毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー活劇〜

第十一章 キノコの国のアリス編

クスシ＆元ネタ人物紹介 カール編

※この頁はクスシと、モデルにした元ネタの人物について書いてあるオマケです
※読み飛ばしても何も問題ありません

カール
クスシ歴11年。29歳。スウェーデン人。
マスクデザイン：鹿の頭蓋骨
アイギス：ユウレイクラゲ型

モデルの偉人
カール・ヴィルヘルム・シェーレ（西暦1742-1786）
スウェーデンの化学者、薬学者。

酸素を発見した一人として有名（酸素を発見した人物はもう一人います）。
14歳で薬剤師の徒弟として働き始め、その後も薬剤師として働いていた。作中で14歳の時にアバトンに突撃していったのはこの辺が元ネタ。
当時の薬剤師は化学者としての側面も強く、化学実験の装置を用いて自分で薬を作っていた。

彼が発見した元素や化合物は数多に渡り、塩素、シュウ酸、バリウム、マンガン、シアン化水素など、他にも多くの発見をしている。
酸素もだが、砒素を材料にした鮮やかな緑の顔料『シェールグリーン』の開発（『パリスグリーン』の前身。なお当たり前だがこの顔料を使った物を使用し続けると死ぬ）と、シアン化水素の単離の方法を発見した事は特に有名だと思われる。
あと細菌のさの字もなかった時代にも関わらず（※細菌の発見自体は17世紀後半にされていたけど、病気の原因と認識されたのは19世紀後半）、低温殺菌法に似た技法も既に開発していたとか。

ただこれほど優秀ではあったものの、功績にあまり頓着しない性格だったのか、それとも単に作業が遅かったのか、発見した酸素にまつわる著書を出すのに数年かけ、その間にカールより遅れて発見した他の化学者の論文が提出され、現在、酸素の発見者という肩書きはその化学者のものになっている。
そもそもカールは薬剤師ながら王立科学アカデミーの会員に選ばれたり、ベルリンの大学から招聘される程に評価されていた人物だったが、静かに研究をしたいという個人主義のケがあったのと管理を依頼されていた薬局の経営を優先し、学者になる事を断っている。
自分こそが酸素の第一発見者だという先取権の主張を強く言った事もなかったようで、控えめな性格だったのでは？　と言われている。

ちなみに亡くなったのが40代と若いが、これは同時代の化学者の例に漏れず、危険な実験条件のもとで研究を進めたためだと考えられている。
または毒のある物を舐めたからでは、という説も。というのも彼には物を舐める癖があったらしい。本編のカールが〈好奇心の塊〉という設定なのはこの辺から来ている。
尤もこの物を舐める行為も彼だけがしていた訳ではないっぽいので（次頁に解説する人物参照）、この時代の医療従事者及び化学者はぶっ飛んだ人が多かったのかもしれない……。