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第二話 「ジェニファー」
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ぎょっとした。なんとジェニファーがこちらをじっと見ていた。ふだんは人形らしい宝石のような目で宙をぼんやりと見ているだけなのに、そのときのジェニファーは、はっきりと血の通った目でサクラを見ていたのだ。それにおませな子がよくするような感じで、こくびをかしげている。
(なんてこと?これってもしかして夢?)
「夢じゃないわよ、サクラ」
(ジェニファーがしゃべってる。それにわたしの考えていることを知ってる。なんてこと!)
「人形は人の心を読むことができるのよ。ところでユー、今さっきおもしろいこと考えたよね。本当に人形になりたいって思っているの? それって本気? いいかげんなこと考えないほうがいいわよ」
これが夢じゃなくて現実だとしたら、すごいことだった。サクラは興奮しながらこういった。
「本気よ。人形になれたらどんなに楽か。学校にいかなくてもいいし、テストもない。友達とけんかすることもない。ママにしかられることもない。おなかもへらないし、お風呂もトイレもない。でも生きていられる。みんなにかわいがられて、いつまでも美しい姿でいられる。ジェニファー、あんたたち人形はこの世で一番幸福な生き物だわ」
サクラの声は途中からだんだんと大きくなった。たまっていたものが一気にふきでてきたという感じだった。
「アイ・アンダスタン。その言葉本気とみとめる。だったら人形にしてあげる」
「わたしを人形にしてくれるというの。どうやって」
サクラがそういうと、ジェニファーはむくっと立ちあがった。高さ四十センチくらいのそのアメリカ人形は、おとぎの国のこびとみたいに見える。
「もちろんわたしがあなたを人形にすることはできないわ」
ジェニファーは両手をひろげてジェスチャーした。
「人を人形にかえることができるのは、マミークリスティーン様だけなの。彼女は魔法を使う人形の精。今日わたしがサクラと会話できるのも彼女の魔法のおかげなのよ。じゃあもう一度たずねるわ。本当にあなたは人形になりたいの?」
いまさら考えるまでもないと思った。わたし、ぜったい人形になる。サクラは微笑をうかべて首をたてにふった。
するとジェニファーは両手を上にかざし、コンダクターのようにかろやかに手をふりながら天井にむかって呪文をとなえはじめた。どうやらその「マミークリスティーン様」とやらを呼んでいるようだ。
やがて天井が消えて青一色のすみきった空が見えた。その空に一点の白いものが光ったと思うと、その白いものは、一瞬のうちにベッドの横におりてきた。絵にかいたような美女だった。白く見えたのは彼女がまとうレースの衣だった。
(なんてこと?これってもしかして夢?)
「夢じゃないわよ、サクラ」
(ジェニファーがしゃべってる。それにわたしの考えていることを知ってる。なんてこと!)
「人形は人の心を読むことができるのよ。ところでユー、今さっきおもしろいこと考えたよね。本当に人形になりたいって思っているの? それって本気? いいかげんなこと考えないほうがいいわよ」
これが夢じゃなくて現実だとしたら、すごいことだった。サクラは興奮しながらこういった。
「本気よ。人形になれたらどんなに楽か。学校にいかなくてもいいし、テストもない。友達とけんかすることもない。ママにしかられることもない。おなかもへらないし、お風呂もトイレもない。でも生きていられる。みんなにかわいがられて、いつまでも美しい姿でいられる。ジェニファー、あんたたち人形はこの世で一番幸福な生き物だわ」
サクラの声は途中からだんだんと大きくなった。たまっていたものが一気にふきでてきたという感じだった。
「アイ・アンダスタン。その言葉本気とみとめる。だったら人形にしてあげる」
「わたしを人形にしてくれるというの。どうやって」
サクラがそういうと、ジェニファーはむくっと立ちあがった。高さ四十センチくらいのそのアメリカ人形は、おとぎの国のこびとみたいに見える。
「もちろんわたしがあなたを人形にすることはできないわ」
ジェニファーは両手をひろげてジェスチャーした。
「人を人形にかえることができるのは、マミークリスティーン様だけなの。彼女は魔法を使う人形の精。今日わたしがサクラと会話できるのも彼女の魔法のおかげなのよ。じゃあもう一度たずねるわ。本当にあなたは人形になりたいの?」
いまさら考えるまでもないと思った。わたし、ぜったい人形になる。サクラは微笑をうかべて首をたてにふった。
するとジェニファーは両手を上にかざし、コンダクターのようにかろやかに手をふりながら天井にむかって呪文をとなえはじめた。どうやらその「マミークリスティーン様」とやらを呼んでいるようだ。
やがて天井が消えて青一色のすみきった空が見えた。その空に一点の白いものが光ったと思うと、その白いものは、一瞬のうちにベッドの横におりてきた。絵にかいたような美女だった。白く見えたのは彼女がまとうレースの衣だった。
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