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第五章 恋する乙女大作戦編
第89話 乙女の試合観戦!
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私クリスは国際連盟秘密警察所属、つまり軍人並みに戦闘訓練を沢山積んだ人間です。
「め、め、目で追えませんでした……」
なのに大画面の中、仮想空間の中で暴れ回るウミヘビ達の動きは全く目で追えず、あちらこちらで発砲音や爆音や破壊音は聞こえたものの、基本的には仮想戦場として用意された神殿がボロボロになっていくのを眺めるしかありませんでした。
最後にパラチオンというウミヘビの首が何の変哲もない空中で飛んで、ようやく一回、死亡判定に追い込んだのはわかったのですが。しかし何で彼の首は飛んだのでしょう? 水銀さんが細工をしていたっぽいですが、具体的に何をしたのかはさっぱりです。
「ここまでの強さとは。私がウミヘビと手合わせをした時、クロールが相手をしてくれた時は、手も足も出なかったというのに」
「パラチオンは戦闘センスがピカイチだからなぁ。肉弾戦だけであの強さ、末恐ろしいわぁ」
パラチオンの試合を始めて見るというモーズさんも、私と同じように唖然としています。ウミヘビ基準でも普通ではないようです。
それとフリーデンさんの言う通り、パラチオンは大きめの銃を2丁持っているようですが、一度も使っていませんでした。恐らく彼なりの手加減、というか舐めプですよねコレ。
その上で多人数相手にあんな無双が出来るなんて……。やはりウミヘビは生物兵器なのだ、と見せ付けられた気がします。
「ユストゥス曰く、ウミヘビはソロで戦闘をこなすのが基本だと話していたが、連携もなかなかのものでは? 感染者の毒の耐性が強まっているんだ、集団で処分作業に当たる事も考えるべきでは?」
「そうだなぁ。けど毒素と毒素が混ざって化学反応を起こしたり、大気汚染の危険性が上がるのも無視出来ないのがなぁ。複数人連れて行くとしても、よくよく選別しないと災害現場がエラい事になる」
「それは確かに」
モーズさんとフリーデンさんが意見を交わし合っています。災害鎮圧に頭を悩ませているのはクスシさんも同じなのですね。ラボなのに災害対処を請け負っているという事は知っていましたが、強力なウミヘビに任せきりなのかと思っていました。
それに実際に話題に出している所を見ると、何だか親近感が湧いてきます。
「あの~、連携といえば、茶髪のウミヘビ……。ニコチンさんでしたか、彼はどうして『先輩』と呼ばれているのでしょうか? 何か、特別な立場なのですか?」
私は挙手をし、恐る恐る2人の会話に入ってみたした。
試合がひと段落しましたし、ここで情報収集しなくては!
「それかぁ。ウミヘビってな~、ラボに来るまでに力に溺れて、調子乗っている奴も多いんだよ。そんでニコチンはそんな驕り高ぶった連中をボコって、身の程わからせる作業を任されがちなもんで。それで先輩呼びしているウミヘビがちょいちょい居るのよ」
フリーデンさんが答えてくれましたが、怖い。先輩と呼ばれる理由めちゃくちゃ怖い。
まるでマフィアの制裁のようです……!
「ラボに来たばっかのタリウムを鍛えたのもニコチンだ。だからある程度、息が合うのかも」
「フリーデン。その話から推測するに、セレンも力に溺れていた頃があったと……?」
「ないない。セレンにそんな時期ない。あいつがニコチンを先輩って呼ぶのは、戦闘のイロハ教わった結果らしいぞ~」
「あの、つかぬ事をお伺いいたしますが……。ウミヘビがラボに来る前、とは?」
「それは勿論、企業秘密っ」
うっ! 緊張が解けてフレンドリーになってくださったフリーデンさんから今なら情報を聞き出せるかと思いましたが、線引きはしっかりしているお方な模様っ!
でも折角、ネグラに入らせて貰ったのです! 試合は動体視力の敗北で得られた情報は少なかったものの、もう少し留まらせて貰いウミヘビと交流を、せめてタリウムさんに、挨拶を……!
『クハハハハッ! いい、いい! 実にいい! ようやく小雨が降ってきた!!』
その時、大画面ホログラム映像からパラチオンの高笑いが響いてきました。
死亡判定を受けて神殿の2階にランダム転移をした彼は、石柵の上に腰を下ろし上機嫌に笑っています。
『さぁもっと、もっと雨を降らせろ! もっと、もっと、もっと!! そして俺様の渇きを満たせ!!』
『一回殺してあげたんだから、それで満足しなさいな』
『何を腑抜けた事を言っている! やっと俺様の身体が温まってきたんだ、ここで止めるなどあり得ない!!』
『このスタミナお馬鹿っ! だからアンタの相手するの嫌なのよっ!』
パラチオンは一回殺されたぐらいでは全く満足していないようで、試合続行を求めています。それを見た水銀さんはげんなりしています。
パラチオンの表情は何と言うか、ウォーミングアップが終わり、嬉々としてサッカーコートに入ってきたサッカー少年のようです。
あれだけ暴れても準備運動扱いだなんて、パラチオンはスロースターターなんですかね?
『わかった、アンタに足りないのは緊張感! そして繊細さ! 捨て身を厭わない無鉄砲さが問題なのよ!』
『俺様の再生力は随一だ。頭と心臓さえ欠けなければ、他の欠損を気にする必要なんてない』
『だからアンタは遠征の希望が通らないのよ。災害現場といえど、青い血を撒き散らすのは推奨されてないわ。現場に生存者が居た場合は保護も必要なんだし。つまり身に付けるべきは攻める力ではなく、守る力』
水銀さんは手元にホログラムキーボードを表示すると、細長い指先でぽちぽちと操作を始めます。
すると現実の訓練室に水銀さんの顔を映した小窓ホログラム画面が表示されて、すぃ~と滑らかに空中を移動します。
そしてその小窓は、何と私の前で止まりました!
『警察のお嬢さん、一つ生贄になってみる気ないかしら?』
「め、め、目で追えませんでした……」
なのに大画面の中、仮想空間の中で暴れ回るウミヘビ達の動きは全く目で追えず、あちらこちらで発砲音や爆音や破壊音は聞こえたものの、基本的には仮想戦場として用意された神殿がボロボロになっていくのを眺めるしかありませんでした。
最後にパラチオンというウミヘビの首が何の変哲もない空中で飛んで、ようやく一回、死亡判定に追い込んだのはわかったのですが。しかし何で彼の首は飛んだのでしょう? 水銀さんが細工をしていたっぽいですが、具体的に何をしたのかはさっぱりです。
「ここまでの強さとは。私がウミヘビと手合わせをした時、クロールが相手をしてくれた時は、手も足も出なかったというのに」
「パラチオンは戦闘センスがピカイチだからなぁ。肉弾戦だけであの強さ、末恐ろしいわぁ」
パラチオンの試合を始めて見るというモーズさんも、私と同じように唖然としています。ウミヘビ基準でも普通ではないようです。
それとフリーデンさんの言う通り、パラチオンは大きめの銃を2丁持っているようですが、一度も使っていませんでした。恐らく彼なりの手加減、というか舐めプですよねコレ。
その上で多人数相手にあんな無双が出来るなんて……。やはりウミヘビは生物兵器なのだ、と見せ付けられた気がします。
「ユストゥス曰く、ウミヘビはソロで戦闘をこなすのが基本だと話していたが、連携もなかなかのものでは? 感染者の毒の耐性が強まっているんだ、集団で処分作業に当たる事も考えるべきでは?」
「そうだなぁ。けど毒素と毒素が混ざって化学反応を起こしたり、大気汚染の危険性が上がるのも無視出来ないのがなぁ。複数人連れて行くとしても、よくよく選別しないと災害現場がエラい事になる」
「それは確かに」
モーズさんとフリーデンさんが意見を交わし合っています。災害鎮圧に頭を悩ませているのはクスシさんも同じなのですね。ラボなのに災害対処を請け負っているという事は知っていましたが、強力なウミヘビに任せきりなのかと思っていました。
それに実際に話題に出している所を見ると、何だか親近感が湧いてきます。
「あの~、連携といえば、茶髪のウミヘビ……。ニコチンさんでしたか、彼はどうして『先輩』と呼ばれているのでしょうか? 何か、特別な立場なのですか?」
私は挙手をし、恐る恐る2人の会話に入ってみたした。
試合がひと段落しましたし、ここで情報収集しなくては!
「それかぁ。ウミヘビってな~、ラボに来るまでに力に溺れて、調子乗っている奴も多いんだよ。そんでニコチンはそんな驕り高ぶった連中をボコって、身の程わからせる作業を任されがちなもんで。それで先輩呼びしているウミヘビがちょいちょい居るのよ」
フリーデンさんが答えてくれましたが、怖い。先輩と呼ばれる理由めちゃくちゃ怖い。
まるでマフィアの制裁のようです……!
「ラボに来たばっかのタリウムを鍛えたのもニコチンだ。だからある程度、息が合うのかも」
「フリーデン。その話から推測するに、セレンも力に溺れていた頃があったと……?」
「ないない。セレンにそんな時期ない。あいつがニコチンを先輩って呼ぶのは、戦闘のイロハ教わった結果らしいぞ~」
「あの、つかぬ事をお伺いいたしますが……。ウミヘビがラボに来る前、とは?」
「それは勿論、企業秘密っ」
うっ! 緊張が解けてフレンドリーになってくださったフリーデンさんから今なら情報を聞き出せるかと思いましたが、線引きはしっかりしているお方な模様っ!
でも折角、ネグラに入らせて貰ったのです! 試合は動体視力の敗北で得られた情報は少なかったものの、もう少し留まらせて貰いウミヘビと交流を、せめてタリウムさんに、挨拶を……!
『クハハハハッ! いい、いい! 実にいい! ようやく小雨が降ってきた!!』
その時、大画面ホログラム映像からパラチオンの高笑いが響いてきました。
死亡判定を受けて神殿の2階にランダム転移をした彼は、石柵の上に腰を下ろし上機嫌に笑っています。
『さぁもっと、もっと雨を降らせろ! もっと、もっと、もっと!! そして俺様の渇きを満たせ!!』
『一回殺してあげたんだから、それで満足しなさいな』
『何を腑抜けた事を言っている! やっと俺様の身体が温まってきたんだ、ここで止めるなどあり得ない!!』
『このスタミナお馬鹿っ! だからアンタの相手するの嫌なのよっ!』
パラチオンは一回殺されたぐらいでは全く満足していないようで、試合続行を求めています。それを見た水銀さんはげんなりしています。
パラチオンの表情は何と言うか、ウォーミングアップが終わり、嬉々としてサッカーコートに入ってきたサッカー少年のようです。
あれだけ暴れても準備運動扱いだなんて、パラチオンはスロースターターなんですかね?
『わかった、アンタに足りないのは緊張感! そして繊細さ! 捨て身を厭わない無鉄砲さが問題なのよ!』
『俺様の再生力は随一だ。頭と心臓さえ欠けなければ、他の欠損を気にする必要なんてない』
『だからアンタは遠征の希望が通らないのよ。災害現場といえど、青い血を撒き散らすのは推奨されてないわ。現場に生存者が居た場合は保護も必要なんだし。つまり身に付けるべきは攻める力ではなく、守る力』
水銀さんは手元にホログラムキーボードを表示すると、細長い指先でぽちぽちと操作を始めます。
すると現実の訓練室に水銀さんの顔を映した小窓ホログラム画面が表示されて、すぃ~と滑らかに空中を移動します。
そしてその小窓は、何と私の前で止まりました!
『警察のお嬢さん、一つ生贄になってみる気ないかしら?』
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