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第1章 王国編
第29話 小屋
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「な、なんで急に離れたの?」
「とまれ、それ以上近づくな」
ドレイクは僕に杖を向けたままゆっくりと後ずさっていく。
「な、僕だよ、デュークだよ?」
「お前は本当は何者なんだ? なんでドラゴンの姿に変身していた!」
「何言ってるの? 僕は僕だよ! 変身も何も僕はドラゴンだよ!」
「嘘をつくな!! ドラゴンが人間の姿になるわけないだろう!」
「人間? ・・なんのこと?」
「・・・・お前いま人間だぞ」
ふっと下を向いてみると、目線の先にはよく見慣れた人間の腕が生えていた。腰から下には二本の足が生え、素っ裸の僕の股間からは、元気なエクスカリバーがはえていた。
僕が右手を握ると、目の前の手も右手を握り、左足をあげると、左足が上がった。そのまま足の指をグーパーグーパーしてみると、しっかりと握っている感触が伝わってきた。
そのまましばらく体を動かし、傍から見ればおかしな動きをひたすら繰り返した後、僕は一つの結論にたどり着いた。
「人間になってる・・」
「おまえ・・・・、デュークなのか・・」
「そうだけど・・、なんでこうなったの?」
「幻獣とかじゃないよな」
「ドラゴンのデュークだね・・」
「・・・・木霊《こだま》の術か?」
「あ! それだ!」
「変化する前どこに力をいれたか覚えてるか?」
「背中だったかな?」
「見せてみろ」
僕が後ろを向くとドレイクは僕の背中をパッと見て、すぐに一人でブツブツと呟きはじめた。
「何か分かった?」
「・・ああ、これだな」
そう言ってドレイクは僕の左の肩甲骨の下辺りをつついた。
「この回路は俺の知ってる変化の術の回路とよく似てる。たぶんくしゃみしたときにそこに力が入ったせいで術が発動しちゃったんだろうな」
「戻れるの?」
「この辺に魔力流してみろ」
ドレイクに言われた辺りに魔力を流すと、じんわりとそこが暖かくなり、体がムクムクと大きくなっていくのを感じた。
すぐに僕の体はドラゴンの体に戻った。下を向くと見慣れた光景が広がっていた。
「戻った!」
「ああ、一瞬だけ本当にお前が幻獣なんじゃないかと思ってすごい警戒しちまったわ。よかったー!」
「この辺の植物ってなんか粉を出してたりするの?」
「あ~どうだろうな。よく知らないが粉を出して増えていく植物があるっていうのは聞いたことがある」
「それを吸い込んじゃったのかな?」
「そうかもしれないな」
「けどそんなくしゃみごときで姿が変わっちゃうようじゃさ、王都でまたいろいろ面倒なことになっちゃうよね?」
「いやだけどドラゴンの姿で行くよりも絶対に警戒されにくいからな、むしろよかったよ、お前が木霊からその術をもらってて」
「まあそうとも言えるけどね・・」
「ある程度はコントロール出来るんだから大丈夫だろ。むしろ心配が一つ減ったと思って喜ぼうや」
「う~ん、まあそれもそうだね」
「だけどとりあえずお前は服をもっておかないと駄目だな。そうじゃないと変化したとき全裸になる羽目になるから」
「あははっ、確かにそうだね。気をつけないと」
「それにしてもほんとに野宿するのにちょうどいいところがないな」
「ね、開けすぎてて嫌だよね」
「う~ん、とりあえずもう少し進むか」
「うん」
――1時間後
黙々と歩いていた僕たちの前に、ボロボロの民家?のような物が現れた。もう寝てしまっているのだろうか、家の中からはなんの音も聞えなかった。
「う~ん、寝てたら起こすのは申し訳ないしなぁ、けどもういい加減寝ておきたいしなぁ」
「けど1日くらい寝なくても大丈夫なんじゃない?」
「いや絶対睡眠はとった方がいいんだよ、俺は昔寝なさすぎて死にかけたこともあるしな」
そんな風に話していると、家の中から突然物音が聞えてきた。起こしてしまったのだろうか?
少しすると家の中から橙色の暖かい光が漏れてきて、扉が内側から開かれた。中から出てきたのは初老の男性だった。
「あ~、どちら様でしょうか?」
「あ、起こしてしまって申し訳ありません」
「いえいえ、そんなことは。それよりどちら様でしょう?」
「あ、え~っと、牧場主のドレイクと言います。牧場をやっております! 今はちょうど王都に向かう途中でして」
「え? そうなの?」
「(小声)うるさいだまれ」
「あぁ、なるほど、牧場主のかたですか。大変ですねぇ、もしよかったら夕飯をごちそうしますよ」
「いえいえ、申し訳ないですから大丈夫です。我々は寝るところを探していただけですので」
「そんなこと言わずに、ぜひ食べてってくださいよ」
「いやしかし・・」
その初老の男性は人に食事を恵んでやれそうなほど余裕がありそうには見えなかった。着ている服はボロボロで、少し痩せすぎているようにも見えた。なぜこんなにも食事を勧めてくるのかドレイクは理解できなかったが、そういう人もいるのだろうと、こんなことで揉めても面倒なのでとりあえずは食事をもらうことにした。
「ではお代を払います。ただで頂くのは申し訳ないので」
「おおそうですか! ありがとうございます! それじゃあ中へどうぞ」
(金が欲しかったのか、というかこの人はなんでデュークを見て何も言わないんだ?)
いくつかの疑問は残ったままだったが、この老人ならばもし何かあっても問題無いだろうとドレイクは家の中に入っていった。
デュークもそれに続いて中へと入っていった。
「とまれ、それ以上近づくな」
ドレイクは僕に杖を向けたままゆっくりと後ずさっていく。
「な、僕だよ、デュークだよ?」
「お前は本当は何者なんだ? なんでドラゴンの姿に変身していた!」
「何言ってるの? 僕は僕だよ! 変身も何も僕はドラゴンだよ!」
「嘘をつくな!! ドラゴンが人間の姿になるわけないだろう!」
「人間? ・・なんのこと?」
「・・・・お前いま人間だぞ」
ふっと下を向いてみると、目線の先にはよく見慣れた人間の腕が生えていた。腰から下には二本の足が生え、素っ裸の僕の股間からは、元気なエクスカリバーがはえていた。
僕が右手を握ると、目の前の手も右手を握り、左足をあげると、左足が上がった。そのまま足の指をグーパーグーパーしてみると、しっかりと握っている感触が伝わってきた。
そのまましばらく体を動かし、傍から見ればおかしな動きをひたすら繰り返した後、僕は一つの結論にたどり着いた。
「人間になってる・・」
「おまえ・・・・、デュークなのか・・」
「そうだけど・・、なんでこうなったの?」
「幻獣とかじゃないよな」
「ドラゴンのデュークだね・・」
「・・・・木霊《こだま》の術か?」
「あ! それだ!」
「変化する前どこに力をいれたか覚えてるか?」
「背中だったかな?」
「見せてみろ」
僕が後ろを向くとドレイクは僕の背中をパッと見て、すぐに一人でブツブツと呟きはじめた。
「何か分かった?」
「・・ああ、これだな」
そう言ってドレイクは僕の左の肩甲骨の下辺りをつついた。
「この回路は俺の知ってる変化の術の回路とよく似てる。たぶんくしゃみしたときにそこに力が入ったせいで術が発動しちゃったんだろうな」
「戻れるの?」
「この辺に魔力流してみろ」
ドレイクに言われた辺りに魔力を流すと、じんわりとそこが暖かくなり、体がムクムクと大きくなっていくのを感じた。
すぐに僕の体はドラゴンの体に戻った。下を向くと見慣れた光景が広がっていた。
「戻った!」
「ああ、一瞬だけ本当にお前が幻獣なんじゃないかと思ってすごい警戒しちまったわ。よかったー!」
「この辺の植物ってなんか粉を出してたりするの?」
「あ~どうだろうな。よく知らないが粉を出して増えていく植物があるっていうのは聞いたことがある」
「それを吸い込んじゃったのかな?」
「そうかもしれないな」
「けどそんなくしゃみごときで姿が変わっちゃうようじゃさ、王都でまたいろいろ面倒なことになっちゃうよね?」
「いやだけどドラゴンの姿で行くよりも絶対に警戒されにくいからな、むしろよかったよ、お前が木霊からその術をもらってて」
「まあそうとも言えるけどね・・」
「ある程度はコントロール出来るんだから大丈夫だろ。むしろ心配が一つ減ったと思って喜ぼうや」
「う~ん、まあそれもそうだね」
「だけどとりあえずお前は服をもっておかないと駄目だな。そうじゃないと変化したとき全裸になる羽目になるから」
「あははっ、確かにそうだね。気をつけないと」
「それにしてもほんとに野宿するのにちょうどいいところがないな」
「ね、開けすぎてて嫌だよね」
「う~ん、とりあえずもう少し進むか」
「うん」
――1時間後
黙々と歩いていた僕たちの前に、ボロボロの民家?のような物が現れた。もう寝てしまっているのだろうか、家の中からはなんの音も聞えなかった。
「う~ん、寝てたら起こすのは申し訳ないしなぁ、けどもういい加減寝ておきたいしなぁ」
「けど1日くらい寝なくても大丈夫なんじゃない?」
「いや絶対睡眠はとった方がいいんだよ、俺は昔寝なさすぎて死にかけたこともあるしな」
そんな風に話していると、家の中から突然物音が聞えてきた。起こしてしまったのだろうか?
少しすると家の中から橙色の暖かい光が漏れてきて、扉が内側から開かれた。中から出てきたのは初老の男性だった。
「あ~、どちら様でしょうか?」
「あ、起こしてしまって申し訳ありません」
「いえいえ、そんなことは。それよりどちら様でしょう?」
「あ、え~っと、牧場主のドレイクと言います。牧場をやっております! 今はちょうど王都に向かう途中でして」
「え? そうなの?」
「(小声)うるさいだまれ」
「あぁ、なるほど、牧場主のかたですか。大変ですねぇ、もしよかったら夕飯をごちそうしますよ」
「いえいえ、申し訳ないですから大丈夫です。我々は寝るところを探していただけですので」
「そんなこと言わずに、ぜひ食べてってくださいよ」
「いやしかし・・」
その初老の男性は人に食事を恵んでやれそうなほど余裕がありそうには見えなかった。着ている服はボロボロで、少し痩せすぎているようにも見えた。なぜこんなにも食事を勧めてくるのかドレイクは理解できなかったが、そういう人もいるのだろうと、こんなことで揉めても面倒なのでとりあえずは食事をもらうことにした。
「ではお代を払います。ただで頂くのは申し訳ないので」
「おおそうですか! ありがとうございます! それじゃあ中へどうぞ」
(金が欲しかったのか、というかこの人はなんでデュークを見て何も言わないんだ?)
いくつかの疑問は残ったままだったが、この老人ならばもし何かあっても問題無いだろうとドレイクは家の中に入っていった。
デュークもそれに続いて中へと入っていった。
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