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第五章 恋する乙女大作戦編

第84話 乙女の一目惚れ…♡

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 きゅ、急展開ですっ!
 なんと、クスシさん同伴でネグラまで連れて行って貰える事となりました! 有毒人種の巣窟とされるネグラ、今からドキドキです……!
 ネグラは寄宿舎を出て先に見える、高い鉄柵に囲まれた所がそうです! ここからでは中の様子までは見れませんが、猛獣動物が入った檻のような恐ろしい景色が広がっているのでしょうか?
 う、ちょっと怖い……。

 あ、ネグラに続く道に一人の男性が立っています。
 腰まで届く長い銀髪を持つ、長身でスタイル抜群な、うわ顔めちゃくちゃ綺麗!

「アンタ達、悪い事は言わないから今はネグラに行くのよしときなさい」

 遠目から見ても光り輝いて見えるお顔に化粧まで施した、パリコレモデルのような美貌を持つ方です。が、声は低いので男性のようです!
 ネグラの現状を知っているようですし、マスクはしていませんし、まさかこの方がウミヘビ……!? 初めて見るウミヘビがこんなに綺麗な方だなんて!(※港で接触したテトラミックスもウミヘビだと気付いていない)

「ご忠告、痛み入る。しかしユストゥスからの命でな」
「それはご愁傷様」
「ちなみに何で行かない方がいいんだ?」
「噴火した活火山が暴れているのよ。鎮火するまでボクは絶対近付きたくな……」

 銀髪の美人さんが私の方へ視線を向けました。私がモーズさんの隣にいることに、今初めて気付いた様子です。
 背がお高い分、目線もお高いので、男性に比べると小柄な私は視界に入っていなかったのでしょう。

「きゃ~っ! 女の子がいるじゃな~いっ!」

 すると銀髪の美人さんは銀色の目を爛々と輝かせ、私に満面の笑みを見せてくれました。
 うっ! 国が傾きそうなレベルの美顔の笑み眩しいっ!

「アンタ達まさか、この子をネグラに連れて行く気!?」
「水銀さんの言う、鎮火作業に取り掛からなくてはいけなくなってな」
「だからってお客さんを一人にしておく訳にはいかないし~?」
「しかもアイツとやり合うつもりなの!? 信っじられない……!」

 絶世の美人ウミヘビ、水銀さんとモーズさんが仰ったお方はハイヒールの踵でダンッ! と歩道を踏み付けました。そして歩道の舗装がちょっと欠けた気がしました。
 水銀。化学に明るくない私でも知っている、メジャーな毒物です。常温で液体金属という神秘的な毒物ですが、人の形を取るとこんなにお綺麗なんですね。

「仕方ないわね、特別にボクも同行してあげる。感謝しなさいな」
「あ、ありがとうございますっ!」
「素直で可愛いわねぇ」

 水銀さんは私に合わせ、ちょっと屈んで微笑みかけてくれます! 有毒人種がどんな恐ろしい人々なのかと戦々恐々としておりましたが、初めて会った方がお優しい人でよかったぁ。
 では改めまして、いざネグラへ!

 フリーデンさんがネグラを囲む鉄柵の門に触れれば、門は自動的にスライドして開いてくれました!
 中は白い海辺の町を模した観光地みたいな造りで、軍隊や刑務所のようなシステマチックさはなく生活感に溢れていて、あと、その、えと。

 イケメンパラダイス……!!

 ネグラの中で暮らしているウミヘビ達は揃って顔立ちが整っていて、まるで映画かアニメの中の世界です! あと目の色や髪の色がカラフルです! 人間が持ち得ない色素をしているウミヘビも居て、ますますアニメを見ているかのようです!
 年齢が中年以上の方は見当たりませんし、全員男性のようですが、アメリカで言うとロサンゼルスにある映画の街、ハリウッドの景色!
 ハリウッドでは、スーパースターになろうと世界中から人が集まります。ただ映画の街なだけあって競争が激しく、全員が俳優で食べてゆく事は厳しい。だからと夢を諦めずハリウッドに留まり、食べる為に他の職業に就く方が大勢います。なので結果として街にはバスの運転手やショップ店員にも、美男美女が沢山いらっしゃるのです。
 このネグラには、そんなハリウッドの街並みを見た時と同じ感覚を覚えます! これだけ粒揃いのイケメンがいらっしゃるのに、芸能活動はしていないんです!?

「えーっと、訓練場のシミュレーターに行くのと、その前にめぼしいウミヘビを連れて行くのがミッションだっけか?」
「めぼしいウミヘビ……。ひとまず屋台バーに行けばいいだろうか」
「そうだな~。そこなら誰かしら居るだろ」

 モーズさんとフリーデンさんが向かう先について話し込んでいます。
 あ、この流れ知っています。協力型MMORPGなどでよくある、酒場で冒険の仲間を募る流れです。御伽話のように魔王退治でも向かうのでしょうか?
 私は目的を聞かされておりませんので真意はわかりませんが、沢山のウミヘビを観察出来るのはチャンスです! それも間近で! これは集中しなくては!

 ネグラの入り口から少し進むと、噴水のある公園の広場を模した場所に辿り着きました。そこには橙色の髪をした赤ら顔のウミヘビが屋台バーを一人で切り盛りしています。
 その周りには簡素な椅子が置いてあって、たまに丸テーブルもあって、ウミヘビ達が思い思いにお酒やジュースを味わっています。屋台バーに一番近い席には紙タバコを吸っている方と、上から下まで真っ黒な影法師のようなかたが座っていて……。

(かっ……! か、か、カッコいい……!)

 黒髪褐色肌に、筋肉質な身体を覆う黒衣! 白衣を羽織った方が殆どの中で異質です! 彼の黒衣だけジャケットのように裾が短めですし、黒マスクで顔の下半分を隠していて、まるで暗殺者アサシンのような風貌! そして顔半分が隠れていてもわかる整った目鼻立ち!
 しかも彼に隠れるようにして座っていたので見えなかったのですが、同じ銀白色の目をした、淡紫色の髪を持つ顔立ちが瓜二つな双子? のかたも隣に居て、彼の肌の白さから黒衣の方の黒さが更に際立っています。

「84勝まではいけたんスけど、そっからなかなか白星取れなくて参っているス」
「しかも今日はもうシュミレーター使えないようなもんじゃん? 先輩こいつ慰めてやってくんない~?」
「そう言われてもなァ。癇癪玉が暴走してんだ、あと5日はろくに使えねぇだろ」
「再教育期間が伸びるじゃないスかっ! 余計に凹むこと言わないで欲しいス……」

 しかも後輩キャラ!? タバコのかたのほうが小柄ですけど先輩なんですね!?
 あ、黒衣の方が赤ら顔のウミヘビから飲み物を受け取りました! それを飲む為に、黒マスクという名の秘密のヴェールが取れます。
 見えた口元は……ギザ歯!? いえ双子っぽい方と同じ顔なんですけど、属性過多では!?
 あまりにも私の『好き』を詰め込んだような方で、これは夢なんじゃないかと自分を疑ってしまいます!

「あら。ねぇ貴女もしかして、恋しちゃった?」
「ひゃいっ!?」
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