上 下
20 / 37
第1章 王国編

第20話 敵

しおりを挟む
僕は力強く羽ばたき空をのぼっていった。
降り注ぐ朝日が眩しかった。十分な高さに来ただろうと下を向くと、ドレイクが豆粒のようなサイズだった。
分かれ道の先を確認すると左に延びた道の先はどうやら前までいた森林の方に向かっているようだった。右の道はどこに向かっているのかはわからないが、少なくとも森やさっきの街の方向には向かっていなかった。
道の先を確認した僕はドレイクにそれを伝えようと下降をはじめた。耳元で風がうなりを上げていた。頬をなでる風が気持ちいい。
ん? ドレイクが何か叫んでる? なんて言ってるんだろう

「~~~けろ! ~~が~来てる! 後ろから来てる!」

その声で後ろを振り向くと、そこには黒い翼の生えたハイエナのような動物の群れが押し寄せていた。1メートルほどの体に大きな羽が生えている。
サイズ的には僕とそう変わらない。

「よけろ!」

というドレイクの声で僕がほとんど直角に曲がって飛ぶと、ドレイクがハイエナの集団に向かってカミラさんに放ったのと同じ種類の炎を杖から放った。
何匹かのハイエナには直撃したが、そこまでの威力ではなかったようで、ハイエナたちはピンピンしていた。が多少の牽制にはなったようで、ハイエナたちは少し距離をとってこちらを見ていた。

「その炎弱くない!?」

「魔回路が壊れちまってるからこれしか打てねえんだよ!」

「他の攻撃手段は!?!?」

「ない!!」

「どうすんの!」

「お前がブレス吐け!」

「出来ないよ!」

「じゃあ逃げるぞ!」

ドレイクはそう言って短い呪文を唱えた。するとドレイクの姿は見えなくなってしまった。・・・・ん? 僕は?
ゆっくり後ろを向くと、ハイエナたちが一斉にこちらに飛んできていた。
どうしようどうしようなんかないかなんかないか
何も思いつかなかった僕はとにかく飛んで逃げることにした。
力強く羽ばたいて空へと飛び立つ。

どうしよう、飛ぶスピードはそんなに変わらなさそうだからこのまま飛んでても逃げ切れない。それにあいつらの体力がどれだけあるかわからないから体力を使い切る前になんとかしないと・・。
あ、そうだ! ぼくって頑丈だから1匹ずつひっかき攻撃で倒していけば・・、いや今までは大丈夫だったけどあいつらはかむ力がものすごいかもしれない。
だめだ、この作戦は使えない。う~んなんかないかな~
そんなことを考えながら飛んでいたせいで前方への注意が散漫になっていた。と言うよりもそれが巨大すぎて障害物だと気がつかなかったのだ。かなりのスピードでものすごい大木に頭突きしてしまった僕は、バランスを崩して地上に落ちてしまった。
ハイエナたちは僕の頭上で円をかきながら飛んでいる。

―――――

「リーダー、あのドラゴン大丈夫ですかね? ものすごいスピードで衝突してましたけど?」

「あたりめえだろうが! ドラゴンだぞ!」

「なんであんなに逃げるんですかね? 俺たちのこと嫌いなんですかね?」

「ばっかやろう! そんなわけねえだろ! きっと俺たちが子分に値するグレーズか見定めてる最中なんだよ!」

「なるほど」

デュークとドレイクのあずかり知らぬところでは実はこんな会話がされていた。

「けどそろそろ声かけた方がいい気がするんですけど・・」

「ばっきゃろう! 上の身分の方に許可されるまでは俺たちはしゃべっちゃいけねえんだよ!」

「けど下のもんから声かけるもんじゃないんですか?」

「俺もそう思います・・」

「じゃ、じゃあお前らが行ってこいよ!」

「あ、じゃあ俺が行ってきますね」

「・・だめだ! 俺が行く」

「じゃあお願いします」

「お、おう、任せとけってんだ!」

この群れの頭であるラールは一つ深呼吸するとドラゴンに向かってそろそろと飛んでいった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法の本

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女が入れ替わる話

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ヴァンパイア戦記

瞳の住人
ファンタジー
何度も進化し魔王となり最強を目指していく物語。 前世では大勢の女性を食い散らかした経歴を持ち、女神より「女性の天敵」と指摘されるも、反省せず前世の経験を活かし異世界でも女を食い散らかします。 ・最強の魔王軍を創設すべく勇者・聖女・チート魔物・悪魔等、強い個体をスカウトして戦力にしていきます ・主人公は基本優しいですが、女性関係になると鬼畜です ・ルシファー、サタン、ベルゼブブ等の悪魔や、ぬらりひょん・牛鬼・大蜘蛛等の妖怪も登場させます。 ・召喚獣としてリヴァイアサン・タイタン・ウィディーネ・バハムート等を登場させます。

ヒーロー再誕 ~ヒーロー諦めた俺がもう一度ヒーローを目指す話~

秋月 銀
ファンタジー
国で唯一の能力者育成機関である月陰学園。その高等部に所属する俺こと━━━━田中終夜は、幼い頃の事情により主人公になる事を諦めていた。 しかし嫌がらせか何か知らんが、俺の周りには他の人物とは何かが確実に違う、言わば主人公の様な人物達が集ってきたのだ! それからというもの、俺は時にカツアゲに巻き込まれたり、無理矢理戦わされたり。ついには学園規模の危機が迫ったり迫らなかったりして。 そんな非日常を主人公達と過ごせば、思わずにはいられない。俺もあの時の気持ちを思い出さずにはいられない。 だから俺は再び願う。 「俺だって、主人公になりたいんだよッ!」 この物語は主人公になりたかった俺と主人公達の物語。 ※基本は非主人公の田中終夜による、学園能力ファンタジー系日常物語です。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

続・異世界温泉であったかどんぶりごはん

渡里あずま
ファンタジー
異世界の街・ロッコでどんぶり店を営むエリ、こと真嶋恵理。 そんな彼女が、そして料理人のグルナが次に作りたいと思ったのは。 「あぁ……作るなら、豚の角煮は確かに魚醤じゃなく、豆の醤油で作りたいわよね」 「解ってくれるか……あと、俺の店で考えると、蒸し器とくれば茶碗蒸し! だけど、百歩譲ってたけのこは譲るとしても、しいたけとキクラゲがなぁ…」 しかし、作るにはいよいよ他国の調味料や食材が必要で…今回はどうしようかと思ったところ、事態はまたしても思わぬ展開に。 不定期更新。書き手が能天気な為、ざまぁはほぼなし。基本もぐもぐです。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

処理中です...