水巫女はハレムで溺れる

愛月なみ

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ガルダシャーンからの訪問者

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 水巫女の精霊の力で湿気をおびていたからヴェールをはみはみされたんじゃないかという言葉にちょっとがっくりきていた私。

 その横から警戒心をもったままのエルザさんが私達とがたいのよい彼の間にたって代わりに質問をしはじめた。

「こちらはアクアナ神殿の大切な水巫女様たちです。
あなたはガルダシャーン帝国の方とお見受けいたしますが、アクアナ神殿に御用がおありでしょうか?」

 きりっとした顔のエルザさんを面白そうにそのたれ目を細めてみた彼は神殿の入口のほうを見ながら何でもないように応えてくれた。

「そうですね。
 私達はガルダシャーン帝国からきた者です。
代表が神殿長に用件を説明にむかっていますから、そのうち神殿内に説明があるんじゃないでしょうか。

 それまでは、私の口からも用件は言いかねます。
ただ、そちらの水巫女様たちには深く関係するとだけはお伝えしておきましょうか」

 そういって、私達のほうへ視線をなげかけた。

 そんな風に言われると、一体どんな用事なのか気になって仕方ない。

 れいかちゃんやエルザさんも同じだったのか、顔をみあわせてとにかく神殿に戻って神殿長に聞こうという雰囲気になった。

 そんな私達の無言のやりとりを読み取ったのか、「それでは、また」とにっこり笑って彼はガルダシャーンの人たちが集まる中へ戻っていった。



 一体何の用事なのか、気になるので自然と早足になっている私達。

 でも、神殿長の部屋まできたものの、まだ来客中でお話を聞くことはできなかった。
 そりゃ、そうか……

 このまま部屋の前でまっていても仕方ないので、ひとまず各自部屋へ戻ることに。

 そのころにはれいかちゃんもお買い物してきたものを思い出したのか、アイラちゃんとさっきもしゃもしゃされたヴェールじゃなく、新しいヴェールに石をつけてみよう!
 グラデーションにするのはどうかなぁ、と楽しそうに話しながら部屋へ戻って行った。
 私も自室に戻ると椅子に座って一息ついた。

「アンナ様、神殿長付には来客とのお話が終わり次第、連絡もらえるように伝えましたから、お茶をいれましょうか」

「そうですね、もらえますか」

 そういえば、出かけていた間何も飲んでいなかったことを思い出して急に喉が渇いてきた。

 お茶をいれて戻ってきてくれたエルザさんからカップをうけとる。
かわいた喉を潤すための水と、ほっと一息つくための熱いチャイの2つをトレイにのせて持ってきてくれた。
 こういうちょっとした気遣いがエルザさんはほんとにすごい。
まずは水を飲むと、喉が渇いていたので一気に全部飲んでしまった。
そして、落ち着いてから口にしたスパイスのきいた熱い甘いミルクティーは歩いて疲れた体のすみずみにいきわたる。
思ったより、疲れていたみたい。

「エルザさん、あのガルダシャーンの人たちってなんの用なんでしょうね」

 答えはでないとわかっているけれど、砂漠をこえた遠くの国からここまで来ることがよくあるのか、それさえもわからない私としては、少しでも情報をしいれたくてエルザさんに聞いてみた。

「それが、私にも全くわからないです……。
以前見たときは10年前の戦争のときですし。
たまに、このアクアナ神殿を経由して別の国へ伝令というんでしょうか、手紙などを届けに行く軍人をみたことがありますが、その場合は少人数で移動していました。

 今日来たのは何十人と大所帯でしたし、馬車も数台みえました。
 馬車に位の高い人が乗っていたのかもしれませんが、それにしてもここを経由してどこかの国へ行かれるのであれば、神殿長と話をするのは不思議ですし……」

 やっぱり、そんなに頻繁にガルダシャーンの人がくることはないみたい。

 砂漠をこえてわざわざ……、になるもんね。

 逆にいえば、ガルダシャーンへ向かう人も少ないということは、私がガルダシャーンへ行こうと思っても、なかなか行けるチャンスがないってことかも?

 いっそ、今来ている人たちに同行していったらダメかなぁ~。

 軍人さんたちみたいだから、盗賊とか危ない目にはあわなさそうだし。

 馬車のすみっこにでも乗せてくれないかなぁ……。

 そんなことをぼんやり考えていたら、神殿長付の女性が部屋まで呼びにきてくれた。

 いつもの精霊の練習をする泉のそばへきてくれとのことで、なんでそんな場所で?と不思議に思いながらエルザさんと泉へむかう。

 そこには私と同じ水色のワンピースをきた女性がずらりと並び、端には白いワンピースや服を着た女性男性が並んでいた。
 多分、水巫女全員と神殿に仕えている人たち全員が集まっているんじゃないだろうか。
 こんなに大勢が集まっているのをみるのは初めてかもしれない。

 そして、こうやって集まることが珍しいことなのか、誰もが不思議そうな落ち着かない表情をしていた。
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