上 下
11 / 37
第1章 王国編

第11話 検討

しおりを挟む
俺はデュークに絡まった糸を急いでほどいた
案の定、デュークの体からはガプルの匂いがプンプンしていた
これだけ匂いをまき散らしていたら捕まるのも無理はない
しかし捕まったのがただの蜘蛛だったのは不幸中の幸いだな
もしもギガントファン(さっき家を壊したやつ)なんかに見つかってたらいくらアースドラゴンとは言え子供の鱗じゃかみ砕かれてた可能性があるからな

ドレイクは匂いを消すための呪文を唱え、デュークを担いで家に向かった
学者だった頃よりはよほど運動しているが、それでも自分以上の重量を担ぎながら長距離を移動するのは2徹した後の体にはきつかった
今思えば普通に魔法で運べば良かったのだが、2徹したせいで頭が極端に悪くなっていたんだろう
バカ真面目におんぶして運んでしまった

そして家に、いや元々家があったところに着いた俺は、最初は睡眠不足で場所を間違えたのかと思ったが、よく見ればそこら一帯には木片や布袋が散乱していた
すぐ近くにはマンドラゴラらしき輪切りの植物も散乱していた
2徹後の動きの悪い頭でどうにかこうにか考えた結果、結界を張り直していなかったせいで、ガプルの匂いをプンプンさせたどこかのお馬鹿なドラゴンの匂いを隠蔽しきれず、魔物をはじくことも出来なかったせいで家が解体されちゃったのかなという結論にいたった

「・・・どぉしてだよぉぉぉ!!!何でこんなことばっかり起きるんだよぉぉ!!!」

――5分後
ひとしきり叫び終わるとタイミング良く?デュークが起きてきた

「あれ、なんでこんなところにいるんだ? 蜘蛛に捕まって、それでその後・・」

少々の沈黙の後デュークは俺に気がついたようだ

「あ、ドレイクが助けてくれたの?」

「俺が行ったときにはもう蜘蛛は煤になってたぞ」

「え?じゃあだれが・・」

「お前がブレスで倒したんじゃないのか?」

「え?ブレス?そんなの使えるわけ無いじゃん」

「はぁ?そんな訳あるかよ、ドラゴンなのにブレスがはけないわけ無いだろう」

「知らないよそんなの!だけど僕はブレスを出した記憶なんてないよ!」

「ドラゴンのブレスは魔法とは別物だから生まれついて吐けるはずだぞ?」

「・・だけど知らないの!」

「まあいいけど」

「あ!そんなことより大変なんだ!」

「ああ、多分それならもう大丈夫だぞ」

「なんで?」

「もう匂いとっておいたから」

「なんの?」

「ガプルの」

「ん?」

「赤い木の実食べただろ?」

「うん」

「あれはな、ガプルっていってな、草食獣がバカみたいに好む匂いを出すんだよ
だから食べた後はしっかり匂いを消さないと、襲われるんだ。だからまあ普通の神経してたら匂いの消し方も知らずにあんな物を食べようとはしないだろうな」

「そんなこと知るかぁぁぁぁ!!!こっちは5日間ほぼ飲まず食わずだったんだよ!しょうが無いでしょうが!」

「あっはっは、まあそうだよな、次からは気をつけろよ」

デュークはなんだかむず痒いようなくすぐったいような気持ちがした

「そんなことより今は家も畑もなくなっちまったことの方が問題なんだよ」

「そういえばなんでドレイクはこんなところに住んでるの?」

「いや、まあいろいろあったんだよ」

「いろいろあったのか・・、なるほどね」

「まあそんなことは今いいんだって、けどそうだな・・、うん久しぶりに町に行くのも悪くない手だな」

「へ?」

何かしらの理由で人のいるところには行きたくないのだろうと思っていたデュークは思わず間抜けな声を出してしまった
しかし実際のところ、ドレイクはロワール帝国の権力や金にとりつかれたジジイどもが嫌いなだけで、ついでにそのジジイどもに目をつけられているだけで、人が嫌いだとかコミュ障だとかそういうわけではないのだ
そういうわけで、森に接する多くの国の内の一つで反ロワール的な傾向のある王家によって治められているヴィンチ王国に行き、いろいろと調達することにした

「よーし、そうと決まれば善は急げだ!もう行くぞ!」

「ま、待ってよ!その国はドラゴンが入っても平気なの?」

「ああ、ダイジョブダイジョブ、なんとかなるよ」

「なんかすごい嘘くさいんだけど」

「まあ多分平気だよ」

「ほんとに?」

「まあここにこのまま居るよりはいいんじゃないか?」

「まあ、たしかに」

「それにな、ヴィンチには少しだけ知り合いがいるんだ」

ドレイクはニヤッと笑いながらそう言うとスタスタ歩き始めた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら弱いものまね士になったけど結局活躍した。それはいいとして、英雄になったら隣に住んでたエルフとベッドの上でファンタジーが始まった

ぐうのすけ
ファンタジー
会社帰り、俺は突然異世界に転生した。 転生した異世界は貴族屋敷……の隣にあるボロ屋の息子だった。 10才で弱いと言われるものまね士のジョブを授かるが、それでも俺は冒険者を目指す。 所で隣のメイドさん、俺をからかうの、やめてもらえますか? やめて貰えないと幼馴染のお嬢様が頬をぷっくりさせて睨んでくるんですけど? そう言えば俺をバカにしていたライダーはどんどんボロボロになっていくけど、生きておるのか? まあ、そんな事はどうでもいいんだけど、俺が英雄になった後隣に住んでいたエルフメイドがベッドの上では弱すぎる。

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

神霊さんの不協和音な三兄妹、それと周りの人たち

砂樹
ファンタジー
 東を遠浅の海、他の方角は闇属性の魔物満載な森や険しい岩山に囲まれたその国では、闇属性は恐れられ嫌われていた。  闇属性の少女シシャルは、出自も本名も知らずに最辺境の底辺で生きてきた。そばにいてくれたおじさんが行方不明となった後、空腹で倒れていたところを自称半神霊な若者ドレに拾われ、その妹カユシィーと共に三人で暮らしている。  表面上は仲良くやっていたが、借家への器物損壊事件がきっかけで、それぞれの抱える問題が目につき始め……。  警戒心強いくせに餌付けに弱いシシャル、邪霊なる存在が視える恐怖で暴走するカユシィー、異父妹を守ることに全力を捧げるドレ。  そして、そんな三人に関わったがために苦労に巻き込まれたり愉快なことになったり利益を得たり不利益を被ったりする……勇者と姫と勇者パーティと町の人たちに魔族のみなさん。  同じ方向なんて見ていない三人と周りの人たちの、日常半分、コメディ二割、シリアス二割、その他一割くらいのお話です。 ※報告(2021年8月27日までの変更分)  タイトルを『神霊さんちの三兄妹』から『神霊さんの不協和音な三兄妹、それと周りの人たち』に変更しました。  あらすじを変更しました。本編とのズレが気になってきたため、本編準拠にするための変更です。  各話に通し番号をつけました。  誤字脱字修正と改行位置調整を行いました。  一部表現を修正しました。登場人物や立場ごとに変わる呼称や、明らかな説明不足描写の修正です。本編の流れや登場人物の関係性に変更はありません。  タグを設定しました。  感想受付を「あり」に変更しました。  表紙イラスト(厳密には設定画ラフを加工して大まかな彩色をしたもの)を追加しました。いつになるか未定ですが、後で完成品に差し替えます。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ヴァンパイア戦記

瞳の住人
ファンタジー
何度も進化し魔王となり最強を目指していく物語。 前世では大勢の女性を食い散らかした経歴を持ち、女神より「女性の天敵」と指摘されるも、反省せず前世の経験を活かし異世界でも女を食い散らかします。 ・最強の魔王軍を創設すべく勇者・聖女・チート魔物・悪魔等、強い個体をスカウトして戦力にしていきます ・主人公は基本優しいですが、女性関係になると鬼畜です ・ルシファー、サタン、ベルゼブブ等の悪魔や、ぬらりひょん・牛鬼・大蜘蛛等の妖怪も登場させます。 ・召喚獣としてリヴァイアサン・タイタン・ウィディーネ・バハムート等を登場させます。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...