水巫女はハレムで溺れる

愛月なみ

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馬ラクダ

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 初めての神殿の外へのお出かけだったけど、ガルダシャーン帝国の軍と思われる集団がアクアナ神殿にきたとあっては落ち着いて散策もできないので、私達4人は神殿に帰ることにした。

 一体何のようで軍が来たのか、少し不安げな私やエルザさんとは対照的にれいかちゃんはどんな風に購入した石をワンピースとヴェールにつけるかアイラちゃんと話していてとても楽しそう。

 私もそれぐらい楽観的になりたい……

 そうこうするうちにアクアナ神殿へ戻ってきた私達は整列している馬や馬車の横を通り過ぎて神殿の中へ入ろうとした。

 前を歩くれいかちゃんは、その馬のようなラクダのような見たことない動物を興味津々にみている。

 私も機会があったら近くでみせてもらいたい。

 馬っぽいのに、蹄はすごく横に幅広になっていて、らくだっぽい。
目もまつげバサバサで伏し目がちなところがラクダみたいで、砂漠をいくためにはどうしてもこういう砂に適応した姿になるんだろうな、と思わせた。

 と、そのとき、急に突風がふいて前をいくれいかちゃんのヴェールが吹き飛んでしまった。
 薄布でできたヴェールは風にのって、見ていた馬ラクダのそばまでいくと、パクリと馬ラクダの口にふくまれてしまった。

「いやー!!私のー!!」

 もしゃもしゃと口を動かす馬ラクダにあわててかけよるれいかちゃんを追って、アイラちゃん、私もすぐに後に続いた。

「やー!!離して~!! あー!よだれでべとべとー!!」

 悲鳴をあげるれいかちゃんを気にも留めずに何を考えているんだかわからない伏し目がちな目をぼーっとさせて、もしゃもしゃし続ける馬らくだ。

 私達もどうしたらよいかわからずにおろおろしているとスルリと私の頭から何かが抜き取られる感覚がして、後ろを振り向くと別の馬ラクダがやっぱり私のヴェールをもしゃもしゃしていた。

「あー!!なんでー!!」

 あわててヴェールをひっぱっても、まったく離してくれない。
それに、薄布だからあまり強くひっぱると破れてしまいそう。

 そうこうするうちに集まっていた軍の中から何人かが気づいて走り寄ってきた。

「こら!!お前たち!!離しなさい!!」

 ムチのような物をもった人が声をあげると、2頭はしぶしぶといった感じで口を離してくれた。
 かえってきたヴェールはなんだか、べとべとしているしちょっと形も崩れてしまったような気がするけど……

「申し訳ありません、普段はこんなことはしないんですが……」

 馬ラクダをしかった人は私達に丁寧に頭をさげて謝罪をしてくれた。

「いえ、動物のしたことですから……」

「失礼ですが、水巫女様ですか?」

 横からあらわれた別の人からそのように聞かれる。
鞭をもった人も、今あらわれた人も全員目だけだして頭から口元もすべて布でぐるぐる巻きにしているので、身長と目の色ぐらいでしか区別がつかない。

 ただ、今聞いてきた人はがっちりとしていて服の上からでも筋肉質なのがみてとれるほど。
 目しかでていない状態で表情もみえないので威圧感がすごい。

 れいかちゃんも一歩ひいている。

「あぁ、失礼。驚かせてしまいましたか」

 私達がひいているのを感じたのか、聞いてきた人はぐるぐる布をぱらりととってくれた。
 はずした布の下からあらわれたのは、がっちり体型とはあわなさそうなたれ目なベビーフェイス。
 短く整えられた髪は真っ黒で、瞳も黒。
親近感のわく色合いだった。

 ちょっと警戒がゆるんだのを感じたのか、彼は二コリとわらった。

「失礼しました。水巫女様たちですよね?」

「はい、そうですけど……」

 警戒がゆるんだれいかちゃんが代表して答えてくれた。

「やっぱり。水色でまとめているのは水巫女ときいていましたから。
それでしたら、納得です。 水巫女様がまとわれていたヴェールですから、水気が多かったのでしょう。
砂漠をこえてきたこの馬達が水を飲むのを待ちきれなくてかんでしまったんですね」

 振り返って馬ラクダを見やる彼の視線を追うと、連れていかれた馬ラクダたちが嬉しそうに水桶から水を飲んでいる。

 なるほど、喉が渇いていたのか~。

 それにしても……。
 まとっていただけで、ヴェールが湿気たってこと??
それは、なんだか不便な体質になったな……
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