小熊カチョー物語

燦一郎

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その5 資格はとったけれど

③ 『昼休み消灯大作戦』に負けた『国家試験合格』

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小熊おぐまカチョーは、さっそくこの快挙を大馬おおばブチョーに報告しました。

「ふうん。情報処理技術者ね。だが、お前の畑とぜんぜん違うじゃねえか」

「いろんなことにチャレンジすることが大切と思っています。

ITは何もシステム部門だけのものではありません。

この知識があると、顧客のSEとも会話できます。

ビジネスの幅も広がります。

この際しっかりPRしておこうと、小熊カチョーは熱く語りました。

と言いますのも、白ネコ商事には「年間チャレンジMVP」という制度があり、その年何らかのチャレンジを行い、成果を挙げた人が表彰されるのでした。

うまくやれば自分が表彰される可能性もあります。

風の噂では、今年はたいしたチャレンジャーがいなかったとのことで、ここにきて自分が一発逆転できるかもしれません。

「まあいいや、とりあえず合格証のコピーをもらっとこうか」

大馬ブチョーは事務的に言うと「ジュース買ってくる」と言って席を立ちました。

「ありがとうございます」

小熊カチョーはふかぶかと頭を下げました。

そして12月最終日の納めの日「年間チャレンジMVP」の受賞者が猫目ねこめシャチョーから発表になりました。
 
「ことしのエミビーピーはね、うんとね、あおじかクンの『昼休み消灯大作戦』にけってー!」

小熊カチョーは耳を疑いました。

青鹿あおじかカカリチョーの『昼休み消灯大作戦』とは、節電のため、毎日昼休みに照明を消すというだけのことです。

その気になれば誰でも消せるのですが、青鹿カカリチョーが消すのが暗黙の常識になっていただけのことです。

しかも手を洗いに行くついでにパチッと消すだけです。

チャレンジと呼ぶには、あまりにレベルが低すぎます。

でもMVPはMVP。

青鹿カカリチョーは全文ひらがなで書かれた賞状と、副賞の動物図鑑三冊を受け取りました。

拍手喝采がフロア内に鳴り響きます。

シャチョーが話を続けました。

「あおじかクンのおかげで電気代が毎月何百円かういたよー。あんがと。さて、大馬ブチョー、ジョーシとしてコメントおねがいね」

マイクが大馬ブチョーにわたりました。大馬ブチョーは軽く咳払いをしました。

「ええ。青鹿カカリチョー、おめでとう。君のおかげで電気代が節約できた。経費削減への精力的な取り組みとして、我社の歴史に残ることだろう。以上」

表彰式が済んだのち、小熊カチョーは大馬ブチョーにおそるおそる質問しました。

言いにくかったですが、聞いておかなければならないと思いました。

「私の合格の件ですが、もしかしたらMVPに推薦していただけたのだろうかなんて、期待しておりました。ははは」

すると意外な言葉が返ってきたのです。
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