水巫女はハレムで溺れる

愛月なみ

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先輩水巫女、ジェシカさんに教えてもらう(1)

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 午後に泉へ行くと、茶色いカールした髪をポニーテールにした女性が泉のふちにかがんでいるのがみえた。
 水色のワンピースをきているので、この女性が多分今日、教えてくれる水巫女なんだろう。

「こんにちは、異界からの水巫女さん」

 私に気づいて顔をあげてにっこり微笑んでくれた女性は初めての対面だけどとても人懐こい笑顔をむけてくれた。
 敷地が広く、廊下や建物も広いこの神殿では同じ水巫女とはいえ、あまり出会うことはなかったので、そういえばれいかちゃん以外の水巫女と会うのは初めてかもしれないと今更ながら気づいた。

「こんにちは、水下杏菜といいます。今日はよろしくお願いします」

「私はジェシカよ。水巫女としてもう10年ここで過ごしている一番の年長よ。
精霊のこと以外でも、何か知りたいことがあったら私に聞いてね」

 髪と同じ茶色の瞳がキラキラと輝いていて、ジェシカさんはとても感じのよい人だった。
 私には女神様からのお願いもあるし、精霊の力がかりられるようになったら、今度は女神様のお願いを果たすためにどうしたらいいか、エルザさんやジェシカさんに相談してみよう!

 感じのよい人たちに恵まれて、私の異世界生活スタートはなかなかいい感じ!

 自己紹介をおえたところでれいかちゃんもやってきた。
後ろには朝に部屋でみかけたかわいい小柄な女の子が付き添っている。

「れいかちゃん!
こちら、今日教えてくれるジェシカさん。
ジェシカさん、こちらが私と同じ世界からきたれいかちゃんです」

「よろしくお願いします」

 れいかちゃんがぺこりと頭を下げると、ジェシカさんはにっこり笑って泉のほうへと私たち二人を促した。

「精霊様の力をかりるのは人によって色々やり方もあると思うので、まずは私のやり方をお見せしますね」

 そういうと、ジェシカさんは先ほどと同じように泉のふちへしゃがみこんだ。

 そして両手をそっと冷たそうな水にひたしてブツブツと小声で何かを話し始めた。

 まさか何か呪文とか必要なのか……
唱えるのが恥ずかしいような呪文とか、言うの無理なんだけど……

 そっと近づいて耳をすませてみると、

「精霊様、私のお願いを聞いてください。
この泉の水を一すくい、上にはねあげてください。
水しぶきが雨のように降り注ぐように。
精霊様のすごいお力をみせてください。
私達ではとても実現できない、水の力をみせてください」

 その後は「精霊様すごい!」「神!」とばかりにおだてまくっているのが聞こえて、ちょっと笑いそうになってしまった。

 でも、そうこうする間に泉の表面が波打って噴水のようにぴゅーっと一筋高く持ち上がるとパシャリと頭上高くで広がるとシャワーのように細かい水滴が四方八方へ降り注いだ。
 隣で「わぁー!」とれいかちゃんとお世話係の少女の歓声があがった。

 でも、私は確かに力の流れの何かが見えた気がして声をあげることもできなかった。

 小さな小さな手のひらサイズの青い人型の何かが水面から高く持ち上がる水と一緒に空中に飛び上がったのが一瞬ちらりと見えた気がした。

「ジェシカさん!すみません、もう一度!!もう一度、やってみてもらえませんか?!」
 今の見たものを確かめたくて、ジェシカさんにすがりつく勢いで頼み込んだらジェシカさんはちょっと引きながらも頷いてくれた。

 さっきと同じようにジェシカさんの両手が水につかり、精霊様万歳!すごい!の絶賛が始まると、ジェシカさんの腕をつたって青いものが水面に降り立つのが見えた。

 水面が波打つと時々、青いものが走るのがちらり、ちらりと見える。

 先ほどと同じように、高く打ちあがる水の柱の中にも青い人型がうっすらと見える。
水しぶきが落ちてくると、濃密な水気を肌に感じた。

 これだ!!!
多分、きっとこの青い何かが精霊なんだ!!

 あわてて私も泉の水に両手を浸してみる。
そして、私も小声で精霊様すごい!を唱えてみる。

「精霊様、精霊様。
女神様のお願いをかなえるために、精霊様のお力をかしてください。
私一人ではできません。
人間では到底かなえることのできない、精霊様のすごい水のお力をどうか私にかしてください」

 思いつくかぎりの、精霊様ヨイショをしているとむき出しの二の腕や首筋にしっとりとした水気を感じてきた。
 そして、つるりとした何かが両腕をつたって泉へ入るのがわかった。

 よし、多分、これ!!

 精霊様、水をぱっしゃーーんとお願いします!!

 私の心の中の叫びが聞こえたのか、ジェシカさんより数倍太い水柱が立ち上がると周囲に滝のような水を降らせた。

 ずぶ濡れになりながら、「ひゃー!やりすぎた!!」と後悔もちょっとしたものの、なんとか力をこれで借りられるようになったのかもと一安心もした。

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