今度こそ長生きしたいけど、憑依先が悪役令嬢とは聞いてませんっ!?

竹林 花奏(たけばやし かなで)

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41.2つの初恋①~ジャックside~

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アエーマ王国の国王と王妃の第一子として産まれてきた王太子ジャックフリート・アネモス・アエーマは――俺が言うのもなんだがよく言えば元気、別の言い方をするならば、悪童であった。


ベネットに出会う5歳までの間に周りから次期国王ということで、甘やかされて育てられた俺は『自分は偉い、周りは自分に傅くことが当然』などと傲慢な考えの元、育った。


そんな俺が初めて父の妹の子供、俺からすれば叔母の子供である従妹のベネットに会った時は実は、凄く緊張していた。


軽くウェーブしたプラチナブロンドに珍しいブルーサファイアの宝石眼宝石眼ほうせきがんを宿した瞳は、星空のようにキラキラしていて、綺麗で同い歳でこんな可愛い子に出会ったことがなく、緊張して余計なことを言ってしまって見事にベネットから嫌われた。


それでも子供特有の『好きな子には意地悪をしたくなる』が発動してしまい、嫌がるベネットに虫を投げたり、小馬鹿にしたりと今思うととんでもないことをしまくっていた。


そう、俺の初恋はベネットで一目惚れというやつだった。


自分でも意外だったことだが、15歳になった今でもベネットが好きなことだ。


彼女が亡くなっても変わらず彼女が好きで、自分はこんなにも一途だったのかと驚いているくらいだ。


……話を戻すと、ベネットと出会って4年が経過した時に転機が訪れた。


9歳のある日、王宮内でいつものように一緒に遊び、ベネットの制止の声を無視して木に登って落ちた。


落ちて足を折ってしまった俺に、ベネットが初めて治癒魔法を使って癒してくれた。


その治癒魔法が体内に入ってきた瞬間、俺の中にとある記憶がフラッシュバックした。


アパートの前、フードを被った男から腹を包丁で刺され、その包丁が抜かれたかと思えば彼女――婚約者の坂本美緒が刺される。


そんな記憶だった。


訳が分からずパニックになっていると、メイドたちが呼んだのか、両親が来て俺はしこたま怒られた。


でも、俺はそれどころでは無かった。


知らない世界の知らない記憶を一部分見せられた俺は、その日訳の分からない気持ちのまま眠りついた。


そして、眠りの中で全てを知った。



















ジャックフリートになる前の俺――僕は高崎正樹はごく一般的な家庭で育ち、人を救う仕事がしたいと考えるようになって、大学では医学部に通えるように中学生の頃から努力し、親に塾にも通わせてもらって無事、希望通り進学出来た。


少し複雑な事情があり、僕が11歳の時に父の妹の子供であった当時は14歳の従姉の亜里沙を引き取ることになった。


姉は本当に最初の頃は体が細く、全然笑わない人だった。


それが両親や僕が普通に家族として接していくようになると徐々によく笑うようになり、次第に男勝りな性格になっていった。


姉が社会人になって1年後に、後輩の女の子を僕に紹介してきた。


この子が後に僕の婚約者になる坂本美緒さんだ。


最初は姉と僕と美緒さんの3人で集まって会ったが、その日以降はしばらくメールや電話でのやり取りを続け、それから映画やカフェ等、普通の友人のような関係を続けた。


1年以上友達を続けていけば彼女の人柄が分かるもので、彼女は大人しそうだが自分の意見をしっかり持っていたり、実は眼鏡を外すと美人だったことにはびっくりした。


決して顔が好みだったからだけで好きになった訳ではなかったが、それにプラスして彼女の心が清らかだったのでそういったところが好きになっていった。


美緒さんも僕のことを多分、気に入ってくれているはず。


僕は勇気を振り絞って告白をした。


そして、「すみません、私なんかじゃ正樹さんに相応しくありません」と振られた時はこの世の終わりのような気分になった。


それでも初めて女性を好きになったから、諦めが悪くて相手に気持ち悪いと思われたらどうしよう……と思いながら何度か告白を繰り返した。


何回目かの告白の時に美緒さんは僕に話してくれた。


美緒さんは義理の兄から性的被害に合っており、両親は黙認して自分を助けてくれなかったと。


そこから逃げて今は一人暮らしをしているが、自分は汚らわしいから僕に不釣り合いである、と。


彼女の話を聞いた時、姉の亜里沙の顔が浮かんだ。


姉は美緒さんとは違うが酒癖が悪く、働きもしない父に虐待をされて育っていた。


母親は家計を支えるためにパートをかけ持ちして、苦しいながらに少ないご飯を2人で分け合い、家に母親が居た日は姉を父から庇ってくれていたらしい。


事件の日もたまたま母親が家から帰ってきたタイミングで、父の逆鱗に触れた亜里沙は逃げ惑い、玄関まで走行って、その時に姉の母親――僕の叔母は姉を庇い、父にビール瓶で頭を何度も殴打されて亡くなったのだそうだ。


僕はその話を聞いて、少しでも人の命を救える可能性の高い、医者になろうと思った。


だから、彼女の気持ちは経験したことがない僕にも痛いほどによく分かった。


「君が好きなんです。そういったことは君が大丈夫になるまでしません。だから、僕と付き合ってください」


そう言った。


彼女をこれから僕が守って、幸せにしていきたい。


彼女には常に笑顔で居て欲しい。


僕は彼女を深く愛しているんだな……とその時になって、自覚した。


美緒さんと付き合いだしてから3年。


僕もようやく社会人になり、研修はとても大変だったがやり甲斐がある仕事で忙しくても楽しかった。


そんな僕の生活を嫌な顔せずに支えてくれた美緒さんは、ご飯の作り置きをしてくれたり、洗濯物や掃除などもしてくれて、結婚したら良き妻になるだろうな、と想像した。


医者なんて常に勉強しなければならないことが沢山あって、日々研修みたいなものだったが新卒1年目の研修が終わり、ひと段落ついたタイミングで美緒さんがお金は自分が出すから、卒業祝いを兼ねてレストランで食事をしないか?と提案してくれた。


高いレストランを予約したと聞いて「僕も払うから!」と言ったが彼女は「いいの、お祝いごとなんだからこんな日くらい、私に出させてよ」と困ったように笑われて、その顔があまりにも可愛いかったから折れてしまった。


僕はその代わり、前から考えていたことをその日に決行することに決めた。


レストランで最後、食後のデザートまで食べ終えて彼女がコーヒーを飲んでいる時に彼女の近くまで行き、跪いて「貴女と最後まで添い遂げたい。僕と結婚して頂けませんか?」と言ってからダイヤモンドの指輪を渡した。


泣きながら喜んで「……はい」と言ってくれた美緒さんが愛おしくて、結婚してからもずっと彼女の幸せを守っていきたいと思った。


婚約者になった美緒さんと同棲を始めると、今度は病院の事務の女性に言い寄られ始めた。


「高崎くんってモテそうだよねぇ~。彼女って居る感じ?」


同時期に入社して、自分より4歳歳下の彼女は確かに見た目こそは可愛かったが、話し方や男を煽ててなんぼみたいな態度があまり好きになれず、避けていた。


でもとある日に捕まった時に、これもいい機会かもしれないと考えた僕は「彼女は居ますよ。その彼女と来年くらいには籍を入れる予定です」と返した。


「え~!高崎さんってまだ25歳でしょ!?そんな早くに相手決めちゃっていいの?今の彼女よりいい人沢山いるかもよぉ~。……私とかどぉ~?」


僕の腕に手を置きながら、密着した状態で上目遣いで言われて、気持ち悪くて無理やり彼女の体を引き剥がした。


「そういう冗談は笑えませんよ……では、僕はこれで」


ここまでやれば、もうあの人が僕にちょっかいをかけてくることはないだろう。


この時はそう思っていたが、後にこれが僕の間違いであったと気付かされた。
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