ、エドワーズくんはアタシに何を占って欲しい?」
「んっとねぇ。ショーライ、ぼくはどんなおしごとをしているかっ!」
飴玉でほっぺを膨らませながら、エドワーズくんは子供っぽい占いを所望してきた。
そのぐらいお任せあれだ。不確定な遠い未来の話なんて、どんな風にでも言えちゃうもんね。
「それではっ、占ってしんぜましょうっ!」
「うんっ!」
アタシは魔石がはめ込んである杖をそれっぽく掲げて呪文っぽく聞こえる単語を呟いて、むむむと目を瞑る。それからカッと目を見開いて高らかに宣言した。
「エドワーズくんの将来のお仕事は、なんと! 《賢者》ですっ!」
「《賢者》っ!?」
「そう! 全ての魔法を極め、全てのマナの流れを把握すると謳われているあの《賢者》ですっ!!」
《賢者》は最高峰の魔法使いが授かる称号。歴史を辿っても数えるくらいしか存在しなくて、《賢者》の称号を得たものは《マナ災害》を鎮めることもお手の物だって伝説がある。
今の時代もいるのか知らないけどね。でも存在したらマナ災害なんて起こらないんだろうから、居ないのかな。
「わ~っ! すっげ~っ!」
「ただし、ただ待っていても《賢者》にはなれないよ。当たり前だけどまずは魔法使いになれるよう勉強をして、人の役に立つことを積極的に取り組んでいかないと」
「たいへんそうぅ~」
「最高峰の魔法使いになるには長い道のりが必要だからね~。でもそう身構えずに、まずはパパとママが自慢できるような子を目指そうっ。食べ物を好き嫌いしないで、お医者さん言うことを聞いて健康になって、学校に通うのっ! どう? 出来そう?」
何でこんな大仰な職業をチョイスしたのかというと、派手ですごい職業ほど子供が食い付きやすいからっていうシンプルな理由。あとなるのが難しい職業の方が努力を促すと言う名の躾がしやすいし、それでいて将来なれなくっても諦めつくしね。ごめんね、アタシはずるい大人なんだ。
商人や騎士とかでもよかったけど、入院しているような子は体が万全じゃないかもだから、座学だけでもある程度上を目指せる系統の職業がいいかなって。尤も《賢者》は職業じゃなくて称号だけど、夢はでっかい方がいいでしょっ!
「うんっ! ぼくがんばるっ!」
エドワーズくんも目をきらきらさせて頷いてくれた。
根拠が何もない出任せの占いでも、こんなに喜んでくれると嬉しいなぁ。
「じゃあ最初の課題を与えましょうっ。お家に、いや病院? ともかく保護者のところに戻って、退院して元気になった姿をアタシに見せること!」
「うん、うんっ!」
「まずは健康第一だからね。ええと、大きな怪我とか生まれつきのハンディキャップが理由で入院しているんなら、また考え直さないとだけど」
「ううんっ! ぼくの病気はなおる病気だよ、パパとママもそう言ってたっ! だからお姉ちゃん、ぼくがんばっておとなになるねっ!!」
そう言ってエドワーズくんは元気に町を走って帰っていった。「またねーっ!」と小さな手がちぎれそうなほど振ってくるものだから、アタシも姿が見えなくなるまで手を振りかえした。
活発な子供を見てるとこっちも元気になる。エドワーズくんが退院するのは明日かな? 明後日かな? 彼が次に来るまでにもっとお客さんが呼べる占い師になっていたいなぁ。
ふふふ、また会う日が楽しみ。
「あ、あはは~。よく知っているねぇ、ボク。でもアタシは占い師で魔法使いじゃないんだよ~」
今は、ってだけだけど。ううう、展望広場で魔法を使っているの見られてたか……。でも子供だし丸め込めばいいよねっ!?
声をかけてくれた子供は男の子で、10才にも満たない子。そんな子が夜遅く出歩いているなんて……。孤児かな? いやそれにしては服装が綺麗。というか真っ白い入院服着てる。
大人! として、お家か病院に帰さなきゃ。
「それより、お家に帰ろう? きっと、ママとパパが心配しているよ?」
「えぇ~。もどってもママもパパもいないからヤダ。それよりもう一回虹を見せてよっ!」
「だからあれは自然発生じゃないって~」
男の子はアタシに駆け寄ってきて、服を掴んで駄々を捏ねてくる。ならず者同然の低ランク冒険者&商人が育ちの良さそうな子供を夜に連れているだなんて、町人に見られたらアタシが誘拐犯扱いされても文句を言えないよねぇ。
通報される前にお巡りさんの所まで連れて行かないと。
「ぼくはじめて魔法も虹も見たんだっ! もっと色んな魔法が見たいよ、お姉ちゃんっ!」
「だからあれは……。ええと、見せるとしても明日っ! 明日以降ならいいよっ! だから今日はお家に戻ろっかっ」
「ほんと? ほんとにほんと? 嘘ついちゃヤだよっ!」
「本当、本当。そうそう、ボク名前は?」
「『エドワーズ』!」
約束を交わした男の子、エドワーズは興奮気味で町の中を走って、今入院しているんだろう病院の方へ走っていった。
元気に見えるけど何で入院したいるのかな? もう直ぐ退院するけど、検査とかでまだ帰れないとかかな?
「おい、安請け合いしていたが大丈夫なのか? あとまた勝手に町中で魔法を使ったのか」
「た、大した魔法は使ってないもんっ! ちょっと、雨降らせただけで……っ。男の子、エドワーズくんも約束はしたけど合流場所や時間なんて決めてないし、広い《ボムフォード》でまた会うことないでしょ~」
鉢合わせする頃にはきっと約束なんて忘れて、また新しく興味を持った物が出来ているんだろうなぁ。子供は好奇心の塊だもの。
なんて呑気に構えて宿屋でぐっすり寝た翌朝。
「お姉ちゃんっ! 約束っ! 魔法見せてっ!!」
街角にあるアタシの占い屋に入院服のエドワーズが訪れていた。
えぇ~。どうやってアタシがいるところ見付けたの~? あとご両親や保護者は? 何で一人なの~っ!?
ちなみにカイルは今日も冒険者ギルドで依頼を受けて町を出ている。ううう、引き留めてこの子の相手を押し付ければよかった。
「エ、エドワーズくんいらっしゃい」
「お姉ちゃん魔法は~?」
「今はお仕事しているから、魔法は使えないよ。それに町の中で勝手に使うのはダメなことって、賢いエドワーズくんは言っていたよね?」
「ちぇ~っ。昨日は使ってたのに~」
エドワーズくんは口を尖らせて文句を言っている。元はといえばアタシが悪いんだけどね。ごめんね。
「占いならやってあげられるよ。なんと、子供は無料っ!」
「お姉ちゃん、ぼくをこどもあつかいしないでよっ!」
「そっか~。じゃあこれは要らないかな~。子供だもんね~」
アタシはポケットから包装紙に包まれた飴玉を取り出すと、エドワーズくんに見せびらかす。子供は甘い物が好きって相場の通り、エドワーズくんの視線は飴玉に釘付けになった。
ゆらゆら揺らすと顔も動いてわかりやすい。包装紙を広げて、アタシの口の中に放り込む仕草をした時、我慢できなくなったエドワーズくんは折れた。
「ちょ、ちょーだいっ!」
「素直でよろしい」
アタシはエドワーズくんの口に飴玉を放り込む。
孤児院で自分よりちっちゃい子の世話を焼いたりしていたから、扱いはある程度わかるんだよねぇ。
「それじゃ、エドワーズくんはアタシに何を占って欲しい?」
「んっとねぇ。ショーライ、ぼくはどんなおしごとをしているかっ!」
飴玉でほっぺを膨らませながら、エドワーズくんは子供っぽい占いを所望してきた。
そのぐらいお任せあれだ。不確定な遠い未来の話なんて、どんな風にでも言えちゃうもんね。
「それではっ、占ってしんぜましょうっ!」
「うんっ!」
アタシは魔石がはめ込んである杖をそれっぽく掲げて呪文っぽく聞こえる単語を呟いて、むむむと目を瞑る。それからカッと目を見開いて高らかに宣言した。
「エドワーズくんの将来のお仕事は、なんと! 《賢者》ですっ!」
「《賢者》っ!?」
「そう! 全ての魔法を極め、全てのマナの流れを把握すると謳われているあの《賢者》ですっ!!」
《賢者》は最高峰の魔法使いが授かる称号。歴史を辿っても数えるくらいしか存在しなくて、《賢者》の称号を得たものは《マナ災害》を鎮めることもお手の物だって伝説がある。
今の時代もいるのか知らないけどね。でも存在したらマナ災害なんて起こらないんだろうから、居ないのかな。
「わ~っ! すっげ~っ!」
「ただし、ただ待っていても《賢者》にはなれないよ。当たり前だけどまずは魔法使いになれるよう勉強をして、人の役に立つことを積極的に取り組んでいかないと」
「たいへんそうぅ~」
「最高峰の魔法使いになるには長い道のりが必要だからね~。でもそう身構えずに、まずはパパとママが自慢できるような子を目指そうっ。食べ物を好き嫌いしないで、お医者さん言うことを聞いて健康になって、学校に通うのっ! どう? 出来そう?」
何でこんな大仰な職業をチョイスしたのかというと、派手ですごい職業ほど子供が食い付きやすいからっていうシンプルな理由。あとなるのが難しい職業の方が努力を促すと言う名の躾がしやすいし、それでいて将来なれなくっても諦めつくしね。ごめんね、アタシはずるい大人なんだ。
商人や騎士とかでもよかったけど、入院しているような子は体が万全じゃないかもだから、座学だけでもある程度上を目指せる系統の職業がいいかなって。尤も《賢者》は職業じゃなくて称号だけど、夢はでっかい方がいいでしょっ!
「うんっ! ぼくがんばるっ!」
エドワーズくんも目をきらきらさせて頷いてくれた。
根拠が何もない出任せの占いでも、こんなに喜んでくれると嬉しいなぁ。
「じゃあ最初の課題を与えましょうっ。お家に、いや病院? ともかく保護者のところに戻って、退院して元気になった姿をアタシに見せること!」
「うん、うんっ!」
「まずは健康第一だからね。ええと、大きな怪我とか生まれつきのハンディキャップが理由で入院しているんなら、また考え直さないとだけど」
「ううんっ! ぼくの病気はなおる病気だよ、パパとママもそう言ってたっ! だからお姉ちゃん、ぼくがんばっておとなになるねっ!!」
そう言ってエドワーズくんは元気に町を走って帰っていった。「またねーっ!」と小さな手がちぎれそうなほど振ってくるものだから、アタシも姿が見えなくなるまで手を振りかえした。
活発な子供を見てるとこっちも元気になる。エドワーズくんが退院するのは明日かな? 明後日かな? 彼が次に来るまでにもっとお客さんが呼べる占い師になっていたいなぁ。
ふふふ、また会う日が楽しみ。
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