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夢の中の泉の出会い(2)
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素っ裸の姿をみられて思わず大声で叫んだものの、その声でもまだ夢からさめることはなかった。
なんか、とんでもない夢だわ……
しかも、これは完璧に悪いのは私のほう。
こんなところで裸で泉に入っている女がいるなんて思わないだろう。
とりあえずもう一度、とぷんと泉の中に入ることにした。
顔も合わせづらくて後ろを向いたままでいたら、さくりさくりと芝をふむ軽やかな足音が聞こえた。
なんでー!!
ここは気をつかって離れるところじゃないの?!
気の利かない男だな、と思いながら仕方なく音のほうへ振り替えると、エキゾチックな美貌の青年はもう目の前まできていた。
「あの……」
目の前にたった青年は少し目線を外しながら肩から背中にながしていた大きな布をはずして差し出してきた。
「これを使って体を隠せばどうですか?」
いえ、あなたが立ち去ってくれればそれで……と思ったものの、随分リアルな夢で見たことのないイケメンが話しかけてくれるのならばそれにのってみるのもまたアリだなと即座に意見をかえた。
目線が外れていることを確認するともう一度岸にあがって差し出された布をありがたくうけとる。
大きな布の下に隠された手にふれてしまってビクリとお互いの手が跳ねた。
私は触れた手の熱さに驚いたので、彼は私の冷たい手の感触にびっくりしたのかもしれない。
驚いたことに恥ずかしくなったのか彼はそのままくるりと背をむけた。
受け取った布はシーツのように大きくて、立ち上がった私はそれを体にぐるぐる二重巻きにして「ありがとうございます」と、もう大丈夫ですよの意味をこめてお礼を言った。
振り返った彼は日に焼けた肌を少し赤らめながら私の顔をしっかりと見つめてきた。
「あなたは、こんなところでどうしてそんな恰好でいたんですか?
今の状況、わかってますか?」
それは私が聞きたい……
「あの……、私、なんで自分がここにいるのかわからないんです。
多分夢だから突拍子もないことがおきるんだと思うんですけど……
で、状況って何ですか?」
彼は「え……」と絶句したあと、頭を抱えだした。
「記憶喪失?」「奴隷?」とぶつぶつ何やら聞こえてくる。
こんな見ず知らずの(本人が望んでしたわけではないけれど)素っ裸で泉にはいるような女のことで真剣に考え込んでいるこの青年がひどく真面目で苦労性のように思えておかしくなってきた。
「ふふっ」
思わず笑ってしまった私に彼はぱっと顔をあげて驚いた。
「あぁ、ごめんなさい、笑ったりして。
こんな変な女のことを真面目に考えてくれているあなたがなんだか可愛くて」
男の人に「かわいい」なんて失礼だったかな、と思ったら案の定すこし唇をとがらせて「別に可愛くない」とぶつぶつ言っている。
その仕草がまたかわいくて、再び笑うことになってしまった。
あぁ、なんか、この夢いいな。
知らない人だけどイケメンだし、いい人みたいだし。
堪能してこの夢に癒されよう。
「それで、状況って何?
何か悪いことが起きているの?」
これ以上イケメン君の機嫌を損ねないように話題をかえてみた。
すると、彼は「あ!」と思い出したように私のぐるぐる巻きの布からはみ出した手をとると木立の間に連れていった。
「今、ここにはこれから戦争にいく軍隊が滞在している。
この林のむこうに軍隊向けの臨時娼館ができているから、そんな恰好をしているとそこの女性だと勘違いされてどんな目にあうかわからない」
私の口調にあわせてか、彼も少し崩れた口調になってきた。
ん?
癒されるつもりだったのに、何やら不穏な単語が聞こえてきた。
戦争?
召喚? いや、違うか。 娼館? 娼館?!
「それとも、もしかしてその娼館のために連れてこられた奴隷だったりする?」
え!!まって!
話が癒される方向からずれていってる!!
私の夢、どうなってるのー!?!?
なんか、とんでもない夢だわ……
しかも、これは完璧に悪いのは私のほう。
こんなところで裸で泉に入っている女がいるなんて思わないだろう。
とりあえずもう一度、とぷんと泉の中に入ることにした。
顔も合わせづらくて後ろを向いたままでいたら、さくりさくりと芝をふむ軽やかな足音が聞こえた。
なんでー!!
ここは気をつかって離れるところじゃないの?!
気の利かない男だな、と思いながら仕方なく音のほうへ振り替えると、エキゾチックな美貌の青年はもう目の前まできていた。
「あの……」
目の前にたった青年は少し目線を外しながら肩から背中にながしていた大きな布をはずして差し出してきた。
「これを使って体を隠せばどうですか?」
いえ、あなたが立ち去ってくれればそれで……と思ったものの、随分リアルな夢で見たことのないイケメンが話しかけてくれるのならばそれにのってみるのもまたアリだなと即座に意見をかえた。
目線が外れていることを確認するともう一度岸にあがって差し出された布をありがたくうけとる。
大きな布の下に隠された手にふれてしまってビクリとお互いの手が跳ねた。
私は触れた手の熱さに驚いたので、彼は私の冷たい手の感触にびっくりしたのかもしれない。
驚いたことに恥ずかしくなったのか彼はそのままくるりと背をむけた。
受け取った布はシーツのように大きくて、立ち上がった私はそれを体にぐるぐる二重巻きにして「ありがとうございます」と、もう大丈夫ですよの意味をこめてお礼を言った。
振り返った彼は日に焼けた肌を少し赤らめながら私の顔をしっかりと見つめてきた。
「あなたは、こんなところでどうしてそんな恰好でいたんですか?
今の状況、わかってますか?」
それは私が聞きたい……
「あの……、私、なんで自分がここにいるのかわからないんです。
多分夢だから突拍子もないことがおきるんだと思うんですけど……
で、状況って何ですか?」
彼は「え……」と絶句したあと、頭を抱えだした。
「記憶喪失?」「奴隷?」とぶつぶつ何やら聞こえてくる。
こんな見ず知らずの(本人が望んでしたわけではないけれど)素っ裸で泉にはいるような女のことで真剣に考え込んでいるこの青年がひどく真面目で苦労性のように思えておかしくなってきた。
「ふふっ」
思わず笑ってしまった私に彼はぱっと顔をあげて驚いた。
「あぁ、ごめんなさい、笑ったりして。
こんな変な女のことを真面目に考えてくれているあなたがなんだか可愛くて」
男の人に「かわいい」なんて失礼だったかな、と思ったら案の定すこし唇をとがらせて「別に可愛くない」とぶつぶつ言っている。
その仕草がまたかわいくて、再び笑うことになってしまった。
あぁ、なんか、この夢いいな。
知らない人だけどイケメンだし、いい人みたいだし。
堪能してこの夢に癒されよう。
「それで、状況って何?
何か悪いことが起きているの?」
これ以上イケメン君の機嫌を損ねないように話題をかえてみた。
すると、彼は「あ!」と思い出したように私のぐるぐる巻きの布からはみ出した手をとると木立の間に連れていった。
「今、ここにはこれから戦争にいく軍隊が滞在している。
この林のむこうに軍隊向けの臨時娼館ができているから、そんな恰好をしているとそこの女性だと勘違いされてどんな目にあうかわからない」
私の口調にあわせてか、彼も少し崩れた口調になってきた。
ん?
癒されるつもりだったのに、何やら不穏な単語が聞こえてきた。
戦争?
召喚? いや、違うか。 娼館? 娼館?!
「それとも、もしかしてその娼館のために連れてこられた奴隷だったりする?」
え!!まって!
話が癒される方向からずれていってる!!
私の夢、どうなってるのー!?!?
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