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第五章 恋する乙女大作戦編

第79話 乙女の視察任務!

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 んんっ!
 私の名前はクリス。トップ3の成績で警察学校を卒業し、この度、国際連盟秘密警察に若干24歳で大抜擢されたエリートなのです!
 そして着任早々、重要な任務を受ける事となりました。

 それが国際連盟管理下組織オフィウクス・ラボの視察!

 寄生菌『珊瑚』の研究に特化した研究所で、有毒人種《ウミヘビ》という、アニメキャラみたいな訳のわからない人間を使役し、軍隊でも鎮圧出来ない生物災害バイオハザード鎮圧を行う、まさに人類の切り札! と聞き及んでいますっ!
 そして同じ任務につきチームを組む事となった憧れの女性警官ネフェリンさんと、ちょっと笑顔が胡散臭い男性警官マイクさんと共に、ラボに最も近いと言われているイギリスまでまず飛行機で飛んで、そこの港から空陸両用車(超高級車。初めて乗りました)に私は乗り込みました。
 いざ、オフィウクス・ラボへ!

 大西洋の海上を飛び、一定の空路を飛び回った後に車内でマイク上官がホログラム画面にパスコード? ともかく暗号を解析した文面を発信します!
 それでようやく認知阻害電波や偽物デコイで辺りを覆って、人工衛星からも姿を消している、オフィウクス・ラボの本拠地こと人工島アバトンが見えるようになるのです!
 データ上でしか見たことのない白い巨塔をこの目で見た時は正直、感動してしまいました。

 しかしそのまま感動に浸っていてはいられません。
 人工島アバトンの港に到着した私達は港に居た黒衣を着て黒いゴーグルで目元を隠した赤毛の、怪しい風貌の方に声をかけました。車番と自称したその方にまずは私達の身分を証明して、それから案内を命じます。
 そう、この視察は抜き打ち。なのでラボの職員は出迎えてくれないのです。
 ただここで早速、問題発生です。

「えっ、案内? 駄目駄目。俺、不用意に港から出ちゃ駄目なんだ」

 なんと、車番が案内を拒否してきたのです!
 ラボたる巨塔は港から見えますし、さほど広い島ではないので迷子にはなりませんが、スムーズに見て回るには案内が欲しい所。
 私達の中ではマイク上官だけ一度アバトンに来た事があるそうですが、その時は『クスシ』という正規職員によって港で追い返されてしまい強制蜻蛉返り。島内の詳細は知らないのだとか。

「えーっと、クスシ呼ぶから待機しててくれない?」
「いいや、それは出来ない。いつだかは一も二もなく追い出されたんだ。今回は視察を任された身として、勝手ながら島内を回らせて貰う!」
「いや絶対クスシ待っていた方がいいって。下手に動くと死ぬよ?」

 赤毛の車番は港に留まるようマイク上官と私達に言ってきました。確かに人工島アバトンは有毒人種が跋扈ばっこする危険な島。それは国連本部も支部も把握しています。
 だからこそ、そんな生物兵器達と渡り合えるよう、戦闘訓練を積んだ私達が派遣されたのです!

「特にネグラと植物園は絶対に行かない方がいいよ。クスシ同伴でも危ないからさ」
「マイクさん、まずはそこを視察しましょう」
「そうだな、ネフェリン」
「えー……。行っても関係者のパスないと入れないよ?」
「フリーパスならば所持している。ここは国連管理下組織なんだ、私達国連警察の人間が関係者じゃないとでも?」
「うわ。本当? 本気? 正気? 俺、知らないからね?」

 赤毛の車番さんは私達を止める事を早々に諦めて、マイペースに私達が乗ってきた空陸両用車を観察し始めます。
 聞けば車が好きで、アメリカ車を見る機会が滅多にないから目に焼き付けておきたいのだとか。果たしてゴーグル越しでも楽しめるんでしょうか?

「ネフェリン上官にマイク上官っ! 手分けして回った方が効率的と判断します! 私はどこに向かえばよろしいでしょうかっ!?」

 今ぱっと決めた行き先は2つ。3つ目がありません。なので私は正直に上官達に聞きました。

「クリスはラボでクスシ達の気を引いて欲しいわ」
「そうだな。また我々の邪魔をされたら困る」
「あ、足止めですか!?」
「機密の塊である奴らから、有益な情報を聞き出す絶好のチャンスでもある。気を引き締めて取り掛かってくれ」
「りょ、了解いたしました!」

 足止め兼情報収集という大役を任せられてしまいました!
 私は上官達と別れた後、ドキドキする鼓動を何とか鎮めながらオフィウクス・ラボの本拠地、白い巨塔の中へ侵入!
 入る事自体は簡単に出来ました。自動ドアが開いてくれたので。一階はだだっ広いエントランス。端っこでは真っ白い円柱型自動人形オートマタが床掃除をしています。これ高級品では? 金持ちか?
 あっ、駄目駄目! 気が散ってしまっては! ともかく一階には何もなさそうなので上の階に……あれ? 階段が見当たらない。非常ドアはあるけど開かない。ならエレベーター、とボタンを操作しても何も反応がない。困りました。
 早速、身動きが取れなくなりましたがここはラボの本拠地。待っていれば誰か来るはず! というか来て!
 ウィン。
 あっ、自動ドアが開きました! 2人組の白衣の男性が入ってきます! やったぁ! これで私の任務がはかど

「女の子だぁああああっ!?」

 2人組の片方、オリーブ模様のフェイスマスクを付けた方から、明らかに女性慣れしていない声が発せられて、私は固まってしまったのでした。

「フリーデン、フリーデン!」

 するともう一人の、蛇が描かれたフェイスマスクを付けた男性は慌てた様子でオリーブさん(仮名)の頭を下げさせました。

「失礼、マリーゴールドに似たお方。私はモーズと申します。こちらはフリーデン。貴女の名をお伺いしても?」
「おっふ。流れるように花に例えるとは、これがラテンの血か……」
「偏見では?」

 なんとテンポよく喋るお二人でしょう。打ち合わせでもしてたのかな? いやいや、そんなはず……。
 それより私もちゃんと自己紹介をしなくてはっ!

「えっと、私は国際連盟秘密警察組織アメリカ支部より参りました! クリスと申します!」
「声高~い、め~っちゃ可愛い~」
「フリーデン、口を閉じろ。クリスさん、失敬。少々お待ちを」

 蛇が描かれたマスクを付けたモーズという方が、オリーブ模様のフリーデンという方の背中を押して私から離れていきます。そしてエントランスの端っこで内緒話を始めます。
 ふっふっふっ。しかし侮るなかれ。私は国連の秘密警察! 右の耳にはインカムのイヤホン機能も備えた集音器が付けられているのです! これを腕輪型リモコンで作動をさせれば、こそこそ話の盗み聞きもちょちょいのちょいっ!

「あとその~、センシティブな問題だから大きな声で言えないんだけどさぁ。ウミヘビの何人かは女性恐怖症に陥っているんだ……」

 あ、何かとても聴いてはいけない話を聴いてしまった気がします……。
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