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|魔力探知《サーチ》の性能

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「ありがとうございます! なんとお礼を申し上げればいいか……!」

 ダンジョンで無事に《ドラゴンの涙》、透き通る青色をした魔石がはめ込まれた指輪を持ち帰ってお姉さんに渡したら、沢山お礼を言われた。
 レイブン系のモンスターは光り物が好きで、特に魔石には目がない。だからダンジョンの近くで落としたんだろう《ドラゴンの涙》をレッドレイブンが持ち帰って、そのまま巣を作って居座っていたんだろうなぁ。強い魔石があれば魔力濃度なんて気にしなくてよくなるからね。

「いえいえ、アタシの占いにかかればなくした場所を当てるなんてお茶の子さいさいですからっ!」
「それでも助かりました。こちら、ほんの気持ちですが受け取ってください」

 お姉さんはそう言ってアタシに小袋を渡してきた。受け取った小袋はずっしりと重くて、中でじゃらじゃらと硬貨がぶつかる音も聞こえる。
 思わぬ貰い物に、アタシはその場でぴゃっと飛び上がってしまった。

「えっ!? こ、こんなに受け取れませんよっ!?」
「代々町を治め、有事の際には町を守るアトネ家の務めがこれからも果たせるのですから、足りないくらいです」

 もしかしてお姉さんこの町の領主さまだったのかな!?
 気持ちはすごく嬉しいけれど、流石に過剰じゃ……?

「くれるっていうんなら貰っておけばいいんじゃないか? こう言うのは無碍にする方が失礼だと、いつだか興行師ラニスタが言っていた」
「ううう、じゃ、じゃあありがたく貰います……っ!」

 カイルの助言に従って、アタシは深々と頭を下げてから追加報酬を貰った。
 探し物が見付かったお姉さんは安堵と喜びが混ざった表情を浮かべて、夕日を背に軽やかな足取りで帰っていった。あんなに喜んでくれたのなら、依頼を受けた甲斐があったかな?

「でも無事に見付けられてよかった~。これでお姉さんの評判を聞いた町の人たちがまたアタシたちに失せ物探しを頼んでくるかもしれないけど、カイルがいるなら解決できるからいいよね!」
「占い屋じゃなくて探偵みたくなっている他はいいんじゃないか? ただ、今回は町の外で失くした物だったから見付けられたが、町中、特に家の中の失せ物だと俺は何もできないぞ」
「えっ? 何で? 何でもは無理でも、装飾品なら魔力が移っているから探せるんじゃないの?」

 理由がわからなくって、アタシが小首を傾げているとカイルは「無理無理」と手を振るジェスチャーをした。

「ダンジョンで使っていたマーシャの魔力探知サーチは潜んでいるモンスターの見分けがつくようになる術みたいだが、俺のは違う。魔力を持っているやつ全員の色が個別に見えるんだ」
「それが? アタシの魔力探知サーチより性能がいいようにしか聞こえないけど?」
「人間だろうとモンスターだろうと、個体の数だけ色が見えるってことは種族の判別がつかないってことだ。視界に入ったのが誰かの魔力が移った無機物だったとしても、遠目じゃ区別できない」
「……つまり?」
「家主の失せ物を家の中で探せって言われても、家の中は家主の色に染まっているから、どこに何があるかてんでわからん」

 今回は町の外、ダンジョンの中での失せ物だったのでお姉さんの魔力の色を探していったから見付けられたけど、その条件に当てはまらない場所だと使えない能力なんだとか。
 くぅ、失せ物探しで一儲けするアタシの計画が早くも破綻しちゃった。

「それじゃ安請け合い出来ないかぁ。残念だけど仕方ないね。でも今日カイル頑張ってくれたし追加報酬貰ったし、今晩は美味しいご飯食べよっか!」
「飯はありがたいが、その前に冒険者登録しておきたいんだが?」
「もう時間が遅いから明日でいいんじゃない? ほら、行こ行こ!」

 アタシはカイルの手を引っ張って、大きく看板を掲げている大衆食堂へ向けて走り出した。
 カイルは手を掴まれたことにびっくりしてたみたいだけど、素直についてきてくれて、その日の晩は二人で贅沢しちゃった。
 満腹になってエネルギー補給できたし、宿屋でシャワーを浴びてたっぷり寝て(宿代節約でカイルも同室で爆睡してたなぁ)リフレッシュしたアタシは今日も頑張ろう! って意気揚々と街道に出たんだけど……。

「おい、占い師のお嬢ちゃんまだ見つからないのか?」
「昨日も開店していたのお昼過ぎだったらしいし、まだやっていないのかもなぁ」
「けど長らく見付けられなかった領主さまの家宝を見事に探し当てた人だ! 俺も隠し場所を忘れたへそくりの在処を当てて貰うんだ!」
「私は倉庫の鍵を見付けて欲しいねぇ」
「うちは髪飾りをなくしちゃって」
「僕は懐中時計を」

 アタシは建物の物陰に隠れて、大通りでアタシの姿を探している町人たちの話を盗み聞きしていた。どうやら昨日のお姉さん、この町の領主さまが広告塔になってくれたみたいで、評判を聞き付けた人々が押し寄せているみたい。
 お客さんが沢山くるのはとっても嬉しいんだけど、どれも家の中での失せ物っぽいからカイルに頼れない。

「マーシャ、呼ばれているぞ?」
「出て行けないよ……。期待されているのに無理でした! って、折角あがった評判も地に落ちちゃう」
「素直に『屋内の探し物はできない』って伝えればいいんじゃないか?」

 カイルがごもっともな事を後ろから言ってくるけど、アタシは期待を裏切られた町の人の顔が頭に浮かんじゃって、とんがり帽子のつばをぎゅっと握りしめた。
 失望した目を向けられるのは何度経験しても慣れないし、嫌だ。

「こうなったら……」
「こうなったら?」

 そこでアタシはカイルの手を掴んで、

「別の町に逃げるっ!」

 大通りの反対方向へ向かって走り出した!

「おい、マーシャ。俺の冒険者登録……」
「次の町でしてあげるからぁっ!」
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