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5.幸せがずっと続きますように
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それから数ヶ月が経ったある日、私は王宮の庭園をレオナルド殿下と歩いていた。
少し開けた場所に出た時だった。唐突に彼は足を止めて私の方に向き直って、こう口にした。
「イルシア、出会った時から君が好きだった。ずっと側にいさせてくれませんか?」
そんな言葉と共に差し出される婚約指輪。
「私でよろしければ、これからもよろしくお願いします」
そう言って、私は手を差し出した。
「ありがとう」
殿下はそう口にすると、私の指に指輪を嵌めてくれた。
彼が浮かべた笑みは一生忘れられないくらい、輝かしくて。
私も笑顔を浮かべ、気付かれないように目を細めた。
常に私のことを最優先に動いてくれる彼と一緒にいられる。
そう思うと、胸が熱くなって。
この気持ちは一体なんなのかしら……?
答えは分からないけれど、彼となら幸せになれる。そんな気がした。
「シアのことを支えられるように、もっとグレイヴのことを勉強しないとな」
「レオに本気を出されたら私の立場が無くなってしまうわ」
そんな軽口を交わしていると、庭園の花が私達を祝福しているように、優しく揺れた。
それから1年半。
婚約期間を終えた私はレオナルド殿下と無事に結婚し、約束されていた通り私はお父様から爵位を譲られた。
レオナルド殿下は爵位を授かれる立場だったのだけど、私の意思を尊重して伯爵家に入ってくれた。
それだけでなく、領地のことだったりも全面的に協力してくれていて、私の仕事は半分以下になっている。
うれしいけど、少し悔しかった。
ちなみに、シエルは私が婚約したのに遅れて侯爵令息様と婚約した。
かねてよりお付き合いしていたようで、結婚も近いらしい。
「シエル嬢のウエディングドレス姿も綺麗なんだろうな」
「あら、浮気?」
「まさか。シアが一番だよ」
夜空を見ながら、軽口を交わす私達。こんな冗談を言えるくらい、彼とは信頼し合えている。
「あ、流れ星だ。何かお願いしないと」
ふと、レオがそんなことを呟いた。
夜空には確かに光の筋があって。
「そうね……」
この幸せが、ずっと続きますように。
私の願いに応えるかのように、流れ星が瞬いた。
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