5 / 10
マナ
しおりを挟む
二つ食ったので幾らか落ち着いたのか、三つめの肉饅頭は一口ずつ齧り取り、咀嚼しながら食べるようになった。一口食べるごとに笑顔になる。それと同時に決まってある言葉を発していた。「ハミューザ」と聞こえる。
どこかで聞いたことのある言葉だったので、注意深く彼女がその言葉を発するのを聞いていたら、ある単語を思い出した。ニヤ族の言葉である「ザミューハ」だった。逆さに読んだら彼女が発した言葉と同じになる。これは「美味しい」を意味する言葉だ。状況的には一致している。
ある考えが浮かんだ。ニヤ族が使う簡単な単語を思いつく限り片っ端から逆さにして言ってみた。急に自分に対して饒舌に話しかけてきた他民族の男に、はじめはあからさまな警戒心を顕わにしていた女の子だったが(肉饅頭奢ったの忘れたのかな)、次第に何かの遊びかと思ったのか、徐々に打ち解けてきて、時には笑顔も出てくるようになり、終いには向こうからも色々と話しかけてくれるようになった。案外人懐っこいのかもしれない。どの民族も子供はあんまり変わらないな。
それにしてもやはり思った通りだった。マグ族の言葉はニヤ族の言葉を逆さから読んだものが非常に多かった。俺が話しかけた大体七割くらいは相手に通じた。父を表す「タタタ」という単語が通じた理由もわかった。逆さに読んでも同じだからだ。
なぜマグ族とニヤ族が使う多くの単語がそのような逆さの関係になったのかはよくわからない。しかし、これでこの子とコミュニケーションが取れそうだ。
というわけで、先ずは名前を聞いてみた。すると彼女はこう答えた。
「マニャィォオガャーゥルツ」
え、何て?
正直どう発音したかもよくわからない。この表記でもあまり正確とは言えない。他の民族が使う言葉は俺たちが普段使っている言葉にはない音を多数使っているので、正確に俺たちの言葉で彼らの名前なり単語なりを表記したり発音したりすることはそもそも不可能だ。
ということで、何て言ってるかよくわからないし、何より言いにくいので俺はこの子のことを「マナ」と呼ぶことにした。このことは当然逆も言える。俺の名前はテヲノ・クヌーテというのだが、マナは「ノ」が言い難いようで、どうしても「テヲロ」になってしまう。だから俺のことは「テヲ」と呼ばせることにした。
次に年齢を聞いてみたら、十五歳だと言う。体が小さいからもっと下かと思っていたので意外だった。しかし、マグ族は全体的に背が低い(村を歩いた感じ、大体一般的な帝国民よりも男女共に十センチは低そうだ)し、言われてみれば顔立ちも十五歳のそれ、大体高校生くらいだ。
空腹も満たされ(肉饅頭は最終的にはマナが五個あるうちの四つを平らげたが、まぁよい)、人心地ついたので、車はボロボロだったが再び大学に向けて走りだした。
俺は改めて、父親の遺体を探しているのか?と聞いた。マナは「そうだ」と答えた。そして「急げ」とも言った。「遅れる」とも言った。そりゃ早く取り戻したいだろうから急いでいるのはわかるのだが、遅れる、とはどういうことだろう?
何に遅れるのか、と聞いてみたところ、「死ぬ」と答えた。いや、もう君のお父さんは死んでいるんだろう?と聞くと「まだだ」と言う。どういうことだ、と聞いたら返事がないので、何か考えているのかと見てみたら、寝てた。かなり意表を突かれたが、まぁ仕方がない。あんな遠いところから自分の足だけでここまでやってきた上、食べたばかりなのだから、車に揺られたらそりゃ寝るだろう。ただ、寝てもいいけど口は閉じなさいよ、と思った。
それにしても「まだ死んでいない」とはどういうことだろう。ひょっとしたら臨死状態ということか。であれば、解剖などされたら本当に死んでしまう。しかし、仮にも彼らは医学部の研究チームだ。臨死状態であればわかるはずだ。
あとは彼らの良心の問題だ。自分たちの研究のために彼らは人一人を犠牲にするだろうか。帝女一人の若さや長生きのためなら、帝国民の命など取るに足りないものなのだろうか。少数民族など、帝国民のうちに入らないのか。
色々な疑念が浮かんでくるが、そんなことはないと信じたい。しかしこの帝国の人間に期待するのは楽観的に過ぎるのだろうか。とにもかくにも、俺はアクセルを強く踏み込んだ。
大学の駐車場に車を停めると、先ずは寝ているマナを起こした。器用なことにマナは座席で寝がえりを打っていた。まぁ体が小さいからだろう。座席に足を折り畳んで乗せ、背もたれに顔を埋めているマナを揺り起こすと、「んー」と声を上げて、辺りを見回した。自分がどこにいるのかわからなかったようで、かなり警戒していたが、俺の顔をじッと見ると、自分がなぜここにいるのか思い出したようだ。
そしてすぐに長寿研究チームの研究室へと向かった。すっかり日は暮れて薄暗い上、講義やゼミも終わって人影もまばらだった。おかげでマナがキャンパスを歩いても騒ぎにはならなかった。あとは長寿研究チームの連中がまだ帰っていなければいいのだが、研究室のある部屋を見上げるとまだ明かりは点いていた。
帰る前に行かなければ、と研究室まで走って行き、焦っていたのでドアもノックせずに入ってしまった。研究室には昨日の面々が揃っていた。幸い、あのデカ男はいなかった。あいつがいると面倒だ。いくらマナが強いとはいえ、デカ男は銃を持っている。さすがのマナも銃には敵わないだろう。
突然人が入ってきた上、その人物が昨日自分たちを追いかけ回した人食い人種の娘だったので、皆目が飛び出さんばかりにこちらを見て固まっていた。
「な、何だ……、いいい一体……!」
教授が声を震わせ、上ずらせながら、ほとんど叫ぶようにそう言った。人は自分より焦った人間を見ると冷静になるようで、教授のそんな様を見て俺はすっかり落ち着いてしまった。
「言語文化専攻のクヌーテです。昨日マグ族の集落にご同行した」
「そんなことはわかっとる! そっちじゃなあい! なぜそいつをここに連れてきた!」
そりゃ人食い人種が自分たちのテリトリーに攻め込んできたら怖いのはわかるが、自分の親くらいの年齢の人が焦りまくって我を忘れかかっているのを見るのは、なんか微妙な気分だ。
「あ、すみません。昨日の遺体についてなんですけど、実はまだ生きているらしくて……」
「そんなことはない。確認したが、既に死んでいた」
「え? そうなんですか?」
マナの話とは違っているが、まぁ冷静に考えればそうだろう。なんせ、「死体」ということでマグ族から引き取ったのだから。それに、専門家がそう言うのだからそうなのだろう。
「まぁ……、それはともかくなんですが……、そのぉ……、あの遺体、この子に返してやるわけにはいかないでしょうか?」
残念ながらマナの父親は亡くなっていたが、マナとの約束だ。父親は返してもらわなくてはならないし、俺としても、そうすべきだと思う。まぁ、かなり強引ではあるが、ものは試しに聞いてみた。
「え? あぁ、あれか……。引き渡せば、帰ってくれるんだね」
なんか教授のテンションが急に下がった気がする。
「はい」
「じゃあ、早いとこ持ってってくれ」
昨日の話では帝女が絡んでいるとのことだったから、絶対に返してくれないと思っていたので正直驚いた。実は力ずくで遺体を持って帰ることも考えていた。もちろん、マナが力ずくで、だ。俺にはそんな腕力はない。
「返してくれるんですか?」
「却って都合がいい」
そんなことまで言った。拍子抜けというか、昨日とは明らかに何かが変わったようだ。
どこかで聞いたことのある言葉だったので、注意深く彼女がその言葉を発するのを聞いていたら、ある単語を思い出した。ニヤ族の言葉である「ザミューハ」だった。逆さに読んだら彼女が発した言葉と同じになる。これは「美味しい」を意味する言葉だ。状況的には一致している。
ある考えが浮かんだ。ニヤ族が使う簡単な単語を思いつく限り片っ端から逆さにして言ってみた。急に自分に対して饒舌に話しかけてきた他民族の男に、はじめはあからさまな警戒心を顕わにしていた女の子だったが(肉饅頭奢ったの忘れたのかな)、次第に何かの遊びかと思ったのか、徐々に打ち解けてきて、時には笑顔も出てくるようになり、終いには向こうからも色々と話しかけてくれるようになった。案外人懐っこいのかもしれない。どの民族も子供はあんまり変わらないな。
それにしてもやはり思った通りだった。マグ族の言葉はニヤ族の言葉を逆さから読んだものが非常に多かった。俺が話しかけた大体七割くらいは相手に通じた。父を表す「タタタ」という単語が通じた理由もわかった。逆さに読んでも同じだからだ。
なぜマグ族とニヤ族が使う多くの単語がそのような逆さの関係になったのかはよくわからない。しかし、これでこの子とコミュニケーションが取れそうだ。
というわけで、先ずは名前を聞いてみた。すると彼女はこう答えた。
「マニャィォオガャーゥルツ」
え、何て?
正直どう発音したかもよくわからない。この表記でもあまり正確とは言えない。他の民族が使う言葉は俺たちが普段使っている言葉にはない音を多数使っているので、正確に俺たちの言葉で彼らの名前なり単語なりを表記したり発音したりすることはそもそも不可能だ。
ということで、何て言ってるかよくわからないし、何より言いにくいので俺はこの子のことを「マナ」と呼ぶことにした。このことは当然逆も言える。俺の名前はテヲノ・クヌーテというのだが、マナは「ノ」が言い難いようで、どうしても「テヲロ」になってしまう。だから俺のことは「テヲ」と呼ばせることにした。
次に年齢を聞いてみたら、十五歳だと言う。体が小さいからもっと下かと思っていたので意外だった。しかし、マグ族は全体的に背が低い(村を歩いた感じ、大体一般的な帝国民よりも男女共に十センチは低そうだ)し、言われてみれば顔立ちも十五歳のそれ、大体高校生くらいだ。
空腹も満たされ(肉饅頭は最終的にはマナが五個あるうちの四つを平らげたが、まぁよい)、人心地ついたので、車はボロボロだったが再び大学に向けて走りだした。
俺は改めて、父親の遺体を探しているのか?と聞いた。マナは「そうだ」と答えた。そして「急げ」とも言った。「遅れる」とも言った。そりゃ早く取り戻したいだろうから急いでいるのはわかるのだが、遅れる、とはどういうことだろう?
何に遅れるのか、と聞いてみたところ、「死ぬ」と答えた。いや、もう君のお父さんは死んでいるんだろう?と聞くと「まだだ」と言う。どういうことだ、と聞いたら返事がないので、何か考えているのかと見てみたら、寝てた。かなり意表を突かれたが、まぁ仕方がない。あんな遠いところから自分の足だけでここまでやってきた上、食べたばかりなのだから、車に揺られたらそりゃ寝るだろう。ただ、寝てもいいけど口は閉じなさいよ、と思った。
それにしても「まだ死んでいない」とはどういうことだろう。ひょっとしたら臨死状態ということか。であれば、解剖などされたら本当に死んでしまう。しかし、仮にも彼らは医学部の研究チームだ。臨死状態であればわかるはずだ。
あとは彼らの良心の問題だ。自分たちの研究のために彼らは人一人を犠牲にするだろうか。帝女一人の若さや長生きのためなら、帝国民の命など取るに足りないものなのだろうか。少数民族など、帝国民のうちに入らないのか。
色々な疑念が浮かんでくるが、そんなことはないと信じたい。しかしこの帝国の人間に期待するのは楽観的に過ぎるのだろうか。とにもかくにも、俺はアクセルを強く踏み込んだ。
大学の駐車場に車を停めると、先ずは寝ているマナを起こした。器用なことにマナは座席で寝がえりを打っていた。まぁ体が小さいからだろう。座席に足を折り畳んで乗せ、背もたれに顔を埋めているマナを揺り起こすと、「んー」と声を上げて、辺りを見回した。自分がどこにいるのかわからなかったようで、かなり警戒していたが、俺の顔をじッと見ると、自分がなぜここにいるのか思い出したようだ。
そしてすぐに長寿研究チームの研究室へと向かった。すっかり日は暮れて薄暗い上、講義やゼミも終わって人影もまばらだった。おかげでマナがキャンパスを歩いても騒ぎにはならなかった。あとは長寿研究チームの連中がまだ帰っていなければいいのだが、研究室のある部屋を見上げるとまだ明かりは点いていた。
帰る前に行かなければ、と研究室まで走って行き、焦っていたのでドアもノックせずに入ってしまった。研究室には昨日の面々が揃っていた。幸い、あのデカ男はいなかった。あいつがいると面倒だ。いくらマナが強いとはいえ、デカ男は銃を持っている。さすがのマナも銃には敵わないだろう。
突然人が入ってきた上、その人物が昨日自分たちを追いかけ回した人食い人種の娘だったので、皆目が飛び出さんばかりにこちらを見て固まっていた。
「な、何だ……、いいい一体……!」
教授が声を震わせ、上ずらせながら、ほとんど叫ぶようにそう言った。人は自分より焦った人間を見ると冷静になるようで、教授のそんな様を見て俺はすっかり落ち着いてしまった。
「言語文化専攻のクヌーテです。昨日マグ族の集落にご同行した」
「そんなことはわかっとる! そっちじゃなあい! なぜそいつをここに連れてきた!」
そりゃ人食い人種が自分たちのテリトリーに攻め込んできたら怖いのはわかるが、自分の親くらいの年齢の人が焦りまくって我を忘れかかっているのを見るのは、なんか微妙な気分だ。
「あ、すみません。昨日の遺体についてなんですけど、実はまだ生きているらしくて……」
「そんなことはない。確認したが、既に死んでいた」
「え? そうなんですか?」
マナの話とは違っているが、まぁ冷静に考えればそうだろう。なんせ、「死体」ということでマグ族から引き取ったのだから。それに、専門家がそう言うのだからそうなのだろう。
「まぁ……、それはともかくなんですが……、そのぉ……、あの遺体、この子に返してやるわけにはいかないでしょうか?」
残念ながらマナの父親は亡くなっていたが、マナとの約束だ。父親は返してもらわなくてはならないし、俺としても、そうすべきだと思う。まぁ、かなり強引ではあるが、ものは試しに聞いてみた。
「え? あぁ、あれか……。引き渡せば、帰ってくれるんだね」
なんか教授のテンションが急に下がった気がする。
「はい」
「じゃあ、早いとこ持ってってくれ」
昨日の話では帝女が絡んでいるとのことだったから、絶対に返してくれないと思っていたので正直驚いた。実は力ずくで遺体を持って帰ることも考えていた。もちろん、マナが力ずくで、だ。俺にはそんな腕力はない。
「返してくれるんですか?」
「却って都合がいい」
そんなことまで言った。拍子抜けというか、昨日とは明らかに何かが変わったようだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる