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虚言癖魔法使い改めエセ占い師の初仕事!
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占い師になると決めた日から三日後。
アタシは『銀狼』が拠点にしていた田舎町よりも大きい町に移動して、商人ギルドの門を叩いていた。
「はい、ご用件は何でしょうか?」
「商人ギルドの登録と、露店の出店場所を確保したいです!」
「かしこまりました。文字は書けますか? 書ける場合はこちらの書類に……」
受付のお姉さんの指示通りに登録申請書に記入をして手続きを済ませたアタシは、晴れて黒檀色の商人ギルドタグをゲットして商売許可を得た。あとは出店場所の確保になるけど、店舗を構えられるお金はないから露店で、空いているスペースをレンタルしなくちゃいけない。
でも空き地と机さえ借りられたら形になるから、安上がりかつ簡単でいいなぁ占い師って。
「大通り沿いは人気で埋まっておりまして、人通りの多い細道もレンタル料が……」
「あっ! 人気のない場所でも大丈夫なんで、一番安いところお願いしますっ!」
占い師のお客さんって運勢を聞きにくるだけじゃなくって、愚痴や相談に来ることも多いよね。だから人目が多い所だと逆にお客さんが来にくいかもしれない。娼館に出入りしていた占い師も個室で相談を受け付けてたし、教会の懺悔室も個室になっているって修道院出身のユリアから聞いた事がある。しかも相手の姿が見えないよう仕切りがしてある場合もあるんだ、って。
繁華街から離れている方が賃料も安いし、お客さんも人目を気にしなくていいから好都合っ!
「かしこまりました、でしたら……」
◇
どんなお客さんが来るかな? 恋愛話とかならいくらでも聞いちゃうっ。なんてわくわくしながら、日の当たらない路地裏の角で真っ白いテーブルクロスを敷いた机の前に立って30分後。
アタシは強面の荒くれ者に囲まれて固まっていた。
「よお嬢ちゃん! こんな所に店構えるたぁ酔狂だねぇ!」
「身売りか? それとも薬売ってくれるんか?」
「煙草の用意ぐらいはあるよなぁっ!?」
好き勝手なことを言って詰め寄ってくる男たちに、アタシは杖を握りしめながらたじたじになってしまう。
治安が悪いぃいっ! アウトローな不良しかいないじゃない、ここ! あぁ~、安さで選ぶんじゃなくてお店構える前に下見に来ればよかった~!
でもここで怯んだらカツアゲされるかもしれないし、強気にでなきゃっ!
「ち、違うもん! アタシは物を売っているんじゃなくて、占いをしているの! おじさん達が欲しいものは扱ってないから、用がないなら帰って!!」
「占いだぁ?」
「おっ! そいつぁ丁度いい! いっちょ俺を占ってくれよ嬢ちゃん!」
するとスキンヘアの強面おじさんが机に肘をついて迫ってきた。
何々!? 夢も希望も興味なさそうなおじさんが占って欲しいようなことないでしょ!?
「今日のコロシアムの勝敗を占ってくれねぇか?」
「コロシアム……!?」
コロシアム。人と人が、時にモンスターが戦う舞台である円形闘技場の名前。
この町にあるんだ、知らなかった……。
「う、占ってどうするの?」
「そりゃベッドして一攫千金狙うに決まっているだろーが!」
賭け事ね……。誰が出場するか何て知らないし、テキトーに占ってお金だけ貰ってとんずらしようかなぁ。
ここ危なっかしいし、少しでも出店料を回収できたら店仕舞いしちゃおうっ!
「わかりました、占います!」
「おぉ~! 引き受けてくれるのかい!」
「はい! 今なら10ガルで引き受けましょう! どうです? 破格でしょう?」
10ガルは大体、定食ご飯一食分だ。占いってどんなに安くてもこれの倍の値段がおおよその相場だし、これなら外れたところで恨みは買わないでしょ。納得できないなら引き下がってもらお。
「10ガルか。おし、払おう!」
「おいおい、本当に占って貰うのか?」
「こんな胡散臭い占い屋に使うより酒代の足しにした方がいいんじゃねぇ?」
支払いを決めたスキンヘッドおじさんに取り巻き二人が困惑している。
確かにいくら安いからって実績も何もない小娘なアタシにお金を払おうだなんて、普通はしないよねぇ。占いを信じてるってタイプでも絶対なさそうだし。
「うるせぇよお前ら。俺の金だ、俺が好きに使っていいだろが。はいよ、10ガル」
スキンヘッドおじさんはびっくりするぐらい素直に10ギルコインを机に置いてくれた。パッと見た感じ偽硬貨じゃない。からかっていたり、だまくらかそうって意図はないみたい。まぁ仮に偽物でも大した損にはならないんだけど。
初仕事が強面おじさんになったのは想定外なものの、お金を払ってくれた以上はお客さんだ。よし、占おう!
「お客さんはどの試合に賭ける予定ですか? それを教えてくれたら早速、占います!」
「第三試合の七十三番と二十五番が出るやつだ! 頼むぜぇ嬢ちゃん!」
にたにたと下品な笑みを浮かべて言うスキンヘッドおじさんに、アタシはちょっと顔をしかめながら占う事にした。
それにしてもネームドじゃないのかぁ。人気者だったり著名な選手なら、数字じゃなくて本人の名前や通称が使われるはず。それか知名度獲得目的の冒険者や借金返済目当てのお貴族様。
だから今回試合をするのは興行師所有の奴隷剣闘士かな? 何にせよ数字だけだと判断材料ないし、テキトーに数字が若い方でも選ぶかぁ。
アタシは魔石がはめ込んである杖をそれっぽく掲げて呪文っぽく聞こえる単語を呟いて、むむむと目を瞑る。それからカッと目を見開いて高らかに宣言した。
「見えました! 二十五番が勝利します!」
「おお! それは本当なんだろうな?」
「はい! アタシの占いは当たるんですから、当然です!」
アタシは胸を張って嘘八百を並べ立てる。その自信満々っぷりにテンションが上がったのか、おじさん達は『うおぉおお!!』と何か勝手に盛り上がっている。
このままおじさん達が意気揚々とコロシアムに向かったらとんずらしよっと。
「わかったぜ嬢ちゃん、俺は二十五番に賭ける!」
「はい! この度はご利用、ありがとうございました!」
「あん? 何終わった気になってんだ、嬢ちゃん」
「はい?」
早く帰ってくれないかなって思っていたスキンヘッドおじさんは、いきなりアタシの腕をガシリと掴んできた。
「金を払ったんだ、責任もって結果を見届けてくれるよなぁっ!」
「え、えぇ~っ!?」
そうしてアタシはスキンヘッドおじさんに引きずられる形でコロシアムに連れて行かれてしまった!
さっさと姿くらまそうと思ったのに、どうしてこうなるの~!
アタシは『銀狼』が拠点にしていた田舎町よりも大きい町に移動して、商人ギルドの門を叩いていた。
「はい、ご用件は何でしょうか?」
「商人ギルドの登録と、露店の出店場所を確保したいです!」
「かしこまりました。文字は書けますか? 書ける場合はこちらの書類に……」
受付のお姉さんの指示通りに登録申請書に記入をして手続きを済ませたアタシは、晴れて黒檀色の商人ギルドタグをゲットして商売許可を得た。あとは出店場所の確保になるけど、店舗を構えられるお金はないから露店で、空いているスペースをレンタルしなくちゃいけない。
でも空き地と机さえ借りられたら形になるから、安上がりかつ簡単でいいなぁ占い師って。
「大通り沿いは人気で埋まっておりまして、人通りの多い細道もレンタル料が……」
「あっ! 人気のない場所でも大丈夫なんで、一番安いところお願いしますっ!」
占い師のお客さんって運勢を聞きにくるだけじゃなくって、愚痴や相談に来ることも多いよね。だから人目が多い所だと逆にお客さんが来にくいかもしれない。娼館に出入りしていた占い師も個室で相談を受け付けてたし、教会の懺悔室も個室になっているって修道院出身のユリアから聞いた事がある。しかも相手の姿が見えないよう仕切りがしてある場合もあるんだ、って。
繁華街から離れている方が賃料も安いし、お客さんも人目を気にしなくていいから好都合っ!
「かしこまりました、でしたら……」
◇
どんなお客さんが来るかな? 恋愛話とかならいくらでも聞いちゃうっ。なんてわくわくしながら、日の当たらない路地裏の角で真っ白いテーブルクロスを敷いた机の前に立って30分後。
アタシは強面の荒くれ者に囲まれて固まっていた。
「よお嬢ちゃん! こんな所に店構えるたぁ酔狂だねぇ!」
「身売りか? それとも薬売ってくれるんか?」
「煙草の用意ぐらいはあるよなぁっ!?」
好き勝手なことを言って詰め寄ってくる男たちに、アタシは杖を握りしめながらたじたじになってしまう。
治安が悪いぃいっ! アウトローな不良しかいないじゃない、ここ! あぁ~、安さで選ぶんじゃなくてお店構える前に下見に来ればよかった~!
でもここで怯んだらカツアゲされるかもしれないし、強気にでなきゃっ!
「ち、違うもん! アタシは物を売っているんじゃなくて、占いをしているの! おじさん達が欲しいものは扱ってないから、用がないなら帰って!!」
「占いだぁ?」
「おっ! そいつぁ丁度いい! いっちょ俺を占ってくれよ嬢ちゃん!」
するとスキンヘアの強面おじさんが机に肘をついて迫ってきた。
何々!? 夢も希望も興味なさそうなおじさんが占って欲しいようなことないでしょ!?
「今日のコロシアムの勝敗を占ってくれねぇか?」
「コロシアム……!?」
コロシアム。人と人が、時にモンスターが戦う舞台である円形闘技場の名前。
この町にあるんだ、知らなかった……。
「う、占ってどうするの?」
「そりゃベッドして一攫千金狙うに決まっているだろーが!」
賭け事ね……。誰が出場するか何て知らないし、テキトーに占ってお金だけ貰ってとんずらしようかなぁ。
ここ危なっかしいし、少しでも出店料を回収できたら店仕舞いしちゃおうっ!
「わかりました、占います!」
「おぉ~! 引き受けてくれるのかい!」
「はい! 今なら10ガルで引き受けましょう! どうです? 破格でしょう?」
10ガルは大体、定食ご飯一食分だ。占いってどんなに安くてもこれの倍の値段がおおよその相場だし、これなら外れたところで恨みは買わないでしょ。納得できないなら引き下がってもらお。
「10ガルか。おし、払おう!」
「おいおい、本当に占って貰うのか?」
「こんな胡散臭い占い屋に使うより酒代の足しにした方がいいんじゃねぇ?」
支払いを決めたスキンヘッドおじさんに取り巻き二人が困惑している。
確かにいくら安いからって実績も何もない小娘なアタシにお金を払おうだなんて、普通はしないよねぇ。占いを信じてるってタイプでも絶対なさそうだし。
「うるせぇよお前ら。俺の金だ、俺が好きに使っていいだろが。はいよ、10ガル」
スキンヘッドおじさんはびっくりするぐらい素直に10ギルコインを机に置いてくれた。パッと見た感じ偽硬貨じゃない。からかっていたり、だまくらかそうって意図はないみたい。まぁ仮に偽物でも大した損にはならないんだけど。
初仕事が強面おじさんになったのは想定外なものの、お金を払ってくれた以上はお客さんだ。よし、占おう!
「お客さんはどの試合に賭ける予定ですか? それを教えてくれたら早速、占います!」
「第三試合の七十三番と二十五番が出るやつだ! 頼むぜぇ嬢ちゃん!」
にたにたと下品な笑みを浮かべて言うスキンヘッドおじさんに、アタシはちょっと顔をしかめながら占う事にした。
それにしてもネームドじゃないのかぁ。人気者だったり著名な選手なら、数字じゃなくて本人の名前や通称が使われるはず。それか知名度獲得目的の冒険者や借金返済目当てのお貴族様。
だから今回試合をするのは興行師所有の奴隷剣闘士かな? 何にせよ数字だけだと判断材料ないし、テキトーに数字が若い方でも選ぶかぁ。
アタシは魔石がはめ込んである杖をそれっぽく掲げて呪文っぽく聞こえる単語を呟いて、むむむと目を瞑る。それからカッと目を見開いて高らかに宣言した。
「見えました! 二十五番が勝利します!」
「おお! それは本当なんだろうな?」
「はい! アタシの占いは当たるんですから、当然です!」
アタシは胸を張って嘘八百を並べ立てる。その自信満々っぷりにテンションが上がったのか、おじさん達は『うおぉおお!!』と何か勝手に盛り上がっている。
このままおじさん達が意気揚々とコロシアムに向かったらとんずらしよっと。
「わかったぜ嬢ちゃん、俺は二十五番に賭ける!」
「はい! この度はご利用、ありがとうございました!」
「あん? 何終わった気になってんだ、嬢ちゃん」
「はい?」
早く帰ってくれないかなって思っていたスキンヘッドおじさんは、いきなりアタシの腕をガシリと掴んできた。
「金を払ったんだ、責任もって結果を見届けてくれるよなぁっ!」
「え、えぇ~っ!?」
そうしてアタシはスキンヘッドおじさんに引きずられる形でコロシアムに連れて行かれてしまった!
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