32 / 34
最終話 春の人事
② 大馬ブチョーの左遷
しおりを挟む普通、正式な辞令が出るまでは、社員同士人事異動の話はしないのが暗黙の常識ですが、大馬ブチョーの運命は自分の運命、そして部下の運命でもあり、いてもたってもいられず、昼休みに大馬ブチョーの席を訪れたのであります。
大馬ブチョーはパソコンから不要なアプリをアンインストールしていました。
「この野球ゲームおもしろかったのにな……リカちゃん着せ替えゲームももったいない」
そんなことをブツブツ呟いておりました。
「大馬ブチョー、お聞きしたいことがありますが」
言うとちらっと小熊カチョーを見上げ、小声で「なあに」と返しました。
いつもとまったく違うブチョーがそこにいました。
いつもなら「何の用だ。俺はお前に用はないぞ。金なら貸さんぞ」と返って来るのですが、その日は元気がなく、完全に意気消沈した感じでした。
「どこかに行かれるのですか」
するとアンインストール開始のボタンをクリックし、両手で顔を擦りました。
「アフリカに単身赴任だ」
「アフリカ?」
大馬ブチョーが苦笑いしながら言います。
「ケニアのナイロビどうぶつ研究所に左遷だよ……。現地で何を担当すると思う? 野生のライオンでも食べられる「かっぱえびせん」を開発することだ。あはは、笑うだろう? ライオンがえびせんなんか食うかよ。猫目シャチョーは『焼肉味のえびせんにすれば食べるにゃー』と言うんだが、無理な企画だと思う……そもそもどうやってかっぱえびせんをライオンの口に持って行くんだ。手をガブっと咬み切られて終わりじゃねえのか。ったく、笑いが止まんねえよ」
アンインストールが完了したので、別の削除対象を探す大馬ブチョー。
「あ、あの……企画部はどうなるのですか」
「ふん、やっぱり気になるか」
パタンとエンターキーを押すブチョー。
「何も聞いていないけどさ、たぶんなくなるんじゃない? 少なくとも企画すいしん課はなくなるな。牛音さんがそう言ってた」
「そうですか……」
小熊ブチョーは肩を落とし、ブチョーに気付かれないくらいの大きさでため息をつきました。
「まあ、人事の件はもうちょっと待ちな。内示が出たら伝えるよ」
ブチョーの人事異動についてはすでに内示が出ているようですが、カチョー以下はまだのようです。
―僕も時間の問題だな……言い渡されるのは明日か、明後日か―
そしてついに小熊カチョーへの人事宣告の日が訪れました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ライオンの王子さま
真柴イラハ
キャラ文芸
ギャル女子高生の絵莉が、ライオンの王子さまを拾うお話。
※C96で頒布した同人誌の再録です。
※この小説は「小説家になろう」、「ノベルアップ+」にも投稿しています。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
さよならまでの六ヶ月
おてんば松尾
恋愛
余命半年の妻は、不倫をしている夫と最後まで添い遂げるつもりだった……【小春】
小春は人の寿命が分かる能力を持っている。
ある日突然自分に残された寿命があと半年だということを知る。
自分の家が社家で、神主として跡を継がなければならない小春。
そんな小春のことを好きになってくれた夫は浮気をしている。
残された半年を穏やかに生きたいと思う小春……
他サイトでも公開中
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる