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夢の中の泉の出会い(5)
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……
…………
沈黙が痛い……
さきほど、勇気をふりしぼって言ってみたけど。
絶賛沈黙、無反応中です。
誰だよ「私で思い出作りしませんか」なんて言ったの!
どんな台詞だよ!!
ばかだろう!
恥ずかしい!!
どんないい女なんだよ、私!
私でいい思い出つくれるんか?って話だよね!
ごめんなさい。ちょっと見たことないエキゾチックイケメンに浮かれてました。
笑い飛ばすなり、そろそろ反応かえしてほしい……
「……あのさ、意味わかってる?」
私の頬を親指でこすりながら、少しかすれた声で彼が聞いてくる。
鏡をみなくてもわかる、絶対真っ赤になっている私の頬は包んでいる彼の熱い手のひらよりも熱をもっている。
「うん。
私じゃいい思い出にならないかもしれないけど……
私にも思い出をください」
「……思い出?」
「そう。とても素敵な夢を忘れられないものにしたい」
「夢??」
とてもきれいな泉。
しっとりした空気にあふれる森。
そして、この目の前にいる精悍なイケメン。
何もかも、みたことのないまさしく『夢』の世界。
だったらもっと思い出深いものにしたい。
「そう、夢……」
ぐるぐる巻きになっているマントから腕をだしてぎゅっと彼の服の胸をつかんで軽く自分のほうへ引き寄せた。
なんの抵抗もなく引き寄せられて、わかっているかのように彼の顔が少し伏せられた。
それにあわせるように私も少し顔をあげる。
肩にまわった彼の腕に少し力が入ったのがわかった。
腕の力に反して、唇はそっと、そっと、優しく、遠慮するように重ねられた。
唇もとても熱くて、その熱が私にも少しずつうつってくる。
「俺、初めてだから……」
聞こえないほどの小さな声でささやかれる。
男の人にとっては初めてって恥ずかしいのかな?
でも、それは私も同じ。「社会人で初めてって……」の友達の言葉が思い出される。
「私も初めてだから……」
勇気をだしたのだからこのまま押してしまおう。
「あなたにも私にもいい思い出にしよう?」
じりっと彼に近づくと、抱き寄せられてすっぽりと彼の腕の中におさまった。
とたんにぶわっと熱に包まれてのぼせそうになる。
思わず顔をあげて、水面から顔をだしたように息継ぎをする。
「あつい……」
「本当に水の精霊だな」
ぎゅっと抱きしめられて首すじに顔をうめられる。
首元に吐息がかかるけれど、その息も熱くて、体がぶるりと震えた。
「ひんやりして、俺の熱と溶け合って」
首から離れた顔がまた近づいてくる。
再び重ねられた唇は、彼の熱が私にもうつっているのか、最初ほど熱くは感じられなかった。
「ちょうどいい温度になる」
あぁ、ほんとうにそうかも。
泉からあがった私はきっと体温がさがって冷たくなってる。
彼の熱をさげて、私は彼からもらって熱くなる。
熱に浮かされたように。
木々の間に隠れるように広げたマントの上で、二人で熱をわけあった。
…………
沈黙が痛い……
さきほど、勇気をふりしぼって言ってみたけど。
絶賛沈黙、無反応中です。
誰だよ「私で思い出作りしませんか」なんて言ったの!
どんな台詞だよ!!
ばかだろう!
恥ずかしい!!
どんないい女なんだよ、私!
私でいい思い出つくれるんか?って話だよね!
ごめんなさい。ちょっと見たことないエキゾチックイケメンに浮かれてました。
笑い飛ばすなり、そろそろ反応かえしてほしい……
「……あのさ、意味わかってる?」
私の頬を親指でこすりながら、少しかすれた声で彼が聞いてくる。
鏡をみなくてもわかる、絶対真っ赤になっている私の頬は包んでいる彼の熱い手のひらよりも熱をもっている。
「うん。
私じゃいい思い出にならないかもしれないけど……
私にも思い出をください」
「……思い出?」
「そう。とても素敵な夢を忘れられないものにしたい」
「夢??」
とてもきれいな泉。
しっとりした空気にあふれる森。
そして、この目の前にいる精悍なイケメン。
何もかも、みたことのないまさしく『夢』の世界。
だったらもっと思い出深いものにしたい。
「そう、夢……」
ぐるぐる巻きになっているマントから腕をだしてぎゅっと彼の服の胸をつかんで軽く自分のほうへ引き寄せた。
なんの抵抗もなく引き寄せられて、わかっているかのように彼の顔が少し伏せられた。
それにあわせるように私も少し顔をあげる。
肩にまわった彼の腕に少し力が入ったのがわかった。
腕の力に反して、唇はそっと、そっと、優しく、遠慮するように重ねられた。
唇もとても熱くて、その熱が私にも少しずつうつってくる。
「俺、初めてだから……」
聞こえないほどの小さな声でささやかれる。
男の人にとっては初めてって恥ずかしいのかな?
でも、それは私も同じ。「社会人で初めてって……」の友達の言葉が思い出される。
「私も初めてだから……」
勇気をだしたのだからこのまま押してしまおう。
「あなたにも私にもいい思い出にしよう?」
じりっと彼に近づくと、抱き寄せられてすっぽりと彼の腕の中におさまった。
とたんにぶわっと熱に包まれてのぼせそうになる。
思わず顔をあげて、水面から顔をだしたように息継ぎをする。
「あつい……」
「本当に水の精霊だな」
ぎゅっと抱きしめられて首すじに顔をうめられる。
首元に吐息がかかるけれど、その息も熱くて、体がぶるりと震えた。
「ひんやりして、俺の熱と溶け合って」
首から離れた顔がまた近づいてくる。
再び重ねられた唇は、彼の熱が私にもうつっているのか、最初ほど熱くは感じられなかった。
「ちょうどいい温度になる」
あぁ、ほんとうにそうかも。
泉からあがった私はきっと体温がさがって冷たくなってる。
彼の熱をさげて、私は彼からもらって熱くなる。
熱に浮かされたように。
木々の間に隠れるように広げたマントの上で、二人で熱をわけあった。
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