春神さまがやってきた!

燦一郎

文字の大きさ
上 下
3 / 3
【3】

我が家に咲いた、桃色の花

しおりを挟む
強い風がおさまったら、春がきて、村がみどり色になって小鳥がぴいぴいないた。

桜も満開。



桜は村のあちこちで花ひらいた。

村人たちは春神さまのおかげと、久太郎のはたらきをほめた。

ところが久太郎の庭にはいつまでたっても桜が咲かない。

春神さまは約束を忘れたか。

村の桜が散り始めるころ、あの旅の男が幾人もの侍を連れて久太郎の家を訪れた。



「久太郎、あの晩は世話になったのう。ところでわしは春神さまではない。ただの旅の侍だ。あの夜から強い風が吹いたろう。このへんでは春一番の風のことを春神さまとよぶ。あの風が吹いたら春がくる。春がきたら勝手に桜も咲く。うそついてすまん」

「そうだったんですか……」

久太郎はお栄とふたりでぺたんとすわりこんだ。

「お詫びではないが、この庭で花見をさせてくれ。仲間も連れてきた」

「あ、あのう……お酒は」

「もちろん久太郎の酒を飲む。おまえんとこの酒は美味い。金にいとめはつけんから、酒樽ありったけ持ってこい」

「ありがとうごぜえます!」

それから侍たちは庭で宴会を始めた。

酔っぱらった侍たちは顔がほんのり桃色になった。

やはりそのお侍は春神さまだった、てことにしておこう。


しおりを挟む
私のブログです。「気まぐれ癒し物語(創作童話・小説)」https://ameblo.jp/jzb4484aoi/
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

プラネタリウムのめざす空

詩海猫
児童書・童話
タイトル通り、プラネタリウムが空を目指して歩く物語です。 普段はタイトル最後なのですが唐突にタイトルと漠然とした内容だけ浮かんで書いてみました。 短い童話なので最初から最後までフワッとしています。が、細かい突っ込みはナシでお願いします。

かんせん

素元安積
児童書・童話
しに神様が、眠らせるべき人を間違えてしまった。

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

バロン

Ham
児童書・童話
広大な平野が続き 川と川に挟まれる 農村地帯の小さな町。 そこに暮らす 聴力にハンデのある ひとりの少年と 地域猫と呼ばれる 一匹の猫との出会いと 日々の物語。

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

虹の橋を渡った猫が教えてくれたこと

菊池まりな
児童書・童話
あけみが生まれた頃には愛猫のちゃおがいた。遊ぶ時も寝るときもずっと一緒。そんなある日、ちゃおが虹の橋を渡ってしまう。家族は悲しむが、あけみは不思議な夢を見るようになり…。

湯本の医者と悪戯河童

関シラズ
児童書・童話
 赤岩村の医者・湯本開斎は雨降る晩に、出立橋の上で河童に襲われるが…… ‪     ‪*‬  群馬県の中之条町にあった旧六合村(クニムラ)をモチーフに構想した物語です。

処理中です...