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命の雨音
翼龍
しおりを挟む苦しげな息をつきながら、赤い魔女がゆらりと起き上がった。
「・・・ゼロファ、どうして、助けないの」
離れた所で傍観しているだけの男に、声がふるえている。
「僕も結構疲れてるんですよ。アキディスにかなりの魔力を使っていましたし、背中切られてますし。大体、貴女は僕の手助けなんて要らないって言ってましたよね。だから、自分で何とかして下さい」
自分に治癒魔法をかけるゼロファをみて、赤い魔女は唇を噛む。
「状況ってものがあるでしょ。治しなさいよ! あんたなら簡単に―――」
ドン、と衝撃が言葉を遮った。
ごく普通の、衛士の剣が、彼女の胴を真っ直ぐに貫いていく。
剣把を握っている少尉のふるえる息が一瞬の沈黙に響いて、そのまま、二人とも力なくよろめいた。
「レザード少尉!」
とっさにセキが少尉の身体を支えて、ドッと倒れた赤い魔女を片目でみる。
どくどくと赤い血が床に広がっていく。
「アドリス殿・・・。かたじけない。それより、王女殿下を・・・。昨日陛下が弑された時も、同じくあの正門から飛び立って行かれたのだ。我らは、王を、失う訳には――――」
「しかし・・・」
王証碑は、砕け散ってしまった。
だから、手綱がなくなったから、飛んで行ったのだろう。
セキは焦るよりも、苛立ちをおぼえた。
飛んで行ってしまった赤金色の翼龍に。
―――だって、あの綺麗な生き物は―――
赤い魔女が死んだのを黙ってみていたアキディスは、小さく身をよじった。
「痛い。リッド・・・わかったから。逃げないから、放してくれ」
落ち着いた声で言われて、捻じりあげていた腕を解いた。
息をついて肩をまわしたアキディスが、ちらりと笑顔をみせる。
「あの魔女、地下牢に入れろって言っておいた筈なんだけどな。勝手に出たのか、誰かが逃したのか・・・まぁ、やっぱり偽物だったよな」
「あれを、捕らえてたのか」
「偶然だよ。部屋にいた王妃に手を出したのか、返り討ちに遭ってたんだ。占術師が絶対防御の魔法を持っているのを知らなかったみたいだ。だから俺は、ゼロファから力を貰っている状態でも、王妃だけは閉じ込めておくしか出来なかったのに」
もう昨日までのアキディスは、いなかった。
見知った顔でも、ここにいるのは、国王を殺した男だ。
「―――先に言っておく。王妃は、魔女との相討ちで死んでいる。身体は復元できたが、死体は蘇らない。・・・リッド。俺を保護するっていうのは、何の根拠があって言ったんだ。それとも、憐れみの、ハッタリか」
重大な事をさらりと言われて、息をのんだ。
この小さな会話がセキの耳に届いて、彼女は一足飛びに駆け上がってきた。
「嘘を申すか! 王妃様は・・・っ」
セキが王妃の手をさっと取る。
瞬間。
セキの五感が、浮いた。
鈴の音と白い景色が、目の前にひろがる。
驚いて顔を上げると、どこか、郊外の草地の光景が満ちた。
こんな時に何事だと目をこらして左右をみると、小さな子供が二人。
絨毯のように広がった白詰草の花を編んでいるのをみつけた。
黒髪の子が先に編み上げて、金髪の子の頭にポンとのせる。
『ほら、可愛い。花嫁さんだね』
『すご~い! きれ~! リーア、はなよめさん~!』
幼い声が、頭の中で反響していく。子供のやりとりだ。
どうして今、こんな幻をみるのか。
『リーア、セキのはなよめさん~!!』
果物のような幼い笑顔が、ぱっと目の前で輝いた。
無邪気に飛びついてきた勢いに、ふたりで転んで、笑う。
鈴の音が頭の奥で響いて、ちいさく、消えていく。
王妃の手の冷たさが、セキの手のひらを、焦がす。
「・・・どうして王様にしがみ付く。そりゃ、天候を操る翼龍だろうし、王城の人間は真面目に王様に尽くすように仕込まれてるのは、わかるよ。でも、一般人は違う。ちゃんと生活していけなければ、誰が王様だろうと、関係ない」
アキディスの冷たい言葉に、セキは滲んだ涙をぐいと拭って立ち上がった。
「黙れ。侮辱は許さぬ」
彼女の低い声が王座に響く。
リッドはぐいとアキディスとの間に割って入った。
「止せ、二人とも。この国を想っての事だっていうのは、同じだろ。解決のための切り口が違っただけだ。・・・アキディスは、魔女の手下に使われていたんだ。彼はごく普通の人間だよ、セキ。・・・君が怒るのは当たり前だけど、こういう違いは、あるんだ。それは、フェルトリア連邦も同じだ。たぶん、どこの国でも」
セキはふいと背中を向ける。
「・・・リッド。お主は、フェルトリアの貴族で、何者だ。この場で私の敵なのか味方なのか。切り口など、どうでも良い。―――私は、国を愛する王家に忠義を貫く」
王妃の手にそっと口づけると、彼女は広間を見渡した。
呻きをあげる衛士と、土埃と、血の海に沈んだ魔女。
魔女探しの二人と、空を覗かせた巨大な大正門。
―――どうして『正門』と呼ばれる扉が、空中に向かって造られているかが、わかった。
翼龍だけが、そこを自由に使うことができる。
それがこの王城の主役であったことが、王族の歴史と重みを物語っている。
それが誇らしく、そして、怖い。
王族を失えば、シェリース王国は王国ではいられない。
形式だけが残っていても、ただの人間が天候を左右することは出来ない。
国土は荒れ、王都を支える食糧や資源は枯渇する。
辺境が自給自足できたとしても、この高層の都市は、枯れていくしかないだろう。
最後の翼龍は、正門から飛び出した。
手綱がなくなって、飛び立っていった。
それは三百年の手綱から解き放たれたという事だろうか。
しかし同時に、人々は翼龍の守護を失ったという事じゃないだろうか。
王妃様は、王証碑を託してくれた。
あの日を忘れていた、私に。
「リッドをいじめちゃダメですよ。彼は、これで真面目ですから」
ゼロファが、いつの間にか魔女の死体を抱えていた。
彼の背中は、治癒魔法を使ってもかなり深い傷だった筈だが―――。
素早くクレイがその隣に移動して、魔女の死体をぐいと奪い取る。
「捨て駒を回収するとは、お優しいことだ。こいつは俺達が引き取る。お前がどういう経緯で唆したのか、確認させて貰うぜ」
「戦果が欲しいんでしょう。 王も王妃も王女もいなくなった。散々な結果ですよね。せめて魔女を倒したという華を添えなければ、話にならない。まぁ、良いでしょう。死体は何も喋りません」
彼はあっさり赤い魔女を手放して身軽になると、すいと王座に歩をむけた。
クレイに肩を掴まれて停まったまま、目をあげる。
「助けが要りますか? アキディス」
「・・・」
リッドは、アキディスの手をきつく掴む。
「魔女の二の舞になりたいのか。乗っちゃ駄目だ。君達は、俺が助ける―――!」
勢いに驚いたアキディスが、次いで小さく笑んでみせた。
「そんなに大声で叫ばなくても、聞こえてるよ。リッド。フェルトリアの貴族だったんだな。―――貴族様が、よく、やるもんだ」
砕けた調子に、一瞬ホッとさせられる。
「それで、俺を助けるって、牢屋を免除してくれるのか? 死罪の人間に恩赦を与えられたところで、一生自由はないだろ。・・・だったら、死んでいくのと、変わらない」
掴んだ筈の手を外して、彼はゼロファのもとへ踏み出した。
その背中に、苛立つ。
確かに出来る事はたかが知れているかもしれない。
だけど、どうして皆、そう簡単に自分の命を投げ出そうとするのか。
「・・・なにも知らないハーディスはどうなる。俺は、あの子を泣かせるような報せを届けるなんて、絶対に嫌だからな!!」
一瞬足を止めたアキディスが、いきなり横に吹き飛ばされた。
その残像を赤黒い蛇が噛んで、ザッと足元に滑り落ちる。
咄嗟に至近距離で矢を番えて、蛇の頭部を射ぬいた。
ビク、と動きを止めて、ザラリと砂になって溶けていく。
「セキ。ありがとう」
セキが風魔法でアキディスを蛇の直撃から救った事に、おくれて気付いた。
小さく頷いた彼女は、しかしすぐに二発目の詠唱を撃ち出した。
『風よ 我が意に従え―――』
ひゅ、と集ったかまいたちが、ゼロファが避けた床を削る。
「ふ。よく見てましたね。お嬢さん」
「其方が詐欺師というのは傍から見ていても、よく分かる。負けを認めておいて、逃げるか」
セキの言葉と同時に、シヅキの長剣が真横に閃いた。
その刀身が、ゼロファの腰帯に触れる手前で、ピタリと静止する。
見えない何かに捕らえられたかのように、引くこともできない。
「数々の悪行の根源。見逃す訳には、ゆかぬ!!」
王座に立つセキの声が轟いた。
ゴッと正門から吹き込んだ赤金色の突風に、思わず一瞬目を瞑った。
シヅキの剣が外れて、ガンと床を削る。
高く、咆哮が広間に満ちていく。
―――赤金色の、翼龍。
それはドンとセキの隣に降り立つと、堂々と翼をひろげた。
圧倒する存在感に気圧されないセキの立ち姿が、キンと白い光を放つ。
「―――ここで滅せよ。魔女の下僕―――!」
セキの怒号に、翼龍の焔が、ごう、とゼロファに注がれる。
炎に包まれて、ゼロファは涼しげに佇んだままだ。
「・・・見事ですね。でも、王家はお終いです。良かったですね、アキディス。もう、どう転んでも君の願いは、果たされた」
ふわり、と一礼したその姿が、淡くとけていく。
翼龍があげた前脚がそれを踏み潰す。しかし、さっと、消えていった。
「―――ゼロファ―――」
思わず叫んだ名の主は、もう、どこにもいない。
そういうアキディスの身体を起こして、リッドはその頭をコンと叩いた。
「今、ゼロファに殺されそうになったのは君だ。それを、分かってるのか」
言いながら自分も彼がいなくなったことに、内心唇を噛む。
また、何もわからないうちに、どこかで何かが進んでいくことになる。
それが、歯痒い。
セキは翼龍に駆け寄って、鼻頭をそっと撫でた。
「お帰り、リーア」
ふわりと赤金の輝きが零れて、大きな獣の姿が散っていく。
セキの撫でた掌のなかに、小さな金髪の少女が残った。
「・・・ただいま。わたしの、王様」
「―――王女殿下」
ざ、とレザード少尉をはじめとした衛士が、その足元に額づいた。
クレイに戦闘能力を削がれはしたが、全員、命に別状はない。
ゼロファの言葉によって王族を失ったとおもっていた彼らには、リーアという王女の帰還は、安心そのものだ。
やはり王国には王族がいなくては、はじまらない。
魔女の手下が最後に残していった言葉は、あまりに大きな安堵の中に埋没していった。
王族が翼龍であるという伝承の事実を目の当たりにして、より強く誇りに満ちて、頭を垂れる。
「よくぞ、お戻りに・・・」
震えるような衛士の声を、セキが遮った。
「安堵するのはまだ早い。ここにはまだ偽王が生きてある。偽魔女は倒したが、どこから侵入したのか、城内に不穏な影響がないか、間者がいないか検める必要があろう。―――また、聖者様のような犠牲を出しては、ならぬ」
きり、と衛士の気配があらたまる。
学生に叱られているようでは甘いな、と笑んだレザード少尉の指示で、ゆっくりと負傷をかばいながら人が動いた。救護と、偽王を捕らえておくための増援が必要だ。
そういう衛士達に魔女の死体を預けたクレイが、レザード少尉の肩を叩く。
「皆に怪我させて悪かった。ふところに潜り込んで裏をかく積りだったんだが、まさか部下に暗示魔法が飛んでくるとは思わなかった。あとの暗示にかかった奴は、この上層階にいた数人だけだ。あいつに忠実に、躊躇いなく従うようにっていう内容だったかな」
「・・・貴公は、我が国の衛士ではないのか。その感じは、リュディア王国からきたか」
「そうそう。魔女探しの一人だ。そこの長剣のシヅキと俺がそうだな。リッドは少し事情が違うが、これがセキと一緒に王女様のご帰還に連れ立った面子だ。とりあえず、それだけ覚えておいてくれ」
眉間に皺を寄せたレザードに砕けた口調をのこして、クレイはさっと王座の下で身動きできずにいたリッドとアキディスに駆け寄った。
シヅキがその後ろについていく。
ぐい、とクレイの腕が、アキディスの胸倉を掴み上げた。
「ちょ、クレイさん―――」
「なんだ。アイツは本当に逃げたのか。てっきりまた、こいつの後ろに隠れたのかと思ったんだが」
アキディスが呆然としているのを見て、あっさり手を放したクレイは、大きく息を吐いた。
その後ろから、たっと小さな姿が王座に駆け上がった。
「お母様・・・!」
ぺたりと膝に揃えられた白磁の手を取って、少女が悲鳴に近い声をあげる。
胸の奥が、疼くように痛みだす。
べったりと全身に染みた聖者の血糊が肌に張り付いて、痛い。
―――どうしてこう、大人達は、命を投げ出して死んでしまうんだろう。
絶対に死んではいけない筈の人ほど、自分の命を、大切にしない。
さっきのアキディスだって同じだ。
姉弟を残して、勝手に消えようとする。
王妃なんて魔女と相討ちだというのが本当なら、自分の命よりもリーアの身を案じての事なのだろう。
それが高い志なのはわかる。
だけど、置いて行かれた人は、どうすればいいのだろうか。
くずおれたリーアの背中を、セキのてのひらが撫でる。
優しい白の輝きが、あたたかく少女を包む。
いつのまにか駆けつけた衛士の増援が、リーアの周りで深々と一礼する。
王妃をこのままにしておく訳にはいかない。
せめて寝台へと運び出すための許可と、偽王捕縛の話をあげた衛士にリッドは声をあげた。
「アキディスは俺がおさえておく。いいように操られていただけなんだ―――」
「おい、流石にそれは無理だろ、リッド。こいつからゼロファを引き剥がした事で、俺達が直接こいつを殺さなくて良かっただけで、上出来だろうが」
クレイが傍らで冷静な声をあげる。
そんなことは、理解している。
だがどうしても、衛士に友人の身を委ねることに抵抗がある。
――――故郷の友人の、ように。
「もう、いい。リッド。ちょっと君、人が好すぎるよ。俺が捕まるのは当たり前だ。ゼロファに操られてたかどうかはともかく、王を殺したのは、間違いなく俺なんだから」
そう自ら縛についたアキディスの背中を見送って、どうしようもなく、拳を握りしめる。
「おい、占術師はどこへ行った」
新しく来た衛士の問いに、はっとした。
そういえばオリティアが姿を眩ませたままだ。
魔女やゼロファといった大物と対峙していて、すっかり忘れていた。
知らないと無表情に言い放ったアキディスに、怒号があがる。
新しい鮮血がぱっと散って、床におちていく。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
まえにも、同じ景色を見た気がする。
手の届かない背中が、赤い。
「・・・っ! アキディス・・・!!」
剣を抜いた衛士が、周りの者に慌てて取り押さえられて、呻いた。
くずれおちる背中を受け止めたのは縄をかけていた衛士だった。
それも、支えきれずに床に倒れる。
リッドはぱっと傍に駆け寄って、傷をみた。
「誰か、治癒魔法を―――」
どうして自分は、治癒魔法を使えないのだろう。
今まで一体何を鍛えてきたのだろう。
頭の中が白くなる。
その白を、アキディスの胴から溢れる赤が染める。
衛士に治癒魔法が使える者がいるのか、いないのか、誰も息をのんで、動かない。
ついさっきまで偽王に立っていた重罪人を積極的に助けようとする訳もない。
「・・・これで、いい。リッドーーー」
言いさしたアキディスの瞳が、ふと揺れる。
血を流した暗がりが、温かい赤金色の輝きに包まれていた。
背後にリーアが立っているのに驚いて、まさか、思うのと同時に、泣きたいくらい嬉しくなる。
「やめ・・・俺は、あなたの・・・仇・・・」
治癒の光を拒むように身悶えた彼の傷口から、どっと鮮血が溢れる。
慌てて動きを止めるように、つよく肩を抱いて固定して、つめたい汗をかきはじめた頭をそっと床におろす。
頭から血が足りなくなると、あぶない。
「・・・リーア。ありがとう・・・」
ぐったりとしたアキディスの出血が少しずつ引いていくのを見下ろして振り返ると、くしゃりと涙に濡れた蒼白な顔の少女が、目をひらいた。
「だって、だって・・・もう誰も、死んじゃやだぁっ・・・」
たった一日で両親を亡くした、子供の声だ。
仇とか罪人だとか、そういうものはどこにもない。
ただ単純に、人が死ぬのが、悲しい。
そういう感情の響きが、胸を衝く。
クレイが取り押さえられた衛士の顔をぐいと確認して、冷静な声をあげた。
「こいつ、一緒に暗示魔法にかかってた奴だ。暗示が解けた腹いせか、解けてなけりゃそいつが自分で殺すように命じたか。あと三人いた筈だが・・・」
衛士に動揺がひろがる。
顔を見合わせても、それらしい気配の者はいない。
クレイが見てみた範囲でも、見当らなかった。
「ま、本人が気絶してりゃこれ以上命令は出せないだろ。暗示は長続きはしない。明日になれば解けてるだろう。それと、占術師か何か知らんが、女が一人、裏に隠れていったのを見たぞ」
慌ただしい衛士の動きの中で、黒ずんだ赤に染まった自分の服を、ぎゅっと握りしめる。
(―――聖者ロア。リーアは、無事に王座につけますよ・・・)
赤金の光に一緒に包まれていると、彼の命も、癒されていくような気がした。
セキがリーアの蒼白な手を後ろから握って、その治癒を助ける。
彼女としては助けたくなくても、リーアが真っ青になって力を使い続けるなら、手を貸さずにはいられないだろう。
ふと、どうして王証碑が無いのに同じ輝きを当たり前のように使っているのか、不思議に思った。
「セキ。王証碑は・・・?」
セキも少し首を傾けてから、ああ、と呟いて右手に目を落とした。
「王証碑は、私だ。壊れて、入ってきた。・・・誰にも、渡せなくなったな」
薄く笑んだ目に、気のせいか涙が滲んだように見えた。
そのままぎゅっとリーアを抱きしめて、治癒を加速させる。
小雨が、霧になる。
粒のひとつひとつが、ふわりと宙を漂っていた。
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