水巫女はハレムで溺れる

アンナ、召喚(2)

「ごめんなさい～、驚かせました？」

　なんとも気の抜けた声をかけてくる女性は気づけば目の前に立っていた。

　いつ、どこから来たのか？　全く分からなかった。

「あ……」

「うんうん、そりゃー驚きますよね。道歩いてたら車にぶつかって河におちたんだもんね」

　……

　何言ってるかわかんない。

「あ、ごめんなさい、わかりにくい？」

「え……、あの。　夢？」

　夢の中で夢をみるとは、私もなかなか高度な夢をみるようになったものだ。

　目の前の女性は輝く水色の長い髪を背中にながしている。
もう、その髪の色が現実的じゃない。

　ぱっちりとした目は大きく同じく水色の瞳でキラキラと輝いている。

　もう、整いすぎて人外。

　服もギリシャ神話のように布をぐるぐる巻いたようなものを身にまとい、足元までおおわれている。

　それがまたこの美貌によく似合っている。

　思わず「女神……」とつぶやいてしまったのも仕方ないと思う。

「正解です！」

　私のつぶやきに目の前の美女は嬉しそうに微笑む。

「？女神？？」

「そうです。本当は精霊の長なんだけど、人は女神と呼ぶことがおおいですね」

「女神……」

「はい」

　ええーー！
　まって、夢だとは思うけど、これはちょっと想像をこえてたわ。

「あの、信じがたいと思うのですが、これは夢じゃなくて現実です」

　私の心をのぞいたかのように自称女神様が訴えてくる。

「いま、何か失礼なこと考えませんでした？」

　どきっ！
　「自称」女神様といったことが失礼にあたるのかな……

「まぁ、いいです。とにかく信じてください。これは夢じゃありません。
あなたが車にはねられて、奇跡的にケガはないものの河におちたことも現実です」

　車にはねられた、という言葉に体がぞくりと冷えたけれど、女神様の言葉をきくと私は怪我はないらしい。

「もっというと、1年前の夢と思っている男性との経験も現実です」

「！！！！」

　女神様とか車にはねられたとかよりも衝撃的な言葉だった。

「いやぁー！！」

　夢だと思ってたのに！！なんで知ってるの？！あのイケメンとのアレコレ！！

「いやー！！」

　もう一度叫んで真っ赤になった顔を両手で覆うとしゃがみこむ。

　小さくなりたい。

　小さくなって穴に入りたい。

　むり……

「あの、見てないですよ？」

　同じようにしゃがみこんだと思われる女神様の手がぽん、と肩におかれる。

「でも！！」

「見てないけれど、知っているんです」

　それ、何が違うのー？！

　あ……あんな、恥ずかしいことを外でしてしまったのを知られてるー！！

「大丈夫ですよ？人間にとって必要な行為です。大切です。恥ずかしがることないです」

　……

　おけー。落ち着こう。

　もういいや。

　話すすまないし。

　とりあえず女神様の話をきこう。

「すみません、取り乱しました。　それで、ここはどこです？」

「はい！ここはあなたが落ちた河と、私が本来いる世界とをつなぐ場所です」

　ふむ……、わからん。

「その世界は精霊がたくさんいて、いろいろ力をもっているんですが、その中で私は水の精霊をたばねる水の精霊の女王として存在しています。

　その世界の人間は私のことを「女神」と呼びますが、実際は精霊です。

　で、本題なんですが、私のいる世界に水の精霊の巫女としておりたってほしいんです」

　！！
　異世界召喚きたー！！