今度こそ長生きしたいけど、憑依先が悪役令嬢とは聞いてませんっ!?

竹林 花奏(たけばやし かなで)

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58.リチャードとの約束~ジャックside~

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リチャードは俺の問いに黒い笑みを浮かべて言った。


「リーリアの魂が誰の体に移動したのか、大体の検討は付いているんですが、まだ確定してません。殿下には特定の協力に繋がる援助をして欲しいんです」


一度句切ると、リチャードは続きを話し出した。


「疑わしいというか、今のリーリアの周りには彼女の味方をしそうな高位貴族が何人か居ます。中にはこれからそういった存在になりかねない人物も居ますが……その人間の近くに監視できる人間を置いて欲しいんです。それも、相手に勘づかれないように」


(……勘づかれてはいけない程の立場の人間を監視するとなれば、皇太子のクリスとその取り巻きか?)


そして、彼らの中心に居る人物はあのベネットに似た容姿の伯爵令嬢だ。


とりあえず、頷きつつ先を促した。


「僕の力では、伯爵家までの出身であるジェシカ・テンプソン嬢にしかそういった人間を潜入させることが出来ませんでした。ですので殿下には、クリストファー皇太子とレイトン・シルク公爵令息、カイン・トゥルガー侯爵令息、それからステファン・アイロニー伯爵令息に監視を付けて下さい。貴方なら自身の影を1人ずつ付けることが可能ですよね?」


リチャードから依頼された人物は全部で4人。


今、俺の護衛に回っている影は全部で5人。


学園生活だからそんなに護衛も必要ないだろう、と両親からの反対を押し切って交代制で2人ずつ付いてくれれば最大5人で足りるはずだ……と判断して護衛には影を連れてきたが、人員を見直す必要がある。


「あぁ、わかった。手配してみよう」


「本当に大丈夫なの?貴方の護衛が減るのではない?」


ベネットが心配そうに確認してくる。


普通は影は諜報活動をメインにしつつも、主人を敵からひっそりと守る暗殺活動をすることが多い。


だが、俺の場合は周りに騎士を置くことが煩わしい。


だから俺は少数の影を付け、ひっそりと護衛させることを好んだ。


ベネットもそこら辺の俺の事情を知っているせいか、『護衛が減る』と心配してくれているのだ。


(……他に追加で調べさせたいことも増えたし、この際両親に影を追加で10人程依頼してみるか)


元々は両親は俺に影を15人ほど付けようとしていたので、多少のお小言はあるかもしれないがあっさり承諾されるだろう。


「大丈夫だ。元々連れていく護衛が少なくて両親からうるさく言われていた所だからな。今から増員を頼めば、快く手配してくれるだろう。だから俺にも協力させてくれ」


「ジャックがそう言うのなら……」


俺が強気で言えば、ベネットは心配そうにしなからも最終的には頷いてくれた。


俺たち2人のやり取りが決着したのを見届けたリチャードは少年らしい無邪気な笑顔になり、言った。


「では決まりですね!それから今後は僕ら3人で集まると怪しまれるかと思います。今回は僕の魔力暴走の件があったので、3人で行動しても不自然ではありませんでしたが、近況などのやり取りは僕と殿下の間で手紙で済ませるのが良いかと思います……ですから、姉上は殿下に伝えたいことがあれば僕に手紙を回してください。一緒に入れて渡しますから」


俺は今後はベネットと話せないのか……と少し残念に思っていると、リチャード経由での手紙のやり取りを勧められた。


(……手紙のやり取りだけでも、出来るのならば)


そう思っていると、ベネットも同じことを考えていたのか、不安そうに俺とリチャードに「……いいの?」と遠慮がちに聞いてくる。


俺とリチャードはしばし見つめ合って、思わず笑った。


ベネットの控えめな問いが可愛くて俺は笑ったが、リチャードは多分俺につられて吹き出してしまったに違いない。


俺たちがそれぞれの言葉で『気にするな』という意味合いの言葉を伝えれば、「……ありがとう」と嬉しそうにはにかんだ。


(……その顔は反則だろう)


俺は恥ずかしさを紛らわすために、ベネットとの過去の話をして、時は流れた。



















「セオ、悪いが便箋と封筒を用意してくれないか?」


ベネットとリチャードと別れてすぐ、寮の自室に戻った俺は早速使用人のセオに手紙を書くのに必要な物の準備を依頼した。


「おや、殿下が帰って早々に誰かに手紙を書くなんて珍しいですね?」


セオはそう言いつつも、便箋と封筒を取りに行ってくれた。


俺は上着を脱ぎ、ハンガーにそれをかけるとクローゼットへとしまい、椅子に座った。


「お待たせいたしました」


セオがその間に戻ってきて、机の上にレターセットとボールペンを置いた。


「ありがとう……実は、両親に手紙を書こうと思ってな」


先程のセオの疑問に答えつつ、手紙を書き始めれば横から彼のフフッという上品な笑い声が聞こえた。


「ヘーリオス帝国へ殿下が到着されてから、1ヶ月ほど両陛下への手紙を無視なさっておりましたからね……お2人共、お喜びになることでしょう」


ただの近況の手紙ではないので、セオの言葉に気まずさを感じたがそれを知ってか知らずか彼は、「ハーブティーの準備をして参りますね」と嬉しそうに部屋から立ち去る。


苦笑しつつも、1時間くらいで手紙を書き上げてセオに「明日出しておいてくれ」渡し、俺は彼が入れてくれたばかりのハーブティーを飲んで、ほっと一息入れた。


「今日は何か良いことでもございましたかな?」


「……分かるのか?」


いつも通りにしていたつもりが、付き合いの長いセオには何でもお見通しなようで、見事に言い当てられた。


「分かりますとも。私が殿下の傍に何年仕えているとお思いですか?」


自信満々にそう答えられ、俺は盛大に吹き出した。


「そうだったな……実は、ずっと探していた人を見つけたんだ」


それだけ言えば、セオが「……ほぅ。遂に殿下にも春が来ましたか」と感慨深い様子で言われる。


「よしてくれ、そんなんじゃない……多分」


(確かに俺はベネットのことが好きで、ベネットも亡くなる前は俺のことを好きだと言っていたが、今またベネットがクリスの婚約者になってしまったこともあるし、彼女が今は俺のことをどう思ってくれているのか、わからないしな……)


あの様子を見ていれば、婚約者のクリスに好意を寄せていないのは明らかだ。


けれど、新しい体になったベネットがまた新しく誰かに想いを寄せないとも考えられない。


何より、ベネットは素のままが一番魅力的な女性だ。


今はリーリアの噂のせいで悪口ばかりを言われていても、変わった(中身がベネットなので変わったとは違うかもしれないか)姿を知れば、男性陣が彼女に惹かれないとも限らない。


柄にも無く、じめじめと下らないことを考えているとセオから軽く方をポンッと叩かれた。


「殿下が珍しく弱気ですなぁ。まぁ、それが恋というものでしょう。とりあえず、お夕食でもいかがですかな?」


セオに言われ、時計の針が19時を過ぎていることにようやく気が付いた。


「……そうだな。くよくよ考えていてもどうにもならない。まずは俺が出来ることからやっていこう」


セオのお陰で前向きになれた俺は、その日は珍しくよく眠れた。


更に1週間後、両親により増員された影たちに今回リチャードに頼まれていたことと、"俺個人の頼み"の両方の指示を彼らに出した。
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